これからの国語科学習指導について提案します!!


平成20年度授業提案B(小学校第6学年の実践) 


1 単元名 表現を味わい、作者の思いを探ろう

 
    教材名 「やまなし」 宮沢賢治

   出  典 『国語6年(下)希望』 光村書籍

  資  料 「イーハトーブの夢」 畑山博
                                                                      

作品に描かれている表現を味わうだけでなく、作者に関心をもちながら作品を読む力を身に付けさせることをねらいとしています。そのために、作品を分析的に読み進めたり(比較読み)、同じ作者の他の作品と比べながら考えたり、解説を資料として活用したりする活動を仕組みました。

2 学習内容の系統性

3 単元とその指導について

児童観

教材観

本の読み聞かせは好んでいるが、読書への関心は個人差が大きい。宮沢賢治の作品について読んだことのある児童は少ない。 物語全体が“幻灯”であり、造語などの独特な語句やオノマトペが多用されており、二つの場面によって幻想世界が対比的に描かれている。小学5年生にとってはやや難解な作品であると思われるので、指導には工夫が必要である。
文章読解については、文や語句の意味は理解していても文章構成や前後の関係を考えながら読むことができる児童は少ない。 作者自身の内面を映し出した作品であり、“生きること”を主題にして、その厳しさと希望が描かれている。
物語の主題について考える学習はこれまでも行ってきているが、作者と作品を関連付けて読む学習に取り組むのは本単元が初めてである。
     

指導のポイント!

「学び」の方法を意識させる場の工夫

 

知識・技能を意図的に活用させる場の工夫

児童はこれまでの物語学習で、「場面を分けて起承転結を読む」「登場人物の気持ちを考える」「情景描写を読む」「主題を考える」「クライマックスを考える」等を学んできている。本単元では、上記の読み方学習に加えて、「作品を比べて読む」ことを学ばせる。本教材「やまなし」が二つの文章によって対比的に描かれていることを生かし、いろいろな対比読みの方法を学ばせたい。   児童はこれまで、対話活動(ペア対話・グループ対話・全体対話)を有効に活用しながら話し合いを通して理解を深めてきた。これまでの話し合い活動の技能を生かすことで、作品の主題や作者の思いについて考えを深めていきたい。

また、作品の主題を考える場合には、同じ作者の他の作品と比較して読むことも有効な読み方であることを学ばせたい。   また、これまでに図書室から発行された「おすすめの本」を参考にしてのリーフレットづくりを言語活動として取り入れることで、見通しをもって活動を進められるようにしたい。
       

学習活動を振り返り、整理する場の工夫

教材文「やまなし」の感想交流とリーフレットの紹介を交流し合うことで、学習を振り返り整理する場とする。また、作成したリーフレットは全校児童に紹介したり、学級内で実際に読み進めることで活動を読書生活へとつなげていく。    

4 単元の指導目標

作品の情景を豊かに想像したり、表現を対比的に読んだりしながら、作品の特色や作者のものの見方や感じ方について考えさせる。
作者の思いを想像し、紹介したい本のリーフレットを作ることで、目的を意識しながら条件に応じた表現を楽しませる。

5 評価規準

国語への

関心・意欲・態度

宮沢賢治とその作品に関心をもち、いろいろな作品を読んでいる。【「C読むこと内容(1)ア」】
話す・聞く能力 知識や情報を関係付けながら話し合っている。【「A話すこと・聞くこと内容(1)ア」】
書く能力 宮沢賢治の作品を読み、本の推薦文・紹介文・書評を基にリーフレットを書いている。【「B書くこと内容(1)ア」】
読む能力 宮沢賢治の作品のよさや作者のものの見方に気付きながら読み、自分の考えを深めている。【「C読むこと内容(1)エ」】

6 単元の計画(全11時間)

主な言語活動

主な学習活動

評価とその方法

感想交流(発表)
「やまなし」を読んで感想を交流し、作者への関心を高める。
ワークシート@[PDF]
作品や作者について関心をもっている。【観察・発言】
物語の構造を考えたり、資料の活用、他の作品との読み比べについて学習の見通しをもったりする。
  新出漢字や難しい語句を調べ、音読の練習をする。 文章の表現のおもしろさ、美しさを感じながら読んでいる。【音読】
意見交流(討論) 物語の構造について考える。
登場人物の相互関係から想像を広げ、作者の発想や想像力に気付くことができる。【発言・ワーク】
造語の意味を想像することで、作者の発想や想像力を理解する。
解説文の活用 資料「イーハトーヴの夢」を読んで、作者の生き方や考え方をまとめる。
作者の生き方・考え方に関心をもって読むことができる。【発言・ワーク】
意見交流(討論) 5年生教材「注文の多い料理店」を読み直し、作品の主題について考える。 行動や会話、情景などを通して、表現の仕方に注意して読むことができる。【発言・観察】
「五月」「十二月」を読み、描かれている情景を想像することで、作者の表現力の豊かさを感じ取らせる。
比較読み
本時へGO!
会話文の比較から二枚の幻灯の違いを考えたり、資料・他作品を参考にしたりして、作品の主題を考える。
「明と暗」のイメージを隠喩している表現語句を見付け、それらのもつ意味を考えることができる。
リーフレットづくり 他の作品を読んで主題について考え、リーフレットにまとめる構想をもつ。 作品のよさや主題について自分の考えをもつことができる。【発言】
自分が選んだ本のリーフレットを書く。 情報を収集・整理し、リーフレットの様式にまとめることができる。【リーフレット】
10
11 リーフレットの紹介 グループ内または学級内で、リーフレットに書いた内容について紹介し合う。 選んだ理由やよさ、主題について分かりやすく紹介している。【発言】

7 授業を終えて

授業での取り組みについての考察<成果と課題>

「学び」の方法を意識させる場の工夫

成果 対比という視点を提示することで、違いから言葉のもつイメージや隠された作者のイメージを想像することができた。
対話活動(ペア→グループ→全体)を有効に位置付けることで、自分の考えに自信をもったり、他の考えを取り入れたりするなどの考えの深まりが見られた。
文章の比較読みや同じ作者の作品の比べ読みを行うことで、物語の主題を読み解く方法を学ぶことができた。
課題 「明と暗」をイメージさせるものを抜き出す作業は時間を要したため、カードに書いたものを整理していく方法など作業の効率を図る手順や視点をきちんと指導する必要があった。

知識・技能を意図的に活用させる場の工夫

成果 会話文を抽出して対比させることで、主題への視点を絞りやすくなった。
リーフレットのモデルを示すことで、主題とはどのようなものかという見通しがつき、主題に迫ることができた。

学習活動を振り返り、整理する場の工夫

成果 作成したリーフレットを学級内や全校児童に紹介することで、学習活動を読書活動へとつなげることができた。

読書活動へ  

作成したリーフレットは学級内で交流したり、全校児童に紹介したりしたことで、学習活動を読書活動へとつなげていくことができた。

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最終更新日: 2010-03-19