これからの国語科学習指導について提案します!!


平成20年度授業提案@(小学校第4学年の実践)               


1 単元名  読み語りを通して、登場人物の

           気持ちの移り変わりを考えよう 

            〜教えてあげる、ごんってこんなきつねだよ〜


    教材名 「ごんぎつね」 新美南吉

   出  典 『新編 新しい国語』 4年下 東京書籍
                                                                          

自分が読み取ったことを書きまとめた「読み語り」を家族にプレゼントすることを目的に、提案形式の話し合いを中心とした授業を仕組み、児童が一人の読み手として、物語を十分に読み味わうことができる授業展開を考えました。

2 学習内容の系統性

3 単元とその指導について

児童観

教材観

これまで物語文の学習で音読の工夫を考えることや心のグラフを作ることで場面の移り変わりや登場人物の気持ちの変化を読み取っていく経験をしている。徐々に叙述に着目した読みができるようになってきている。 本教材は、心を通じ合わせることのできない悲しさを描いている物語である。児童は、登場人物のとった行動が意外な展開になってしまうことに驚きと悲しみをもって読み進めていくことができる。
スピーチタイムにおいて相手の話を受けて話すことや話し手の一番言いたいことは何かなど相手の思いを受け取って話すことができるためにはまだまだ支援が必要である。
 
本教材は「わたし」が語り手となり伝承風に書き進められている。独話や心内語などを用いて登場人物の心情が描かれ、さらに美しい情景描写があるなど生き生きとした表現が随所に見られる。
朝の読書では冒険ものなど長文の本を読めるようになってきている。今までに戦争に関する本や小林豊さんの作品を読み広げた経験はもっている。心のふれあいや悲しみを描いたような感動作品に触れた経験は少ないと思われる。
話すことが好きな児童が多く、発表をよくする。反面、じっくりと書くことで考えを深めることを苦手としている児童が多い。
     

指導のポイント!

「学び」の方法を意識させる場の工夫

 

知識・技能を意図的に活用させる場の工夫

新美南吉の作品に親しむことや家族にごんのことを教える「ごんぎつね読み語り」をプレゼントするという目的意識を持たせ、話し合いを基に学習計画を立てさせる。   児童には、家族にごんがどんなきつねか教えることができるようにみんなで話し合って読みを深めていくことを意識させて授業に臨ませる。
授業の進め方(スピーチ提案の授業)を知らせることで学習に対する見通しと意欲をもたせる。   場面ごとに「ごんはどんなきつねか」を話し合うことで、ごんの心情や心の動き、場面の移り変わりを読み取らせる。
    話し合い活動では、2〜3名の児童が自分たちの考えを提案し、みんなで検討していく提案型の授業形態をとる。その際、自分の考えの基となる言葉や事柄などに着目した理由付けを大切に扱っていく。お互いが意見を交流することで友達の考えのよさを認め、また自分の読みを確かなものとさせていく。

学習活動を振り返り、整理する場の工夫

分かったこと、思ったこと、新しく発見したことの観点を与え、ワークシートに記入させる。提案グループが発表することでみんなで話し合ったことのよさを感じ取らせる。    
単元の終末では「読み語り集」を紹介し合い、感想を交流する「ごんぎつね読み語り会」を行い、今までの学習を振り返りながら自分のよさや友達の考えのよさに気付かせる。   話し合いで読み深めたことは、「ごんぎつね読み語り」として、ある日のごんを知らせる文に書きまとめさせる。書きまとめる方法は、手紙(家族に知らせる)、詩、吹き出しなど自分の好きな方法を選ばせる。
さらに、家族に読み語りをプレゼントし、感想をもらうことで達成感を味わわせる。    

4 単元の指導目標

場面の移り変わりに注意しながら、登場人物の性格や気持ちの変化、情景などについて叙述を基に想像しながら読むことができるようにする。
「ごんぎつね読み語り会」や読書紹介を通して、新美南吉の作品世界を味わうことができるようにする。

5 評価規準

国語への

関心・意欲・態度

進んで「ごんぎつね読み語り」を作ったり、新美南吉の作品を読んだりしている。【「C読むこと」 A内容(1)カ】
話す・聞く能力 ごんがどんなきつねなのか理由を挙げながら自分の考えを話したり、自分と友達の考えを比べながら友達の話を聞いたりしている。 【「A話すこと・聞くこと」 A内容(1)イ オ】
書く能力 読み深めたことを基に、ごんの性格や気持ちなどを紹介する文を書いている。【「B書くこと」 A内容(1)ア】
読む能力 場面の移り変わりに注意しながら、ごんや兵十の性格や気持ちの変化、情景について叙述を基に想像して読んでいる。 【「C読むこと」 A内容(1)ウ】
読み取った内容について、自分の考えをまとめ、一人一人の考え方に違いがあることに気付いている。【「C読むこと」 A内容(1)オ】

6 単元の計画(全16時間)

主な言語活動
主な学習活動

評価とその方法


@
A
BC
話し合い活動

物語を読んで心に残ったことを発表する。


あらすじをつかみ、心に残ったことを中心に感想を書いている。【ワーク・発言】
意味調べ

新出漢字や語句について知る。


分からない言葉を見付け、推測したり、辞書で調べたりしている。
【観察・教科書の書き込み】
学習計画づくり

学習の計画を立てる。

ごんの行動に着目し、章ごとの出来事をつかんでいる。【ワーク・発言】

D
EFGH
I
J
本文の読み取り
・言葉のマップ作り
・話し合い活動(グループ)
・提案型の話し合い活動

ごんがどんなきつねか章ごとに考えをもつ。

ごんの行動や心内語に着目して、どんなきつねかを考えている。 【ワーク・発表】

ごんの境遇や性格をつかみ、いたずらをしているごんの気持ちを読み取る。(第1章)



ごんが人間とかかわりをもちたくて、いたずらをしていることを読み取っている。 【ワーク・発言・語り】

兵十の母親の葬式を目にしたごんの様子や、あなの中で考えたことを基に、後悔するごんの気持ちを読み取る。 (第2章)

自分のいたずらと兵十の母の死とを結び付けて考え、後悔するごんの優しさや素直さを読み取っている。 【ワーク・発言・語り】

ごんが兵十に償いをしに行く様子を読み取り、兵十へ思いを寄せていくごんの気持ちを読み取る。 (第3章)

 

本時へGO!

兵十への償いの内容や繰り返しの言葉に着目し、ごんの兵十への気持ちの深まりを読み取っている。
【ワーク・発言・語り】
 

兵十と加助の後をつけていくごんの様子や神様のしわざと言われたときのごんの様子から、ごんの期待感ややるせなさを読み取る。(第4.5章)


2人の会話を聞いているごんの様子や心内語、2人とごんの位置関係などから、兵十に気付いてもらいたいというごんの心情を読み取っている。
【ワーク・発言・語り】

ごんと兵十の心の通じ合いについて感想を交流する。 (第6章)



兵十の言動を手がかりに、ごんの思いは兵十に届いたのか自分なりに考えている。
【ワーク・発言・語り】

読み語りをまとめる。


「ごんぎつね読み語り」を振り返って楽しみながらまとめている。
【観察・語り】

KLMNO
読み語り会

「ごんぎつね」読み語り会をする。


今までの学習を振り返り、「ごんぎつね」について自分の読みを語っている。【発言】
読み広げ
・調べ活動
・読書紹介

新美南吉さんの他の作品を読み味わう。


新美南吉の生い立ち等を進んで調べている。 【観察】
作品のよさが伝わるように発表している。 【スピーチ】

・新美南吉の作品を進んで読んでいる。 【読書カード】

7 授業を終えて

授業での取り組みについての考察<成果と課題>

「学び」の方法を意識させる場の工夫

成果 「ごんぎつね読み語り」を作って、家族にプレゼントするという相手意識・目的意識をもたせたことで、児童は主体的に学習に取り組むことができた。また、読み深めの学習が終わるごとに「読み語り」が1ページずつ増えていくので、児童は喜びを感じながら楽しく学習することができた。また、書き方も手紙や俳句、短歌など自分の好きな方法を選ぶことができたことも楽しく学習に取り組むことができた一因であろう。
一人学びにおいては、これまでの学習で取り組んだことのある言葉のマップづくりを活用したことで児童が主体的に読む手助けとなり得たようだ。読み深めにおいては、一貫した課題であったことと日ごろ行っているスピーチタイムの形式を活用した授業展開であったことで、児童は学び方法を理解しやすかったと思われる。
課題 一人学びの方法を児童が身に付けるためにも、年間を通して一貫した読み方の基礎的・基本的な技能を意識させる必要があると感じる。今回は言葉のマップづくりや日ごろ行っているスピーチタイムの形式で授業を進めたため、活動ではなく読み取ることに集中して取り組むことができた。

知識・技能を意図的に活用させる場の工夫

成果 自分なりの想像を確かなものにするために、登場人物の心情を本文の叙述を基に考えることができた。(読み語り)
グループ内で、自分の読み取ったことを提案するために根拠をもって読み、自分なりの考えをもって話し合いに取り組むことができた。
グループ内で考えを紹介し合うことで、自分の考えに自信をもち、また、友達の考えから自分が気付かなかった点が分かるなどの読みの広がりがもてた。
課題 児童主体の話し合いは停滞することもしばしばあった。読む力を付けるためにも、意図的かつ計画的な教師の切り返しやゆさぶりの発問を心掛ける必要がある。

学習活動を振り返り、整理する場の工夫

成果 観点に沿って振り返りをさせることで、自分の考えや友達の発表のよさに気付くことができた。学習の終末に観点を示すのではなく、活動の最初に観点を提示することで児童の意識も変わってくる。振り返りを行う際に注意しておきたいことである。

読書活動へ  

新美南吉の作品とキツネが出てくる作品を集めた関連図書コーナーを設置し、「読書マラソン」に取り組ませたので、児童は喜んで読み広げることができた。また、新美南吉についてインターネットで調べたことで、新美南吉に親しみを覚え、南吉童話のよさに触れることができた。

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最終更新日: 2010-03-19