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3 研究のまとめ

平成24年度の研究では、平成22・23年度の研究の成果と課題を踏まえ、佐賀県小・中学校学習状況調査において明らかになった児童の課題の解決につながるよう、「書くこと」と「読むこと」との領域を関連付けた言語活動を取り入れた授業プランの見直しと工夫改善に取り組んできました。
具体的には、以下のとおりです。
(1) 学習指導要領の趣旨を反映した学習評価の考え方に基づいて、授業プランの見直しを図る。
(2) ICTの効果的な活用の視点から、授業プランの見直しを図る。
(3) (1)(2)を踏まえて、授業実践を通した検討を行い、必要に応じて授業プランの工夫改善をする。
見直しと工夫改善を行ったのは、以下の授業プランです。
第2学年 説明的な文章 「しかけカードの作り方」 光村図書2年下
第4学年 文学的な文章 「三つのお願い」 光村図書4年下
第6学年 説明的な文章 「『鳥獣戯画』を読む」 光村図書6年
第6学年 説明的な文章 「未来に生かす自然のエネルギー」 東京書籍6年下

(1)研究の成果

ア 指導事項を確実に身に付けるための言語活動を取り入れた指導法の工夫
指導事項にふさわしい言語活動を取り入れて、「リーフレットを作って地域に向けて自分の考えを発信する(第6学年『未来に生かす自然のエネルギー』〈東京書籍6年下〉)」「分かりやすい説明カードを作って友達におもちゃの作り方を教える(第2学年『しかけカードの作り方』〈光村図書2年下〉)」など、児童の興味・関心と結び付く課題を設定することで、児童の学習意欲を単元を通して持続させることができました。また、そうすることによって、「自分の考え」「おもちゃの作り方」などをどのような内容にするかだけでなく、どのようにして述べるか、どのような順序で説明するかという方法も学び取らせることができました。そのことが、日常生活の言語活動と結び付き、生きて働く言語能力の育成につながったと考えられます。
単元で身に付けさせたい指導事項を「書くこと」と「読むこと」に絞ったり、どちらかに焦点を当てたりした上で、指導事項にふさわしい言語活動を取り入れ、2つの領域を関連付けた指導を行いました。その結果、それぞれの指導過程の中で何を指導するのかを明確にすることができ、より確実な指導を行うことにつながりました。学習者である児童にとっても、本時に何を学習するのかが明確になり、本時のめあての達成に役立ったと考えられます。

指導事項を確実に身に付けるための言語活動を取り入れた指導法のポイントは、以下のとおりです。
ポイント
  単元で指導する指導事項を焦点化する。
  指導事項を確実に身に付けさせるためには、その単元で指導する指導事項を焦点化する必要があります。指導事項を焦点化することは、より確実な指導とその評価を行うことにつながります。
  言語活動を通して指導事項を指導する。  
  言語活動を通して指導事項を指導します。教材を指導するのではなく、教材で指導事項を指導します。
言語活動の設定の仕方については、右の「言語活動を取り入れた授業づくり」を参照ください。
言語活動例については、右の「言語活動参考事例」を参照ください。
言語活動参考
事例

イ 学習指導要領の趣旨を反映した学習評価の進め方
観点ごとの評価を単元の中でバランスよく実施することで、児童に付けたい力(ねらい)が明確になり指導が充実するとともに、無理なく児童の学習状況を評価することができました。
1単位時間の評価規準は、単元の評価規準を指導過程に即してより具体化して位置付けられているか、評価方法や評価の場面は適切か、指導過程や全ての児童を「おおむね満足できる」状況(B)に導くための手立ては適切かなど、「指導と評価の一体化」の視点から授業プランを見直し、授業中の評価を基に児童の指導・支援に当たったり、授業後の評価を次時の展開に反映したりすることができました。

学習指導要領の趣旨を反映した学習評価の進め方のポイントは、以下のとおりです。
ポイント
《評価規準の作成》  
  単元や1単位時間の評価規準と判定基準との関連を重視する。  
  単元の評価規準、1単位時間の評価規準、それに基づいた評価の判定基準の関連を重視することで、学習指導のねらいや指導方法が明確になり、児童への指導・支援も適切なものとなります。
  1単位時間の中に形成的評価とそれに基づく支援を具体的に設定する。
  1単位時間の中に形成的評価とそれに基づく支援を具体的に設定しておくことで、児童の学習状況の的確な把握とそれに基づく適切な個別支援ができるようになり、全ての児童を「おおむね満足できる」状況(B)に導くことが可能となります。
「評価の実際」では、評価の判定基準に基づいた児童のワークシートの記述を例示し、具体的な評価の進め方を提案しています。右の「評価の実際」にて、第6学年「『鳥獣戯画』を読む」〈光村図書6年〉での一例を参照ください。
評価の実際
国立教育政策研究所の「評価規準の作成、評価方法の工夫改善のための参考資料」に基づいた学習評価の基本的な考え方、学習評価の観点、評価規準の設定等については、右の「学習評価」を参照ください。
     
《ワークシートの工夫》  
  交流の際に相互評価した様子が分かるようにする。


交流の際に相互評価した様子が残るワークシートとなるように工夫することが必要です。交流したことで互いの考え方の違いに気付いたり、自分の考えを広げたりしたことが分かるようにします。
第6学年「『鳥獣戯画』を読む」〈光村図書6年〉での一例を参照ください。
  自己評価の欄を設ける。

ワークシートに自己評価の欄を設けることで、児童は、学習のめあてに対する自身の成果や学習のめあての達成の度合いを捉えることができます。また、教師にとっては、時間内に児童全員を見取れなかった場合の補完的な評価の資料とすることもできます。
   
ウ ICTの効果的な活用
《電子黒板の活用》
写真やグラフ等の資料を電子黒板に提示することで、学習への興味・関心をもたせ、児童の学習意欲を高めるとともに、「資料の示し方に着目しながら文章を読み取る」という学習の見通しをもたせることができました。また、学習の進め方や活動時に気を付けるポイントなど、学級全体での確認を確実に行うことができ、それぞれの学習活動をスムーズに進めることができました。




電子黒板に映し出した資料に印を付けたり、そこに書かれた言葉にサイドラインを引いたりすることで、映し出した資料と文章とを結び付け、それを基に文章を読み取らせることができました。その結果、児童は、資料の示し方を読み取ったり、筆者の説明の工夫を使ってつながりのある文章を書いたりすることができるようになるなど、読む能力や書く能力を向上させることに有効でした。
第6学年「未来に生かす自然のエネルギー」〈東京書籍6年下〉での一例を参照ください。
《書画カメラの活用》




「十分満足できる」状況(A)の児童のワークシート等の記述を書画カメラで提示し、具体的にどのような点について記述を工夫すればよいのかを児童に端的に示すことで、記述内容のポイントや改善点について理解させることができ、書く活動を充実させることができました。また、「おおむね満足できる」状況(B)の児童に、(A)へ高める指導を効率的に行うことができました。
第2学年「しかけカードの作り方」〈光村図書2年下〉での一例を参照ください。
児童のワークシートや説明カード等の作品を書画カメラで提示することで、その表現のよさを互いに共有させることができ、交流活動を充実させることにもつながりました。また、教材文における説明の工夫や筆者の意見の述べ方の工夫等を実際に使って記述することが、分かりやすい説明カードや意見文・解説文を書くことに有効であることを児童に実感させることができました。このように、書画カメラを活用することによって、児童の言語活動の充実を図ることにつなげることができました。

ICTの効果的な活用のポイントは以下のとおりです。
ポイント
  ICTの活用を手立てとして捉えるようにする。
  ICTについては、ただ使えばよいというわけではなく、いつ、どこで、何のために、どのように使うのか、学習指導のねらいを実現するために効果的であると考えられる場面を見定め、それを活用することが重要です。ICTの活用が目的ではなく、あくまでも手立てであることを認識して取り入れなければなりません。
   

(2)課題と今後の展望

本研究においては、平成23年度に作成した授業プランについて、学習評価とICTの効果的な活用の視点から見直しを図ってきました。研究を進めていく上で、次の2点が課題となりました。
  ・「国語への関心・意欲・態度」の評価方法である行動観察の評価の具体化
  ・指導内容や学習場面に応じたICT機器の選択
このような課題を踏まえ、今後は、更に適切な評価の方法や効果的な指導法について研究を深めていきたいと思います。

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