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好ましい人間関係を育てる開発的・予防的教育支援の在り方の研究

2 研修の実際

  「がばいシート」について 

       
  (1)実施の前に       
(2)実施上の手順      
(3)グラフの見方について 
・「がばいシート」についての説明です
・手順と役立つ情報を紹介しています
・基本的な見方から、よくあるグラフの例まで紹介しています
       

(1) 実施の前に

   
 
@ 「がばいシート」とは    
  ★ 「がばい」は《っきゅう・っちり・いなかま》から作った言葉です。
  学校で子どもたちが安心して過ごすために、子ども同士の人間関係が良好であるか、
  教師と子どもの関係はどうか、子ども一人一人が自己存在感を感じているかを把握し、
   その状態に応じた適切な支援を考えるために作られたシートです。    
  ★「がばいシート」はアンケート集計表で構成されています。  
 
     アンケートの質問項目は次のようになっています。 →(中学校・高校用の生徒用アンケート)  
                                                                     →(中学校・高校用の教師用アンケート)
  ★アンケートは、10分程度で実施できます。    
  ★点数を入力すると5つの観点別にグラフ化されます。    
      こんなグラフが表示されます。 (見やすいように簡略化しています)    
     
     *グラフの縦軸の数値は、各観点の回答状況を点数化し、合計したものである。
     好ましい状態であるほど点数が高く、満点は20点とする。
   
  5つの観点とは    
  ●「学級の雰囲気」    
  明るく楽しい雰囲気がある、助け合う雰囲気がある、ルールが守られているなど、居心地のよい集団の雰囲気があるかを見る。
  ●「友達との関係」     
  友達と何でも話せる、困っているときに友達が助けてくれる、また、友達とのトラブルやいじめにかかわることがないなど、友達との関係が良好かを見る。
  ●「自己存在感」    
  先生や友達から、励ましや賞賛、感謝、信頼などがある、集団の中で、自分は価値のある存在である(自己肯定感、有用感、所属感、成就感などがある)と感じているかを見る。
  ●「授業への意欲」    
  授業が分かる、進んで参加する、工夫する、質問するなど、授業への意欲があるかを見る。
  ●「教師との関係」    
  先生と話や遊びをする、先生に相談をしている、認められている、また、先生から傷付けられることはないなど、教師との関係が良好かを見る。
   
  ★各個人の状態も同様にグラフで見ることができます。    
     
A 「がばいシート」の入手方法    
  ★こちらからダウンロードできます。許可は必要ありませんし、無料です。  
  ★それぞれに ◆アンケート用紙(PDFファイル)  ◆集計表(Excelファイル)
  圧縮ファイル (ZIP形式)
 で入っています。
  クリックしてください↓
   ※1つの集計表で、3回分の実施結果まで入力でき、比較しながら表示することができます。    
  ★ 「がばいシート」のダウンロードは下記の手順で行います。
          ★ ダウンロードした後の手順については次の手引きをお読みください。  小学校用  中学校・高校用
   
 
  もっと詳しく知りたい方は→平成20年度の研究をご覧ください。
 

(2) 実施上の手順

    
 
             
   
 
手順1 「がばいシート」のダウンロード及び必要枚数印刷  
  ★小学校低学年で実施する際は、B4程度に拡大してもよいでしょう。
  ★中学・高校生用は、学級用と部活動用を両面印刷すると便利です。
   
手順2 アンケート実施
  ★実施上の注意事項は、「がばいシート」の“はじめに”を見てください。  
  ★教師用も実施します。学級担任を含め2名まで実施可能です。
     
手順3 集計表入力
  ★集計表に氏名や点数を入力します。
  ★男子や女子のみの学級は出席番号順につめて入力します。
  ★教師用は学級担任1人ではなく、最大2名までの数値が入力できます。
   
手順4 結果の分析  
  ★学級や個人の状態がグラフや表に表されます。  
  ★グラフの見方は  →こちら(H20年度研究より一部抜粋) (3)もご覧ください
  ★入力シート自体も効果的に活用できます。             (4)のBをご覧ください
     
手順5 支援案の作成  
  ★支援案作成の参考に  →観点別の支援のポイント(H20年度研究より一部抜粋)    
     
手順6 支援の実施  
     
※ 2回目の「がばいシート」実施  
  ★@に戻ります。結果を基に、これまでの支援を振り返り、これからの支援を考えます。
   
 

(3) グラフの見方について

 

 

 以下のような点に着目すると、分析・支援の手掛かりになります
 
@児童生徒の結果で点数の低い観点はどれか。   
  →観点別の結果から各項目別に見る、また、個人の様子の結果を見るなど、点数の低い原因を探り、集団に
  対する支援および個別に対する支援を考える。

   
A児童生徒の結果で点数の高い観点はどれか。
  →集団または、個人の長所ととらえ、それを生かした支援を考える。
   
B児童生徒と教師の点数の差が大きい観点はどれか。
  →児童生徒と教師の意識の差を認め、なぜ差があるのかを考えてみる。教師の意識を修正して、必要な支援
  を考える。
   
C児童生徒と教師の点数の差が小さい観点はどれか。
  →児童生徒と教師の点数が同じように高い場合は、その学級では実態に応じた適切な取り組みがなされてい
  ると考えられる。
→児童生徒と教師の点数が同じように低い場合は、教師は支援が必要であると感じているので、@を参考に
  支援を考える。
   
D個人の様子のグラフで、学級の様子の各観点の平均より極端に低い観点はどれか。
  →観点別の結果から各項目別に見るなど、その観点が低い原因を探り、支援を考える。
 
 分析の例を紹介します 
 
「学級(部活動)の様子」のシートから
   
 
ア 「友達との関係」の児童生徒の平均点が教師の点数と比較して高い。
                                      学級の様子


 
 
   
    《原因として考えられること》
「友達との関係」のとらえ方が教師と児童生徒では違うのではないか。
  (児童生徒は、仲よしの友達やグループとの関係でとらえているのに対し、教師は、学級全体の友
  達関係でとらえている場合がある。)
児童生徒は、学級全体の友達関係を見ていないのではないか。
  (児童生徒は、1人でも仲よくしてくれる友達がいれば高い点数“3又は4”を付けるのに対し、
   教師は、1人でも孤立しているような児童生徒がいたら低い点数“2又は1”を付ける場合がある。)
 
   
   
イ 「自己存在感」の児童生徒の平均点が他の観点の平均点と比較して低い。
                           学級の様子
 
 
   《原因として考えられること》  
自己存在感は体験の積み重ねによって実感するようになるため、年度当初は低く出るのではないか。
 
小学生の場合、「頼りにされている」「役に立っている」と実感することは難しいのではないか。  
特に友達間においては、互いに助け合うなどの行動が当たり前になっていて、「ありがとう」と言葉を掛けて、気持ちを伝えていないのではないか。  
       
   
ウ 「教師との関係」の児童生徒の平均点が教師の点数と比較して低い。
                            学級の様子
 
 
   《原因として考えられること》  
中学・高校生は、発達段階から、教師との関係に距離を置くためではないか(教師に相談しないなど)。  
小学校では、「先生と遊んでいる」の点数が低い“2又は1”であるためではないか。
  (子どもが十分に満足するほど遊ぶことは物理的に難しい[遊びたくても時間が取れない]場合がある。)
 
       
   
エ 1回目と比較し、支援をしたにもかかわらず、2回目(3回目)の結果が下がってしまった。
                           学級の様子
 
 
   《原因として考えられること》  
児童生徒が、初回は周囲の様子が分からず表面的な見方でアンケートに答えたが、次第に学級内での人間関係が形成されて、実態に近い気持ちを回答するようになったためではないか。
 
児童生徒が、以前より厳しい目で回答するようになったためではないか。
 
2回目(3回目)は学級内でトラブルなどがあった後にアンケートを実施したのではないか。
 
 
 
「個人の様子」のシートから 〜注意して見る必要のある児童生徒〜 
 
  ア すべての項目において「4」を選択している。
 
「本音を語っていない」「自分と向き合っていない」「自分をよく見せようとしている」等の可能性がある。
   
   
  イ 他の観点と比較して「学級の雰囲気」の点数が低く「友達との関係」が高い。
 
   
「友達との関係」の中の「悪口や暴力、無視で傷つけられることはない」の項目の点数が低い“1又は2点”の場合、仲よしの友達やグループ以外からいじめられている可能性がある。
   
   
  ウ 「友達との関係」で、仲よしの友達やグループと比較して点数が低い。
 





生徒Dは仲よしグループ内の友達(生徒A〜C)に仕方なく合わせているけれども、
不満をもっている可能性がある。
   
   
  エ 他の観点と比較して「友達との関係」だけが高い。
                            個人の様子
 
   
友達関係だけで、学校生活が保たれている。表面的には楽しそうに見えるが、友人関係でトラブルが発生すれば、不適応を起こす可能性がある。
   
   
  オ 「学級の様子」と「部活動の様子」とを比較して、いくつかの観点に差が見られる。
                           学級での個人の様子
 
   
                    部活動での個人の様子
比較して低い点数の集団に、居心地の悪さを感じている可能性がある。
   
   
集計表の活用法
   
     
                                                           ※点数が「1」の箇所と観点別の合計が10点以下の箇所に
                                     水色のマーカーで印をけています。
  (1) Excelファイルの集計表シートに入力が終わったら、そのページをプリントアウトします。
(2) プリントアウトした集計表を見ながら、支援担当者が「点数が低い」と判断したところにマー
  カーなどで印を付けます。
    →この作業が学級や児童生徒のアセスメントとなります。
(3)集計表全体を見て、特に点数が低い観点や項目、マーカーの箇所が多く気になる児童生徒、
  日常の観察とは大きく違っている児童生徒等、気になる点をピックアップし、支援へつなげます。


 

 


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最終更新日: 2010-03-23