「個別の教育支援計画」作成支援ソフト

1 「個別の教育支援計画」作成支援ソフトについて

 発達障害のある児童生徒への支援については、平成20年3月に公示された学習指導要領において、「(支援の)計画を個別に作成することなどにより、個々の児童の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うこと」と示されている。

 本県においては、平成15年3月に答申された「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」以降、「個別の教育支援計画」及び「個別の指導計画」が作成され、支援が行われている。しかし、各学校において、その様式が異なったり、次学年、上級学校へ支援内容が引き継がれなかったりするなど、幼児児童生徒への支援が継続的に行われないことが課題として挙がっている。

 そこで、これまでに本センターで作成していた「個別の教育支援計画」及び「個別の指導計画」の様式を見直すとともに、作成作業が効率的に行えるように、パソコンの表計算ソフトを活用したもの(以後「作成支援ソフト」)を考案した。「作成支援ソフト」の利点として以下のようなことが考えられる。

 (1) 多くの情報を効率的に入力ができる
 (2) 職員間で情報の共有化ができる
 (3) 長期に渡る幼児児童生徒の情報を知ることができる
 (4) 幼児児童生徒の転学や進学時の引き継ぎが容易にできる
 
2 「個別の教育支援計画」作成支援ソフトの構成
「作成支援ソフト」は、主に3つのシートから構成されている。

 1つ目は、当該幼児児童生徒の生育歴や特性、本人・保護者の願い、学校以外の機関の利用状況などを知ることができる「フェイスシート」である。

 2つ目は、当該幼児児童生徒の生活や学習のチェックリストから見えてくる幼児児童生徒の状態像をとらえたり、それぞれの特性に配慮した支援プランを選択して考えたりできる「アプローチシート」である。

 3つ目は、単年度、または、学期ごとの当該児童生徒の目標や具体的な支援の内容を記入し、定期的に振り返りをしたり、日々の特徴的な出来事を記録として残したりできる「アクションシート」である。

 この3つのシートは、年度ごとに作成する必要があるが、「フェイスシート」は前年度までの情報に加筆することで、当該幼児児童生徒の長期的な情報を共有することができるようになる。その他の2つのシートにおいても、前年度分から引き継ぐことができるようになっている。

 それぞれのシートの記入例については、以下のとおりである。クリックをすると拡大した各シートを見ることができる。

 なお、「アプローチシート」においては、作成補助シートとして「学習・生活の理解シート」、「支援案作成シート」がある。
   【フェイスシート】  【アプローチシート】  【アクションシート】
     

手続きの詳細

来所相談の申込みから面接日の決定まで

1 保護者の方から、担任の先生に教育センターでの相談の申し出をします。

保護者
「教育センターでの教育相談を受けたいのですが・・。」

担任の先生
「わかりました。」
2 担任の先生は、保護者からの申し出があったことを校長先生に伝えます。

担任の先生
「教育センターでの教育相談を受けたいそうです。申し込みをお願いします。」

校長先生
「わかりました。」
3 校長先生(管理職の先生)が、教育センターに電話で申し込みます。 (電話相談専用番号:0952-62-2189)
※これで正式な申し込みとなります。(文書等は必要ありません。)

校長先生 (管理職の先生)
「教育センターでの教育相談をお願いします。」

教育センター
「わかりました。担当を決めて面接予定日を担任の先生に連絡します。」
4 校長先生(管理職の先生)からの申し込みの後、教育センターから、担任の先生に、電話で面接予定日の連絡をします。

教育センター
「○月○日の○時からか、◎月◎日の◎時からのどちらが都合がよろしいですか。」

担任の先生
「保護者に聞いてみます。」
5 担任の先生は、保護者に連絡を取り、教育センターから連絡された面接日時を伝え、都合のいい日時を選んでもらいます。

担任の先生
「○月○日の○時からか、◎月◎日の◎時からのどちらが都合がよろしいですか。」

保護者
「◎月◎日◎時からがいいです。」
6 担任の先生が決定した面接日時を教育センターへ連絡します。

担任の先生
「◎月◎日◎時からがいいそうです」

教育センター
「わかりました。お待ちしています。」

特別支援教育に関するこれまでの研究

  【平成22年度】

発達障害のある児童生徒の特性に応じた支援の在り方
 -読み書き等のつまずきに対する「見る力」を
  高めるトレーニングの活用を通して-


 本研究では、読み書き等につまずきのある子どもに対して行った、「見る力」を高めるトレーニングについて紹介しています。また、指導者や保護者が、学習や生活の観察から、読み書き等につまずきのある児童生徒の「見る力」を知るためのチェックシートも紹介しています。
   【平成21年度】

小・中学校の連携による、発達障害のある児童生徒の
特性に応じた支援の在り方
-通常学級における学びやすい学習環境づくり-

 本研究では、通常学級において、発達障害のある児童生徒が、自分のできる力を発揮して学習に取り組むことができるようにするための支援の在り方や授業づくりの考え方について紹介しています。また、小学校から中学校への支援の継続を図るための「個別の教育支援計画」作成支援ソフトの使い方についても紹介しています。

  【平成19年度】

一人一人に寄り添った支援の在り方についての研究
 -通常学級において学習に困難を来している児童生徒の
  特性に応じた支援を通して-


 本研究では、教科書や黒板の文字を読むことやノートに文字を書き写すこと,考えをまとめて話すことなどで困っている児童生徒の学習の難しさを理解し、児童生徒の悩みに寄り添い,児童生徒が心地よく学習や活動に参加できるような支援の方法を紹介しています。

 
   【平成18年度】

児童生徒の学校生活へのよりよい適応をめざして
 -子どもの状態像に応じた支援に役立つ
  アセスメントシートの提案-


 本研究では,県内小・中学校の通常の学級における集団不適応の実態を把握するとともに,学級や集団,学習,対人関係等に不適応を示す児童生徒について集団へのよりよい適応を促すための支援の在り方を探ります。具体的には,児童生徒の理解のための個別アセスメントシートを作成・活用し,支援に当たる者が連携を図りながら評価と対応を総合的に行うための支援方法について,実践を交えて紹介しています。

LDについて

●基本的には全般的な知的発達に遅れはありません。
  LD児は、知能検査などの結果から知的発達の遅れは見られません。ですから、学習指導上の配慮は必要ですが、基本的に通常の学級で学習をします。
●聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する能力のうち、特定の能力の習得に著しい困難があります。
  LD児には、個人内の能力にアンバランスがあります。例えば、「計算問題は得意だが、文章題や図形問題は苦手」、「話して表現することは上手だが、ひらがなを読んだり書いたりすることがとてもむずかしい」などです。
●原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されています。
  LD児は、見たり聞いたりした情報を受け止め、整理し、関係づけ、表出する過程の情報処理をつかさどる中枢神経系のごく一部が、適切に働いていないのではないかと考えられています。
●視覚・聴覚の障害や知的障害、情緒障害、環境の要因は直接の原因ではありません。
  LD児の学習時における様子は、視覚・聴覚障害、知的障害、情緒障害のある子どもに似ていることがあります。しかし、それらは直接の原因ではありません。また、家庭や学校を含む生活環境、しつけや指導の様子も、直接の原因にはなりません。ただし、LDのことをよく分からずに不適切なかかわりを持つことによって、二次的な問題を引き起こすことがあります。

子どもたちへの支援

工夫の視点 工夫の方法
指示の出し方の工夫 ○話し手に注目させる
○短い言葉で伝える
一度に伝えることはひとつにして、タイミングのよい声かけを工夫しましょう。
指導内容の工夫 ○指導内容を細かく分ける
 (スモールステップ)
その時間の学習のスケジュールやめあてをメモにして、はじめる前に子どもにわたしておくなど、見通しが持ちやすくなるようにしましょう。
課題の工夫 ○できる課題に取り組ませる
○励まし、自信をもたせる
失敗した経験を積み重ねやすい子どもたちです。できる課題に取り組み、できた経験や満足できる経験を積めるようにしましょう。
板書の工夫 ○文字量を減らす
○色や大きさを考える
文字と文字、行と行の間のスペースの空け方や、色使いの工夫でずいぶん見やすい板書になります。また板書をノートに書き写すまでのちょっとの間でも内容を覚えておくことが難しい子の場合、早く消してしまうと写せなくなるので、消すタイミングにも注意しましょう。
書くときの工夫 ○大きいマス目を使う
○問題数を少なくする
書くことそのものが苦手な子は、書くスペースが狭いだけで勉強がおっくうになるものです。できるだけ書くことの負担を減らし、勉強に意識を向けやすいようにしましょう。
座席と教室環境の工夫 ○指導者の近くにする
○掲示物をシンプルにする
○気が散る原因を減らす
聞くことが難しい子には窓の外の音が邪魔になることがあるので、窓から離れて、またモデルとなる子がいたほうがいい場合は、最前列よりも、前から2~3列目にしてみましょう。
指導形態の工夫 ○TTを効果的に活用する
○個別の学習時間を設ける
担任だけが指導に当たるのではなく、チームを組んで支援にあたるなど、学校全体でこのような子どもたちにかかわる体制作りをするようにしましょう。
係活動の工夫 ○活動内容を分かりやすくする
○毎日活動のある係にする
その子にとってやりがいがあり、みんなに感謝される係や、その子の興味が生かせる係を選びましょう。
宿題の工夫 ○子どもに応じて調整する 宿題の量を調節したり(漢字100字→50字)、その子が取り組みやすい別の宿題に変えたりして、ひとりでも家庭での学習に取り組めるような工夫をしましょう。

LDの子どもたち

 

子どもたちの様子

対応のヒント

聞き間違いが多い

・みんなが静かになってから話す
・話す前に、いくつのことを話すか伝える
・話は区切って、一度に長い話はしない
・実物を見せながら話す

内容を分かりやすく筋道を立てて話すことが苦手 ・ゆとりを持って、ゆっくり聞く
・「それは○○ということだよね」と丁寧に確認する
・話したいことを絵や箇条書きにして見せる
形を写すことや地図を描くことがむずかしい ・書きたい図だけを拡大する
・重なった図形には、あらかじめ色をつけてやる
・トレーシングペーパーを使う
文中の言葉や行を抜かしたり繰り返して読んでしまう ・拡大コピーしたものや、行間を広くしたプリントを用意する
・読んでいる行だけが見えるように、他の行をかくす
・読み取りたいキーワードや語句のまとまりにマーカーで印を付ける
順番を待つのがむずかしい ・「順番を守ります」と約束し、声に出して言わせる
・順番カードを作って、全員に持たせる
・めあてカードを作って、守れたらシールを貼るなどする
学用品をよくなくす ・机の中に区切りを付けたトレイを置く
・持ち物にはっきりと名前を書く
・持ち物に片付ける場所を書いてみる
・いつも使うものをリストにして持たせる
相手の気持ちや立場を理解するのが苦手 ・「○○さんは、□□と言いたかったんだよ」と具体的に説明する
・場面に合う言い方を、具体的に説明する