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◇ 学びやすい学習環境づくり

 1 発達障害のある児童生徒を取り巻く現状
  平成20年3月に公示の「小学校学習指導要領」及び「中学校学習指導要領」には、障害のある児童生徒の指導について、『個々の児童生徒の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うこと』と示されている。
  具体的には、中学校学習指導要領解説総則編に、『読み書きや計算などに困難があるLD(学習障害)の生徒についての国語科における書き取りや数学科における計算の指導、外国語科における読み書きの指導など、教師の適切な配慮により対応することが必要である。さらに、ADHD(注意欠陥多動性障害)や自閉症の生徒に対して、話して伝えるだけでなく、メモや絵などを付加する指導などの配慮も必要である。』と記されている。
  このように、発達障害のある児童生徒に対しては、今まで以上に一人一人の特性に応じた支援を行うことが必要となっている。
 
 2 佐賀県小・中学校学習状況調査に見られる児童生徒の実態(H21.4月実施)
(1)
  佐賀県小・中学校学習状況調査の結果に見られる傾向( 概要版Web  詳細版PDF )
    ア 「授業が楽しい」と回答した児童生徒は、「授業が分かる」と回答した割合も高く、平均正答率
  も高い傾向がある。
イ 小・中学生で、読書時間が長い児童生徒の平均正答率は、高い傾向にある。
ウ 小学生で、文章を書くときに、今までに習った漢字をできるだけ使おうとしている児童の平均正
  答率は、高い傾向にある。
エ 中学生で、数学の問題の解き方が分からないときに、あきらめずにいろいろな方法を考えてい
  る生徒の平均正答率は、高い傾向にある

 今回の学習状況調査は、小学校5年生、中学校1、2年生の全児童生徒に対しての全数調査であり、ほぼ佐賀県の児童生徒の実態を反映しているものと考えられる。
 そこで、佐賀県小・中学校学習状況調査の結果から見られる上記のア〜エについて、特別支援教育の視点からとらえ直してみると、次のようなことが考えられる。

   

  「授業が楽しい」と回答した児童生徒は、「授業が分かる」と回答した割合も高く、平均正答率も高い傾向がある。
       どのような授業においても、教師の指示があり、様々な活動が行われている。しかし、一斉の指導において、ある一つの伝え方だけでは十分に理解をすることができない児童生徒もいる。そのため、彼らは、理解が不十分なまま活動を進めることになり、指導者が意図した活動を行えず、結果的に十分な肯定的評価を得ることができないことがある。このような児童生徒が授業に楽しさを感じているとは考えにくい。
 児童生徒にとって、楽しいと感じる授業とは、「授業に参加している」、「活動ができた」を実感できる授業と考える。ここでいう、「授業に参加している」児童生徒の姿とは、自分のできる力を発揮して学習に取り組んでいる姿であり、「活動ができた」児童生徒の姿とは、ある活動を首尾よく成し遂げることができたり、活動をやり遂げるためのその子どもなりの最善の方法が身に付いたりした姿と考える。つまり、授業においてこのような姿がみられる児童生徒は「授業が分かる」と考える。これらのことから、「授業に参加している」、「活動ができた」と実感できる授業を行っていく必要がある。

      小・中学生で、読書時間が長い児童生徒の平均正答率は、高い傾向にある。
       読書をすること、つまり、文字(ひらがなや漢字等)で書かれている文章を読むことで様々なものの理解につながる。しかし、文字を読むことが苦手な児童生徒にとっては、その機会の大部分を奪われていることになる。自らの苦手さのため、積極的に読書活動に向かう意欲をもてずにおり、読書をしようとしても字面を追うことに精一杯で、内容を理解することができず、興味・関心を抱けないことが多いと思われる。
  このように考えると、多くの漢字が使われている文章を読むことが苦手な児童生徒に対して、彼らの文字自体を読む力(例えば、ひらがなは読むことができる)を把握し、それを使いながら読み進めていくことができるような支援を行うことで、読書への興味・関心を喚起することができるようになると考える。

   

 小学生で、文章を書くときに、今までに習った漢字をできるだけ使おうとしている児童の平均正答率は、高い傾向にある。
        習得した漢字を使うことで、伝えたい内容を簡潔に、分かりやすく表現することができる。しかし、手本(教科書等)に書かれている漢字を記憶することに苦手さのある児童生徒にとっては、今見ていた形を頭の中に留めることができずにいるため、何度も手本を見て確認し、書くことに時間がかかってしまうことがある。また、線の交わりや位置関係、長短をとらえることができずいるため、似ているけれど形が微妙に違う漢字を書くこともある。そのため、肯定的な評価を得ることが少なく、自ら進んで漢字を使いながら文章で表現したいという意欲をもてずにいると思われる。
  このように考えると、漢字を習得する際に、ただ書いて覚えるといった画一的な方法よりも、その児童の特性に合わせた方法で取り組んでいくことで学びやすくなり、覚えた漢字を使って表現しようとする意欲を高めることができると考える。

   

  中学生で、数学の問題の解き方が分からないときに、あきらめずにいろいろな方法を考えている生徒の平均正答率は、高い傾向にある
       数学においては、四則計算の確実な定着が必要となる。小学校段階で、四則計算が十分にできていれば、おおむね数学の学習に前向きに取り組むことができる。しかし、筆算を行う際に、どうしても位取りがうまくいかず、位を取り違えて計算をしてしまったり、九九を覚える際に「にいちがに」「ににんがし」というような聴覚的な記憶がうまくできず、かけ算を正確にできなかったりする生徒もいる。これらの生徒にとっては、数学の学習に取り組む際に、四則計算に時間を要してしまい、多様な考え方に発展させることができずにいると思われる。
  そこで、文章問題を解く際に、四則計算に時間を要してしまう場合は、九九表を手元に置いたり、計算機の使用を認めたりすることで、答えを出すことができるようにする。このように、本来の学習のめあてを達成することだけに集中できるような支援を行っていく必要があると考える。
     
(2)
  佐賀県小・中学校学習状況調査に見られる児童生徒の学校適応の実態
      佐賀県小・中学校学習状況調査の学校適応のアンケートで、「学校での生活は楽しい」と「勉強が好き」の項目について、小学校第5学年、中学校第1学年、中学校第2学年の3学年を比較すると、次のようになった。
  3学年とも「学校での生活は楽しい」において、「はい」「どちらかといえばはい」と回答している割合が、8割を超えている。特に、中学校第1学年では、9割の生徒がそのように回答しており、中学校生活に期待し、楽しさを感じていることが分かる。一方、「勉強が好き」と回答している割合は、学年が上がるにつれて低くなっている。小学校第5学年においては、6割近くが「勉強が好き」と回答しているが、中学校第2学年では3割を下回る数値となっている。
 これは、学年が上がるにしたがって、学習の内容が抽象化し、複雑になることが一因と考えられる。そのために、学習内容の理解や課題の解決が十分に図られず、「勉強を好き」と感じることが少なくなったのではないかと考える。

(3)
  佐賀県小・中学校学習状況調査に見られる児童生徒の教科の理解度
      各教科の理解度(授業は分からないと回答した児童生徒の割合)を小学校第5学年、中学校第1学年、中学校第2学年で比較した。小学校第5学年においては、「あまり分からない」「ほとんど分からない」と回答している児童が7〜16%おり、中学校第1学年は10〜19%、中学校第2学年は、15〜31%と学年が上がるにつれて増加している。特に、中学校第2学年においては、国語以外の教科では、24%を上回る数値となっており、約1/4の生徒が理解不十分な状態であることが分かる。中でも、中学校から新しく始まった英語においては、中学校第2学年4月の段階において、31%の生徒が、学習内容を十分に理解しないまま、授業中を過ごしている。
  このような結果から、それぞれの学年における学習内容が十分に理解できずに、日々の学校生活を送っている児童生徒がいることが分かった。同様に、学習場面において何らかの苦手さのある発達障害のある児童生徒においても、学年が上がるにつれて次第に理解の困難さが増加していることが推測される。学校生活の大半を占める授業の中で、すべての児童生徒が、「授業に参加している」、「活動ができた」と実感できる授業を行っていく必要がある。

 3 学びやすい学習環境づくりを支える視点
  前述した、平成21年度における佐賀県小・中学校学習状況調査の結果及び考察を受け、学びやすい学習環境づくりを行うための3つの視点を以下のように考えた。

 視点1 だれもが「授業に参加している」「活動ができた」と感じることができる授業の設定
 視点2 「学ぶ楽しさ」が味わえるような支援の充実
 視点3 豊富な成功体験の積み重ねによる学習意欲の喚起


  これらのことを基にして、学習環境を豊かなものにしていくことが求められている。それぞれの視点について、次のように詳しく考えてみた。

 

視点1 だれもが「授業に参加している」「活動ができた」と感じることができる授業の設定

      これまでに述べてきたように、通常学級の授業において「授業に参加している」「活動ができた」と実感できずにいる児童生徒がいる。しかし、このような児童生徒は、すべての授業、時間においてその内容や活動が分からない状態でいるのではなく、部分的にはできていたり、分かったりすることがある。また、指示されたやり方や伝え方ではうまくできないが、違う方法でならばできることもある。
  そこで、学習のある部分に苦手さを感じている児童生徒の特性を把握し、その児童生徒ができる力を発揮し、学習や活動に取り組めるよう支援を充実していくことが求められる。例えば、聞くことに苦手さを感じる児童生徒は、支援者が全体に口頭で指示等をする際に、伝えたい内容を簡潔にまとめ、板書することで、その内容を理解することができるようになる。また、文字を読むことに苦手さを感じる児童生徒は、教科書やプリントを拡大したり、ふりがなを付けたりすることで読むことができ、そこに書かれている内容の理解につなげることができる。活動を見通すことが苦手だったり、作業を終えることができなかったりする児童生徒は、手順書などを提示したり、活動を細切れにし、一つ一つ解決していく過程を準備したりすることで、最後まで活動に取り組むことができるようになる。
  このような支援は、発達障害のある児童生徒のみならず、同様の苦手さのある児童生徒にとっても十分に活用できる支援であると考える。そのため、通常学級の授業において、できることを生かした支援を取り入れていき、だれでも活用できるような場を設けていけば、すべての児童生徒が、「授業に参加している」「活動ができた」と実感することができるようになると考える。

 

視点2 「学ぶ楽しさ」が味わえるような支援の充実

   

だれもが「学ぶ楽しさ」を味わうためには、「授業に参加している」「活動ができた」と実感することが大切である。そのためには、学習や活動のめあてを達成すること以外の困難さや抵抗感を排除できる環境を整える必要がある。
  例えば、「漢字を読む」ことにつまずきや苦手さを感じている児童生徒にとっては、「文章を読み内容を理解する」活動をする際に、抵抗感を抱きながら参加していることが多いので、漢字にふりがなを付けることで、学習のめあてとなる「内容を理解する」ことだけに集中して取り組むことができるようにする。また、「九九を覚える」ことにつまずきや苦手さを感じている児童生徒にとっては、「算数の文章問題を解く」ことに抵抗感を抱きながら参加していることが多いので、九九の表を手元に置いたり、計算機の使用を認めたりすることで、学習のめあてとなる「算数の文章問題を解く」ことだけに集中して取り組むことができるようにする。
 このような手立てをとることで、児童生徒はその時間のめあてを達成することができ、「学ぶ楽しさ」を味わうことができる。授業の中で、一人一人の特性に応じた支援を通して、「学ぶ楽しさ」を味わえるようにすることで、発達障害のある児童生徒にとどまらず、様々なつまずきや苦手さを感じている児童生徒にとっても、学びやすい環境になると考える。

 

視点3 豊富な成功体験の積み重ねによる学習意欲の喚起

      学習に何らかの苦手さを抱える児童生徒にとっては、これまでの学校生活において、どちらかといえばうまくできなかったり失敗経験が多かったりして、「授業に参加している」「活動ができた」と実感することが少なかったと思われる。そのため、主体的に学ぼうとする学習意欲が失われ、それが新たな苦手さを生むという悪循環に陥ってしまい、「学校が面白くない」「学校に行きたくない」と感じることにつながっていくと思われる。
 逆に、「授業に参加している」「活動ができた」と実感できた児童生徒は、「学ぶ楽しさ」を味わい、学習意欲の向上といった好循環が期待できる。一時間一時間の授業の中で、成功体験を積み重ねていくことで、もっと学びたいという気持ちを喚起することができると考える。
   
 4 児童生徒の学習を支える「学びの要素」
  発達障害のある児童生徒をはじめ、何らかの苦手さを抱える児童生徒一人一人を見ると、それぞれの得意なところ、苦手なところは様々である。これまでの学習指導においては、彼らの苦手な部分に焦点を当て、それをできるようになるまで繰り返し取り組ませるような指導が多く見られた。苦労を重ねながらできるようになることも方法の一つであるが、今できることを活用し、学習課題を解決していくことこそが、学習意欲の高まりにつながると考える。
 そこで、資料1に示すような「学びの要素」を観点とし、学習の中で何らかの苦手意識をもつ児童生徒の実態把握を行い、授業場面における支援を考えるようにする。
※ここでいう「学びの要素」とは、学習や活動の中で必要とされる基礎的な能力と考える。
 

資料1 「学びの要素」を取り入れた児童(小学校高学年)の実態把握の一例

    児童生徒の学びやすい学習環境を整えるためには、彼ら自身がもつ特性を十分に理解する必要がある。
 「学びの要素」別に考えられる具体的な様子、要因、支援は以下のとおりである。
 
(1)
  • 聞くこと
   
話を聞くことが苦手な児童生徒の様子
話による指示に対して、聞き漏らしがあったり、聞き誤りがあったりする。
聞いたことをすぐに忘れてしまう。
単語等の短い言葉では理解できるが、文章としての内容を正しく理解することができない。
個別の話は聞き取れるが、集団の中で話を聞くと、正しく聞き取れない。
   
要因として考えられること
耳から入る情報を記憶しておくことが苦手である。
耳から入る情報を整理したり、関連付けたりすることが苦手である。
話す人へ注意を向けることが苦手である。
   
支援のポイント
耳からの情報だけでなく、文字やイラスト等の目から入る情報を付け加える。
情報をできるだけ簡潔に分かりやすい内容にして伝える。
聞いた内容をメモをして、書き留めるように促し、一緒に確認をする。
肩に触れたり、視線を合わせたりして、注意を引き付ける工夫をする。
     
 
(2)
  • 話すこと
   
自分の考えを伝えることが苦手な児童生徒の様子
筋道を立てて話せず、思いつくままに話をする。
話の内容や表現が、年齢よりも幼い。
話したいことを表現する言葉が見付からず、言葉に詰まってしまうことが多い。
聞き手が聞き取りやすい声の大きさや速さで話すことが難しい。
   
要因として考えられること
話したい内容が頭の中でまとめることが苦手である。
身に付けている言葉の数が少ない。
話すことの失敗経験が多く、話すことに抵抗感を感じている。
自分が発する声の大きさや速さに対する意識が低い。
   
支援のポイント
リラックスして、楽に話せる場や雰囲気をつくる。
話しやすい話題を取り上げ、話す機会を増やす。
手掛かりとなる話題を示したり、5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように)を示す。
子どもの話の内容を考え、不十分な表現を補いながら、話したいことをまとめる。
話し方のモデル(話型)を示す。
声の大きさや速さを意識しやすいように数値化したものを示す。
     
 
(3)
読むこと
   
文章を読むことが苦手な児童生徒の様子
文中の語句を抜かしたり、行を飛ばしたりする。
「〜でした。」を「〜でしょう。」と文末などを違う言葉に勝手に読み変えてしまう。
文章の内容を正しく読み取ることができない。
年齢相応のひらがなやカタカナ、漢字を読むことが難しい。
縦書き、横書きで読みやすさが変わる。
   
要因として考えられること
読んでいるところを目で追えない。
句読点を意識して、文章や内容を把握することが苦手である。
視覚でとらえた文字とその言葉の意味がつながらない。
文と文の関係が分からない。
目の動きの上下の運動、左右の運動で得意不得意の差が大きい。
   
支援のポイント
指で押さえながら読んだり、文節ごとにアンダーラインやスラッシュなどの区切りを引いたりする。
1行だけ見えるシートを利用し、読む部分だけが見えるようにする。
読めない漢字には、ふりがなを付けるようにする。
縦書き、横書き両方の教材を準備して、得意な方を選択できるようにする。
     
 
(4)
  • 書くこと
   
字を書くことが苦手な児童生徒の様子
板書などを書き写すときに時間がかかる。
マス目や行からはみ出して書いたり、バランスが悪い読みにくい字を書いたりする。
独特の筆順で書く。
当て字など、間違った字を書く。
似ているけれども、間違った字を書く。
特殊音節(拗音、撥音等)の表記を間違って書く。
縦書き、横書きで書きやすさが変わる。
   
要因として考えられること
位置関係をつかむことに弱さがあり、文字の形が正しくとらえられなかったり、視写する部分がどこか分からなかったりする。
細部への注意を払えず、漢字の一画一画まで正確にとらえられない。
見たものをしばらくの間覚えておくことが苦手である。
目や手の動きの上下の運動、左右の運動で得意不得意の差が大きい。
   
支援のポイント
マス目を大きくしたり、書く分量を調節したりする。
マス目に補助線を入れたり、書く枠に罫線を入れたりする。
写すところを目立たせる。
文章や文字を薄く書いたものをなぞる練習をする。
筆順を分かりやすした視覚的な支援をする。
縦書き、横書き両方の教材を準備して、得意な方を選択できるようにする。
     
 
(5)
計算すること・推論すること
   
算数の学習が苦手な児童生徒の様子
簡単な計算や暗算が難しく、時間がかかる。
数量や単位の理解が難しく、数量関係が分からない。
文章題の意味を理解できない。
筆算をすると、位取りがずれる。
図形を描くことが難しい。
三角定規などの用具がうまく使えない。
   
要因として考えられること
数概念や量概念が身に付いていない。
計算のルールが分からない。
形などの細かい部分の違いが分からない。
文章の意味を理解することが難しい。
位置関係をつかむ力が弱い。
指先を使った細かい動きが難しい。
目と手の協応がうまくいかない。
   
支援のポイント
イメージしやすいように半具体物を利用したり、実際の体験を取り入れたりする。
計算の順番を絵や言葉で示す。
聞いたことや見たことなど体験に基づいた問題を設定する。
位取りを色別に明示するなど、分かりやすくしたマス目を用いる。
1枚のプリントの問題数を少なくする。
用具の使い方や手順を、子どもが分かりやすい方法で提示する。
     
 
(6)
  • 粗大運動
   
全身運動が苦手な児童生徒の様子
手と足、右手と左手等の動きがぎこちない。
ボールを両手又は片手で捕ったり、投げたりすることがうまくできない。
タイミングよくボールをつくこと(ドリブル)がうまくできない。
自転車に乗れない。
   
要因として考えられること
経験が少ないため、身体をどう動かすのか分からなかったり、力加減が分からなかったりしている。
視覚的な困難さがあり、目と手の協応がうまくいかない。
リズム感覚が弱く、同じ動作の繰り返しがうまくできない。
平衡感覚が弱く、ふらつく。
   
支援のポイント
ビデオや鏡を使い、自分の体の動きの様子を見ることができるようにする。
「お手玉」等の道具を用いて、目と手の協応を図る。
バランスボールやバランスボードを用いて、平衡感覚を養う。
同じリズムで、手をたたいたり膝の屈伸運動をしたりする動きを取り入れる。
     
 
(7)
  • 微細運動
   
細かい作業が苦手な児童生徒の様子
ボタンを掛けることがうまくできない。
箸の持ち方がぎこちなかったり、箸で食べ物をうまくつかめなかったりする。
文字の大きさがそろわない。
   
要因として考えられること
視覚的な困難さがあり、目と手の協応がうまくいかない。
小さいものをつまんだり、箸や鉛筆を持ったりして、操作することが難しい。
位置関係をつかむことに弱さがあり、文字の形がうまくとらえられない。
   
支援のポイント
マジックテープを使い、2つのものを合わせる練習をしたり、スナップでとめるようにして、小さいものをつまむ練習をしたりする。
ボタン掛けの支援具を用いて、楽しみながら練習できるようにする。
支援具を用いて、正しい持ち方で箸を使ったり、鉛筆で書けたりする喜びを味わう中で、段階的に支援を減らしていく。
     
 
(8)
  • 注意・集中
   
活動に集中して取り組むことが苦手な児童生徒の様子
課題や遊びなどで、集中し続けることが難しい。
気が散りやすい。 簡単な誤り(ケアレスミス)をする。
課題を順序立てて行うことが難しい。
指示に従えず、最後までやり遂げられない。
周りの人と協調できず、行動がぎこちなく、落ち着いて行動できない。
   
要因として考えられること
対象に注意を向けることが苦手である。
対象に注意を向けることができるが、その時間が短い。
見通しをもつ力が弱い。
やらなければならないことと、やりたいことの優先順位がつけられない。
   
支援のポイント
「お話しします」などと言ったり、課題にマークを付けたりして、注意を引き付ける。
抽象的な言葉は避け、行動しやすいように具体的な言葉で指示をする。
始めに作業手順を図示するなど、全体の見通しがもてるようにする。
やり遂げられるだけの量や内容を考慮した課題にする。
教室の外の景色が見えやすい廊下側や窓側などの座席を避ける。
小さな目標を立てて、達成できたら褒めることを繰り返す。
     
 
(9)
  • 多動性・衝動性
   
落ち着いて活動することが苦手な児童生徒の様子
授業中などに突然、不用意に離席する。
静かにじっとしていなければならないときに、過度にしゃべったり、 動いたり、走り回ったりする。
手足をそわそわ動かしたり、もじもじしたりする。
質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう。
他の人がしていることをさえぎったり、邪魔したりする。
順番が待てない。
   
要因として考えられること
活動の見通しがもちにくい。
やらなければならないことと、やりたいことの優先順位がつけられない。
自分を理解してもらえてないため、反抗的な態度になっている。
   
支援のポイント
指示は具体的な言葉で、短く、はっきりと言う。
「5分間黙っている」「○○を3分間する」等のように具体的な目標を示す。
本人が活動する場所や位置を認識しやすいように、目印になるものを用意する。
「挙手し、指名された人だけが発言できる」等の明確なルールを子どもと決める。
課題を細切れにして、一つの活動を短くし、活動に変化をもたせる。
よい行動を取ったときに、その場で褒めて、良好な関係を構築していく。
     
 
(10)
  • 社会性
   
集団行動や友達とのかかわりが苦手な児童生徒の様子
仲の良い友達がいなかったり、友達のそばにはいるが一人で遊んでいたりする。
いろいろなことを話すが、その時の状況や相手の感情・立場が理解できない。
話が一方的で、相手とうまく会話を進めることが難しい。
球技やゲームをするとき、仲間と協力することができない。
自分なりの独特な日課や手順があり、変更や変化を嫌がる。
   
要因として考えられること
相手の意図を理解できなかったり、相手の表情から感情を読み取りにくかったりする。
相手との話からその意味や意図することに共感できず、会話がうまく進まない。
本人なりの強いこだわりがある。
   
支援のポイント
本人の好きな遊びを取り入れる。
子どもの言いたいことや気持ちを代わりに表現する。
困ったときは、先生を呼びに来ることを伝えておく。
トラブルを解決する際には、話し言葉だけでなく、文字やイラストを併用して伝える。
順序立てて、簡単明瞭に話すように促す。
相手が話している間は、相手に話し掛けてはいけないなど会話のルールを伝える。
   
   

 


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最終更新日: 2010-03-23