イ トレーニングの実際 |
トレーニング実施一覧
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田村式眼力ボード |
ブロックストリングス |
フロスティッグ視知覚学習ブック |
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シェイプバイシェイプ |
エンジョイジオボード |
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1回目 |
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2回目 |
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3回目 |
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4回目 |
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トレーニングメニュー(1回目)はこちら |
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田村式眼力ボード(2〜3分)(プリント例PDF) ※子どものメニューには「ジャンプボード」と記載
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眼を1点から別の1点まで、素早く動かすことができるようにするためのトレーニング。
メトロノームに合わせ、一定の速さで上下、左右、斜めに眼を動かし、書かれた数字を読む。
対象児童の実態に合わせて、メトロノームの速さを設定した。
1回目は、眼が途中で止まったり、違うところを見たりして、
数字を見ないで読むことがあった。メトロノームに合わせることも難しく、トレーニングの後は、眼の疲れを訴えていた。対象児童は「斜め(に読むこと)がきつい。」と言っていた。まばたきの回数も多かった。この後、家庭でも両眼の眼球運動の簡単なトレーニングを続けてもらった。2回目は、まばたきの数も前回より少なくなり、メトロノームに合わせて眼を動かすことができるようになった。 |
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ブロックストリングス(1〜2分) |
両眼を素早く寄せたり、離したりできるようにするためのトレーニング。
ひもに通したビーズを、遠くから手前に順番に見ていく。ひもがビーズの玉の中心で交差して見えるのが正しい見え方である。
近くのビーズから遠くのビーズを順番に見ていくようにし、次に、遠くのビーズから近くのビーズを順番に見ていくようにした。初めに、それぞれの位置のビーズが正しく見えているか確かめた。そして、正面から眼が均等に寄っているかを見ていった。
トレーニングが終わった後は、まばたきをが多く、目の疲れも訴えていた。特に、「近くのビーズに両眼を寄せるときがきつかった。」と言っていた。その後、家庭でもブロックストリングスを使ってトレーニングをしてもらった。両眼を均等に寄せることができるときが増えた。 |
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視知覚 |
フロスティッグ視知覚学習ブック(2〜3分)
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視知覚機能を高めるためのトレーニングブック。
課題プリントを使って、提示された様々な見本と同じ絵や図形を探したり、絵や図形の区間における位置などを考えたりする。
対象児童は、「空間における位置」に関する課題に取り組んだ。
担当が一つ一つの課題について、絵や図形のどの部分に着目するのか、どの部分を注視すればよいのかを丁寧に説明して、簡単な課題から取り組んでいった。1回のトレーニングで、2枚程度の課題プリントを行った。その結果、課題プリントに取り組むごとに、見本と同じ位置や同じ向きにあるものを、速く探すことができるようになっていった。 |
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カード探し (1〜2分) |
図形を識別する力を高めるためのトレーニング。
見本のカードに描かれている図形と同じ図形が描いてあるカードを探す。
見本と同じカードを、色や形が似ている数枚のカードの中から探すようにした。
1回目、見本と同じ向きに並べたときは、同じカードを探すことができたが、向きを変えると、探すことが難しくなり、時間がかかった。そこで、図形のどの部分を注視すれば見分けがつくのかを担当から伝えたところ、見分け方に気付くことができた。2回目は、1回目より作業時間が短くなった。 |
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シェイプバイシェイプ(5分程度)
形態や空間をイメージする力を高めるためのトレーニング。
出題カードの形を、赤6個、黄6個のピースを組み合わせて作る。
トレーニングを始めたころは、見本と同じパズル片を探すことが難しかったので、出題カードの裏に描かれている答えをヒントにして、パズル片を探すようにした。これは、赤だけのピース、黄だけのピースに分けて答えを示しているので、ピースを探しやすくするものである。対象児童は、答えを見ながら、取り組み、見本と同じように組み合わせることができると、とても疲れた様子で、休憩した。
トレーニングを重ねるごとに、組み合わせるパズル片を選んだり、向きを合わせたりすることが速くなっていき、終わった後は笑顔を見せるようになった。苦手さを克服できた喜びが伝わってきたエピソードである。一人で課題を解決することができるようになったり、速く作り上げることができるようになったりしたので、トレーニングでは、出題カードを楽しそうに選んだり、できあがったパズルを保護者に見せたりしていた。
※子どものメニュー表には、「ブロックパズル」という呼び名を使っている。 |
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エンジョイジオボード(理学館)(5分程度) |
形態や空間をイメージする力を高めるためのトレーニング。
ジオボードの突起に輪ゴムを引っかけて見本と同じ形を作る。
担当がジオボードに作った見本を見て、同じ形を作るようにした。
見本が同じ色の輪ゴムで、2つ以上の重なった図形であると、形の区別がつきにくく、間違えることがあった。輪ゴムの色を変えて提示すると、分かりやすくなり、間違わなくなった。トレーニングを重ねていくと、重なった図形も同色の輪ゴムでスムーズに作ることができるようになった。 |
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出力 |
ストラックアウト(5分程度) |
1点を見つめて、体を動かすトレーニング。
ボールを投げて、数字の的に当てる。
ねらった的の番号を言ってから、ボールを投げるように指示した。
体の動きにぎこちなさはあるものの、1点をよく見て投げることができた。トレーニングを重ねるごとに、対象児童は、数字の的をよく見て、当たることを考え、当てやすい投げ方を試しながら行った。的をよく見ることができるようになってきたからか、担当が投げたボールも、バウンドせずに取ることができるようになってきた。対象児童が楽しくできる活動で、笑顔がたくさん見られた。 |
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DEMテスト |
DEMテストは、3回行った。
1回目のタイムは、たて読みが34秒、よこ読みが41秒であった。2回目は、たて読みが32秒、よこ読みが36秒、3回目は、たて読みが27秒、よこ読みが32秒であった。タイムはトレーニングを重ねるごとに速くなっていた。
よこ読みは、文字間隔が広く不等間隔に並んだ数字列を横に音読するテストである。このよこ読みにおいて、1回目は、読み飛ばしがに4行あったのに対し、2回目は1行になり、3回目は読み飛ばさず、すべての数字を音読することができた。
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ウ 考察 |
対象児童は、「見る力」のアセスメントやWISC-Vなどの検査結果から、主に視覚情報処理機能に弱さが見られると考えられた。このことが、図形の問題を解いたり作図をしたり、板書を写したりすることの困難につながっていると思われた。そこで、視覚情報処理機能を高めるトレーニングを中心に行った。
トレーニングは、10月から12月まで4回行った。また、家庭には、5分くらいで終わる簡単なトレーニングを、毎日実施してもらった。
視覚情報処理機能を高めるトレーニングでは、図形を探したり作ったりすることを行った。このトレーニングを重ねるごとに、作業速度が速く正確になってきた。これは、図形の部分を注視するコツをつかむことができるようになったためだと考える。、また、両眼の運動機能を高めるトレーニングでは、眼を素早く動かしたり、両眼を寄せたりすることを行った。DEMテストにおいては、たて読み、よこ読みのタイムが速くなってきている。また、よこ読みのテストにおいては、行を飛ばさないで音読することができるようになった。 この結果から、トレーニングを行ったことにより、眼が以前よりスムーズに素早く動くようになってきていると考える。
対象児童が在籍する学校の学級担任からの聞き取りによると、学習場面では、板書を写すことが速くなったり、ノートの文字の大きさがそろってきたり、以前より線をまっすぐひくようになったりするなど、書く活動において、変容が見られていることが分かった。また、保護者の話から、生活場面において、部分をよく見て、物の区別ができるようになったりしてきていることが分かった。
これらのことから、対象児童においては、「見る力」を高めるトレーニングが効果的であったと考える。 |