授業では、展開前段で盲目アスリートの柳川さんのパラリンピックでの栄光と、そこに至るまでの過程を紹介しました。盲目でありながら走ることを決意したことや、一人で行う練習方法を紹介すると同時に、部活動や自分が今一生懸命取り組んでいることを想起させて関連させることで、柳川さんのチャレンジ精神やひたむきに努力を続ける姿に共感させることを目指しました。

@練習風景を見せて紹介する。 |
Aパラリンピックに3度出場するまでの人生をパワーポイントとインタビュー映像を見せて紹介する。 |
B2003年にパラリンピック選考会で落選したことを伝える。 |
その後、このときの挫折場面を使い、生徒自身の気持ちを問い、葛藤させる手立てを取りました。
「もし、あなたが柳川さんの立場だったら、この後どうすると思いますか」と問い、「走ることをやめる」「走ることを続ける」の選択をさせることで、主人公の思いに自分たちの思いを重ねながら考えさせることを目指しました。生徒たちは、部活動や自分が一生懸命取り組んでいることを想起し、自分の体験を基に選択をすることができていました。
授業の感想の中には、自分の思いや経験を想起しながら考えを深めることができたことが分かる感想があり、葛藤場面を仕組む効果が分かりました。
生徒の感想 (太字:自分の思いや経験と重ねて考えを深めていると思われる記述)
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・ 元気づけられました。今、自分があきらめようとしていることがあって、もうちょっと努力してみようかなと思
えるようになりました。マイナスのことを考えずに、プラスのことを考えていき、自分を高めていきたいと思いました。
柳川さんも、 リオデジャネイロに向けて、頑張ってほしいです。私も頑張ろうと思います!! |
・ 私も陸上部なので、悔しい気持ちはよく分かりました。私も大会の前にケガをしたので、一番最後にゴー
ルしました。その時は、ゴールする前から、悔しくて、涙が出ました。正直、タイムが伸びず、やめようと思った
こともありました。私の夢は、みんなからはあまり理解されず、「そんなやつの何が楽しいの?」って言われます。で
も、頑張りたいです。 |
・ 柳川さんみたいに、夢をあきらめないでぶつかっていくことが大切だと思いました。僕は、剣道をしていて、中学
生になって、なかなか勝てなくなってきました。でも、柳川さんみたいに、夢にぶつかっていきます。そして、
将来の夢の警察官に向けて頑張ります。 |
しかし、葛藤場面の発問に対して、実際に「走ることをやめる」を選択した生徒は26%にとどまりました。「走ることを続ける」が74%で、こちらを選ぶ生徒が多かったことは、道徳的価値の理解における「人間理解」の部分が弱く、人間のもつ弱さに触れさせることができていなかったため、葛藤場面として発問の仕方やそれまでの説明に、もう一工夫必要であったと反省しました。主な課題は次の通りです。
・発問については、「走ることをやめる」「走ることを続ける」の二択よりも、「パラリンピックを目指す」「パラリンピック
をあきらめる」の二択にすると、目標が明確で答えやすいのではないか。
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・発問前の説明の段階で、パラリンピックが「4年に1度しかない」事を特に強調しておく必要がある。手立てとして、
「柳川さんの歴史を年表にまとめて貼る」「年齢的に最後のパラリンピックだったことを伝える」等が考えられる。 |
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