これからの算数科学習指導について提案します!

 これからの授業に役立つ授業プラン
 この授業プランについて
 
改訂された学習指導要領では、算数的活動のより一層の充実と、基礎的・基本的な知識・技能を活用することを通して思考力・判断力・表現力を育成することが求められています。また、その手立てとして、算数の知識を基に発展的・応用的に考える活動や考えたことを表現したり、説明したりする活動等が示されています。

そこで、本研究では、知識・技能を活用することを通して、数学的な思考力・判断力・表現力を育むための算数的活動を取り入れた授業の実践例を提案することとしました。
 


単元名 「図形の角を調べよう」 (東京書籍 小学校5年下)    総時間数 6時間
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1 単元の目標
三角形や四角形の内角の和について、図形の性質を見いだし、それを用いて図形を調べたり構成したりするとともに、平面図形についての理解を深める。
 
2 単元の評価規準
(1)
図形の性質に関心をもち、三角形や四角形の角の大きさの和について、筋道を立てて考えようとしている。
【算数への関心・意欲・態度】
(2)
三角形の3つの角の大きさの和が180°であることを帰納的に見いだし、四角形の4つの角の大きさの和が360°になることを三角形の3つの角の大きさの和を基に、演繹的に考えている。
【数学的な考え方】
(3)
三角形や四角形の内角の和を用いて、未知の角度を求めることができる。
【数量や図形についての技能】
(4)
三角形の3つの角の和が180°になることや、四角形の4つの角の和が360°になることを理解している。
【数量や図形についての知識・理解】
3 単元とその指導について
(1) 教材観
 本単元は、第5学年の内容C(1)平面図形の性質のウにかかわるものです。
 児童は第2学年で、直角について平角を二等分した形として定義し、長方形や正方形の特徴の1つとして捉えてきています。第3学年では、二等辺三角形や正三角形の性質の学習をするときに、角を切り取ったり、折って重ねたりする操作を通して、形としての角の相等について学習しています。第4学年では、角を量としても学習しており、回転による半直線の開き具合の量として角を捉え、分度器を用いてその量を測定したり、必要な角の大きさを表したりしています。また、直線の垂直・平行、台形、平行四辺形、ひし形などの性質について学習し、測定や作図などの作業を通して、平行線の性質の1つとして同位角が等しいことや、平行四辺形の性質の1つとして向かい合った角の大きさは等しいことを学習しています。さらに、第5学年では、ぴったりと重ね合わせることができる2つの図形を合同な図形と定義し、合同な図形の性質やかき方について学習してきています。
 本単元では、これらの学習を基に、まず、三角形を敷き詰める活動などの具体的な操作に重点をおいて、三角形の内角の和が180°であるという性質を学習をします。次に、そのことを使って、任意の四角形の内角の和の求め方を考えさせます。1本の対角線で2つの三角形に分割できることに着目させ、四角形の内角の和にも一定の値があることを見いださせます。さらには、五角形、六角形などの多角形について学習し、それらの内角の和も、四角形の場合と同様に、三角形に分割することによって求められることを捉えさせます。
(2) 指導観
 指導に当たっては、具体物を用いた作業的な活動、性質を見付ける探究的な活動、自分の考えたことを表現する活動、説明する活動などの算数的活動を積極的に取り入れた学習を展開します。このような算数的活動に主体的に取り組ませることで、基礎的・基本的な知識・技能の習得を図り、数学的思考力・判断力・表現力を育むとともに、算数のおもしろさやよさが実感できるようにしたいと考えます。
 単元の導入では、2種類の三角形を実際に敷き詰める活動を行い、敷き詰められた様子を見て、何か気付くことはないか考えさせます。鋭角三角形や鈍角三角形が敷き詰められることを実感させ、三角形の頂点や内角の和に着目させることで、図形の角への興味・関心を高めたいと考えます。三角形の内角の和の学習では、いろいろな三角形を調べる活動を通して、内角の和が180°であることを帰納的に考えさせるようにします。三角形を敷き詰めたり、分度器で測定したり、3つの角を1点に集めたりする方法を使って、どんな三角形の内角の和も180°になることに驚きを感じさせたり、その美しさを味わわせたりすることをねらいとします。その後、四角形の内角の和を求める学習では、三角形の内角の和が180°であることを基にして、四角形の内角の和が360°になることを演繹的に考え、説明する活動を取り入れます。演繹的に考えて説明させることで、筋道を立てて考えることのよさに気付かせていきたいと考えます。
(3) 算数的活動について
作業的な活動 三角形を敷き詰めたり、3つの角の部分を寄せ集めたりする。
探究的な活動 作ったものを基に、辺や角を調べて性質を見付け出す。
表現する活動 図や式、言葉を用いて自分の考えをかき表す。
説明する活動 ペアやグループ学習で友達に自分の考えを説明したり、学習を通して分かったことやきまりを基に説明したりする。
4 単元計画(全6時間)


学習のめあて
時数
中心となる学習活動
(位置付けた主な算数的活動)
評価規準
◎:全員の評価の機会とする観点
○:補完のための評価の観点  







三角形のしきつめを見て、気付いたことを話し合おう。

《1/6の展開》


・三角形が敷き詰められるかを考え、実際に敷き詰める。
・敷き詰めたものを見て、気付いたことを話し合う。
(作業的な活動)
(説明する活動)
◎進んで敷き詰め活動に取り組み、どんな三角形でも敷き詰められるか調べようとしている。【関心・意欲・態度】

○敷き詰められた三角形を見て、角や辺、形についての気付きを見いだしている。【数学的な考え方】
三角形の3つの角の大きさの和が180°になるか確かめよう。

《2/6の展開》


・三角定規の角の大きさの和を調べる。
・いろいろな三角形について、3つの角の大きさの和が180°になることを知る。
・三角形の内角の和が180°になることを基に、三角形の角の大きさを計算で求める。
(作業的な活動)
(説明する活動)
○三角形を敷き詰めたり、三角定規の角の大きさを調べたりして、三角形の内角の和が180°になることを帰納的に考え、説明している。 【数学的な考え方】

◎三角形の内角の和を基に、三角形の角の大きさを計算で求めることができる。【技能】
角度を測らないで、4つの角の大きさの和を求める方法を考えよう。
《3/6の展開》




・角の大きさを測らないで、四角形の内角の和を求める方法を考える。
・四角形の内角の和の求め方を説明する。
(表現する活動)
(説明する活動)
◎三角形の内角の和を基に、四角形の内角の和の求め方を演繹的に考え、説明している。【数学的な考え方】
表にまとめて、多角形の角の大きさの和のきまりを考えよう。

《4/6の展開》


・「五角形」「六角形」「多角形」の定義を知る。
・五角形、六角形の内角の和を求める。
・ 多角形の内角の和について表にまとめ、きまりを考える。
(探究的な活動)
(説明する活動)

○三角形の内角の和を基に、多角形の内角の和を三角形に分けて求める方法を考え、説明している。【数学的な考え方】

◎多角形の内角の和は、三角形の内角の和を基にすれば求められることを理解している。【知識・理解】



どんな四角形でも、しきつめられるか調べよう。

《5/6の展開》


・一般の四角形を隙間なく敷き詰める。
・合同な四角形が敷き詰められる理由を考える。
・平行四辺形の一部を変えて、敷き詰め模様を作る。
(作業的な活動)
(説明する活動)
○合同な四角形が敷き詰められることの理由を考え、筋道立てて説明している。【数学的な考え方】

○平行四辺形の一部を変えて、敷き詰め模様を作ろうとしている。【関心・意欲・態度】


「しあげのもんだい」に取り組もう。

《6/6の展開》


・しあげの問題に取り組み、学習のまとめをする。
◎三角形や四角形の内角の和を基に、三角形や四角形の角の大きさを計算で求めることができる。【技能】
○三角形の内角の和が180°になることや、四角形の内角の和が360°になることを理解している。【知識・理解】
〈実践を終えて〉
◇ 算数的活動について
  第2時の三角形の角の大きさを計算で求める学習では、式の中で用いた数がそれぞれどの部分の角の大きさを表しているかを図と関連付けながら説明する活動を取り入れることで、計算による角の求め方についての理解を深めさせることができました。
  第3時の四角形の内角の和の求め方では、対角線などの算数の用語を適切に用いらせたり、説明の中で用いた角がどこなのか図を使って明確にさせたりすることで、どんな四角形も内角の和が360°になることを筋道立てて説明させることができました。
◆ 学習評価の進め方について
  第3時の四角形の内角の和の求め方は、第2時に学習した三角形の内角の和を活用するため、【数学的な考え方】の全員の評価の機会とし、第4時は更に既習事項を発展させて多角形の内角の和のきまりを見いだしていくため、補完のための評価の機会としました。このようにすることで、前時の学習を生かして解決していくことを重視させ、既習事項を基に演繹的に考えて説明することに次第に慣れさせることができました。
  第2時から第4時はいずれも多角形の内角の和を扱いますが、最も基本的な三角形について学習する第2時を【技能】の全員の評価の機会としました。また、単元の学習のまとめを行う第6時も全員の評価の機会とすることで、見いだしたきまりを基に、角の大きさを計算で求める技能を単元を通して高めていくことができました。
◆ ICT利活用について
  第3時では、「つかむ」段階において、電子黒板を用いて様々な形の三角形を次々に見せることで、前時に見付けたきまりを確認させました。このようにしたことで、「どんな三角形も、3つの角の大きさの和は180°になる」きまりを生かして、四角形の内角の和の求め方を考えていこうという見通しをもたせることができました。
 

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