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◇ 「個別の教育支援計画」作成支援ソフトの概要

 1 「作成支援ソフト」について
 発達障害のある児童生徒への支援については、平成20年3月に公示された学習指導要領において、「(支援の)計画を個別に作成することなどにより、個々の児童の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うこと」と示されている。
 本県においては、平成15年3月に答申された「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」以降、「個別の教育支援計画」及び「個別の指導計画」が作成され、支援が行われている。しかし、各学校において、その様式が異なったり、次学年、上級学校へ支援内容が引き継がれなかったりするなど、幼児児童生徒への支援が継続的に行われないことが課題として挙がっている。
 そこで、これまでに本センターで作成していた「個別の教育支援計画」及び「個別の指導計画」の様式を見直すとともに、作成作業が効率的に行えるように、パソコンの表計算ソフトを活用したもの(以後「作成支援ソフト」)を考案した。「作成支援ソフト」の利点として以下のようなことが考えられる。
 
(1) 多くの情報を効率的に入力ができる
 
(2) 職員間で情報の共有化ができる
 
(3) 長期に渡る幼児児童生徒の情報を知ることができる
 
(4) 幼児児童生徒の転学や進学時の引き継ぎが容易にできる
   
 2 「作成支援ソフト」の構成
 「作成支援ソフト」は、主に3つのシートから構成されている。
 1つ目は、当該幼児児童生徒の生育歴や特性、本人・保護者の願い、学校以外の機関の利用状況などを知ることができる「フェイスシート」である。
 2つ目は、当該幼児児童生徒の生活や学習のチェックリストから見えてくる幼児児童生徒の状態像をとらえたり、それぞれの特性に配慮した支援プランを選択して考えたりできる「アプローチシート」である。
 3つ目は、単年度、または、学期ごとの当該児童生徒の目標や具体的な支援の内容を記入し、定期的に振り返りをしたり、日々の特徴的な出来事を記録として残したりできる「アクションシート」である。
 この3つのシートは、年度ごとに作成する必要があるが、「フェイスシート」は前年度までの情報に加筆することで、当該幼児児童生徒の長期的な情報を共有することができるようになる。その他の2つのシートにおいても、前年度分から引き継ぐことができるようになっている。
 それぞれのシートの記入例については、以下のとおりである。クリックをすると拡大した各シートを見ることができる。
 なお、「アプローチシート」においては、作成補助シートとして「学習・生活の理解シート」、「支援案作成シート」がある。
 
【フェイスシート】
【アプローチシート】
【アクションシート】
   
 3 フェイスシートの構成
 このフェイスシートでは、幼児児童生徒が、幼稚園等に入園してから高等学校を卒業するまでの様子を知ることができるシートである。園や学校以外の専門機関の利用状況や幼児児童生徒の生育歴、興味・関心、特性等を確認することができ、これまでの状況を踏まえた支援を考えることが可能となっている。
  入力項目の詳細については、以下のとおりである。
  画像の上にカーソルを合わせると実際入力した例が表示される。
   

資料1 フェイスシート上段

   資料1の左の欄には、幼児児童生徒の「基礎情報」を入力する。この情報は、他のシートに反映され、入力した情報を再度別のシートで入力する手間が省けるようになっている。
  右の欄には、「教育・療育・相談等の状況」を入力する。これまで在籍してきた園や学校での様子や下学年の様子を問い合わせする際の窓口となる者が記されることで、幼児児童生徒の情報を得やすくしている。また、関係機関の利用状況を知ることで、関係機関との連携を図りやすくなっている。
   

資料2 フェイスシート中段

   資料2の左の欄には、「幼児・児童・生徒の願い」と「保護者の願い」を入力する。年齢や学年、学校種等、発達段階に応じて願いは様々である。その願いに寄り添い、実現するためには、どのような支援を行うかを計画する必要がある。また、その願いが将来の具体的な姿を見据えたものであれば、実現のための段階的な支援が求められるようになる。支援を行う上で必要となる幼児児童生徒や保護者の願いを知ることができるようになっている。
  右の欄には、「障害・疾病等の特徴」を入力する。幼児児童生徒の具体的な障害や疾病の様子を知ることで、支援の方向性を見出す手掛かりとすることができるようになっている。また、支援の充実を図る際に、障害や疾病等を専門的に扱う機関との連携が取りやすくなり、情報交換を行いながらよりよい支援を考えることができるようになっている。
   

資料3 フェイスシート下段

 
 資料3には、「幼児・児童・生徒の様子」を入力する。時間の経過に沿って幼児児童生徒の様子の変化を見ることができる。その際、【得意・好きなこと】と【苦手・嫌いなこと】に分けて入力する。これは、幼児児童生徒の得意なことや好きなことを知ることで、彼らのもつ興味・関心や得意とするできる力を率先的に活用することができ、支援の具体的な方法に利用することができる。さらに、苦手なことや嫌いなことを知ることで、不得手とすることを無理に取り組ませて、失敗経験を増やすことを避けることができる。
 支援は、得意とすることやできることを活用したもので構成していくことが大切であり、そのための情報を得やすくなっている。
 「その他」の項目には、習い事や検査結果の数値、特記事項を入力する。入力されたことを参考に、客観的な検査結果に基づく支援を考えたり、習い事を活用した幼児児童生徒の活躍の場を設けたりすることができるようになっている。
 4 アプローチシートの構成
 このアプローチシートは、年度当初から夏休みごろまでに作成されるシートである。このシートでは、日頃の学習や生活の様子の観察から見取れる幼児児童生徒の特性についてや、学びの要素別に質問項目を構成した「学習・生活の理解シート」を使って、幼児児童生徒の特性を把握することができるようになっている。さらに、幼児児童生徒の実態から支援の方向性を、データベース化された「支援プラン作成シート」を活用して、幼児児童生徒の長期的な目標を作成することができるようになっている。
  入力項目の詳細については、以下のとおりである。
  画像の上にカーソルを合わせると実際入力した例が表示される。
 

資料4 アプローチシート上段 

   資料4の下の欄には、1年間の支援を考える基礎とするために、前年度からの引継ぎ内容や1学期の様子から見える幼児児童生徒の様子を記入する。その際、【得意・好きなこと】と【苦手・嫌いなこと】に分けて入力をする。これは、上記のフェイスシート下段と同様の考え方で入力を行う。フェイスシートにおいては、2学年をまとめて入力を行うため、ここでは、さらに詳しい情報を記入できるようになっている。
 

 

資料5 アプローチシート中段

 資料5には、「学校・生活の理解シート」から分かる幼児児童生徒の状態像や考えられる要支援項目が表記される。これは、下の資料6の「学校・生活の理解シート」において、日頃の学習や生活の様子の観察から見取れる幼児児童生徒の特性についてや、学びを要素別に細分化してそれぞれの到達度についての質問項目に回答することで自動集計され、表示されるようになっている。
 グラフには、10の学びの要素を項目とし、レーダーチャートとして表記される。グラフの示す形が内側に寄った形なるほど、支援の必要性が高いことを示す。
 また、要支援項目については、「学校・生活の理解シート」でチェックをした際に、「できないことがある」または「全くできない」と回答した項目が表記されるようになっており、これを参考に、支援の方向性を考える手掛かりとすることができる。
   
資料6 学習・生活の理解シート(一部抜粋)
 
   
資料7 アプローチシート下段
 
 資料7には、上段に表示された情報を基に、「幼児児童生徒の実態から考えられる支援の方向性」を入力する。その際、支援の方向性を考えるための材料として、下の資料8の「支援プラン作成シート」を活用する。これは、ステップ1からステップ4までの段階を通して、支援を必要とする領域を決め、その中で気になる状況を取り上げ、その要因となる課題を想定し、具体的な支援の方法を作成することができるものである。それぞれのステップに必要な情報は、あらかじめデータベース化されており、項目の中から選択するだけで支援プランを考えることができるようになっている。データベースの中から必要な情報を選択することで、容易に支援の方向性を見出すことができるようになっている。さらに、データベースの情報よりも詳細な情報を直接入力することもできるようになっている。
 「支援プラン作成シート」で入力された情報は、すぐに資料7に反映され、それらを基に1年間あるいは、ある一定の期間の長期的な目標や具体化した支援内容を考え、入力できるようになっている。
 
資料8 支援プラン作成シート(一部抜粋)
   

 5 アクションシートの構成
 このアクションシートは、学期ごとの目標や支援内容、日々の幼児児童生徒の様子などを入力するシートである。短期的な目標を設定し、そのための具体的な支援に取り組み、幼児児童生徒への支援やかかわりを評価し 、次の目標設定や支援の修正を行うことができるようになっている。また、幼児児童生徒の日々記録を入力し、それを振り返ることで、気になる行動や問題行動等の要因を探ったり、支援やかかわりのヒントを得たりすることができるようになっている。
  入力項目の詳細については、以下のとおりである。
  画像の上にカーソルを合わせると実際入力した例が表示される。
   
資料9 アクションシート上段
   資料9には、アプローチシートで作成した長期目標とそれに対する主な支援内容が表示される。それを基にして、短期目標やそれを達成するための具体的な支援内容を入力する。学期ごとに設定する短期目標を具体的な場面での行動目標として示すことで、その達成のための支援を計画することができるようになっている。また、学期の終わりには、その支援を評価し、気付きを記入することで、次の目標設定や具体的な支援の修正、改良を行うことができるようになっている。
 このように支援を見直していくことで、一人一人に応じた支援が実現できるようになっている。
   
資料10 アクションシート下段
   資料10には、「幼児・児童・生徒の日々の記録」を入力する。気になる行動、それに対応した担任や担当者等のかかわり、その後の子どもの様子を記録として残しておくことで、当該幼児児童生徒への対応を検討することができるようになっている。また、取り組んだ支援によって望ましい行動ができた場合にも記入をしておくことで、それを活用し、その後のかかわり方の参考にすることもできるようになっている。
   

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最終更新日: 2010-03-23