対象を立体的にとらえる力を養う指導法を提案します |
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1 | 研究テーマ |
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対象を立体的にとらえる力を養う指導法の研究
―立体作品の制作におけるワークシート、ICTを活用した学習活動の工夫を通して― |
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2 | 研究テーマ設定の趣旨 |
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(1) | 児童生徒を取り巻く環境の変化と「立体的にとらえる力」の変化 | ||
近年、児童生徒の視覚から入る情報は大きく変化している。かつて、視覚による情報は実際の風景や身の回りにあるものなど、実在するものを見ることが主であった。しかし、今日、コンピュータグラフィックスの技術やアニメーション技術などの目覚ましい発達によって、テレビや映画、ゲームソフトなどの仮想で作られた世界が激増している。このことによって立体的に表現された画像であっても、見る側は単視点の見方を強制させられていることが多く、多面的に対象を把握することが難しい状況にある。このことは図画工作科・美術科における作品制作にも大きな影響を与えていると思われる。 本来、人間が視覚を通して認知する能力には、自然物・建造物などの立体やその周囲の環境を把握する空間認知能力と、平面上の情報を単純に平面として把握する平面認知能力の2つがあり、双方が適度なバランスを保っていた。しかし、情報機器の急速な発達に伴い、より後者を求められるような状況へと変化してきている。このことが対象を立体的にとらえる力と、スケッチを基に立体作品を作り出す力という2つの基礎的な造形力の低下を招いていると考えられる。(注1) |
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(2) | 立体的にとらえる力を養うために | ||
対象を立体的にとらえる力は、@「立体(立体的な工芸装飾を含む)・彫刻」制作の学習過程に即して、制作したいもののイメージを具体化していく「構成力」、Aアイデアスケッチから、立体を作り出す「思考力」、B制作時において素材を量的にとらえつつ造形していく「表現力」の3つの力をスパイラル的に育てることによって養われると考える。(図1参照) 「スパイラル的に育てる」とは「構成力」から「思考力」へ、「思考力」から「表現力」へ、更に「表現力」から、より豊かな「構成力」へと育成を繰り返すことを意味し、これら並列の関係にある3つの力の育成を、児童生徒の造形にかかわる発達段階と個人差に応じて繰り返していくことを意味する。(図1参照) 「構成力」「思考力」「表現力」という3つの力について、ここでは次のように考える。 「構成力」とは、児童生徒が、これまでの経験などから得た知識や情報、空間感覚などを基に、作りたいと思ったイメージを、発想や構想する能力を生かして作り上げる力ととらえている。 また、「思考力」は、アイデアスケッチと、思い描くビジョンを交互に比較しながら、思考上で様々な試行錯誤を繰り返し、立体としてのビジョンを構築していく力ととらえている。この思考力については、V・ローウェンフェルドの考え方に基づいている。 そして「表現力」は、思考力を経て立体的なビジョンになりつつあるイメージを、実際に立体として表現する力ととらえている。この力には、制作に関する工程を考えることから始まり、素材や技法の検討、そして制作を経て完成までの一連の活動に取り組む力も含むと考える。 |
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図1 研究の構想図 |
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(3) | 養うための手立て | ||
本研究では、前述した3つの力を育成することを通して、対象を立体的にとらえる力を養う。そのための手立てとして、小・中学校の発達段階と個人差に応じて、次の2つを研究の手立てとする。@ICTを活用しながら立体を様々な方法でとらえる教材や指導法について研究する。AICTの活用と関連し、児童生徒が自らの活動を振り返ることができるワークシートを作成する。この2つを通して、3つの力をスパイラル的に育成していくことを研究の手立てとする。 |
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3 | 研究の目標 |
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図画工作科・美術科の授業において、対象を立体的にとらえるためのICTを用いた教材とワークシートを効果的に活用することにより、児童生徒の対象を立体的にとらえる力を養う。 | |||
4 | 研究の仮説 |
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図画工作科・美術科の立体作品制作において、対象を立体的にとらえるICT教材と、発達段階や個人差、学習過程に応じたワークシートを活用すれば、イメージを構成する力や、立体を作り出す思考力、素材を量的にとらえつつ造形していく表現力の3つの力がスパイラル的に高められ、児童生徒の対象を立体的にとらえる力を養うことができるであろう。 | |||
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最終更新日: 2009-03-25 |