第3次では、次の3つの手立てを講じて、授業を行った。1つ目はアイデアスケッチについて、前時の調査活動の成果も踏まえて、グループ批評を行うということ。2つ目はプレゼンテーションソフト「いろいろな彫り方」を実際に生徒が操作し、技法について学習するということ。3つ目はアイデアスケッチを基に、ソフトで確認した技法を踏まえながら平面図を描くことである。
ここでは検証授業との関係で、1つ目と2つ目について考察したい。
(1) ワークシートを活用した、「共通テーマの設定」に基づくアイデアスケッチのグループ批評について
課題としていたアイデアスケッチについて、前時と同じようにスクリーンに映し出し、紹介した後でグループ批評の時間を行った。この活動がどのような効果があったか生徒に行ったアンケートから考察する。
生徒のアイデアスケッチを用いてのグループ批評についての生徒の記述
いろいろな友達の絵(アイデアスケッチのこと)を見ることができて、楽しかった。 |
友達の意見や作品(アイデアスケッチのこと)を見ることができたことがよかった。 |
※橙色マーカーは、ワークシート活用の効果の裏付けになると考えられる記述
生徒は他の生徒のアイデアスケッチに対して、とても興味があることと、スクリーンに映し出されるスケッチやグループ批評で他の生徒のスケッチを見ることができることは、生徒にとって楽しい活動であるということが、生徒の記述などからも分かる。このような記述は他にも多く見られた。
初めに学級全体で、スクリーンに映し出されたアイデアスケッチを基に、意見交流したことで、次に取り組むグループ批評のモデルを示すことができたこともグループ活動が充実した要因であると考えられる。。
(2) プレゼンテーションソフトを使った技法指導について
前時で紹介したプレゼンテーションソフトについて、本時では生徒自らが操作し、彫り方の技法について学習を進めた。また、立体を平面に描き表す正投影図について、どのように描けばよいかということについてもプレゼンテーションソフトを用いた。これらの学習活動がどのような効果があったかということについて、生徒に実施したアンケートから考察する。
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図5 ソフト「立体的にイメージする」を用いて、立体的な形を
つかむことができたかということへのアンケート結果
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図5のアンケート結果から、プレゼンテーションソフトのアニメーションや動画が、立体的な形をイメージする力の向上にもつながったということが考えられる。
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図6 ソフト「いろいろな木彫」を用いることで、具体的な彫り方
について理解ができたかということへのアンケート結果
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図6のアンケート結果から、プレゼンテーションソフトを使うことで、生徒が具体的な彫り方について理解しやすかったということが分かる。
これらのアンケート結果から、プレゼンテーションソフト「いろいろな彫り方」が興味・関心を高めるだけでなく、立体をとらえる力を養う指導に有効であることが考えられる。生徒が実際に操作したことについての感想を見ても、分かりやすかったという声が多かった。
(3) ICTの活用が、生徒の興味・関心を高めたかということへのアンケート結果
今回の検証授業では3回の授業をICTとワークシートを活用して行った。特にICTに関しては下の図7のグラフからも分かるように、生徒の興味・関心を高めるには有効な手段であったことが分かる。プレゼンテーションソフトにより、様々な絵画や資料をより実物に近い形で、効率よく提示したり、動画やアニメーションを使って、分かりやすい教材に加工して提示したりしたことが、興味・関心の高まりへもとつながったと考えられる。
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図7 プレゼンテーションソフトの活用と生徒の興味・関心の
関係についてのアンケート結果
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3回の検証授業で、いろいろな学習過程においてICTの活用が生徒の学習活動を活発にし、立体をとらえる力を養うことに効果があるということが検証できた。
プレゼンテーションソフトで、生徒がワークシートに書いてきた調べ学習の内容やアイデアスケッチを提示したことで、それまでイメージやアイデアがまとまっていなかった生徒の参考となり、後で行ったグループ批評の活性化につながったことが、ワークシートのコメントなどから分かった。
また、プレゼンテーションソフト「立体的にイメージする」を用いた正投影図の説明に関しても
、アニメーションの効果により、平面を立体としてとらえる力が高まったと推察できる。
また、「いろいろな彫り方」についての学習に関しては、パソコンを自分で操作しながら学習できるということが生徒には好評であった。これまで「この技法をやってみたい」とか「こういう形に彫ってみたい」と思ってはいても、彫り方が十分に理解できていなかったり、教師にたずねることができなかったりして、活動が滞ることがあった。「分からなかった内容を、自分で操作して見ることができ、分からないところは何度でも繰り返し確認できることがよかった」という感想を生徒から聞くことができた。自分で操作することによって、納得いくまで何度も確認できることが、その次の段階であるイメージやアイデアを具体的な装飾デザインを描くときの意欲へとつながったと考えられる。
課題としては、パソコンの台数が少なかったということが挙げられる。教室に3台、パソコンを設置し、操作できるようにしておいたが、他の生徒の操作を見るだけだったり、順番を待っていたりしていたので、あと3〜5台ほどあれば、更に効果が高かったと考えられる。こういった設備の点に関しては、学校の施設に関する事情もあり、難しい面も多い。この点が今後の課題となるだろう。
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