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児童生徒が安心できる人間関係づくり   〜がばいシートを使って〜

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○高等学校用シートを活用した事例
 生徒の実態  −1回目(7月)調査の結果から−
          〔グラフ1〕                                 〔グラフ2〕
 
 
  *〔グラフ1〕の縦軸の数値は、各観点の回答状況を点数化し、合計したもの。好ましい状態であるほど数値が高く、満点は20ポイント。
*〔グラフ2〕の縦軸の数値は、各設問の回答状況を点数化したもの。好ましい状態であるほど数値が高く、最も好ましい回答は4ポイント。
   
(1) 結果から考えられること
  @   生徒の意識における学級集団の状態では、「友達との関係」はポイントが高くなっているが、それに比べて「集団の雰囲気」のポイントはそれほど高くない。本学級は、昨年度から同じメンバーで構成されており、仲のよいグループ内の交友関係は比較的安定し、お互いによい関係が築けている。しかし、学級全体が仲間意識を高め合うところまでには十分達していない。〔グラフ1〕
  A    「授業への意欲」のポイントが、他の観点と比べて相対的に低く、その中でも「興味をもって学習に取り組んでいる」「調べたり工夫したりして学習に取り組んでいる」のポイントが低い。普段の学校生活の中で、進んで行事に参加したり授業中に意見を述べたりする生徒は少ない。自分に自信がもてない生徒が多いと感じる。それが「自己存在感」のポイントの低さにもつながっていると考えられる。〔グラフ2〕
  B   高校生の発達段階においては、教師と親しく 打ち解けた関係を築こうとする生徒は多くはないと思われる。この学級でも、「教師との関係」では、多くの生徒たちは気軽に教師に相談したり話したりできるとあまり感じていない。信頼関係が築けていると感じている生徒は、教師が思っているほど多くはない。〔グラフ1〕
(2) 支援に当たって
  @   「授業への意欲」を高めることを第一に支援を考える。各教科担任と連携を取りながら学級担任が無理なくできる支援を考える。 生徒の知的好奇心を促すような課題や自由学習などを計画したい。
  A   「教師との関係」がより近く感じられるように、生徒と接する時間を増やし、学級担任の思いを伝えるような機会をつくる。そして、生徒が学級担任に気軽に話したり、相談したりすることができるような学級の雰囲気をつくりたい。
     
 ねらい

 

(1)    学習への興味・関心が高まるような環境づくりを工夫し、進路を見据えた「授業への意欲」につなげる。
                                        →《参考》支援のポイント「自己存在感」「授業への意欲」
(2)   学級担任と生徒との信頼関係を深め、距離を縮めるために生徒の内面の声を聴く機会を設ける。
   
 支援の実際

 

 

(1)   「授業への意欲」を高める取り組み
  @   授業や課題で生徒が提出する感想文、ワークシートなどに必ずコメントを付けて生徒に返却する。生徒へプラスメッセージを送ることで、自信をもつことができるようにする。       →《参考》支援案リンク集「授業への意欲」
  A   教科担任の協力を得ながら、各考査の前には、その対策となる課題を教科ごとに用意する。計画的に学習に取り組ませることで、自分の弱点や目標を再確認させ、学習意欲を高める。
(2)   学級担任との関係づくり
  @   「Today's Hero & Heroine」と称する取り組みを行う。学級担任が、帰りのホームルームの時間までに、その日1日の中で特に頑張った生徒、褒めてあげたい生徒の名前を挙げて、その理由と併せて教室後方の黒板に毎日記入し紹介する。日直にも同様の取り組みを任せる。       →《参考》支援案リンク集「教師との関係」
  A   うまくコミュニケーションがとれない複数の生徒に対して、手紙(文通)の形で気持ちを伝え合う機会をつくる。
     
 生徒の変容および考察 −2回目(11月)調査の結果から−
          〔グラフ3〕                             〔グラフ4〕
 
 
  *〔グラフ1〕の縦軸の数値は、各観点の回答状況を点数化し、合計したもの。好ましい状態であるほど数値が高く、満点は20ポイント。
*〔グラフ2〕の縦軸の数値は、各設問の回答状況を点数化したもの。好ましい状態であるほど数値が高く、最も好ましい回答は4ポイント。
(1)  学級集団の変容
  @  「授業への意欲」は、今回の調査で最もポイントが上昇した観点であった。ほぼすべての項目でポイントが上昇している。加えて「自己存在感」の中の「頼りにされたり、役にたったりしている」の項目で0.3ポイントが上昇している。〔グラフ3・4〕
  A  「友達との関係」は、1回目調査と同様に高いポイントを維持していた。〔グラフ3〕
  B  「学級の雰囲気」のポイントが若干下降した。また、「教師との関係」は、依然としてポイントが低かった。〔グラフ3〕
(2)  考察
  @    課題の作文や行事の感想文等には必ず目を通し、コメントを付けて返却した。決して前向きな作文ばかりではないが、否定的に受け止めることなく、自己肯定感を高められるようなコメントを返すことを心掛けた。その中で、看護師になりたいという夢を書いた作文に対し、学級担任がその生徒の適性を認め学習への意欲を促すコメントを書いて返却したところ、進路希望決定のきっかけになったと思われる例もあった。
  A    定期考査前に用意した試験対策のプリントによって学習意欲を喚起された生徒が多かったようだ。前回の考査との結果を比較し、各個人が次回の考査への努力目標を設定することで、より計画的に学習に取り組むようになった。また、テストの答案に伸びが認められた点や努力の成果についてコメントしたことが、授業への意欲につながった生徒もいたようだ。これらのことは「がばいシート」の2回目の結果のグラフ4からも推測できる。
  B    「Today's Hero & Heroine」の取り組みでは、はじめは恥ずかしがって遠慮がちだった生徒たちも、毎日行っていく中で、仲間を認め合う声が徐々に学級に広がり、自己存在感を高めて自信につながったようだ。日直からの報告には、学級担任が気付かないエピソードが紹介されることもあった。この取り組みが「自己存在感」の観点の中の「頼りにされたり、役に立ったりりしている」の項目でポイントが上昇していることにつながっていると考えられる。
  C   学級担任に心を開こうとしない生徒との手紙のやり取りなど、問題を抱えている一部の生徒への支援に重点をおいた。面と向かい合った支援ではないが、その分冷静にその生徒たちの実態を把握することができ、よい面を発見する機会も多かった。しかしその反面、学級全体の雰囲気を改善するまでには至らなかった。
     
 今後の取り組み
 
    高校生の発達段階においては、教師に頼ったり相談したりする機会が少なくなる面があることは事実である。しかし、これまでの取り組みの成果は、教師側が感想文へのコメントや手紙のやり取りなどを通して少ない時間を有効に活用しながら積極的に生徒とかかわろうとした中から生まれてきたものである。今後は、これまでの支援を続けながら、教師と学級の生徒全員とが一斉にかかわれるような活動や学級全体の雰囲気を高めるための支援も考えたい。
                                                  →《参考》支援のポイント「教師との関係」
   
 実践後の感想
 
 

「がばいシート」を実施したことで、日ごろ漠然ととらえていた生徒の実態を客観的に把握でき、具体的に支援を考える十分な動機付けになった。ただ、支援を行ってみて難しいと感じたことは、高等学校での1日の活動の中で、生徒とかかわる時間を確保することである。担当学級の授業が組まれていない日は、朝と帰りのホームルーム(20分程度)の時間しか生徒と接しないこともある。そこで、帰りのホームルームの時間を利用した取り組みなど、教師の負担にならず日々のちょっとした時間の中で継続して行えるものを選んで取り組んだ。また、一人一人の生徒と直接向き合う時間が十分とれない現状の中で、ワークシートやプリントにコメントを書くことを通して、間接的ではあるが、その生徒と1対1で向き合えるということを実感した。

   

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最終更新日: 2009-03-28