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小・中学校の連携を図る特別支援教育の充実に向けて

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○ 気になる子どもへの教育的配慮の実施状況
教育的配慮の実施状況の考え方

(1)

 

66の具体的な支援内容に対する支援をする際の実施状況を調査した。担任する学級に気になる子どもがいることを条件に調査をしているため、小学校では64.6%、中学校では78.5%の回答率になった。

集計方法としては、担任または教科担当として、気になる子どもにその支援を「実施していない」を0点、「個別に実施」を1点、「クラス全員に実施」を2点と得点化して集計を行った。

教育的配慮の実施状況(小学校)

(1)

 それぞれの支援内容に対する実施状況を得点化した。「実施していない」を0点、「個別に実施」を1点、「クラス全員に実施」を2点として集計を行った。この得点を実施得点とし、支援がより多くの児童に行われているほど実施得点が高い値になるようにした。表-1では、最も高い実施状況の平均得点は「見やすいチョークの色で板書する」の1.90 点、表-2では、最も低い実施得点は「言葉の意味を調べるとき電子辞書の使用を認める」の0.02点で、両者の得点の差は顕著であった。このことは、支援内容によって取り組みの状況に大きな差があることを示 している。

また、平均得点が高いものの中には、「見やすいチョークの色で板書する」、「授業で使うノート、教材、文房具など最低必要なものだけを机上に用意させる」、「字を書いたり、計算したりするときに、マス目のあるノートや用紙を使用する」、「約束事が守れたり、望ましい行動がとれたりしたときにはすぐに褒める」など、実施する際に易しいと思われる支援(難易度の平均得点が高い)が多く含まれた。また、「ペアやグループ学習などの時間を設ける」、「グループを編成する際には、メンバーに留意する」など、児童同士の学び合いを期待する支援が高い実施得点を得ている。

それに対して、実施得点 が低いものには、「言葉の意味を調べるとき電子辞書の使用を認める」、 「課題の提出をする際に、代筆者やテープレコーダー、パソコンなどの使用を認める」、「ノートをとる代わりにテープレコーダーやノートのコピー、パソコンを利用するなどの方法を認める」など、実施する際に難しいと思われる支援(難易度の平均点が低い)が多く含まれた。また、「テストの用紙を拡大する 」、「スリットをあけた厚紙や定規、指などを使って他の行を見えないようにして読んだり、書いたりさせる」、「教科書の字を拡大する」、「単語ごと(もしくは文節ごと)に横線を入れたり、分かち書きにしたりする」などの読むことに関する支援の実施得点が低く出ている傾向にある。


(2)
 小学校の指導者にとって、高い実施状況を示す具体的な支援内容は次の通り。《表-1》
順位
支   援   内   容
平均得点
見やすいチョークの色で板書する
1.90
授業で使うノート、教材、文房具など最低必要なものだけを机上に用意させる
1.83
ペアやグループ学習などの時間を設ける
1.80
字を書いたり、計算したりするときに、マス目のあるノートや用紙を使用する
1.73
約束事が守れたり、望ましい行動がとれたりしたときにはすぐに褒める
1.71
グループを編成する際には、メンバーに留意する
1.68
名前を呼んだり、声かけをしたりして、注意を引きつける
1.63
TT、少人数を活用した授業を計画する
1.63
気になる子どもの特性について他の子どもたちに理解してもらえるように工夫して伝える
1.59
10
何についての作文を書くか事前に伝えておく
1.55
10
視覚的な手がかり(具体物、写真、絵など)を使って教える
1.55
 
 
(3)
 小学校の指導者にとって、低い実施状況を示す具体的な支援内容は次の通り。《表-2》
 
順位
支   援   内   容
平均得点
66
言葉の意味を調べるとき電子辞書の使用を認める
0.02
65
課題の提出をする際に、代筆者やテープレコーダー、パソコンなどの使用を認める
0.05
63
ノートをとる代わりにテープレコーダーやノートのコピー、パソコンを利用するなどの方法を認める
0.12
63
テストの用紙を拡大する
0.12
62
板書の内容をプリントやメモなどで事前に渡しておき、手元に置かせる
0.14
61
スリットをあけた厚紙や定規、指などを使って他の行を見えないようにして読んだり、書いたりさせる
0.20
60
教科書の字を拡大する
0.25
59
単語ごと(もしくは文節ごと)に横線を入れたり、分かち書きにしたりする
0.35
58
1枚の問題用紙に載せる問題数を少なくする
0.39
57
メモをとるようにさせ、メモをなくさないように置き場所をきめて確認する
0.41
 
     
 

 


教育的配慮の実施状況(中学校)

(1)

 それぞれの支援内容に対する実施状況を小学校と同様の方法で得点化した。表-3では、最も高い実施得点は「見やすいチョークの色で板書する」の1.86点、表-4では、最も低い実施得点は「課題の提出をする際に、代筆者やテープレコーダー、パソコンなどの使用を認める」の0.00点で、両者の得点の差は顕著であった。このことは、支援内容によって取り組みの状況に大きな差があることを示 している。
 また、平均得点が高いものの中には、「見やすいチョークの色で板書する」、「授業で使うノート、教材、文房具など最低必要なものだけを机上に用意させる」、「板書の書式(左から右へ書くなど)を決めておく」、「約束事が守れたり、望ましい行動がとれたりしたときにはすぐに褒める」など、実施難易度の平均得点が高かった支援が多く含まれた。また、生徒同士の学び合いを期待する支援でもある「ペアやグループ学習などの時間を設ける」が平均得点が高く出ている。また、「子どもが意欲的に取り組める教材(興味を引く教材、見やすい教材、図や絵などを取り入れた教材)を準備する」、「視覚的な手がかり(具体物、写真、絵など)を使って教える」 など教授法の改善を図る支援が高い平均得点を得ている。

それに対して、平均得点が低いものには、 「課題の提出をする際に、代筆者やテープレコーダー、パソコンなどの使用を認める」、「言葉の意味を調べるとき電子辞書の使用を認める」、「ノートをとる代わりにテープレコーダーやノートのコピー、パソコンを利用するなどの方法を認める」など、実施難易度の平均点が低い支援が多く含まれた。また、「テストのとき、読むことが苦手な子どもに対して、問題文を読み聞かせ内容を伝える 」、「テスト時間の延長を認める」、「テストの用紙を拡大する」などテストに関する支援が低い平均得点になっている。


(2)
 中学校の指導者にとって、高い実施状況を示す具体的な支援内容は次の通り。《表-3》
順位
支   援   内   容
平均得点
見やすいチョークの色で板書する
1.86
授業で使うノート、教材、文房具など最低必要なものだけを机上に用意させる
1.66
ペアやグループ学習などの時間を設ける
1.64
板書の書式(左から右へ書くなど)を決めておく
1.60
約束事が守れたり、望ましい行動がとれたりしたときにはすぐに褒める
1.59
話をするときには、分かりやすく話す(指示代名詞を使わない、具体的、短い言葉、はっきり、ゆっくり、繰り返しなど)
1.53
子どもが意欲的に取組める教材(興味を引く教材、見やすい教材、図や絵などを取り入れた教材)を準備する
1.49
名前を呼んだり、声かけをしたりして、注意を引きつける
1.47
何についての作文を書くか事前に伝えておく
1.43
10
視覚的な手がかり(具体物、写真、絵など)を使って教える
1.39
 
 
(3)
 中学校の指導者にとって、低い実施状況を示す具体的な支援内容は次の通り。《表-4》
 
順位
支   援   内   容
平均得点
66
課題の提出をする際に、代筆者やテープレコーダー、パソコンなどの使用を認める
0.00
65
言葉の意味を調べるとき電子辞書の使用を認める
0.01
64
ノートをとる代わりにテープレコーダーやノートのコピー、パソコンを利用するなどの方法を認める
0.03
62
テストのとき、読むことが苦手な子どもに対して、問題文を読み聞かせ内容を伝える
0.06
62
教科書の字を拡大する
0.06
60
テスト時間の延長を認める
0.07
60
スリットをあけた厚紙や定規、指などを使って他の行を見えないようにして読んだり、書いたりさせる
0.07
59
板書の内容をプリントやメモなどで事前に渡しておき、手元に置かせる
0.16
58
テストの用紙を拡大する
0.24
57
課題のどこから始めるのか、どこまで終わったのかを分かりやすくするために、付せんを付けたり、シールをはったりするなどの目印を付ける
0.27
 
     
 

 


小・中学校における教育的配慮の実施状況の違い

(1)

  小・中学校の指導者において、支援の実施状況の平均得点の差を求めた(中学校の平均得点から小学校の平均得点を引いた値の絶対値)。表-5において、顕著な実施状況の差が見られたものに「字を書いたり、計算したりするときに、マス目のあるノートや用紙を使用する」、「テスト時間の延長を認める」があった。そのほかのものとしては、「プリントや教材を整理するための箱やかごを用意する」、「書きやすいペンや鉛筆、消しやすい消しゴムを使用させる」、「定規やコンパスは使いやすい大きさのもの、目盛りの見やすいものを使用させる」など、学習用具に関する支援に差が見られた。また、「テスト時間の延長を認める」、「テストのとき、読むことが苦手な子どもに対して、問題文を読み聞かせ内容を伝える」などテストに関する支援では開きが認められた。


(2)
 小・中学校の指導者において支援の実施状況に大きな差が見られたものは次の通り。《表-5》
順位
支   援   内   容
得点差
字を書いたり、計算したりするときに、マス目のあるノートや用紙を使用する
1.26
テスト時間の延長を認める
1.12
音読をしたり作文を読んだりするときには事前に伝え、家で練習できるようにする
0.63
プリントや教材を整理するための箱やかごを用意する
0.54
テストのとき、読むことが苦手な子どもに対して、問題文を読み聞かせ内容を伝える
0.51
座席の位置に配慮する
0.48
書きやすいペンや鉛筆、消しやすい消しゴムを使用させる
0.48
定規やコンパスは使いやすい大きさのもの、目盛りの見やすいものを使用させる
0.46
気になる子どもの特性について、他の子どもたちに理解してもらえるように工夫して伝える
0.45
10
グループを編成する際には、メンバーに留意する
0.34
 
 
   
 

 



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最終更新日: 2010-03-23