今年度(平成24年度)の研究では、平成22・23年度の研究の成果と課題を受けて、「書くこと」「読むこと」領域において自分の考えを形成する力を育てる指導と評価の在り方について見直し、再提案をしてきました。
具体的には以下のとおりです。
○ 学習指導要領の趣旨を反映した学習評価の考え方に基づいた授業展開案の見直し
○ ICTや学習プリント等の効果的な活用の視点からの授業展開案の見直し
○ 授業実践を通して見えてきた授業展開案の問題点の検討と、検討結果を踏まえた授業展開案の工夫改善
新しく提案した授業展開案、工夫改善を行った授業展開案は以下のとおりです。
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※「伝国」とは学習指導要領における〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕を表しています。 |
(1)研究の成果 |
言語活動の充実を図り、生きて働く言語能力を育てる授業づくりの再提案 |
ア 学習指導要領の趣旨を反映した学習評価を踏まえた言語活動の充実 |
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○平成22・23年度までに提案してきた授業展開案の一部について、指導事項を焦点化し、焦
点化した指導事項に応じた評価規準の設定、評価方法の工夫改善、評価の目安の具体化
等を行いました。このことにより、生徒が行っている言語活動のどの場面について、どのよう
な点に着目して見ていけばよいのかということが明確になり、言語活動の質を高めることに
つながりました。また、評価の目安を具体的にすることで、そこに至るまでの指導の過程で
形成的な評価とそれに基づく適切な指導を行うことができ、その結果として言語活動の充
実を図ることができました。
○既習の知識・技能や学習する単元で身に付けさせたい知識・技能の定着を図るためには、
それらの知識・技能を繰り返し活用する必然性が生まれるような言語活動を選定すること
や、学習過程に活用場面を意図的に設定することが、生きて働く言語能力を育てるために
大切であるということが分かりました。その際に、留意すべきことは、単元において焦点化し
た指導事項に照らし合わせて、確実に評価し記録に残すべきものと、定着が十分でない場
合には適切な指導は行うものの、記録に残す評価を行う必要のないものを峻別しておかな
ければいけないということです。 |
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イ 学習指導要領の趣旨を反映した学習評価の進め方の提案 |
平成23年11月に国立教育政策研究所から示された「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」を基に、次のような流れで学習評価を進めることにしました。 |
学習評価の進め方が一目で分かるようにフローチャートで「評価の進め方のモデル」を示しました。
提案した授業展開案について学習評価の進め方が具体的に分かるように「評価の実際」を作成しました。 |
学習評価の進め方のモデル
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1 |
単元の目標を設定する |
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詳しくは→ |
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へ |
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2 |
評価規準を設定する
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詳しくは→ |
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へ |
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3 |
評価規準を「指導と評価の計画」に位置付ける |
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詳しくは、それぞれの授業展開案をご覧ください。 |
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4 |
評価の方法やどのような目安で評価するかを明確にする |
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詳しくは→ |
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へ |
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5 |
評価結果のうち「記録に残す場面」を明確にする |
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詳しくはそれぞれの授業展開案にある「評価の実際」をご覧ください。 |
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6 |
指導と評価を行う |
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詳しくはそれぞれの授業展開案にある「評価の実際」をご覧ください。 |
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※ |
☆には、指導と評価のポイントを示しています
。 |
☆ |
単元の目標を明確にするために、指導事項を絞り込みます。 |
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☆ |
指導事項を具体化して評価規準とします。 |
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☆ |
評価結果を記録する機会を過度に設定することのないよう、1時間に1つ〜2つの評価の場面を決めます。また、観点ごとの評価をバランスよく実施し、学習状況を適切に評価し、その評価を指導に生かすように計画します。 |
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☆ |
身に付けさせたい力を確実に身に付けさせるために、評価の目安を明らかにし、評価モデルとして生徒に提示できるように具体化します。 |
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☆ |
それぞれの評価の観点について複数の評価の場面がある場合、あらかじめ総括の仕方を決めておきます。 |
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☆ |
評価の場面で、設定した評価規準及び評価の目安に沿った的確な評価をします。 |
☆ |
評価の場面に向かう中での形成的な評価とそれに基づく適切な指導を取り入れ、全ての生徒を少なくとも「おおむね満足できる」状況(B)とすることが大切です。 |
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☆ |
評価の結果を記録に残すとともに、必要に応じた個別の補充的な指導、及び指導改善を行います。 |
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その結果、以下のような成果が見られました。
○評価の目安を明確にして指導を行ったことで、形成的な評価とそれに基づく指導を的確に行うことにつながりました。 また、評価の結果を次時からの指導に生かすことができました。
○「十分満足できる」状況(A)の生徒の記述や教師作成のモデルを提示したことで、生徒は学習活動に対する不安や疑問が解消され、積極的に学習に取り組むことができました。また、評価規準を具体的に提示して指導を行ったことが、全ての生徒を少なくとも「おおむね満足できる」状況(B)とすることにつながりました。 |
ウ ICTの効果的な活用を取り入れた授業展開案の提案 |
ICT機器 |
活用場面 |
具体的な活用例とその効果 |
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単元や授業の導入において学習課題をつかませたり、学習活動の指示や説明をしたりする場面 |
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授業の展開における教材文の斉読の場面 |
○ |
古文や漢文を学級で斉読する際に、斉読のタイミングをそろえるために、教材文を電子黒板に投影して、読む箇所を色を変えて示しました。また、書き下し文を訓読文や白文に切り替えて読ませることもできるので、漢文を暗唱させたり、訓読文や白文に慣れさせたりするのに有効でした。
→授業展開案
「故事成語と自分の生活を結び付けて考えよう」へ |
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単元や授業の導入において学習活動について理解を深めさせる場面 |
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学習活動の指示や説明の場面 |
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交流の場面 |
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エ 学習プリント等の効果的な活用を取り入れた授業展開案の提案
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学習プリント等 |
活用場面 |
具体的な活用例 |
効果 |
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○ |
単元の導入場面 |
○ |
既習事項の確認の場面 |
○ |
生徒が主体的に活用する場面 |
○ |
個別指導の場面 |
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○ |
言語活動の進め方や留意点等をまとめて説明するときに使う。 |
○ |
既習事項を使って学習を進める際に、その内容を想起させるために使う。 |
○ |
ファイリングさせて、生徒が必要に応じて自ら活用して調べたり、確認したりするときに使う。 |
○ |
学習活動が滞っている生徒の個別指導において、必要な部分を提示して使う。 |
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○ |
知識を体系的に理解しやすい。 |
○ |
授業で活用した場面だけでなく、ポイントや留意点も想起できる。 |
○ |
必要に応じて何度も活用することで、体系的な知識の整理と定着に有効に働く。 |
○ |
個別に学習を振り返らせることができる。 |
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○ |
単元の導入場面 |
○ |
形成的な評価とそれに基づく指導の場面 |
○ |
既習事項の定着の場面 |
○ |
学習したことの定着を図る場面 |
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○ |
生徒のレディネスを把握するために使う。 |
○ |
授業の学習場面で、形成的な評価を行ったり、それに基づく指導を行ったりするときに使う。 |
○ |
授業で取り組む学習活動に必要な力を確実なものにするために家庭学習の課題として使う。 |
○ |
学習したことの定着を図るために、家庭学習の課題として使う。 |
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○ |
生徒の言語能力について具体的に把握できる。 |
○ |
生徒のつまずきに応じて指導することができる。 |
○ |
生徒の学習に対する不安を取り除き、授業に向かわせることができる。 |
○ |
授業で学んだことについて要点を押さえて復習できる。 |
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この他、「活用プリント」に取り組ませることで、学期や学年といった比較的長いスパンでの学力の定着をみることができました。また、「言語」の学習プリントを家庭学習に定期的に活用することで、生徒の語彙を豊かにし、言語環境を整えることができることが分かりました。 |
(2)課題と今後の展望 |
今年度の研究では、学習指導要領の趣旨を反映した学習評価の考え方に基づいた授業展開案の見直し及びICTや学習プリント等の効果的な活用の視点からの授業展開案の見直しを行いました。これらの見直しを通して、言語活動の充実を図り、生きて働く言語能力の育成を目指した授業づくりの再提案を行うことができましたが、研究を進めていく上で以下のような課題が残りました。
・ 学習指導要領の趣旨を反映した学習評価を指導に生かす具体的な方策を探ること
・ 単元や本時のねらいに応じたICTの活用とそれに対応した教材開発を行うこと
このような課題を踏まえ、今後は学習指導要領の趣旨を反映した学習評価の具現化やICTの効果的な活用について、更に研究を深めていく必要があります。
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