これからの算数科学習指導について提案します!

これからの授業に役立つ授業プラン

この授業プランについて  

改訂された学習指導要領では、算数的活動のより一層の充実と、基礎的・基本的な知識・技能を活用することを通して思考力・判断力・表現力を育成することが求められています。また、その手立てとして、算数の知識を基に発展的・応用的に考える活動や考えたことを表現したり、説明したりする活動等が示されています。

そこで、本研究では、知識・技能を活用することを通して、数学的な思考力・判断力・表現力を育むための算数的活動を取り入れた授業の実践例を提案することとしました。
[ 授業提案5 ]

単元名  「場合を順序よく整理して」(啓林館 小学校6年下)  総時間数 7時間

 
詳細指導案
この学習単元では、問題解決的な学習の中で、作業的・体験的な活動や探究的な活動を通して学習していきます。また、身に付けたものを活用するとともに、学び合いの学習過程において、自分の考えを表現する活動や友達に自分の考えを説明する活動を取り入れながら、数学的な思考力・判断力・表現力の育成を目指しています。
1 単元の目標
 具体的な事柄について、起こり得る場合を順序よく筋道を立てて考え、落ちや重なりがないように調べるには図や表などを用いればよいことを理解し、それらを用いて順序よく整理して調べることができる。
 
2 単元の評価規準
(1)
具体的な事柄に即して、図、表などを用いて表すなどの工夫をしながら、落ちや重なりがないように、順序よく調べていこうとしている。
【算数への関心・意欲・態度】
(2)
具体的な事柄を整理する際、落ちや重なりのないように、図や表を適切に用いたり、名前を記号化して端的に表したりして、順序よく筋道を立てて考えている。
【数学的な考え方】
(3)
具体的な事柄について、落ちや重なりがないように、起こり得る場合を順序よく整理して調べることができる。
【数量や図形についての技能】
(4)
起こり得る場合を落ちや重なりがないように調べるには、ある観点に着目したり、図や表などにかき表したりするとよいことを理解している。
【数量や図形についての知識・理解】
3 単元とその指導について
(1) 教材観
   本単元では、具体的な事柄について、起こり得るすべての場合を適切な観点から図や表などを用いて分類整理し、落ちや重なりがないように調べることができるようにすることをねらいとしています。また、起こり得るすべての場合の中から、条件に従って筋道立てて考えを進め、条件に合ったものを見付けることができるようにすることもねらいとしています。さらに、名前を記号化して端的に表すことは、順序よく整理して調べる際に有効であることを実感させることも大切なねらいです。
  本単元は、中学校数学における確率の理解を進める上での基礎となるものです 。
(2) 指導観
  指導に当たっては、単に結果である場合の数を明らかにするだけでなく、図や表を用いて分類整理していく過程を大切にし、調べ方の工夫に重点を置いて学習を進めていきます。まず、具体的な事実に即して図、表などを用いて表現させながら、規則正しく並べたり、整理して見やすくしたりして、落ちや重なりがないように順序よく調べていこうとする態度を育てることをねらいます。その学習過程を経て、図や表を適切に用いることができるようにするとともに、条件に従って筋道立てて考えを進めていくこと、 順序よく整理して調べる際に名前を記号化して端的に表すことは有効であることを実感させていきます。
  また、「学び合い」の段階では、自分の考えをペアで伝え合う場を設け、考えを確認させたり、見直させたりします。そして、友達の考えとの共通点や相違点に着目させ、数学的な見方や考え方を深めていきたいと考えます。児童によっては、自力解決の途中であることも考えられるので、その場合は途中までを伝えさせ、友達の説明を聞いて解決のヒントをもらったり、一緒に考えたりする場としていきます。全体の場では、児童の発言をつなぎながら説明させたり、友達の説明を補足させたりしながら、理解を深めさせることができるようにしていきます。
 ※ 中学校とのつながりを考え、並べ方を考える場合の枝分かれした図については、樹形図という用語で指導します。
(3) 算数的活動について
作業的・体験的な活動 日常生活にある具体的な事柄について、組み合わせたり、並べたりする。
探究的な活動 起こり得るすべての場合から、重なりや落ちがないように図や表を用いて調べ、更に条件に合ったものを見付ける。
表現する活動 筋道を立てて考えたことを図や表などを用いてノートにかき表し、名前などを記号化させて表現する。
説明する活動 ペア学習や全体学習の場において、ノートにかいた図や表などを示しながら説明する。
4 単元計画(全7時間)
小 単 元
学習のめあて
時数
中心となる学習活動
(位置付けた主な算数的活動)
評価規準
◎:全員の評価の機会とする観点
○:補完のための評価の観点
場合の数の調べ方 どんな試合の組み合わせがあるか調べよう。
《1/7の展開》


・4チームでの試合の組み合わせについて、図や表をかいて順序よく整理して調べる。

(探究的な活動)
(作業的・体験的な活動)

◎4チームの中から2チームを選ぶ組み合わせについて、図や表を用いて表すなどの工夫をしながら、落ちや重なりがないように順序よく調べようとしている。
【関心・意欲・態度】

○組み合わせについて、起こり得る場合を落ちや重なりがないように調べるには、図や表にかき表すとよいことを理解している。【知識・理解】
ハンカチの組み合わせは、全部で何とおりできるか調べよう。
《2/7の展開》


・4種類のハンカチから3種類を選ぶ組み合わせについて、表をかいて順序よく整理して調べる。

(作業的・体験的な活動)
(表現する活動)
◎1つを残して組をつくる組み合わせについて、落ちや重なりがないように順序よく整理して調べ、場合の数を求めることができる。【技能
走る順番は、全部で何とおりあるか調べよう。
《3/7の展開》


・3人でリレーをするときの走る順番について、図(樹形図)をかいて順序よく整理して調べる。

(探究的な活動)
(表現する活動)
○3種類のものの並べ方について、落ちや重なりがないように考えている。
数学的な考え方

◎並べ方について、起こり得る場合を落ちや重なりがないように調べるには、図や表にかき表すとよいことを理解している。【知識・理解】
旗のつくり方は、全部で何とおりあるか調べよう。
《4/7の展開》


・4色のうち2色を使って旗をつくる場面において、旗が何とおりつくれるかを図(樹形図)にかいて順序よく整理して調べる。
(表現する活動)
(説明する活動)
○4種類のものの中から2種類か3種類を選んで並べる並べ方の数について、落ちや重なりがないように順序よく整理して調べ、起こり得るすべての場合とその数を求めることができる。【技能】
いろいろな場合を考えて 遠回りをしない道順は、全部で何とおりあるか工夫して調べよう。
《5/7の展開》


・遠回りをしない道順について、図(樹形図)をかいて順序よく整理して調べる。

探究的な活動)
(説明する活動)
◎落ちや重なりがないように調べ方を工夫し、条件に合う道順とその場合の数を考えている。【数学的な考え方】
全部を調べ、あてはまる場合をみつけよう。
《6/7の展開》


・図や表をかいて、すべての行き方を順序よく整理して調べ、その中から目的に合う行き方を見付ける。
(探究的な活動)
(説明する活動)
◎図や表を用いて、目的に合う行き方を調べようとしている。【関心・意欲・態度】
なかまに分けて考えよう。
《7/7の展開》


・みかんがほしい人、バナナがほしい人、両方ともほしい人の人数から、みかんだけがほしい人とバナナだけがほしい人の人数を考える。
(表現する活動)
(説明する活動)
○集合の図を用いて、みかんとバナナの数の求め方を考えている。
【数学的な考え方】
〈実践を終えて〉
算数的活動について
 
単元のはじめである第1時、第2時において、「見通す」段階に作業的・体験的な活動を取り入れ、具体物の操作を通して組み合わせについて考えさせるようにしました。そのことにより、どのようにしたら考えられるすべての組み合わせを、落ちや重なりがないように調べられるかについて考えさせていくことができました。
 
説明する活動では、結果を伝えるだけでなく、図や表を見せながらどのように考えたのかを説明させ、調べ方の工夫に注目させることで、分類整理して調べていく過程を大切にして学習を進めていくことができました。
学習評価の進め方について
 
第3時の並べ方についての学習は、前時までの組み合わせの学習を受けて、並べ方についても図や表を用いて解決できることを理解させるため、【知識・理解】の全員の評価の機会としました。そして、本時に学習した樹形図を用いて適用問題を解かせることで、樹形図を用いると並べ方を順序よく整理できることに気付かせることができました。
 
第5時の条件に合う道順を調べる学習は、これまでの並べ方の学習を活用して考えさせるため、【数学的な考え方】の全員の評価の機会とし、樹形図を用いて解決させていくようにしました。そのことにより、これまでに学習した樹形図がどのような場面で生かされるのかを示すことができ、樹形図の活用を促していくことができました。
ICT利活用について
 
「学び合い」の段階において、書画カメラを用いて児童のノートを拡大提示することで、自分と友達の調べ方の違いを視覚的に捉えさせ、よりよい表現の仕方は取り入れさせていくことができました。
 
ICTを活用したことで、児童がかいた図や表を必要に応じて瞬時に紹介することができ、学習の広がりや深まりにつながりました。しかし、電子黒板に提示するものは次々と変わっていくため、紹介された考えを簡潔に板書に残していくことが大切だと感じました。

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