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平成24年度 佐賀県教育センター プロジェクト研究報告 

 

(4)

 特別支援教育コーディネーター向けアンケートの質問別集計とその考察
特別支援教育コーディネーターに関する情報
(ア)
 校内での立場・兼務内容
[あなたの学校で、特別支援教育コーディネーター以外にどのような校務分掌を担当されていますか]
    コーディネーターを指名されている人のほとんどが、「教育相談担当」または、「学級副担任」の役割と兼務していることが分かる。最も回答の多かった「教育相談担当」は、コーディネーターの役割と同じく生徒理解や支援に関わる役割である。生徒の問題行動や課題について、教育相談と特別支援教育の両方の立場での見方が必要となっていると思われる。
  (イ)
特別支援教育コーディネーター担当歴
[これまで勤務された全ての学校を含めて、特別支援教育コーディネーターをどのくらい担当されていますか]
  コーディネーター担当歴について、これまでの経験も含めて1年目または2年目であると回答したコーディネーターは47人中33人であった。一方で、担当歴が5年目や6年目、8年目と回答したコーディネーターは、合わせて8人であった。この結果から、コーディネーターの経験歴が浅い教育職員が多いということが分かった。
(ウ)
コーディネーターとしての取り組みの状況
[あなたの学校で、特別支援教育コーディネーターとして取り組んでいることは、どのようなことですか]
 
 ① 生徒の支援に関する情報を共有する会議の企画運営  ② 生徒の実態把握
 ③ 校内研修の企画運営  ④ 個別の指導計画の作成  ⑤ 個別の教育支援計画の作成
 ⑥ 他機関(医療・福祉)との支援会議の企画・運営   ⑦ 他機関(医療・福祉)との連絡・調整
 ⑧ 中学校との引継・連絡  ⑨ 担任等に対する相談窓口  ⑩ 保護者に対する相談窓口 
 ⑪ その他  
 

コーディネーターとしての取組状況については、取り組んでいるものとして最も多かった項目は、「生徒の実態把握」についてであった。これは、全校のコーディネーターが回答していた。他に多かった項目は、「校内研修の企画・運営」(回答39人)、「生徒の支援に関する情報を共有する会議の企画運営」(回答36人)でありこの3つの項目は、主に生徒理解につながる内容である。

他にも、「担任等に対する相談窓口」(回答28人)など、日々の学校生活の中で、生徒への指導の悩み等を受けていることが分かる。一方、最も低かったのは、「他機関(医療・福祉)との支援会議の企画運営」(回答13人)であった。これについては、「他機関(医療・福祉)との連絡・調整」(回答21人)から見ると、他機関を交えた生徒の支援に関する共通理解を図る場が少ないことが挙げられる。

(エ)

担任の相談内容
[3.の質問で「⑨ 担任等に対する相談窓口」を選んだ方の相談内容]
 

担任等に対する相談を実施された学校(回答28人)で、実際どのような相談内容があったかについては、「学習」、「友人関係」、「進路」のどの項目についても多くの回答があり、担任等がコーディネーターに相談している内容は、多岐にわたっていると思われる。そして、「学習」、「友人関係」、「進路」の順に回答が多かったことも分かった。

「その他」としては、「生活での対応」、「支援体制」、「保護者連携」等が挙げられていた。

(オ)
保護者の相談内容
[3.の質問で「⑩ 保護者に対する相談窓口」を選んだ方の相談内容]
 

保護者に対する相談を実施された学校(回答18人)で、実際どのような相談内容があったかについては、「学習」、「友人関係」、「進路」の回答に、大きな差は見られなかった。コーディネーターとして、3つの内容について保護者からの相談活動を実施されていることが分かる。

「その他」として、「生活での対応」、「担任との連携」、「生徒の障害特性」等が挙がっていた。

特別支援教育の現状
(ア)
診断ありの生徒の有無の認識
[あなたの学校には、発達障害の診断のある生徒がいる]
  「発達障害の診断がある生徒の有無」については、45人中27人が「いる」と回答し、18人が「いない」と回答している。中学校からの引き継ぎで情報があった生徒については、把握されていると思われるが、診断があっても、入学の際には情報をふせているケースも少なくない。
  また、「いいえ」と回答した18人の教育職員とコーディネーター担当歴との関連を見ると、コーディネーター担当歴1年目の教育職員が9人、2年目の教育職員が5人だった。
   
(イ)
特性ありの生徒の有無の確認
[あなたの学校には、発達障害の診断はないが、発達障害の特性のありそうな生徒がいる]
    「発達障害の診断はないが、発達障害の特性のありそうな生徒の有無」については、35人が「いる」と回答し9人が「いない」と回答している。質問6での「診断のある生徒の有無」で「いる」の回答があった27人からすると、8人増えている。これは、専門的に発達障害の診断についての知識は曖昧なところはあるが、「特性のありそうな生徒」ということであれば、日頃の生徒の様子から気付きがあったのではないかと思われる。
    また、「いいえ」と回答した9人の教育職員とコーディネーター担当歴との関連を見ると、コーディネーター担当歴1年目の教育職員が4人、2年目の教育職員が4人で合わせて8人だった。
   
(ウ)
推進しようとする教育職員の意識の高まり
[あなたの学校では、特別支援教育を推進しようという教育職員の意識が高まっている]
 

特別支援教育を推進しようとする教育職員の意識の高まりについて、「はい」の回答は5人、「どちらかといえばはい」の回答は34人で、「はい」「どちらかといえばはい」を合わせると39人の回答があった。この結果は、コーディネーターとして見た教育職員の「特別支援教育を推進しよう」という意識は、高いと捉えていると思われる。一方、「どちらかといえばいいえ」「いいえ」の回答が合わせて8人であり、学校によっては、特別支援教育を推進するための課題があることがうかがえる。

(エ)
特性に対する教育職員の理解の状況
[あなたの学校では、発達障害の特性についての教育職員の理解が進んでいる]
 

発達障害の特性についての教育職員の理解について、「はい」の回答が4人、「どちらかといえばはい」の回答は35人で、「はい」、「どちらかといえばはい」を合わせると39人の回答があった。この結果は、コーディネーターとして見たときに、教育職員の発達障害の特性についての理解は「進んでいる」、「やや進んでいる」と捉えられている学校が多かった。一方「どちらかといえばいいえ」、「いいえ」の回答が合わせて8人であり、学校によっては、専門的な特性理解への働き掛けが必要であることがうかがえる。

また、質問8「あなたの学校では、特別支援教育を推進しようという教育職員の意識が高まっている」で「どちらかといえばいいえ」、「いいえ」と回答した8人の教育職員のうち4人が、この質問にも「どちらかといえばいいえ」、「いいえ」と回答していた。

(オ)
【特別な配慮を要する生徒】についての情報の共有
[あなたの学校では、【特別な配慮を要する生徒】についての情報を教育職員の中で共有できている]
 

発達障害の特性を有する生徒についての情報の共有については、「共有できている」の回答が15人、「どちらかといえばできている」の回答が26人で、合わせると41人の回答があった。これはほとんどの学校で情報の共有がなされていることがうかがえる。一方、「共有できていない」という回答したコーディネーターも人いた。

(カ)
【特別な配慮を要する生徒】の特性に応じた支援実施状況
[あなたの学校では、【特別な配慮を要する生徒】に対して特性に応じた支援をしている]
 

発達障害の特性を有する生徒に対する特性に応じた支援の実施状況は、「はい」の回答が11人、「どちらかといえばはい」の回答が27人で、合わせると38人であった。多くの学校で、特性に応じた支援が行われていると思われる。一方、「どちらかといえばいいえ」、「いいえ」と回答したコーディネーターが合わせて8人であり、これは、特性に応じた支援の具体的な内容についての情報を得る機会が必要であると考える。

(キ)
【特別な配慮を要する生徒】の保護者の協力状況
[あなたの学校では、【特別な配慮を要する生徒】の保護者からの協力が得られている]
 

発達障害の特性を有する生徒の保護者からの協力が得られているかについては、「得られている」の回答が6人、「どちらかといえば得られている」の回答が26人で、合わせると32人であった。一方、「得られていない」と回答したコーディネーターが14人いた。質問8、9、10の教育職員に対するコーディネーターの意識の高さと違い、保護者に対する意識は低く捉えられていると感じる。質問3の取組の実施状況でも、保護者相談の回答は他の項目と比較すると多くはなかった。高等学校において、保護者との連携を図ることへの課題があることがうかがえる。

(ク)
巡回相談で得られた【特別な配慮を要する生徒】への支援情報の有効活用
[あなたの学校では、巡回相談等で得られた【特別な配慮を要する生徒】の支援に関する情報を、有効に活用できている]
 

巡回相談等で得られた発達障害の特性を有する生徒の支援情報の有効活用の状況は、「はい」が5人、「どちらかといえばはい」が28人で、合わせると33人であった。この結果から、支援情報の有効活用については、おおむね活用されていると思われる。一方、「どちらかといえばいいえ」、「いいえ」の回答が、合わせると13人であった。

(ケ)
特別支援教育の推進の困難さの意識
[あなたの学校には多様な問題があり、特別支援教育を推進することが難しいと感じる]
 

特別支援教育の推進の困難さの意識について、「いいえ」の回答が11人、「どちらかといえばいいえ」の回答が27人あり、合わせると38人のコーディネーターが「推進すること」に対して困難さを大きくは感じていないという回答をしていることが分かった。一方、「どちらかといえばはい」、「はい」の回答が、合わせると9人であり、学校によっては、特別支援教育を推進することに何らかの困難さを抱えていることがうかがえる。

特別支援教育コーディネーターが役割を推進していく上で重要だと思われること
 

コーディネーターが役割を推進していく上で重要だと思われることについては、最も回答が多かった項目は、「教育職員の理解」(34人)であり、他の項目と比べて大きな差があった。これは、特別支援教育が生徒全体に関わるものであり、教育職員の理解が重要と考えられていることがうかがえる。また、次に多かった項目が、「専門性を高める研修」(29人)であり、これも、他の項目と比べて大きな差があった。このことから、日々の生徒への適切な支援につなげていくためには、教育職員一人一人の発達障害についての専門的な理解が必要であることがうかがえる。

一方、「他の校務の負担軽減」「特別支援教育コーディネーターの複数指名」「他校の特別支援教育コーディネーターとの情報交換」については、回答が他と比較して少なかった。

 
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