平成24年度 佐賀県教育センター プロジェクト研究報告 

 
(3)  特別支援教育コーディネーター業務の実態と意識についての考察
  特別支援教育コーディネーターの役割と取組の現状
     各高等学校の特別支援教育コーディネーター(以下コーディネーター)47人を対象に、校内での役割や指導場面での取組状況について調査をした。※同一校で複数名回答あり。
     コーディネーターとして校内で取り組んでいる内容の多かった項目は、「生徒の実態調査」(44人)、「校内研修の企画運営」(39人)、「生徒の支援に関する情報共有のための会議の企画運営」(36人)、「担任等に対する相談窓口」(28人)などが上がっていた。(詳しい調査結果はこちら)
     また、コーディネーターが行う担任や保護者等に対する相談内容については、学習、友人関係、進路の各内容について実際に相談活動が行われている。
       これらのことは、コーディネーターの役割は多岐にわたり、学校内外の関係者や保護者との連携・調整等においての役割を担っており、これらの役割について、校内で専門的な立場として位置付けられていることが分かる。
     
  コーディネーターから見る高等学校の特別支援教育の現状や課題
 
(ア)
高等学校における特別支援教育の現状
     高等学校における特別支援教育の現状を把握するために、「発達障害の診断のある生徒の有無」や「診断はないが特性のありそうな生徒の有無」、「教育職員の特別支援教育理解」についての質問を行った。
 

「発達障害の診断のある生徒の有無」については、27人が「診断のある生徒がいる」と回答している。「発達障害の診断はないが特性のありそうな生徒」の有無については、35人が「特性のある生徒はいる」と回答している。このことは、はっきりとした発達障害の診断のある生徒だけでなく、学校の生活の中から発達障害の特性を有する生徒という視点で生徒理解が行われていることが分かる。

 

また、 教育職員の特別支援教育に関する理解の現状を把握するために、「推進への意識」「発達障害の特性の理解」「【特別な配慮を要する生徒】についての情報の共有」「特性に応じた支援」「保護者からの協力」「巡回相談の情報の有効活用」「推進困難への意識」について質問をした。どの項目についても、「はい」「どちらかといえばはい」(「推進困難への意識」においては、「いいえ」「どちらかといえばいいえ」)の回答数が多かった。このことから、多くの高等学校で特別支援教育については意識されていると考えられる。

   一方では、各質問項目において「いいえ」「どちらかといえばいいえ」(「推進困難への意識」においては、「はい」「どちらかといえばはい」)の回答もあった。また、「推進への意識」と「発達障害の特性の理解」について、「いいえ」「どちらかといえばいいえ」の回答が重複している学校もあった。このことから、高等学校において特別支援教育の理解や支援体制づくり、職員への理解啓発等について、課題として抱えている学校があることがうかがえる。
      さらに、校内での推進の役割を担っているコ―ディネ―タ―の経験歴を見ると、これまでの学校での経験を含むコーディネーター歴が1年目や2年目の教育職員が47人中33人で、全体の7割を占めていた。このことから、校内で中心となって特別支援教育を推進する役割であるコーディネーターを、コーディネーターとしての経験の浅い教育職員が担っていることが分かる。
     これらのことから、高等学校において特別支援教育を推進していくためには、教育職員の中での共通理解や専門性を高める研修、保護者や専門機関との連携など多岐にわたる内容をどう進めていくかが課題であると共に、コーディネーターとして経験を積み、校内で推進していくことが課題であると考えられる。
     
 
(イ)
特別支援教育コーディネーターの役割推進上の課題
 

コーディネーターとして役割を推進していく上で、必要だと思う内容について調査した。回答が多かった項目は、「教育職員の理解」(回答34人)、「専門性を高める研修」(回答29人)であった。これらは、日々の実践の中で発達障害の特性を有する生徒について支援するためには、発達障害についての正しい理解や具体的な支援をすることが必要であると捉えられていると考えられる。

 

     この「教育職員の理解」「専門性を高める研修」の項目は、教育職員アンケートの中の「高等学校において効果的な支援をするために必要だと思われること」の質問についても回答が多かった。このことから、この「教育職員の理解」「専門性を高める研修」の項目は、高等学校において特別支援教育を推進する上での課題だと思われる。
     そこで、2年次は、プロジェクト研究委員会において1年次の研究のまとめを基にした資料等を作成し、各高等学校の校内研修で活用してもらうようにコーディネーターに対して情報を提供していきたい。
   
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