これからの算数科学習指導について提案します!

3 研究のまとめ

 平成24年度は、平成22・23年度の研究の成果と課題を受けて、授業実践を通して平成23年度までに作成した授業プランを見直し、算数的活動の位置付けについて検討してきました。また、以下の2点からもこれまでの授業プランを見直し、学習指導の改善を図ってきました。
 ○ 「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」に基く、評価規準や評価方法の工夫改善
 ○ 電子黒板や書画カメラなどのICT機器の効果的な活用の視点からの指導方法の工夫改善

 そして、授業実践を通して指導の手立てについても検討し、これまでの授業プランに工夫改善を加えてきました。今年度、工夫改善を加えて再提案することができた授業プランは、以下の5つです。
 
第4学年
第5学年
第6学年
 ・ 「面積」 (啓林館)  ・ 「図形の角」 (東京書籍)  ・ 「円の面積」 (啓林館)
 ・ 「拡大図と縮図」 (東京書籍)
 ・ 「場合を順序よく整理して」 (啓林館)

 (1) 研究の成果

  ア 算数的活動について
  各時間の学習内容や児童の実態に応じて、「作業的な活動」や「表現する活動」、「説明する活動」などの算数的活動を取り入れました。その際、児童の思考を促すためにはどのような具体物があればよいかを工夫したり、本時の目標に迫るために新たにICTを活用したりすることで、算数的活動が活性化し、児童の思考を深めていくことにつながりました。
     
  「表現する活動」や「説明する活動」では、言葉のみで表現させるだけでなく、図や式や言葉を使って考えをかき表すことを意識させ、かき表した図や式を指し示しながら伝えさせるようにしました。このような活動を取り入れていくことは、話し手だけでなく聞き手の理解を促すとともに、図や式や言葉を関連付けて考えを表したり、説明したりする力を高める上で有効であることが分かりました。また、このような算数的活動において、児童が記述したものや説明している様子を通して、本時に獲得させたい学習内容が身に付いているかどうかを評価し、指導に生かすようにしました。
   
  イ 学習評価の進め方について
  単元全体のバランスを考え、評価項目を各時間のねらいにふさわしい1〜2観点に精選しました。そのうち全員の評価の機会とする観点は「◎」、「努力を要する」状況(C)であると判断した児童や前時に学習状況を十分に判断しきれなかった児童を対象に補完するために行う評価については「○」として、単元の指導計画に位置付けました。

【技能】については、単元の中で最も基本的な内容について学習する時間を全員の評価の機会「◎」としました
 
【数学的な考え方】については、前時までに学習した考え方を活用して解決していくような時間を全員の評価の機会「◎」としました。

そして、全員の学習状況を無理なく見取ることができるように、観察などの授業中に行う評価と、ノートやワークシートなどの記述を基に授業後に確認をしながら行う評価を組み合わせることを心掛けました。このように、単元を通した評価を意識したことにより、各時間の指導のポイントが明確になり、以後の学習指導に評価したことを生かしていくことができるようになってきました。
     
  授業プランの中に、「十分満足できる」状況(A)及び「おおむね満足できる」状況(B)と判断した児童の具体的な状況の例を示し、「努力を要する」状況(C)と判断した児童に対しては、指導の手立て例を示しました。 特に、「十分満足できる」状況(A)を想定する際には、「おおむね満足できる」状況(B)に加えてどのような状況が見られる場合かを考え、「2つ以上の方法で解決している」のように解決方法の数で量的に評価したり、「既習事項を生かしてより数学的な方法で解決している」「速く正確に求めることができる」「説明までできる」などのように解決状況の質的な高まりで評価したりしていきました。このように、具体的な状況を想定しておくことで、授業の中で児童の達成状況を適切に見取り、それに応じた指導を行うことができるようになってきました。その結果、評価後の指導を通して、「努力を要する」状況(C)と判断した児童が「おおむね満足できる」状況(B)へ、「おおむね満足できる」状況(B)と判断した児童が「十分満足できる」状況(A)へと変容していく姿を見ることができました。

  今年度再提案した5つの授業プランについては、「評価の実際」において、授業の中で実際に児童がかいたノート記述を例に、具体的な評価の進め方を提案しています。
  ウ ICT利活用について
   算数科の授業におけるICTの効果的な活用の仕方について探ることができました。主に、導入の「つかむ」段階や「見通す」段階、全体での「学び合い」の段階において、本時の目標に迫るためにICTを取り入れました。その際、本時の目標を基に、授業においてICTを活用するねらいを明確にし、ICTを活用すること自体が目的とならないように留意しました。その結果、授業実践を通して、以下のようなよさを感じることができました。
 
「つかむ」段階
《既習事項の振り返り》
電子黒板に、既習事項や前時までの児童のノートを映し出すことで、短時間でこれまでの学習を振り返らせ、スムーズに本時の問題へとつなげていくことができました。
・5年「図形の角」
 (3/6◆) (5/6◆)
・6年「拡大図と縮図」
 (5/8◆)
《問題提示の工夫》
ディジタル教科書やパワーポイントのアニメーションを用いて、条件不足の状態から徐々に問題を提示していったり、図形を動かしたり形を変えて見せたりすることで、興味・関心をもたせて、学習意欲を高めることができました。
・4年「面積」
 (9/12◆)
・6年「円の面積」
 (5/5◆)
・6年「拡大図と縮図」
 (1/8◆) (2/8◆)
「見通す」段階
《見通しの共有》
ディジタル教科書やパワーポイントのアニメーションを用いて問題提示を行うことで、本時の課題を明確にし、解決に向けての見通しをもたせることができました。見通しをもたせるためにICTを用いる際には、学習内容の系統性を考慮し、児童の実態に応じてどのようなものをどの程度まで見せるかを検討しておく必要があります。
・4年「面積」
 (9/12◆)

・6年「拡大図と縮図」
 (4/8◆)
「学び合い」の段階
《説明する活動の充実》
書画カメラを用いて児童のノートを拡大提示し、ノートにかいた図や式を指し示しながら自分の考えを説明させることで、図や式や言葉を関連付けた分かりやすい説明を心掛けさせることができました。このように、ICTを自分の考えを分かりやすく伝えるための一助とすることは、説明する側に相手意識をもたせ、説明する活動を充実させていくことにつながりました。また、このようにICTを用いて図や式や言葉を関連付けながら説明させることにより、聞き手の理解を促していくこともできました。
・6年「拡大図と縮図」
  〈実践を終えて〉へ
・6年「場合を順序よく整理して」
  〈実践を終えて〉へ
《知識・理解の定着》
児童にとって難しいと思われる内容については、児童が発表した考えとディジタル教科書やパワーポイントのアニメーションを関連付けながら見せることで、学習内容を確認させ、理解を促していきました。授業実践を通して、ICTによる視覚的な理解とともに、実際に具体物を用いた操作活動等を保障し、実感の伴った理解を促していくことの大切さを再確認しました。
・4年「面積」
 (6/12◆)
 (8/12◆)

・6年「円の面積」
 (3/5◆) (5/5◆)
 また、1時間の授業において、ICTを活用する場面を明確にして授業を行うことで、自力解決における操作活動や考えをノートにかき表す活動を保障し、児童の達成状況に応じた指導を行う時間を確保していくことができました。
 

 (2) 課題と今後の展望

   本研究においては、平成23年度までに作成した授業プランについて、学習評価とICT利活用の視点から見直しを行ってきました。その中で、以下のような課題が見えてきました。
   
 
観点ごとに「十分満足できる」状況(A)を想定する際のポイントについて更に探ること
 
単元や本時の学習のねらいに応じたICTの活用の仕方について探ること
     
   このような課題を踏まえて、今後は、学習指導要領の趣旨を反映した評価の具体化やICTの効果的な活用の仕方について更に研究を深めていきたいと思います。

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