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児童生徒が安心できる人間関係づくり   〜がばいシートを使って〜

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○小学校1〜3年生用シートを活用した事例
 児童の実態 −1回目(7月)の結果分析から−
         〔グラフ1〕                              〔グラフ2〕
 
    *〔グラフ1〕の縦軸の数値は、各観点の回答状況を点数化し、合計したもの。好ましい状態であるほど数値が高く、満点は20ポイント。
*〔グラフ2〕の縦軸の数値は、各設問の回答状況を点数化したもの。好ましい状態であるほど数値が高く、最も好ましい回答は4ポイント。
     
  (1)   結果から考えられること
    @

児童の意識における学級集団の状態は、4つの観点で教師のポイントを上回った。中でも「授業への意欲」のポイントが高い点は、日常観察から見取った、落ち着いて学習ができるようになった実態を裏付けている。〔グラフ1〕

    A

「自己存在感」のポイントは教師の予測と同じであり、日常観察においても互いに認め合う場面が少ないと感じている。〔グラフ1〕

    B

「友達との関係」を細かく見ていくと、「『遊ぼう』と声を掛けてくれる友達がいる」が3.5ポイントと、他の項目より高い数値を示している。昼休みに学級でまとまって遊ぶことが多いので、そのことも関係していると思われる。〔グラフ2〕

    C

「悪口や暴力、仲間外しなどはない」が2.5ポイントと、他の項目より低い数値を示している。〔グラフ2〕
  また、「友達との関係」の観点において、「学級では人のいやがることはない」という項目も同じく2.5ポイントを示している。学級の中で乱暴な言葉遣いをしたり、小さいトラブルが起きていたりすることも、この数値に影響していると思われる。

  (2)   支援に当たって
    @  友達関係において、温かい言葉での交流を深めるために、ソーシャルスキル・トレーニングを用いる。落ち着いて学習ができている実態からも、授業の中でソーシャルスキル・トレーニングに取り組むことは有効だと考える。
    A

「自己存在感」のポイントが低いことから、児童がお互いに認め合えるような場の設定を工夫したい。

                                              →《参考》支援のポイント「自己存在感」

   
 ねらい
  (1)   ソーシャルスキル・トレーニングを取り入れて友達との良好なかかわり方を学ばせながら、友人関係の向上を図る。 
                                                                                            →《参考》支援案リンク集「友達との関係」
  (2)   認め合い、励まし合う場面や機会を用意しながら、学級内の支持的風土を高める。
 
 支援の実際

 

 

 

 児童の変容および考察 −2回目(11月)調査の結果から−
 
       〔グラフ3〕                          〔グラフ4〕  
 
      *〔グラフ1〕の縦軸の数値は、各観点の回答状況を点数化し、合計したもの。好ましい状態であるほど数値が高く、満点は20ポイント。
*〔グラフ2〕の縦軸の数値は、各設問の回答状況を点数化したもの。好ましい状態であるほど数値が高く、最も好ましい回答は4ポイント。
 
(1)
 
学級集団の変容
 
@

観点ごとに見ると、「学級の雰囲気」「友達との関係」「自己存在感」のポイントがそれぞれ上昇したことが分かる。〔グラフ3〕

    A

「悪口や暴力、仲間外しなどはない」の項目は7月の結果から0.4ポイント上昇した。〔グラフ4〕また、7月に低い数値を示した、「学級では人のいやがることはない」という項目も0.7ポイント上昇した。

    B
 「授業への意欲」のポイントは1.0ポイント、「教師との関係」は0.2ポイント下降した〔グラフ3〕
 
(2)
 
考察 
   
@
 各教科の取り組みにおいては普段の授業を工夫することが効果的だった。体育科では、学級全員で1つのマット遊びのコースを作ったり、準備や片付けをしたりすることで協力する気持ちや一体感を増すことができた。生活科における野菜を使ったピザ作りや校外学習において、認め合い励まし合う場面を多く設定することができた。
    A
 必要な言葉を必要な場面で使う練習(「めざせ!マナー名人!! 」)をかるたで行ったことが1つの契機となり、互いに声掛けやあいさつをする機会が増え、友達とのかかわりを良好にしたと考える。また、ありがとうカードやよさ見付けカードの定期的な利用も、友達との関係を深めるために効果的だった。
   
B
 「授業への意欲」と「教師との関係」のポイントが少し下がっている。それぞれの観点を詳しく見ると、「授業への意欲」では「できた、わかった、と思うことがある。」「進んで発表している。」という項目が下がっており、「手遊びやおしゃべりなどせず話を聞くことができる」という項目は上がっていたことが分かった。「教師との関係」では「先生と遊んでいる。」という項目が下がっており、「困ったとき先生は助けてくれる。」「先生は楽しいことを計画してくれる。」という項目は上がっていたことが分かった。下がっている項目にポイントを絞って今後の支援を考えたい。
 
 今後の取り組み
  (1)  教科指導の充実
   

構成的グループ・エンカウンターだけでなく、各教科でも子ども同士が協力したり、励まし合ったりする活動を更に取り入れていきたい。関係性を深めるだけでなく、子どもが生き生きと取り組む授業づくりにもつながると考える。

  (2)  日常生活におけるルールの明確化(見直し)と徹底
     1学期から実施してきたルールづくりについて、教師自身が見直しを行う。そのルールが適切であるかどうか、それが守られているかどうか、新たに必要なものはないかなどを確かめてみる必要がある。
  (3)  承認感を高める取り組みの必要性
     「Q-U」での非承認群(主に学級内で認められることが少なく、自主的に活動しようという意欲が乏しい児童)と「がばいシート」の「あなたは先生にほめられることがありますか」という質問でポイントの低い回答をした児童は、大体同じである。まずは、教師がその児童を褒めて、学級全体からの承認感を高めることにつなげていく必要がある。
     
 実践後の感想
 

よりよい学級をつくるためには、構成的グループ・エンカウンターやソーシャルスキル・トレーニングをはじめ、教室の環境整備、日常生活の指導、各教科や道徳の時間での指導など多面的な取り組みが必要であることが分かった。今後は、学習や運動にやる気のあるクラスをつくるため、安心かつ居心地のよい学級づくりができるよう指導力を高めていきたいと思う。


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最終更新日: 2009-03-28