技術・家庭科(家庭分野) 〜課題選択学習を取り入れた食生活指導の工夫〜
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  課題選択学習を取り入れた「献立作成の授業」の学習指導      

1 題材  「朝食の献立を立てよう〜オムレツの調理を主菜として〜」  内容A(1)(2)
2 題材について
 朝食の献立作成とした理由
 生徒の食事調査の結果,朝食の摂食率は比較的良いが,食事の内容を見ると問題点が多かった。量が不足している,食品群の偏りが大きく5群だけを摂取しているなどである。そこで,栄養に関する学習を踏まえて,朝食の内容を見直し,自分で朝食を整えることのできる力を付けさせたいと考えた。最終的には,考えた献立で朝食を作って家族に食べてもらうことを目指した。
 「オムレツの調理」を主菜とした理由
 事前の生徒の調理に対する意識調査では,「肉料理」に並び「オムレツ」を学習したい,作れるようになりたいという関心が高かった。卵の調理は小学校でも取り扱われなくなったが,卵の調理について学習することは,その調理の多様性や経済性から考えても意義がある。さらに,朝食では取り入れやすいメニューであり,試しの調理実習(第1回の調理)では一人一人の技能の評価も可能となる。初めての献立学習であるが,主菜をオムレツとして1食分の献立を作成することで,献立作成が容易に進むと考えた。
 献立学習について〜まず「1食分」から〜
 献立作成は栄養や調理,食品選択などに関する学習が基礎となることから,食事作りの経験の少ない生徒にとっては難しい学習内容であるが,工夫が生かせる内容でもある。実習ごとに,実習した調理品を取り入れて1食分の献立作成を位置付け,繰り返し学習することでその定着が図れると考える。また,献立作成の際には,配膳図を描くことにより,いろどりや食品の概量,正しい配膳を視覚的に把握させていきたい。
【生徒が考えた献立例】
3 本時の選択課題の設定・提示について
 生徒の能力,生活実態を考慮し,下の3つを設定し,生徒に1つを選択させるようにした。本時の課題@Aは学習方法を意識し,課題Bは内容も意識した発展的な課題である。
 課題@ 5色(白,赤,緑,黄,黒)の食品を組み合わせて,献立を考えよう。
 課題A 6つの食品群をすべてとり入れて,献立を考えよう。
 課題B カルシウム(不足しやすい栄養素)がたくさんとれる献立を考えよう。(発展的課題)

 課題Aは本時の目標「栄養のバランスよく献立を立てる」には,どのようにすればよいかを考えさせその方法として提示する。既習事項の6つの食品群についておおむね理解している生徒は,副菜や飲み物を考える際に2群や3・4群から食品を考えていくことになる。
 課題@は,6つの食品群について理解が不十分で,課題Aでは困難な生徒に配慮したものである。食品のいろどり(5色:白,赤,緑,黄,黒)を考えて献立を立てると,見た目もよく,自然にバランスが良くなる方法として提示する。5色の色を満たすように食品を選べばよいことから,抵抗感が少なく献立作成ができると考える。献立作成後,食品群が満たされたかどうかを確認させる。
 課題Bは,@Aの発展的な課題として提示する。生徒の食事調査や事前の学習ではカルシウム不足傾向の強い生徒が見られた。このような生徒に対し,特にカルシウムを気を付けてとろうとする態度を養うには,有効な手立てと考える。栄養バランスを満たした上で,カルシウムの給源となる食品の調理を考えていくので難易度は高くなる。
 難易度から見れば,@ABの順であるが,生徒の意思を大切にして主体的に課題を選ばせ,課題選択の理由を明記させることで課題意識をもたせ,意欲的に取り組めるようにしていく。
4 学習指導計画(全6時間)と題材の評価規準
学習内容 時間 評価規準
関心・意欲・態度 工夫創造 技能 知識・理解
オムレツを主菜として朝食献立を立てよう 2.5
本時
・自分の課題を達成するために,献立を自分で考えて作成しようとしている。 ・自分の朝食のとり方について問題点に気付く。
・栄養のバランスやいろどりに気を付けて献立作成ができる。
    ・献立作成の手順や献立作成の条件が言える。
献立を見直し,オムレツの調理計画を立てよう 1.5     ・自分の家庭で調理実習ができるように自分の献立を見直すことができる。(献立条件のうち時間・季節などを考慮) ・オムレツの調理手順にそって,計画表の記入ができる。 ・卵の栄養や調理性について説明できる。
オムレツの試し調理をしよう
〜調理室の使い方を身に付ける
・調理室の使い方・約束を守り,身に付けようとしている。
・調理実習で学んだことをもとに,家でも工夫して実習しようとしている。

【相互評価をする場面】

 評価票(PDF)
・ふんわりとしたオムレツの調理ができる。
・包丁を使って,きゅうりの切り方「輪切り・拍子木切り・乱切り」が正しくできる。
・調理の要点とその理由が言える。    
【試し調理の様子】
 *第1回目の調理となるので,調理室の使い方と共に包丁の安全な使い方・正しい切り方も指導する。
 *調理ではペアを組み,オムレツときゅうり切りの相互評価ができるようにする。
5 本時の授業展開  (2.5時間計画)  
段階 学習活動 教師の主な支援      評価の観点 資料・授業の様子





@朝食の問題点を把握する。





A朝食の役割を知り,本時の目標を知る。
・食事調査結果と今日の朝食内容から朝食でとれていない食品群に気付かせる。
・「菓子パン・飲料」の献立を示し,問題点に気付かせる。


・今後の学習の流れと本時の目標を提示する。
   
















・課題を選び,その理由(自分の考え)が記入できているか。
 (関心・意欲)
・開隆堂教科書 P63参照
資料:食事調査結果「朝食でとった食品群」
朝食献立例カード
 【ドーナッツとカフェオレ】

資料:菓子パンの問題点



・3つの学習課題提示用カード

・学習シートbT
・付箋紙(小・3色)

目標:栄養を考えた,朝食の献立作成ができるよう
   になろう。

B自分の学習課題を設定する。
 (課題を選ぶ)
・ 5色の食品を組み合わせて献立を考えよう。
・ 6つの食品群をすべてとり入れて,献立を考えよう。
・ カルシウムがたくさんとれる献立を考えよう。

・栄養バランスがよくなるように献立を作成するにはどんな方法がよいか考えさせながら,課題提示する。
食品群の理解の定着度や生活実態を考慮して課題を選ばせ,理由も書かせる。
・課題ごとに3色の付箋紙を学習カードに貼らせ,選んだ課題が識別できるようにする。











C献立作成の手順と献立の条件を理解する。
  
 

D自分の課題に従って献立を考え図に描く。



 
 
 
 

 

E考えた献立図に色をぬる。
 

Fできた献立について意見交換する。
 
 

G自分の献立に修正を加える。


H使った食品を食品群に分類する。
 (分量も記入)



I献立表で過不足を確認する。
 
 

J完成した献立をグループ内で意見交換する。



・給食献立例を写真で示し,考えさせる。
・条件のうち,ここでは栄養といろどりに注意して献立を作成させる。


・調理品例を配膳図で示し,主食,副菜,汁物(飲み物)を決めていくと良いことを確認する。
・野菜や果物の量は主菜の2倍とることを確認する。(既習事項の確認)
課題ごとに予想されるつまずきについて,ヒントカードを準備する。
・早くできた生徒には,季節や調理時間なども考えるように促す。
・作成の進まない生徒にはもう一度手順を確認し,何から決めていけばよいか考えさせる。

・いろどりが良くなるように,修正を加えながら献立図を完成させる。


同じ課題同士で,どんな工夫がよいか,問題点がないかについてコメントを記入させる。(2人から)
・教師からもコメントする。


・野菜(3,4群)の不足や食品の数が多すぎないか確認させる。
・コメントも参考にさせる。

・分量については,教科書の食品群別摂取量の目安を参考にさせる。(3・4群についてはできるだけ記入)
・野菜の量は,1つにつき30g〜50g程度,果物は100g程度までに指定する。
 
・過不足が大きい生徒には,献立図と分量,取り替えた方が良い食品について指導する。


・自分の献立の特徴をまとめさせ,図を見せながら献立説明ができるように準備させる。
・他の献立については栄養バランスを評価させ,特徴をメモさせる。
  【給食献立 例1】



・資料などを活用しながら自分で献立を作成しようとしているか。
 (意欲・態度)
・献立作成の手順や条件を考えて献立を作成しているか。
 (知識・理解)



 
 
 



・友達の献立について工夫点や問題点に気付いているか。
 (工夫創造)













・できるだけ摂取量が満たせるように献立の作成ができたか。
 (工夫創造)

・自分や友達の献立の特徴(工夫点や問題点)をとらえているか。
 (工夫創造)
・給食献立例写真(2例)

 【献立作成の手順と条件についての板書の様子】

・調理品例カード
【そのまんま献立カード※】

・ヒントカード
【オムレツ調理写真(3例)】

例1 トマトを入れる

例2 チーズを入れる

例3 つけ合わせの工夫


・学習シートbU









   【意見交換の様子】








K班で1番良かった献立を選ぶ。

L今日の授業を振り返る。


M次時の学習内容を把握する。

・良いと思った理由を記述・発表させ,献立の条件をどのように満たしていたかを考えさせる。

学習課題の達成度や自分の取り組みの様子について自己評価させ,学んだことを記述させる。

・献立を修正し,調理計画を立てていくことを知らせる。





・学んだことや考えたことが記述できているか。(意欲・態度)





・自己評価 (学習シートbU)
 (注)学習活動Cにかける時間によって,学習活動Cの後,学習活動B「課題選択・設定」を入れても良い。

6 学習シート・資料の紹介

学習シート(PDF)献立作成シート(本時bT・bU)   家庭での課題実習シート
朝食の問題点を把握させる資料(食事調査の結果・菓子パンの栄養)   
そのまんま献立カード 群羊社 (アイセック発行)   写真※参照
本時の授業ヒントカード(PDF) (各課題についての解決の手立てや調理品の紹介)

7 授業を終えて
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