生きて働く言語能力を育てる「国語科学習指導の具体策」を提案します!

 授業展開案  〜授業づくりの基本構想に基づく実践の提案〜  (「読むこと」の指導)
単元名 
  「故事成語と自分の生活を結び付けて考えよう」 
教材名(出典)
  「今に生きる言葉」(光村図書「国語1」)(東京書籍「新しい国語1」)
生徒の実態と指導のねらい
   小学校学習指導要領解説国語編、第3学年及び第4学年の〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕では、「ア(イ)長い間使われてきたことわざや慣用句、故事成語などの意味を知り、使うこと」とあり、生徒は小学校の学習において、日常生活でよく用いられる故事成語などについて、その意味や用法についてある程度理解していると考えられます。
 一方、佐賀県の中学1年生の実態として、平成23年の佐賀県小・中学校学習状況調査において、「言語事項」の「日常場面で、ことわざを適切に使うこと」を問う設問では、正答率が期待正答率「おおむね達成」には達しているものの他の設問に比べて正答率が低くなっているのが課題でした。
 本単元では、故事成語の中から「矛盾」を教材として、故事成語の成り立ちや現代の意味・用法などを学び、その上で自分の選んだ故事成語について日常生活の出来事と結び付けて考え、起承転結の構成に沿った文章や4コマ漫画をかいて読み合う言語活動を位置付けました。そして、この言語活動を通して今に生きるいろいろな故事成語を知ることをねらいとしています。教材は、日常会話や文章の中でよく用いられる故事成語であるので、そのねらいに適した教材と言えます。また、指導事項を〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕だけに絞り、文章を書くことに苦手意識をもつ生徒も楽しく学習に取り組ませ、多くの故事成語を学ぶことができるようにしました。
 指導に当たっては、「矛盾」の基になる故事と日常生活を結び付けて起承転結の構成に沿った文章や4コマ漫画に表して理解を深める学習活動が、その他の故事成語とそれに合う日常生活の出来事をかくことのモデル学習となるように配慮します。また、様々な種類の故事成語を提示することで、言語への生徒の関心を高めたいと考えます。そして、起承転結の構成に沿った文章や4コマ漫画をかいて読み合うことで故事成語への理解を深めたいと考えます。
学習内容の系統性
 
言語活動について
  本単元では、自分の選んだ故事成語と日常生活の出来事を結び付けて考え、起承転結の構成に沿った文章や4コマ漫画をかき、故事成語との関連を考えながら読み合うという言語活動を単元に位置付けます。この言語活動を通して、故事成語への理解を深めることを目指します。
単元の目標
(1)
故事成語の基になった漢文に表現された内容に関心をもち、故事成語の意味に合う日常生活の出来事と結び付けて考えながら交流し、いろいろな故事成語を知ろうとする。
(2) 古典には様々な種類の作品があることを理解することができる。
(3) 故事成語の辞書的な意味と故事との関係に注意し、語感を磨くことができる。
単元の評価規準  ( )内は該当する指導事項等の記号
国語への関心・意欲・態度 言語についての知識・理解・技能
@ 故事成語の基になった漢文に表現された内容に関心をもち、故事成語の意味に合う日常生活の出来事と結び付けて考えようとしている。
@ 故事成語の基になった漢文を知り、古典には様々な種類の作品があることを理解している。((1)ア(イ))
A 故事成語の辞書的な意味と故事との関係に注意し、語感を磨いている。((1)イ(イ))
単元の計画(全5時間)
主な学習活動
指導上の留意点
評価規準
評価方法
指導計画
ワークシート
故事成語について確かめる。
「矛盾」の基になった漢文を音読し、読み慣れる。
「矛盾」の基になった漢文と現代語訳を交互に読み、大体の意味を捉える。
学習課題「故事成語に合った日常生活の出来事を起承転結に沿った文章や4コマ漫画にして読み合い、いろいろな故事成語を知ろう」を設定し、学習の見通しをもつ。
小学校で学んだ故事成語や、身近な故事成語などを取り上げて、基になった漢文の内容を紹介して興味をもたせる。
教師の音読を聞いて、表記と読み方を照らし合わせるようにする。
繰り返し音読することによって、漢文独特のリズムを味わわせる。
学習計画表の使い方について説明する。
事前に、ワークシートCを配布し、故事成語についての並行読書を促す。
[言語についての知識・理解・技能]@
故事成語の基になった漢文を知り、古典には様々な種類の作品があることを理解している。((1)ア(イ))
【ワークシート@】
【学習計画表】
指導計画1/5
学習計画表
ワークシートC
ワークシート@
(記入例)
教科書の「矛盾」の4コマ漫画にセリフを入れる。
「矛盾」の意味を一文で書き、国語辞典の「矛盾」の意味と比較して、内容の確認をする。
現代語訳を参考にさせながら、自分の言葉でワークシートAにセリフを書き入れさせる。
ワークシートに書いた「矛盾」の意味をグループで確認し合うことで、内容の理解を確実にさせる。
[言語についての知識・理解・技能]A
故事成語の辞書的な意味と故事との関係に注意し、語感を磨いている。((1)イ(イ))
【ワークシートA】
指導計画2/5
学習計画表
ワークシートA
(記入例)
日常生活を振り返り、「矛盾」の意味に合う出来事について起承転結の構成に沿った文章や4コマ漫画をかく。
   
グループで作品を読み合い、交流する。
起承転結の4場面に分けて文章や4コマ漫画をかかせる。
絵をかくことが苦手な生徒にはマルや棒線を使った略画(簡単な絵)でもよいことを伝える。
グループで作品を読み合い、一言感想を伝えさせる。
[国語への関心・意欲・態度]@
故事成語の基になった漢文に表現された内容に関心をもち、故事成語の意味に合う日常生活の出来事と結び付けて考えようとしている。
【観察】
【ワークシートB】
指導計画3/5
学習計画表
ワークシートB
指導者の作品モデルT
指導者の作品モデルU
資料集や国語辞典などを用いて、いろいろな故事成語について調べる。
10 故事成語を1つ選び、 起承転結の構成に沿った文章や4コマ漫画をかく。
資料集や国語辞典の故事成語について、故事と意味を読ませる。
故事成語に当てはまる体験がないか考えさせる。
思い当たる体験がない場合は、創作でもよいことを知らせる。
[言語についての知識・理解・技能]@
故事成語の基になった漢文を知り、古典には様々な種類の作品があることを理解している。((1)ア(イ))
【観察】
【ワークシートC】

[国語への関心・意欲・態度]@
故事成語の基になった漢文に表現された内容に関心をもち、故事成語の意味に合う日常生活の出来事と結び付けて考えようとしている。
【観察】
【ワークシートD】
指導計画4/5
学習計画表
ワークシートC
ワークシートD
(記入例)
11 自分の作品を紹介したり、友達の作品を読んだりして、様々な故事成語があることを知る。
12 単元の学習を振り返り、身に付けた力やその力を活用できそうな場面について考える。
グループの中で読み合わせて、感想を交流させる。
グループの中で、他のグループに紹介したい作品を選ばせ、全体の場で発表させる。
単元の学習について教師の評価を伝え、生徒が新しい課題や今後の学習の展望をもてるようにする。
[言語についての知識・理解・技能]A
故事成語の辞書的な意味と故事との関係に注意し、語感を磨いている。((1)イ(イ))
【ワークシートD】
【評価表】
【学習計画表】
指導計画5/5
学習計画表
ワークシートD
評価表
  ※学習計画表は、単元を通して同じものを使用しています。また、同一番号のワークシートはすべて同じ内容です。
実践を振り返って
 
  言語活動について
 
 本単元では、自分の選んだ故事成語と日常生活の出来事を結び付けて考え、起承転結の構成に沿った文章や4コマ漫画をかき、故事成語との関連を考えながら読み合うという言語活動を位置付けました。この言語活動では、故事成語の意味に合った文章や4コマ漫画をかくために、故事成語の基になった故事を読むことで、今に生きる故事成語の詳しい意味やニュアンスについて理解を深めることができました。また、故事成語と日常生活を結び付けて考える活動では、選んだ故事成語について起承転結の構成に沿った文章を書くという活動と、4コマ漫画をかくという活動を生徒に選ばせるようにしたことで、「書くこと」に苦手意識をもつ生徒も学習活動に意欲的に取り組むことができました。
  学習評価の進め方について
 

 本単元では、指導事項を〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の(1)ア(イ)と(1)イ(イ)に絞り込みました。これに応じて評価規準を設定し、モデルの提示などで評価規準を生徒に確実に理解させ、形成的な評価とそれに基づく指導を行ったことで、知識・技能の確実な定着を図ることができました。文章や4コマ漫画をかくための取材の段階で故事成語の基になった漢文を数多く読ませることで、「古典には様々な種類の作品があること」を理解させ、実際に作品をかかせることで故事成語の詳しい意味やニュアンスを学ばせ、「語感を磨くこと」を指導しました。

 

 評価に当たっては、生徒の学習の状況を具体的に捉えるよう配慮しました。

まず、様々な種類の作品があることへの理解については、ワークシート@(右図)で古文と漢文の区別ができるかを確かめる問題に取り組ませたり、ワークシートCで示した故事成語の一覧表で調べた故事を確認させたりすることで学習の状況を見取りました。
      

     
      また、語感を磨くことについては文章や4コマ漫画にかいた内容、及び、作品を交流して考えた故事成語の詳しい意味の記述などから故事成語への理解の状況を具体的に捉えることで、形成的な評価へとつなげ、ほとんどの生徒を少なくとも「おおむね満足できる」状況(B)とすることができました。
     
ICT利活用について
     故事成語の基になった漢文を学級で斉読する際に、教材文を電子黒板に投影して、読む箇所を色を変えて示すことで斉読のタイミングをそろえることができました。また、書き下し文を訓読文や白文に切り替えて読ませることもできるので、漢文を暗唱させたり、訓読文や白文に慣れさせたりするのに有効でした。

生徒のかいた作品を実際に教材提示装置で投影して、全体での交流を図りました。このことにより、生徒は、他者の表現の工夫を直接見て、故事成語への理解を深めることができました。

右の図は、教材提示装置で投影したワークシートD、4コマ漫画をかいた生徒の作品です。「五十歩百歩」という故事成語が、好ましくない状況における「少しの違いはあっても本質的に大きな差がないこと」を指す故事成語であることが、最後のコマの登場人物の表情や顔に流れる汗、背景に描かれた縦線や汗模様などに表現されています。
  教材提示装置を用いることで、このような生徒の細やかな工夫についても、学級全員で共有することができました。

 
上の図は、ワークシートDで4コマ漫画をかいた生徒の
作品を編集したものです。
実際のワークシートDは起承転結の構成に沿った文章と
4コマ漫画のどちらかを選べるようになっています。
 

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