生きて働く言語能力を育てる「国語科学習指導の具体策」を提案します!

 授業展開案  〜授業づくりの基本構想に基づく実践の提案〜  (「読むこと」の指導)
単元名 
思考力や想像力を働かせながら読む
教材名(出典)
「少年の日の思い出」(東京書籍「新しい国語1」)(光村図書「国語1」)
生徒の実態と指導のねらい

佐賀県の生徒の実態として、平成22年度全国学力・学習状況調査の結果から、「主人公の行動や心情を描写した文章の表現の工夫をとらえること」「文学的な文章の表現の工夫をとらえること」が課題としてあげられます。また、平成22年度佐賀県小・中学校学習状況調査の結果から、「情景などの表現に着目して内容を読むこと」にも課題が見られることが分かりました。
生徒は、小学校や中学校1年生のこれまでの文学的な文章の学習で、場面の展開や登場人物などの描写に注意して読み、内容をとらえる学習をしてきています。しかし、文学的な文章の表現の特徴についてとらえ、その工夫や効果について自分の考えをもつという学習活動の経験は少ないため、表現の特徴から登場人物の心情などを読み取ることは不得手だと考えられます。このような課題を受け、本単元では、仮想場面で登場人物に会話をさせる「仮想対談」という言語活動を通して、「文章の記述を基に思考力や想像力を働かせて読む力」を身に付けさせることを目指し、合わせて「表現とその効果について自分の考えをもつ力」を身に付けさせることを目指します。

「仮想対談」とは、実際にはない対談を、仮にあるものとして考えてみるという活動です。教材の「少年の日の思い出」は、現在の場面から始まり、少年の日の思い出が語られる過去の場面で終わる構成で書かれています。そこで、本単元では、この作品には書かれていない現在の場面の続きがあって、主要な登場人物である「僕」と「エーミール」が対談をすると、仮に想定しました。その場面の2人の会話や情景について想像を交えて考え、対話の内容や様子をまとめる活動を「仮想対談」という言語活動として位置付けています。具体的には以下のような学習活動を行います。
  @ 大人になった「僕」と「エーミール」が再会し、幼い日の思い出について対談するとどうなるのか、作品に書かれていることを根拠にして考える。
  A 大人になった「僕」と「エーミール」の対談の最後の会話がどのようなものだったか想像し、その場にふさわしい情景描写を考える。
学習内容の系統性
系統図
言語活動について
本単元では、「読むこと」の力を身に付けさせるために、読み取った内容や表現の工夫、心情を基に、登場人物に成り代わって仮想対談を行い、心情の理解を深めるという言語活動を単元に位置付けます。本文にはない対談の場面を想定することによって、生徒が思考力や想像力を働かせて読みを深めることができるようにすることを目指します。
単元の指導目標
(1)
人物の描写や情景の描写に注目させ、内容を正確に読み取ることができるようにする。
(2)
文章の構成や展開、表現の工夫や効果について、自分の考えをもつことができるようにする。
単元の評価規準
ア 国語への関心・意欲・態度
イ 読む能力
ウ 言語についての知識・理解・技能
表現とその効果を踏まえ、心情を読み取る言語活動を通した指導
表現とその効果に関心をもち、人物描写や情景描写に注目して、人物の心情を読み取ろうとしている。
場面の展開や登場人物などの描写に注意して読み、内容を理解している。
          〔C読むこと(1)ウ〕
文章の構成や展開、表現の特徴について自分の考えをもっている。
          〔C読むこと(1)エ〕
事象や行為などを表す多様な語句の働きについて理解を深め、描写に注意して読んでいる。
〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項イ(ウ)〕
単元の計画(全9時間)
主な学習活動
指導上の留意点
指導計画
ワークシート
単元の学習計画を知り、学習の見通しをもつ。
学習課題を設定する。
本文を通読し、おおまかな内 容をとらえる。
初発の感想を書く。
学習計画表を用いて、単元の学習過程を確認し、学習の見通しをもたせる。
事前に各自が記入したアンケートの記述を参考にして、単元で身に付けたい力について個人で考えさせる。
単元の中で「仮想対談」を行うことを告げ、記述を根拠にして心情を読んでいく活動の必然性を生徒に感じさせる。
登場人物についての感想や表現の特徴についての気付きを簡単に書かせておく。
指導計画1/9
事前アンケート
学習計画・自己評価表
生徒用手引き
ワークシート@
※一太郎版
ワークシート@枠

一太郎版の使い方
 
登場人物のおおまかな人物像や関係をとらえる。
本文をT〜Wの4つの場面に分ける。
Tの場面の内容を読み取る。
「僕」「エーミール」の年齢、熱中していたことをおさえる。また、現在の「客」が過去の「僕」であることを確認する。
時間や出来事に着目させ、大きく4つの場面に分けることを指示する。
情景描写の特徴についての気付きを補助資料を参考にして書かせておき、7時間目の表現の特徴の学習の時間に振り返ることができるようにしておく。
指導計画2/9
学習計画・自己評価表
ワークシート@
補助資料



Uの場面の人物の心情を読み取る。
本文の記述を根拠にさせ、登場人物の心情を考えさせる。
「僕」と「エーミール」の人物像をとらえさせる。
指導計画3/9
学習計画・自己評価表
ワークシートA
※一太郎版
ワークシートA枠

Vの場面の人物の心情を読み取る。
本文の記述を根拠にさせ、登場人物の心情を考えさせる。
「僕」が盗みを犯すまでと犯した後の心情の変化をとらえさせる。
指導計画4/9
学習計画・自己評価表
ワークシートB
※一太郎版
ワークシートB枠

ワークシートB記入例


10 Wの場面の人物の心情を読み取る。
本文の記述を根拠にさせ、登場人物の心情を考えさせる。
「僕」と「エーミール」が対峙したときの、それぞれの心情をとらえさせる。
家に帰り、収集したちょうをつぶすときの「僕」の心情に迫らせる。
指導計画5/9
指導計画6/9
学習計画・自己評価表
ワークシートC
※一太郎版
ワークシートC枠

ワークシートC記入例
11 表現の特徴や工夫について自分の考えをもつ。 
補助資料、ワークシートの記述などを手掛かりにさせ、表現の特徴に気付かせ、その工夫や効果について自分の考えをもたせる。
交流により、個人の考えを深めさせる。
指導計画7/9
学習計画・自己評価表
ワークシート@
ワークシートD
補助資料
12 仮想対談の内容を個人で考える。
13 できあがった仮想対談をグループで読み合い、友達の対談内容を参考にして、各自が考えたものを見直す。
14 見直した対談内容を基に、2人が最後に別れる場面の会話とその会話に合う情景を考える。
今まで読み取ってきたことを利用して、仮想対談を考えさせる。
グループで読み合わせることで、考えを深めさせたり、よりよい内容や表現に気付かせたりする。

見直した対談内容を基にして、2人が分かれる結末の場面がどうなるか考えさせ、想定した結末に合う会話と情景をまとめさせる。
情景を考える際には、7/9時に学習した表現の特徴を利用するように指示する。
指導計画8/9
学習計画・自己評価表
ワークシートE

15 各自が考えた別れの場面の会話と情景を発表する。
16 各自が考えた別れの場面の会話と描写について,グループで意見交換をさせる。
17 学習を振り返る。
各自が考えた最後の会話と情景について発表し合い、友達の考えと自分の考えを比べさせる。
想定した別れの会話に最も合っている情景描写をグループで考えさせ、なぜそう判断できるのか話し合うことで意見の交流をさせる。
学習計画・自己評価表を使って、単元の学習を振り返らせる。
指導計画9/9
学習計画・自己評価表
ワークシートE
事後アンケート
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※学習計画表は、単元を通して同じものを使用しています。また、同一番号のワークシートはすべて同じ内容です。