平成24年度 佐賀県教育センター プロジェクト研究報告 

 
 研究のまとめ
 
(1)
 1年次の成果
   
ア 高校2年生が抱える学習面での苦手さを明らかにすることができた。
 県内の高校2年生に対して実施した学習に関する意識調査の結果と、意識調査をした高校2年生の授業に関わっている教育職員に対して実施した意識調査の結果から、高校2年生の抱える学習面での苦手さは、生徒が抱えることと教育職員が捉えていることとが一致していることが分かった。
 さらに、それらの苦手さは、書くことと読むこと、聞くことと話すこと等、複数にまたがっていることが分かった。中でも特に苦手さを抱えていることが、自分の考えを表現すること、期限内に課題に取り組むこと、授業での説明を聞いて理解することであった。
   
イ 高等学校において、発達障害の特性を有する生徒に対する支援の状況を明らかにすることができた。

教育職員アンケートの結果から、発達障害の特性を有する生徒への具体的な支援の実施状況と実施に対する意識の実態を明らかにすることができた。

高等学校の教育職員の支援の現状として、集団の中で一斉に行える支援や準備を多く必要としない支援は、実際の学校生活で「現在実施している支援」であり、また「今後実施できそうである」という実施への意識が高い支援であることがうかがえる。一方、個別への対応や個別への準備を必要とする支援については、十分実施できずにいるということがうかがえる。

   
ウ 佐賀県内の高等学校の特別支援教育の現状について明らかにすることができた。
 

高等学校の特別支援教育の現状を明らかにするために、各学校の特別支援教育コーディネーター(以下コーディネーター)に対して、「コーディネーター歴」、「生徒の発達障害の特性の理解」、「コーディネーターとしての役割の推進状況」、「コーディネーターとしての役割の推進上の課題」「教育職員の特別支援教育の理解」について調査を行った。

この調査結果から、コーディネーターとして、学校内外の関係者や保護者との連携や調整等、多岐にわたる役割に専門的に携わっていることが明らかになった。そして、それらの役割を推進していくためには、「教育職員の理解」と「専門性を高める研修」の必要性を多く求められているという現状が分かった。また、コーディネーターの担当歴の回答からは、担当歴が1年目や2年目の教育職員が多いことも分かった。

   
エ 高等学校における学習支援に関する支援の手引きを整理することができた。
   教育職員の意識調査の結果を基に、高等学校の実際の学習場面について情報を高等学校の教育職員から聞き取りを行ったり、高等学校の学習支援に関わる文献を参考にしたりして、「書くこと」「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「見ること」「注意集中すること」「道具の管理」「課題への取組」について実施しやすいと思われる支援を中心に支援を整理することができた。
   
(2)
1年次の課題
   
    今年度の研究では、生徒が抱える学習面での苦手さを明らかにし、それに対する具体的な支援の在り方を提案することができた。しかし、高等学校での授業においてどのように活用するかということについては、授業を通して検証するまでには至らなかった。教育職員の意識調査の中で、多くの教育職員が多くの支援項目で「今後できそうだ」と回答したように、支援に対して教育職員の意識は決して低くはないと考えられる。
  そこで、授業の中で、効果的で且つ取り組みやすいような支援の在り方が今後の課題であると考える。
   
(3)
2年次の方向性
   
    2年次は、次の2点について研究を進めていく。
  1年次に整理した支援を参考に、発達障害の特性に応じた学習環境を取り入れて授業を行う。
授業での検証を通して、発達障害の特性に応じた学習環境づくりをまとめた手引書『高等学校における特別支援教育の学習環境づくり(仮)』を作成する。
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