読み書き等のつまずきに対する「見る力」を高めるトレーニングの活用

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「見る力」のアセスメント
について
 
 
3 「見る力」のアセスメントについて

「見る」活動を支えているそれぞれの機能に弱さがある児童生徒の中には、学習や生活の中で苦労していることがあります。そのため、児童生徒の日常生活の様子から「見る力」のつまずきを把握し、つまずきを改善できるような働きかけ(トレーニング)が必要となります。

そこで、本研究では、児童生徒の日常生活から「見る力」のつまずきを把握するための「見る力」チェックシートを作成しました。これは、児童生徒の「読む」「書く」「道具を使う」「運動する」「休み時間」等の具体的な様子から、児童生徒の「見る力」を知ることができるようになり、児童生徒の「見る力」に応じたトレーニングを考えることができます。

このように、「見る力」のアセスメントを通して、児童生徒の「見る力」のつまずきを改善することができれば、学習場面での読み書き等における負担が軽減され、学習や活動に意欲的に取り組むことができるようになると考えます。

「見る力」のアセスメントの詳しい流れについては、以下の通りです。

(1) 「見る力」のアセスメントのステップ
 
     ステップ1       教師や保護者の気付き


       「本をすらすら読めないなあ。」「字を書くのに時間がかかるなあ。」など、
        児童生徒が困っていることに気付きます。

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     ステップ2       「見る力」チェックシート

    
学習や生活の様子を「入力」「視知覚」「出力」の場面に分けてチェックします。

「入力」機能に一つでも
問題があった場合
「視知覚」機能に一つでも
問題があった場合
「出力」機能に一つでも
問題があった場合
        yajirusi1           yajirusi1                  
yajirusi3
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          ステップ3           ステップ3

「入力」機能
について
「両眼の運動機能」
から
チェックをして、
トレーニングに進みます。

「視知覚」機能
について
「視覚情報処理機能」
から
チェックをして、
トレーニングに進みます。


yajirusi7 必要があれば
yajirusi4
必要があれば
yajirusi4
yajirusi7
               yajirusi4
   

トレーニングを試してみます。

 
(2) 「見る力」のアセスメントの実際
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ア ステップ1 教師や保護者の気付き
 授業中、教科書をすらすら読むことができない、宿題で、漢字を書くのにとても時間がかかるなど、読んだり書いたりする場面で、児童生徒が困っていることに、教師や保護者が気付くことです。
 
イ ステップ2 「見る力」チェックシート
  児童生徒の「見る力」に関する内的な条件についての情報を得るために、学習や生活の場面のどんな活動で児童生徒が困っているのかを、「見る力」とのかかわりでチェックをすることにしました。

奥村ら(2010)は、幼児期と学齢期における児童生徒の視覚に関する大まかな特性を把握し、検査や訓練の必要性を検討するためのチェックリストを作成しています。この他にも視覚機能の状態をみるためのチェックリスト(北出2003,2009)(内藤2002)が作成されています。

そこで、これらのチェックリストを参考に、教師や保護者が、児童生徒の様子を想起しやすく、具体的な学習や生活場面から児童生徒の「見る力」を知ることができるように、Excelマクロ機能を組み込んだチェックシートを作成しました。

具体的な学習や生活場面を、「読む」「書く」「道具を使う」「運動する」「休み時間」「その他」に分けて質問項目を整理しました。それぞれの項目について、児童生徒の実際の様子があてはまるかを、「◎よくあてはまる」「○あてはまる」の2段階でチェックできるようにしました。図1は、「見る力」のチェックシートの一部です。

      「見る力」チェックシート(Excel版マクロ含む)のダウンロード
チェックシート
図1 「見る力」のチェックシート(一部抜粋)

チェックシートのチェックが終わると、その結果は、マクロ機能により、「入力」、「視知覚」、「出力」として、自動的に集計されます(図2)。「入力」「視知覚」に問題があった場合には、ステップ3で「両眼の運動機能」や「視覚情報処理機能」をチェックすることで、児童生徒の「見る力」を詳しく知ることができます。
チェックシート1部

図2 「見る力」チェックシート 入力後

 この「入力」、「視知覚」、「出力」は、 「見る力」を支える視覚機能と関係しています。
 児童生徒の学習や生活場面におけるつまずきの様子は、「見る力」を支える視覚機能が、お互いに働き合っているため、機能ごとに分類できません。そこで、児童生徒の学習や生活場面を、図3のように、「入力」「視知覚」「出力」の3つに分類しました。

「見る力」説明
図3 「入力」「視知覚」「出力」分類 (【参考図書】 『「見る」ことは「理解する」こと』 本多和子・北出勝也著)

                        
 「見る力」チェックシートの質問項目と、「入力」「視知覚」「出力」との関係は、下の「『入力』『視知覚』『出力』分類表(PDFファイル)」を参照してください。
                    (「入力」「視知覚」「出力」分類表(PDFファイル)」)
 
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ウ ステップ3 「入力」機能についてのチェック
 「入力」機能について、「両眼の運動機能」からチェックします。「入力」機能の中の「調節」については、「跳躍性眼球運動」「追従性眼球運動」と関連しています (「見る力」について 参照)。終わったらトレーニングに進みます。

眼球運動や両眼視の機能について、 正確に働いているかどうかをチェックします。
《準備する物》 消しゴム付き鉛筆など、見るポイント(視標)がはっきりしている物

【跳躍性眼球運動】
《目的》
  この眼球運動は、あるポイントから違うポイントにジャンプするように眼を動かすときに使っています。眼が、すばやく正確に動いているかどうかをチェックします。

《方法》
 検査者が、手に持った視標を、上下、左右、斜めに素早く動かします。
 児童生徒は、眼を素早く動かして、視標を見ます。

           kyoro
《こんな様子が見られたら要トレーニング》
☆どうしても頭や顔が動いてしまう。
☆途中で眼が止まって、視標に眼が移動しない。
☆眼を動かすとき、直線的でなく曲線的に動かす。

      

      
       

             tyouyaku check

【追従性眼球運動】
《目的》
  この眼球運動は、ゆっくり動いているものを眼で追うときに使っています。眼球運動が、なめらかに行われているか、視標の動きの変化についていっているかをチェックします。 

《方法》
 検査者が、手に持った視標を、ゆっくりと 、20〜30pの範囲内で、縦、横、斜めに動かします。
児童生徒の正面からスタートします。
児童生徒は、ゆっくりと視標を眼で追います。
   tuijyu
《こんな様子が見られたら要トレーニング》
☆どうしても頭や顔が動いてしまう。
☆途中で眼が止まって、視標から 視線がはずれてしまう。
☆視標を追わないで、動きを予想 して眼を動かそうとしている。



  


    tuijyu check

【両眼視】
《目的》
  この眼球運動は、遠くのものから近くのものを素早く見るときに使っています。 両眼を正しく寄せたり離したりしているかどうかをチェックします。

《方法》
 児童生徒から50p離れた所からスタートします。
  検査者は、視標を児童生徒の両眼の間に、ゆっくりと近付けていきます。
             ji-
《こんな様子が見られたら要トレーニング》
☆視標が、眼から10p以上離れたところで2つに見えてしまう。
☆視標が、眼から10p以上離れたところで片眼がずれ、両眼で見ていない。
☆視標を、眼に10p以上近付けると、はっきり見えない。(理想は眼から2〜3p離れたところまではっきり見える)


             ryougann check


エ ステップ3 「視知覚」機能についてのチェック
 「視知覚」機能について、「視覚情報処理機能」からチェックします。終わったら、トレーニングに進みます。
 形態をとらえる力や空間をとらえる力をチェックします。
《準備する物》 鉛筆、チェックするプリント

形態知覚チェック 【形探し】
《目的》
 眼球から送られてきた映像を、形や図として正しく脳で認識しているかどうかをチェックします。

《方法》
1.チェックするプリントの見本の図形を提示します。 
2.児童生徒は、ア〜オの形の中から、見本と同じ形を探して、記号で答えます。

※画像をクリックするとチェックするプリント(PDF)がダウンロードできます。
チェックするプリント
形探し
【模写】
《目的》
 眼球から送られてきた映像を、形や図として正しく脳で認識し、描き表すことができるかどうかをチェックします。

《方法》
1.チェックするプリントの@〜Iの見本と同じ形を、枠の中に描くように指示します。
2.児童生徒は、見本を見ながら枠の中に描きます。

※画像をクリックするとチェックするプリント(PDF)がダウンロードできます。
チェックするプリント
模写
空間知覚チェック  【形探し】
《目的》
 空間における形や図を正しくとらえることができているかどうかをチェックします。

《方法》
1.チェックするプリントの@〜Bの見本(左側)と同じものを右側の中から探すように指示します。
2.児童生徒は、右側の中の同じものを○で囲みます。

※画像をクリックするとチェックするプリント(gif)がダウンロードできます。
チェックするプリント
視覚 形探し
【位置探し 】
《目的》
 空間における形や図の位置関係をとらえることができているかどうかをチェックします。

《方法》
1. 「@からBのピンクのコップは、青いコップの前、後ろ、横にあります。」と教示します。@〜Bについて、ピンクのコップがどの位置にあるのかを質問し、子どもはそれについて答えます。
2. 「CからEの時計は、携帯電話の前、後ろ、横にあります。」と教示します。C〜Eについて、時計がどこにあるかを質問し、児童生徒はそれについて答えます。
※画像をクリックするとチェックするプリント(gif)がダウンロードできます。
チェックするプリント
視覚 位置探し
 
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最終更新日:2011-03-30