生きて働く言語能力を育てる「国語科学習指導の具体策」を提案します!

 授業展開案  〜授業づくりの基本構想に基づく実践の提案〜  (「書くこと」の指導)
単元名 
視野を広げて書こう
教材名(出典)
教材1 「視点を変えて書きかえよう」(東京書籍「新しい国語1」)
※光村図書「視点を変えて書こう」(「国語2」)でも同じように授業を組み立てることが可能です。
教材2 「少年の日の思い出」(東京書籍「新しい国語1」)
生徒の実態と指導のねらい

佐賀県の中学1年生の実態として、平成21年度佐賀県小・中学校学習状況調査の結果から「読むこと」、「書くこと」、「言語事項」の2領域1事項に課題が見られました。その中でも特に「書くこと」では、「目的や意図に応じて、必要な情報を選択したり整理したりして書く」こと、「目的や意図に応じて、伝えたい事柄が相手に明確に伝わるように書く」ことに課題が見られます。
中学校入学時からこれまでの学習において生徒は、「分かりやすく書こう」で相手や目的に応じたいくつかの表現技法を、「根拠を示して書こう」で自分の意見を文章に書いて伝える際に根拠を明らかにして書くことを学んできています。しかし、経験が少ないために、学んだことを生かして、相手や目的に応じて書く形式を適切に選択したり、表現の工夫をしたりして書くまでには至っていません。この課題を克服するためには、目的や相手、場面を設定し、それに応じた表現の工夫をして書く指導が有効だと考えられます。その際に、文学作品を教材の一つとして取り上げ、読むこととの関連を図った指導を行うことによって、表現の特徴や工夫に着目するようになれば、作品に対して自分の考えをもつこともできると思われます。
そこで本単元では、文学的な文章(教科書教材)の一部を、視点を変えて脚本の形に書きかえる言語活動を位置付けます。相手や目的に応じて必要な情報を選択し、伝えたい事柄が相手に明確に伝わるように表現を工夫して書くことを経験させ、言語活動を通して課題の克服を目指します。

学習内容の系統性

「書くこと」の言語活動例には、「読むこと」との関連を図った指導が有効なものがあります。ここでは、文学的な文章を教材として使い、「書くこと」の言語活動を通してねらいとする力を付けるための指導を行う単元を構想しました。そこでこの系統図では、「書くこと」の主教材の下に課題の解決に適している教科書教材を【 】書きで併記しています。
言語活動について
本単元では、「書くこと」の力を身に付けさせるために、新学習指導要領「B書くこと」の(2)に位置付けられている言語活動例の「ア 関心のある芸術的な作品などについて鑑賞したことを文章に書くこと」から発想して、「描写を根拠に作品の一部を脚本化する」という言語活動を設定しました。
単元の指導目標
(1)
物事を一つの視点からだけではなく、異なる視点からとらえ、自分の考えをもって文章を書くことができるようにする。
(2)
目的や条件に応じて、表現を工夫して書くことができるようにする。
単元の評価規準
ア 国語への関心・意欲・態度
イ 書く能力
ウ 言語についての知識・理解・技能
作品の一場面を劇の脚本に書きかえる言語活動を通した指導
劇の脚本の形式を整えて、役者(読み手)に場面の状況が正確に伝わる劇の脚本を書こうとしている。
伝えたい場面の情景や登場人物の心情が相手に伝わるように、自分の考えを表現することができている。
〔B書くこと(1)ウ〕
書いた文章を読み返して、目的に応じた表現の仕方で書くことができているかを確かめることができている。
〔B書くこと(1)エ〕
文章の中の事象や行為などを表す多様な語彙について関心をもって書き換えている。
〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項イ(ウ)〕
単元の計画(全9時間)
主な学習活動
指導上の留意点
指導計画
ワークシート






視点を変えて物事を見ることについて考える。




既習の文学的な文章や有名な作品の一部を劇の脚本に書きかえる。
具体物(学年劇の映像や実際の劇の脚本など)を見せ、脚本(シナリオ)への興味を喚起する。
「視点を変えて書きかえよう」を読ませ、脚本(シナリオ)作成に必要なことについて考えさせる。
文学的な文章を脚本化する方法と留意点に気付かせる。
指導計画1/9
アンケート(書くこと)
ワークシート@
補助資料

 




劇にする原作として「少年の日の思い出」を読み、主な場面を把握する。

学習目標を設定し、学習 計画を立てる。
登場人物と出来事に注目して読ませる。
小説のクライマックスの部分を脚本化することを意識させる。
学習の流れを生徒が把握できるように配慮する。
指導計画2/9
学習計画表
ワークシートA
生徒用手引き


脚本を書く手順を具体的に想起する。
場面ごとに登場人物と出来事に着目して情報を整理する。
1/9時を想起させ、具体的な手順を確認させる。
出来事を場面ごとに時系列で整理させる。
指導計画3/9
指導計画4/9
学習計画表
ワークシート@
補助資料
ワークシートA
脚本化する場面として選んだ部分について、情景と登場人物の心情について把握する。
選んだ場面を脚本化するために、視点を変えて、登場人物の主なせりふを書き出す。
ワークシートを用いて脚本化する場面についての情報を整理、収集させる。
原作の設定を変えずに書くことや表現の特徴を生かして書くことを指示する。
指導計画5/9
学習計画表
ワークシートA
ワークシートA記入例






登場人物の心情や情景描写をト書きとして書きかえる。
ト書きは劇を上演する際の役者への指示となるものなので、伝えたい内容が明確になるように注意して書かせる。
もともと一人称で書かれている場面なので、説明のないところについては想像して書くように指示する。
指導計画6/9
学習計画表
ワークシートB
A見本B見本
※ 一太郎版
A見本B見本
★一太郎版の使い方
ワークシートC
ワークシート@
補助資料
10 ナレーションや行動を指示する言葉を付け加える。
11 目的に合った文体や文末表現になっているかを見直して、脚本を完成させる。
場面の状況が明確に伝わるように指示する言葉を書かせる。
「会話文の内容や文体」「特徴のある言葉」を変えないように指示する。
指導計画7/9
ワークシートC
ワークシート@
補助資料
ワークシートD
12 グループ内で相互評価し、参考になるものを選んで発表する。
評価の観点に従って相互評価をさせる。
指導計画8/9
学習計画表
ワークシートD
評価表
13


自分の脚本を見直し、加筆修正をする。
14 学習のまとめをする。
友達の意見や書き方のよい点を参考にして加筆修正をするように助言する。
何を学んだかを確認させ、他に生かせる場面がないかを考えさせる。
指導計画9/9
学習計画表
評価表
ワークシート@AB
CD

アンケート(事後)
★一太郎版の使い方
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授業の実際
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※学習計画表は、単元を通して同じものを使用しています。また、同一番号のワークシートはすべて同じ内容です。