高機能自閉症について

高機能自閉症とは、以下の特徴が3歳くらいまでに現れますが、知的発達の遅れを伴いません。また、アスペルガー症候群とは、以下の特徴のうち、言葉の発達の遅れのないもののことです。
●他の人と社会的な関係を持ちにくい
  同年齢の仲間関係を作ったり、気持ちを共感し合うことが困難です。また、人と目を合わせようとしなかったり、身振りや手振りで意思を伝えることが難しかったりすることが見られます。他人の気持ちの理解が難しく、気を配らなかったり、人が困るようなことを配慮しないで言ってしまったりすることもあります。集団の中では「浮いてしまう」ことがよくあります。  
●言葉の発達の遅れがある
  話し言葉の遅れがあり、他人との会話を続けることが困難です。テレビのコマーシャルなど、同じような言葉や節を何度も繰り返して言うこともあります。また、アスペルガー症候群でも、会話の仕方が形式的で、抑揚なく話したり、間合いが取れなかったりします。また、冗談や皮肉といった言葉の裏の意味がわからず、言葉通りに受けとめてしまうことがあります。  
●興味や関心が狭く特定のものにこだわる
  強いこだわりがあり、限られた興味だけに熱中します。手順や状況(物の並べ方、道順、他)、日課等にこだわり、急な変更にとてもとまどったり、嫌がったりします。また、独特な得意分野や興味のあることがある一方で、不得手なものや無頓着なことがあります。  
●その他
  常識的な判断の難しさ、感覚の異常(聴覚、視覚、味覚、触覚、嗅覚等の敏感さや鈍感さ)等がみられることがあります。また、全身運動(走・投・跳)がぎこちなかったり、手先が年令に比べて非常に不器用だったりすることも見られます(鉛筆・定規・道具・楽器の使用、工作など)。

子どもたちへの支援

工夫の視点 工夫の方法
情報収集の工夫 ○目で見て理解できるようにする 作業の手順を書いてあげたり、ことばの意味を知るときに写真を併用したりすることが有効です。いろいろな活用をしてみましょう。
環境の工夫 ○スケジュールを作成する
○刺激の少ないスペースを確保 する
受け入れやすい刺激と受け入れがたい刺激の差が大きいことが特徴です。また、見通しの持ちにくさもあります。時間や手順に対する見通しを持ちやすくし、イライラのもとになる刺激をできるだけ少なくして、落ち着いて活動できるようにしましょう。
指示の工夫 ○指示やルールを分かりやすくする
○見通しをもたせる工夫をする
「いつ始まって、何をして、どうなれば終わるのか?」という流れが分かっていると、自分なりの活動に取り組めます。友達がしていることに合わせて行動することは苦手なので、分かりやすい方法で個別に指示をしましょう。
「こだわり」を生かす工夫 ○子どもの興味を生かす とても几帳面で細かい作業が得意だったり、特定の分野の知識が人並み以上に優れていたりします。まわりの工夫で、こだわりをその子の良さとみることができないか考えてみましょう。
友だちとのかかわり方の工夫 ○人付き合いの基本的なスキルを学ぶ場を設ける
○教師が友だちとの仲立ちをする
会話の文脈に合わないことを突然言って、まわりの子が変に感じたり、グループでの話し合いのときに、自分だけテーマとは違うことを考えたり発表したりすることがあります。「~さんは、・・・と考えたんだね」と、まず認めて、それから「今は、・・・について考えてみよう」とか「・・・という言い方がいいよね」などと、本人にわかりやすく、まわりの子にとってもかかわり方のモデルになるよう具体的に示しましょう。
指導形態の工夫 ○TTを効果的に活用する
○個別学習の時間を設ける
担任だけが指導に当たるのではなく、チームを組んで支援にあたるなど、学校全体でこのような子どもたちにかかわる体制作りをするようにしましょう。

高機能自閉症・アスペルガー症候群の子どもたち

子どもたちの様子 対応のヒント
一人で遊ぶことが多い ・無理に友達の輪の中に入れようとしない
・本人の興味のあることをみんなの活動として取り上げる
・一人で取り組んでいることを認める
話しかけても知らない顔をしたりする ・興味のある話題から話に入る
・「○○の話をするよ」と最初に伝える
・どうしても興味が持てなければ無理に聞かせようとしない
ずっと自分の話ばかりして人の話を聞かない ・「今は○○をするときだから、あとで話は聞くよ」などと伝える
・無理に話をやめさせようとすると、かえって話が続くことがあるので意図的に話に応じないようにしてみる
まわりの人が困ることでも平気で言ってしまう ・言っていいことと良くないことを、具体的に書いて示す
・大人が場面に応じた言い方のモデルを示したり、一緒に声に出して練習する
自分なりの独特な手順や日課がある ・本人に分かりやすい予定表や日課表を活用する
・何が終わったか分かりやすいように紙に書いてチェックする
得意なことがある反面とても苦手なことがある ・得意なところが生かせる役割を持たせてみる
・苦手なことに無理に取り組ませようとしない
大人のような言葉を使ったり、どこかはとても物知りだったりする ・言っていいことと良くないことを、具体的に書いて示す
・大人が場面に応じた言い方のモデルを示したり、一緒に声に出して練習する