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◇ 研究の概要

 1  研究のテーマ

小・中学校の連携による、発達障害のある児童生徒の特性に応じた支援の在り方

〜通常学級における学びやすい学習環境づくり〜

 2  研究テーマ設定の趣旨

 発達障害のある児童生徒は、環境の変化に対応しにくい特性や認知の問題等を抱えていることが少なくない。そこで、卒業や入学を経て、学習の進め方や指導方法の異なる新しい環境に入る際に、個別の教育支援計画や個別の指導計画を生かして個々の特性を理解し、個人の能力が十分に発揮できるような支援を取り入れる必要がある。そのような支援が行き届いている状況こそが「学びやすい学習環境」であり、通常学級の中で、発達障害のある児童生徒の長所が伸長される学びの場となる。
  第1年次においては、県内すべての小学校6年生と中学校1年生の学級担任を対象に「教育的配慮に関するアンケート」を実施し、気になる児童生徒への具体的な支援内容の66項目について、支援を行う際に指導者が抱く難易度や支援の実施状況の把握を行った。その結果から、支援項目の中で、小学校で実施されていたものが中学校で継続して実施されていない等、支援に対する考え方や支援の実施状況に違いが見られた。

併せて、中学校1年生(14%を抽出)を対象に「生活・学習アンケート」を実施し、気になる生徒(発達障害のある生徒、保護者から発達障害ではないかと相談を受けた生徒、担任から発達障害の特性があると思われている生徒)とその他の生徒に分けて集約を行った。その結果、中学校1年生の多くが、学校生活に何らかの楽しみを感じており、これが学校行事への参加意欲や友達づくりへの意欲、登校意欲につながっていた。さらに、中学校から新たに学習する教科や教科担任制等の新しい学習環境に期待し、学ぶ意欲も高かった。

一方、学習場面においては、気になる生徒のほとんどが、学習にかかわる能力(読む、書く、聞く、話す等)の全部又は一部において苦手さを感じていた。また、その他の生徒の中にも、学習にかかわる能力において、何らかの苦手さを感じている者がおり、支援の必要性を感じた。

  これらのことから、授業において、通常学級に在籍する発達障害のある児童生徒や学習の中で何らかの苦手さを感じている児童生徒に対して、学習課題を解決できるような支援を行うことが必要と考える。それは、それら児童生徒のできていること(以下「できる力」と表記)に着目した支援である。

  例えば、話を聞いて話の内容を理解することが苦手であるが、絵や写真を見ながらであれば、その内容を理解することができる児童生徒に対しては、視覚的な支援を取り入れることで、話の内容を理解できるようにする。また、うまく話をまとめて説明することは苦手であるが、単語や短い文であれば答えることができる児童生徒に対しては、発表の際に自分の思っていることや意見を伝えるための話型を提示することで、それを使ってをすることができるようにする。

  このように、授業において発達障害のある児童生徒が自分のできる力を発揮して学習に取り組むことができるような支援を行うことが必要であると考えた。 本研究は、発達障害のある児童生徒の特性に応じた支援を小・中学校で継続して行うために、小・中学校が情報を共有できる「個別の教育支援計画」及び「個別の指導計画」の作成を行い、小・中学校の適切な連携を図る手立てを探った。また、発達障害のある児童生徒の特性に配慮し、できることを生かした支援を取り入れた授業の実践に取り組んだ。

 3  研究の内容と方法

(1)
研究の内容 
    通常学級に在籍する発達障害のある児童生徒の特性を理解し、それに配慮した授業づくり
    小・中学校が連携して情報を共有できる個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成
    小・中学校が連携して取り組む「発達障害のある児童生徒の特性を理解し、それに配慮した支援」の在り方についてのまとめ
(2)
研究の方法 
    発達障害のある児童生徒が、通常学級で学ぶ際の留意点や授業づくりの視点を明らかにし、それを踏まえた授業や学習環境の調整、教材教具の開発を行い、その有効性を検証した。
    作成された個別の教育支援計画や指導計画を見直し、小・中学校が連携して支援を行うために必要な内容が書かれているかをまとめ、活用しやすい「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」の書式や記入の仕方を探った。
    発達障害のある児童生徒の特性を理解し、それに配慮した授業の実践例を示し、小・中学校の連携を図る支援の有効性をまとめた。

 


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最終更新日: 2010-03-23