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平成24年度 佐賀県教育センター プロジェクト研究報告
 
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(2) |
昨今の特別支援教育の動向 |
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ア |
特別支援教育とは |
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平成19年4月から、「特別支援教育」が学校教育法に位置付けられ、すべての学校において、障害のある幼児児童生徒の支援を更に充実していくこととなった。文部科学省からの「特別支援教育の推進について(通知)」では、「特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである。 また、特別支援教育は、これまでの特殊教育の対象障害だけでなく、知的な遅れのない発達障害も含めて、特別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍する全ての学校において実施されるものである。さらに、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる社会の形成の基礎となるものであり、我が国の現在及び将来の社会にとって重要な意味をもっている」と示された。
一方で、世界的には障害の捉え方が大きく変化してきている。これまでは「WHO」(世界保健機構)が「ICIDH」(国際障害分類)においては、本人に障害の原因があるという捉え方をしていた。しかし、2001年に「ICF」(国際生活機能分類)において、障害の原因は、本人にだけではなく環境にもあるという捉え方をするようになった。
このICFの捉え方に基づくと、障害のある状態とは、その人を取り巻く環境次第で誰しもが成り得るということが考えられる。そのため、特別支援教育とは、障害の診断の有無にかかわらず、全ての幼児児童生徒に対して取り組むべき教育だと捉えることができる。 |
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イ |
高等学校の特別支援教育の現状 |
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高等学校においても、「特別支援教育の推進について(平成19年4月文部科学省初等中等教育局長通知)」や「障害者基本計画に基づく重点施策実施5か年計画」(平成19年12月障害者施策推進本部決定)、「教育振興基本計画」(平成20年7月閣議決定)等に基づき、校内委員会の設置、実態把握の実施、特別支援教育コーディネーターの指名、個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成・活用、さらに教職員研修など教員の専門性向上のための取組が進められている。
平成21年には「特別支援教育の推進に関する協力者会議の高等学校ワーキンググループ」が、「学科や課程の違い・入試制度・特別の教育課程の編成・就労支援など、障害児教育の土壌のないところで、どのように教師の意識改革を行い、特別支援教育を進めていくかが課題である」と報告している。
これらを受け、各高等学校での特別支援教育に関する取組が始まり、「平成23年度特別支援教育体制整備状況調査」では、高等学校について、校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名は、ほぼ100%に近い数値にまで高まっていると報告されている。ただ、個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成については20%を下回っており、学校内において一人一人の特性に応じた計画的な支援が十分に行われているとは言いがたい。
また、平成9年の文部省初等中等局長通知「高等学校の入学者選抜の改善について」では、「高校入試において障害のある生徒については、適切な評価が可能となるよう学力検査の実施に際して、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化を図ること」が示された。その内容には、入学試験やその他試験等の評価を実施する際にも、別室実施、出題方法の工夫、時間の延長、人的な補助など可能な限り配慮を行うことが含まれている。
さらには、平成23年度の大学入試センター試験からは、高等学校において計画的・継続的な支援が行われていることを条件として、「身体障害者等に係る受験特別措置」がなされ、障害別受験措置内容が受けられるようになっており、発達障害を有する生徒への具体的な支援の充実が求められている。
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ウ |
高等学校の特別支援教育の課題 |
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文部科学省は、「平成23年度特別支援教育体制整備状況調査」で、高等学校における特別支援教育に関する教員研修の受講状況は、幼稚園、小学校、中学校と比べると、低いことを報告している。このことから、高等学校の教育職員の、発達障害の特性を含む特別支援教育の理解が十分には進んでいないことがうかがえる。
そのため、高等学校の教育職員が、発達障害のある生徒の特性を正しく理解し、一人一人の特性に応じた支援についての理解を広げていくことが、高等学校において特に求められていると考える。
また、高校生の発達の段階の特徴として、自分だけが集団から取り出され、個別に指導を受けることは、自尊心を低くしていくとも考えられるため、支援には本人の意志を尊重しながら取り組む必要がある。
このようなことから、これからの高等学校における特別支援教育は、学校全体で組織的に全職員が取り組まなければならないものであり、生徒一人一人が困らない状態で学習・学校生活に取り組むことができるような支援を、全職員が一貫して提供していかなければならない。そして、発達障害の特性を有する生徒が必要な支援を受けることで、自己肯定感を高め、学習や学校生活に参加できるようになること、さらには、生徒が自分にとって必要な支援を理解し、進学先や就労先でも活用できるようにしていく力を身に付けていくことが必要となる。
また、発達障害の特性に応じた支援は、生徒一人一人のニーズに合わせた個別の支援だけではなく、 どの生徒も意欲的に参加できる「分かる授業」の学習環境の中で重要なものだと考えられる。そのために、発達障害の特性に応じた支援を授業の中のどのような場面で、どのような形で取り入れていくのか、また、学習活動の中で生徒の特性やニーズに応じた具体的な支援を、どのように提供していくことができるかが特別支援教育を推進していくための課題だと考えられる。 |
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