▲上へ

活用力に培う国語科学習の在り方

ホーム 研究概要 授業づくり視点 実践事例 参考資料 研究事業トップ

中学校第2学年の実践(2) 


 1 単元名  説得力のある依頼状を書こう

          「職場体験をさせてください」

  教材名 1 相手を説得する手紙文(メール)の例

            (「レインツリーの国」新潮社  有川 浩)

        2 依頼状モデル

        3 職場体験学習「事業所からのアンケートのまとめ」

        4 自作の依頼状        

社会生活で「依頼状を書いて活動する」場面を想定し、効果的な書き方を学び取る授業を構想しました。相手を説得するには、相手の立場や心情を推し量る「想像力」を必要とし、自分の依頼の切実さを相手に理解させる「表現力」も必要とします。国語科の指導目標に直結する学習単元です。

 2 学習内容の系統性

 3 単元とその指導について

生徒観

教材観

相手の立場を想像したり、相手を思いやって行動したりすることは苦手である。 相手の立場、相手の心情、相手との親密度などの異なる手紙(メール)を用意して比べ読みさせ、それらの違いに配慮して依頼状を書く必要があることを学ばせる。
手紙という表現形式での「書く活動」は不慣れである。
個人差はあるものの、学級全体の読書量は少ない。
 
依頼の目的や内容の明らかな手紙と相手に行動を促したり決意させたりする説得力のある手紙とを比べ読みさせ、説得力のある手紙の書き方の工夫を学ばせる。
 
話し合いのスキルの定着が十分でなく、意欲的に話し合い活動に参加できない生徒もいる。
   

指導のポイント!

「学び」の方法を意識させる場の工夫

知識・技能を意図的に活用させる場の工夫

学習計画表を立てて見通しをもつ。
社会生活に必要な手紙を書くことを取り上げ、「説得力のある依頼状を書く」という言語活動を設定する。職場体験学習の受け入れを断られた業者に対し、なんとか受け入れを了承していただくようお願いする手紙を書く活動を通して、説得力のある文章の書き方を学ばせるのがねらいである。
「個人」→「グループ」→「学級」での学習活動で、考えを広めたり、深めたり、まとめたりする。

学習活動を振り返らせ、整理させる場の工夫

グループでの話し合い活動や発表を通して、説得力のある手紙を書くポイントをまとめる。
学習計画表を用いて、1時間ごとの振り返りとして学んだことを書かせる。また、「説得力のある手紙を書くポイント」として身についた力を整理させる。
比べ読みをすることで、共通点・相違点に気付かせたり、説得力のある文章の書き方の工夫を学び取らせたりして、手紙を書くときに生かすようにする。
 
 
評価の観点を用いてグループ内で手紙を評価する活動を通して、自分の手紙を振り返らせる。

 4 単元の指導目標

  依頼状を書く相手の立場や心情を考えて、内容を取捨選択し、説得力のある文章を書けるようにする。
  依頼状を書く相手と自分との親密度を考えて、適切な表現方法を用いた文章を書けるようにする。

 5 評価規準

国語への関心・意欲・態度

自分の願いを聞き入れてもらうために依頼状を書こうとしている。【B 書くこと イ】
 
書く能力
 
相手の立場や心情を考えて、依頼する目的や内容を明確に書いている。【B 書くこと イ、ウ】
書いた依頼状を互いに読み合い、よりよいものにするためのアドバイスをしている。【B 書くこと オ】

伝統的な言語文化と

国語の特質に関する事項

相手との親密度を考えて依頼状の表現形式や敬語表現などを適切に用いている。【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項(1) イ(ア)(オ)】

 6 単元の計画(全4時間)

主な言語活動

主な学習活動

評価とその方法

話し合い活動 教材1を読んで相手を説得する文章の工夫を考える。
ワークシート @ A
生徒に示した記入例   A例
ア  教材1を読んで工夫を見付けようとしている。【観察・ワークシート】
 
比べ読み
本時へGO!
教材1と教材2を比べ読みし、説得力のある手紙の書き方のポイントをまとめる。
参考プリント@(前時の学習のまとめ)
ワークシート
生徒に示した記入例
イ  教材1と教材2を比べ読みし、共通点と相違点を考えている。【観察・ワークシート】
説得力のある手紙(依頼状)の作成

 

教材3「事業所からのアンケートのまとめ(参考プリントA」を読み、具体的に場を設定し、自分で手紙を書く。
参考プリントA
ワークシート
生徒に示した記入例
アイエ 教材3を読んで具体的な場面を想定し、手紙を書いている。【観察・ワークシート】
作成した手紙を用いての交流活動 手紙を読み合い、アドバイスをし合う。
よりよいものにするためのアドバイスをしている。【観察】

 7 授業を終えて

授業での取り組みについての考察<成果と課題>

「学び」の方法を意識させる場の工夫

成果 学習計画を立てることで、見通しを持って学習に取り組むことができた。
「個人」→「グループ」→「学級」という学習形態を取り入れたことで、一人一人が自分の考えを広げたり、深めたり、まとめたりすることができた。以後の単元でも生かすことができそうである。
課題 既習の知識・技能を十分に身に付けていないために学習活動に取り組むことができない生徒に対して、学習の意義を実感させるモデル文を準備する必要がある。

知識・技能を意図的に活用させる場の工夫

成果 比べ読みで出された共通点を「説得力のある手紙を書くポイント」としてまとめることで、手紙とメールのそれぞれの良さを理解することができ、実際に手紙を書くときも活用できた。
比べ読みで相違点をまとめることで、比べる際の観点を明らかにすることができた。また、表現の工夫や留意点として実感することができ、実際に手紙を書くときに活用できた。

学習活動を振り返り、整理する場の工夫

成果 毎時間、学習計画表に学習のまとめや感想として学んだことを記入させ、学習の達成状況を自己評価させた。このような振り返りをさせたことが、その時間に学んだこと、身に付けたことを自覚させることができ、次に時間の学習内容をより明確に意識することにつながった。さらに、学んだことを、「説得力のある手紙を書くポイント」としてまとめたことで、身に付けたことをより具体的に自覚させることができた。
「説得力のある手紙を書くポイント」としてまとめたことを基に評価の観点を設定し、書いた手紙を相互評価し、アドバイスし合うことで、知識・技能の定着を図ることができた。

Copyright(C) 2008 SAGA Prefectural Education Center. All Rights Reserved.
最終更新日: 2009-03-27