基礎的・基本的な知識・技能の習得と数学的な思考力・判断力・表現力の育成を目指します!

                                     

数学的活動を取り入れた授業モデルとは

本研究では、1時間の授業の流れを、「つかむ」「見通す」「練り合う」「深める」「まとめる」の5つの段階に分けて考えることにしました(表1)。 また、それぞれの段階に、効果的であると考えられる数学的活動を位置付けた授業構想案を授業モデルとして提案します。提案する授業モデルでは、課題の設定方法を工夫し、本研究において考える数学的活動をできるだけ効果的に取り入れたいと考えています。この授業モデルを参考にしていただき、生徒の実態等に合わせて、実践していただければと思います。数学的活動を取り入れた授業を各学校で実践していただくことで、数学科の教科目標である「数学的活動を通して、数量や図形などに関する基礎的な概念や原理・法則についての理解を深め、数学的な表現や処理の仕方を習得し、事象を数理的に考察し表現する能力を高めるとともに、数学的活動の楽しさや数学のよさを実感し、それらを活用して考えたり判断したりしようとする態度を育てる。」の実現が期待できると考えています。
  また、「つかむ」段階に位置付けている活動(★印で表記)は、授業を構想する上で大切となる活動です。数学などのように系統性の高い教科においては、単元の導入段階において生徒のレディネスを把握することが大切です。このことを受けて、授業モデルの「つかむ」段階においても、本時の学習に必要な既習内容を効果的に復習をさせたり、本時の課題と既習内容の関連をつかませたりすることによって、本時の学習がスムーズに進められると考えています。

表1 授業の段階と授業に位置付ける数学的活動
段 階
               段階の説明
授業に位置付ける主な数学的活動     
つかむ
本時の学習に対する関心をもたせ、効果的に課題を提示することによって、学習に対する意欲を喚起する段階 ★ 授業で必要となる前時までの学習内容を復習したり、本時の課題を知ったりする活動
見通す
本時の課題の解決方法などを予想させ、この後の学習活動の見通しをもたせる段階 ア 成り立つ事柄を予想する活動
練り合う
実際に解決に向けての活動を行わせ、そこで考えたことを話し合うなどして、自分の考えを広げたりまとめたりさせる段階
イ 観察、操作などの具体的な活動
ウ 自分の考えを人に伝える活動・人の考えを理解する活動
深める
課題の条件を変え、同じことが成り立つかを考えさせたり、新たな数量や図形の法則を見付け出させたりする段階 エ 目の前の課題から、物事の本質を見抜こうとする活動
オ 発展的に考える活動
ウ 自分の考えを伝える活動・人の考えを理解する活動
まとめる
学んだことを日常生活に戻し、数学の有用性を感じさせたり、本時の学習を振り返らせ、分かったことやできるようになったことを気付かせたりする段階 カ 自分が行った活動を振り返る活動 
 
本研究において考える数学的活動でねらうことと指導のポイントは、次のようになります。   
★ 授業で必要となる前時までの学習内容を復習したり、本時の課題を知ったりする活動
  〔この活動でねらうこと〕
  本時に必要となる既習の学習内容の確認を行うことで、授業の流れがスムーズになるようにすることと、本時の活動を知らせることで、生徒が目的意識をもち主体的に活動できるようにすることがねらいです。
  〔指導のポイント〕
@
既習内容の確認は、できるだけ短い時間で効果的に行う。
A
本時の課題は、できるだけ生徒の身近な生活の中でイメージできるような内容にする。
B
本時の課題やその提示に当たっては、生徒の興味・関心を喚起するような工夫をする。
C
本時の課題をつかませる際は、具体物やプレゼンテーションソフトを用いるなどして、視覚的な提示を心掛ける。
ア 成り立つ事柄を予想する活動
  〔この活動でねらうこと〕
  既習の学習内容を基に予想を立てさせること、予想を立てさせることでどのように課題を解決するのか見通しをもたせること、確かめてみたいという気持ちを抱かせることがねらいです。
  〔指導のポイント〕
@
数量の関係や問題の構想を読み取るために視点を明確にした発問をする。
A
数学的に定式化し問題を設定する。
B
まず、根拠を問わず予想させる。
C
どのようにして予想を解決するのかを考えさせる。
D
予想したことを言葉や文字を使って、表現させる。
イ 観察、操作などの具体的な活動
  〔この活動でねらうこと〕
  数学的な表現や処理の仕方を習得し、予想が正しいかどうかを判断するための方法を見付け出すなど、数学的活動の楽しさを味わわせることがねらいです。
  〔指導のポイント〕
@
具体的な活動を通して、予想したことが正しいかどうかを判断させる。
A
関係をとらえるために、図、言葉の式、表、グラフを用いて考えさせる。
B
既習の学習内容を活用して考えさせる。
  C 実験や観察をただ行うのではなく、目的意識(目標)をしっかりもって活動させる。
ウ 自分の考えを人に伝える活動・人の考えを理解する活動
  〔この活動でねらうこと〕
  自分の考えを、数学的な表現を用いて筋道立てて分かりやすく伝えることや、人の考えを聞き、自分の考えと比較して考えさせ、よりよい方法を探り、数学的な見方や考え方を知ることがねらいです。
  〔指導のポイント〕
@
必ず成り立つことを数学的な表現を用いて考え、説明させる。
A
他者の考えと自分の考えとを比較させる。(人の考えのよい点を認識させる。)
エ 目の前の課題から、物事の本質を見抜こうとする活動
  〔この活動でねらうこと〕
  学習したことを基に、数や図形の性質を見いだし、一般化を図ることがねらいです。
  〔指導のポイント〕
@
数や図形の性質について、自分の考えを数学的な表現を用いて分かりやすく伝えさせる。
A
他者の考えと自分の考えとの共通する性質について考えさせ、一般化を図るようにする
オ 発展的に考える活動
  〔この活動でねらうこと〕
  「課題の条件を変えて考えてみるとどうなるだろう」や「違う法則が見付けられないだろうか」や「もし・・・でなかったら」といった疑問から新たな発見へとつなげていくことがねらいです。
  〔指導のポイント〕
@
条件を変えた課題づくりを行う。(数学的な見方や考え方を広げる。)
A
学習した内容を、更に論理的に考察させる。(数学的な見方や考え方を深める。)
カ 自分が行った活動を振り返る活動
  〔この活動でねらうこと〕
  具体的な事象に戻って考えさせることにより、数学のよさと自分の活動を振り返り、自己の能力が高まったことを実感させることがねらいです。
  〔指導のポイント〕
@
具体的な事象に戻り考えさせ、日常生活と数学とのかかわりを意識させる。
A
自分の行った活動を振り返る時間を設定する。
B
振り返りやすいように、授業の感想を書かせたりアンケートを行ったりする。
この授業モデルを参考に、普段の授業においても、数学的活動を1つでも多く取り入れ、実践していただければ本研究委員会としても幸いです。

第2学年で学習する単元一覧      ※啓林館の教科書に対応した授業モデルです。

数と式

1章 式の計算

2章 連立方程式

 







1 式の計算

1 連立方程式

 ・1・ 式の加法、減法

 ・1・ 連立方程式とその解

 ・2・ 単項式の乗法、除法

 ・2・ 連立方程式の解き方

2 文字の利用

2 連立方程式の利用

 ・1・ 文字式の利用

 ・1・ 連立方程式の利用

関数

3章 一次関数

1 一次関数とグラフ

 ・1・ 一次関数

 ・2・ 一次関数の値の変化

 ・3・ 一次関数のグラフ

 ・4・ 一次関数の式を求めること

2 一次関数と方程式

 ・1・ 方程式とグラフ

  ・2・ 連立方程式とグラフ

3 一次関数の利用

 ・1・ 一次関数の利用  

図形

4章 図形の調べ方

5章 図形の性質と証明

1 平行と合同

1 三角形

 ・1・ 角と平行線 

 ・1・ 二等辺三角形

 ・2・ 多角形の角
   ・2・ 多角形の角(3/4時の別展開案)

 ・2・ 直角三角形の合同

2 四角形

 ・3・ 三角形の合同 

 ・1・ 平行四辺形の性質

2 証明 

 ・2・ 平行四辺形になる条件

 ・1・ 証明とそのしくみ 

 ・3・ 長方形、ひし形、正方形

 ・2・ 合同条件と証明の進め方

 ・4・ 平行線と面積

資料の活用

6章 確率

 

1 確率の意味

 ・1・ 確率の意味

2 場合の数と確率

 ・1・ 数え方のくふう

 ・2・ 確率の求め方

                                                               

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最終更新日:  2010-03-02