対象を立体的にとらえる力を養う指導法を提案します |
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1 | 発達段階と個人差について |
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この研究で考える発達段階に関しては、V・ローウェンフェルドの発達段階に関する考え方を基に、児童生徒が成長によって変化する条件の概観を位置付けている。小学校の研究対象である小学5年生においては、「写実主義の開始(前青年期の危機)」段階、また中学校の研究対象である中学2年生においては、「擬似写実主義の段階(推理の時期)」段階とし、それぞれの発達段階の中で考えられる「特性」や「空間の再現」を考慮しながら指導法を研究した。
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2 | 発達段階全般の要約 |
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この一覧表に関しては、「児童生徒の成長過程において見られる特徴の抜粋であり、それぞれの発達段階における美術活動の目標や指導内容等ではない」と著者は記している。 つまり、あくまでも「見られる様子をまとめた一覧表」であり、ここまで達成しなくてはならない、または、こうならなければならないという意味合いのチェック表などではないということを注意したい。
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3 | 発達段階、個人差に応じるための工夫 |
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(1) 図画工作科 | ||
図画工作科では、児童の発達段階に応じるため次のような指導方法の工夫を行った。 次に、この時期は様々な素材に興味をもち始める時期であるので、身近なものでありながら今まで使った経験の少ないスポンジを用いるようにした。スポンジは、柔らかく、容易に形を変えることができ、はさみでカットすることもできる。このような特徴をもつスポンジは、児童が立体表現を行うのに適していると判断した。 また、この時期は自分という存在を強く意識し、ものごとに対する自分なりの認識をもつようになる。その点を考慮し、本題材ではワークシートを活用することで、児童の題材テーマに対する思いを知り、その思いを学習の中での話し合いで取り上げたり、個別指導に生かすようにした。 |
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(2) 美術科 | ||
美術科では、生徒の発達段階に応じるために次のような指導方法の工夫を行った。 まず、中学2年生における発達段階を考えると、「三次元の表現への衝動」が見られ、自分でイメージしたものを平面で描き表そうとするときに陰影を付けたり、透視図の視点で描画しようと試みることが多い。また、絵画を鑑賞するときも遠近感があるものや、写実的な表現を好む傾向が強くなるのもこのころである。こういった「三次元の表現への衝動」について、きちんと理解し、指導・支援していくことが、表現する喜びや制作後の達成感につながると考える。 このことを踏まえ、スケッチや透視図法など立体を平面に描き表すための学習と、正投影図などの平面で描かれたものを立体として作り上げるための学習に取り組むことが、対象を立体的にとらえる力を養うための指導法を考える際に発達段階に応じた指導になると考えた。 そこで本題材では、ICT教材「いろいろな彫り方」において、理解するのが難しいと予想される技法を説明する場面では正投影図を模した画面レイアウトとし、形を立体的にとらえやすいように工夫した。 また、実際に制作をしている動画を資料として盛り込むことで、イメージしている制作過程と実際に行う制作過程にずれが生じないように工夫した。 新学習指導要領において言語活動が重視されていることを踏まえ、導入の段階や展開時のアイデアスケッチの検討の中で鑑賞活動を取り入れて、作品や作者の思いを理解したり、グループ批評を取り入れて、他者の思いや意図を知ることで、自らの思いや意図を広げたり深めたりできるようにした。また、これらの活動に関連し、一人一人の生徒へのアドバイスや適時的な個別指導ができるように配慮したワークシートを作成した。
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最終更新日: 2009-03-25 |