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将来を見据える子どもが育つ!キャリア教育のすゝめ

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学習指導案    小学校第6学年 総合的な学習の時間
1 単元名
 「ハローワーク講座を開こう」(全10時間)
 
2 単元設定の理由
小学校6年間の学びの積み重ねは、子ども一人一人に大きな可能性をはぐくんできた。6年生の後半ともなると、その6年間の学びを生かして自分は将来どんな仕事に就きたいか、真剣に考え始める時期に当たる。そこで、単なる進路指導ということではなく、自分の未来を自分の力で切り開く術を学ぶ場として、また、自分自身の未来像を具体的に描き実践する児童を育てる場として本単元を設定した。自分が選んだ職業について情報を収集し、見学や体験学習で学んだことも取り入れながら、グループで「ハローワーク新聞」を作成させるようにする。さらに、これを多様な集団(4・5年生、中学生、保護者など)に向けて発表させ、感想や気付き等を交流させることで、人間関係形成能力(自他の理解能力・コミュニケーション能力)と将来設計能力(計画実行能力)を育てることをねらいとしている。
本学年の児童は、4年生において、「1/2成人式プロジェクト〜自分発見〜」という単元で、自分のよさを発見・自覚する学習を進めてきた。今まで無意識だったことの中から、「得意なこと」「好きなこと」を自覚する事ができ、それらをプラス思考でとらえることができるようになった。6年生になった今、学校行事等で仕事を任せられ、その責任を果たすことで達成感を感じるようになったり、自分のよさを友達や下級生から認めてもらったりすることで自信を付けたりするようになった。これらを土台にしながら、本単元を学習することは、自分の得意なこと、好きなことを職業にどう生かせるのかを考えようとしたり、自分の将来像と今の自分とを結び付け、今の自分にできることを具体的に考えようとする態度につながると考える。
そこで、目指すものは異なるが、お互いを認め合い、励まし合いながら学習することの楽しさを、ともに学んだ仲間として、もう一度たっぷりと味わって欲しいと願い、個人研究スタイルに一部グループ活動を取り入れた。児童がお互いのよさや夢についてより深く知り合い、情報を共有したり作業を協力したりする中で友情を深める活動にもつなげていきたいと考えたからである。さらに、職業について調べたことや体験したこと、将来の自分について考えたこと、今の自分にできることややらなければならないことなどを、下級生や中学生、更には、これまで支えてくれた保護者に向けて発信し交流させることで、目標に向かって前向きに努力しようとする気持ちを高めさせることができると考え、本単元を設定した。
3 本単元で重点を置いたキャリア諸能力
自他の理解能力 話し合いなどに積極的に参加し、自分と異なる意見も理解しようとする。
コミュニケーション能力 思いやりの気持ちをもち、相手の立場に立って考え行動しようとする。
計画実行能力 将来のことを考える大切さが分かる。
憧れとする職業をもち、今しなければならないことを考える。
4 本単元の目標
自分のよさを自覚したり友達の意見を取り入れたりしながら、グループの友達と協力して新聞作りや講座の準備・練習を行わせるようにする。【自他の理解能力】
調べたことや伝えたい思いがよく伝わるように、聞き手に合わせて表現の内容や方法を工夫したり、聞き手からの質問や意見に答えたり感想を交流したりできるようにする。【コミュニケーション能力】
同じグループの友達と助け合ったり、アドバイスし合ったりさせながら、新聞作りや講座の準備・練習をさせるようにする。【コミュニケーション能力】
職業について調べたことをまとめたり、いろんな立場の人から話を聞いたりさせることで、将来のことや今しなければならないことを、前向きに考えようとする態度を養う。【計画実行能力】
5 単元指導計画
学習活動
指導上の留意点 はぐくまれることが期待されるキャリア諸能力






1 「ハローワーク新聞」を作ろう
(1) グループで新聞の内容やレイアウトを話し合う。




・ 新聞に書きたい内容を整理しながら、グループ全員の思いがしっかり表現できる内容になるよう話し合わせる。 【計画実行能力】
(2) 自分が担当する紙面の下書きをする。 ・ 割り当てられた範囲に自分の書きたい内容が表現できるよう吟味させながら、下書きをさせる。
(3) 広用紙に書いて仕上げる。 ・ 図や表・写真などを効果的に配置し、分かりやすく表現できているかをグループで確かめながら仕上げさせる。







2 校内「ハローワーク講座」 ・ 4・5年生が興味をもって聞いてくれるような内容や表現方法を選んで、分かりやすく説明させる。 【コミュニケーション能力】
【自他の理解能力】
3 「ハローワーク講座」をパワーアップしよう ・ 校内講座での問題点を解決できるよう話し合わせ、修正を加えて練習させる。
【コミュニケーション能力】
【自他の理解能力】
4 中学校で「ハローワーク講座」を開こう(本時) ・ 中学生の意見や感想を聞きながら、夢やあこがれに向けて努力することの大切さに気付かせる。 【コミュニケーション能力】
【計画実行能力】
5 「ハローワーク講座」を盛り上げよう ・ 自分たちの思いを一番伝えたい人に、どんな内容をどんな方法で伝えるか、講座内容を再構成するための話し合いをさせる。 【計画実行能力】
6 ファミリー「ハローワーク講座」
・ 保護者を招いて、自分の将来の夢について宣言させ、その実現のためにどう努力していくか自分の思いを伝えさせる。 【コミュニケーション能力】
【計画実行能力】
6 本時の学習
(1) 目標
 ・ 新聞の中では十分に伝えられていないことを、言葉を補いながら分かりやすく発表させるようにする。【コミュニケーション能力】
 ・ 中学生と意見を交流させ、夢の実現に向かって今自分がしていることや、これからやるべきことを前向きに考えようとする態度を養う。【計画実行能力】
(2) 展開
  学習活動 指導上の留意点 評価(方法)
【キャリア諸能力】




1 将来の夢に関するアンケートの結果を伝え、「ハローワーク講座」の目的を伝える。 ・ 講座全体の目的をはっきりさせるため、アンケート結果を効果的に伝え中学生の関心を高めさせるようにする。  
   課題   中学生によく伝わる「ハローワーク講座」にしよう
            〜自分らしい自分になれる夢づくりをするために〜









30
2 グループごとに提案をする。


・ 「ハローワーク新聞」を使って、グループで協力し合って提案をさせる。
・ 単なる仕事紹介に終わらないよう、提案のポイントをプレゼンテーションチェックシートとしてまとめ、中学生に評価をしてもらう。

《チェックシート》
・参加者に役立つ発表であること
・根拠ある情報で信頼性のある内容であること
・参加者に「なるほど!」と言わせるものであること
・「ハローワーク新聞」では十分に伝えられていないことを、言葉を補いながら分かりやすく発表することができる。(発表内容)
【コミュニケーション能力】
3 中学生との意見交流をする。

中A:職業に就くための資格まで調べてあって参考になりました。
中B:私も将来について考えてみようと思いました。

中C:今、夢の実現のためにしていることは何ですか?
A児:放送委員会がするお昼の放送で、聞き取りやすい話し方をするように心掛けています。
B児:毎日の授業に真剣に取り組んでいます。
・ 中学生には、発表後に、職場体験の感想や得た知識、夢の実現に向けて努力することなどについて、アドバイスや質問、感想を出してもらえるよう、事前にお願いをしておく。
・ チェックシートを基に、中学生としての意見を発表させる。
・ 中学生からの質問に答えさせたり、アドバイスや意見を聞かせることで、自分のよさや今後努力していくことを考えさせる。
・夢の実現に向かって、今自分がやっていることや、これからやるべきことを考えている。(発表内容)
【計画実行能力】





10
4 今日の活動の自己評価をする。


B児:交流タイムで、ほめられたし、質問もたくさんしていただいたので、とてもうれしかったです。中学生から、「発表を聞いてよかった。」「夢について考えてみようと思った。」などの感想が聞けて、うれしかったです。
・ 「ハローワーク講座」の感想を出し合うことで、夢やあこがれを語り合うことの楽しさを共有させるようにする。
・ 中学生に提案した「ハローワーク講座」を振り返って、成果と課題について考えさせる。
・ 夢の実現に向かって、今の自分がやらなければならないことについても振り返るようにさせる。
・夢の実現に向かって、今自分がやっていることや、これからやるべきことを考えている。(ワークシート)
【計画実行能力】
指導案【PDF】資料等【PDF】
7 児童生徒の様子・感想
○小学生の感想より
・交流タイムでは、中学生から、「調べたことを分かりやすくまとめてあってよかった」「発表を聞いてためになった」「自分も夢について考えてみようと思った」など、いろんなことをほめてもらい、感激しました。中学生は怖いというイメージがあったけど、そうでもなかったです。逆に中学校に行くのが楽しみになりました。 

○中学生 の感想より
・小学6年生一人一人が夢をもち、がんばっている姿が分かりました。僕は、まだ夢がないので6年生の発表はすごく自分にとっていいものになりました。みんな声がちゃんと出て、分かりやすかったです。

・発表を聞いて、夢について改めて考えてみようと思いました。そして、くわしく調べて分かりやすくまとめてあったのでよかったです。これから、がんばろうと思いました。

・みんな夢をもっていて、楽しそうに話していたので、私も何か夢を探そうかなと思いました。私はまだしっかりした夢がないので、ちょっとうらやましかったです。このハローワーク講座は、とても勉強になりました。
8 考察
・ 中学校で行ったアンケートの「夢を現実的に考えている人が少ない」という結果を受け、児童は「夢について考えてほしい。」「夢について考えたり、調べたりすることは、とても楽しい。」という思いを伝えたいという願いから、中学校で講座を開くことになった。このように相手意識を高め、目的意識をもって取り組んだ「ハローワーク講座を開こう」の単元は、児童にとっても中学生にとっても、将来について考えることの大切さを実感させるのにとても有効だった。

・ 交流タイムで、児童は、中学生から「夢の実現に向かって今自分がやっていること」について質問を受け、その答えをしっかり返すことができたし、中学生からよいアドバイスをもらうこともでき、これからやるべきことを考えるきっかけづくりにもなった。

・ 小学生と中学生との交流学習は、今回が初めてだったので、学習内容の意図を伝える手立てが十分でなかった。合同学習に至るまでに、中学校でも職場体験や自分の夢について考える時間を取っていただき、夢に対する自分の考えをある程度しっかりもった上でこの授業に参加してもらう等の手立てを取っていれば、児童の発表内容に対して、同じ夢を持つ者としてアドバイスをしてもらったり、生徒自身の夢に対する考えをもっと具体的に導き出したような質問や意見が出て、更に活発な交流タイムなり、両者にとって充実した時間となったと思う。

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最終更新日: 2009-03-24