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4技能「聞く・話す・読む・書く」を関連付けた中学校英語科学習指導の工夫

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○ 研究1年次のまとめ

これまでの研究成果
 

研究1年次では、生徒の実態として「書くこと」と「表現の能力」に課題があることを踏まえ、英語の基礎・基本の定着を図ることに重点を置いた。具体的には、教科書で学習する単語の読み方やスペリング、基本文型及び英語特有の基本的な表現の定着を図り、簡単な英語を使って、自分の考えを伝えることを目標に、指導法の工夫を行った。教科書に取り上げられている基本文型の単語を入れ替え、生徒にとって身近な文として示したり、生徒が実際に取り組んだ作品などを紹介したりした。その結果、英語で伝える内容への関心や英語を聞こうとする意欲、読もうとする意欲の喚起にもつながり、英語の基本的な学習態度を養う上でも一定の成果があった。紹介した生徒の作品をもとに、それに対する自分の考えを簡単な英語で話したり、書いたりすることにも意欲が見られるようになった。
 このように、「書くこと」から「読むこと」「話すこと」へ、また、それを「聞くこと」から、さらに「話すこと」や「書くこと」へというように、4技能が互いに関連し合うような学習過程を工夫することによってより高い学習効果が期待できる。また、学習の中で、友達の作品に対して高い関心を示すことから、言語活動やその中で表現する内容にも十分に工夫を凝らし、伝える相手を意識した言語活動を行わせることも重要である。

  

 
(1) 生徒の変容と成果
 

生徒の変容として、まず、英文を書くことについての意識の変化が挙げられる。生徒が今までもっていた「英作文は面倒だ」「難しい」という意識が低くなり、「書くこと」に対する抵抗感が少なくなってきたことである。「書くこと」が少しずつ日常化していくにつれ、授業の中でスムーズに書く活動に入ることができるようになり、「書くこと」に対する前向きな姿勢が見られるようになってきた。
  次に、「書く力」に関する変容が挙げられる。「ライティングノートに書く」などの活動が定着するにつれて、書く文章が少しずつ長くなってきた。接続詞などを使い、文と文のつながりを意識するようになってきたということである。また、教科書や黒板に示されている英文をノートに書き写す際にも、単語ごとに何回も黒板や教科書を見て写す姿が少なくなり、語句のまとまりでとらえるようになったことも成果の一つであろう。
  さらに、言葉に対する関心の高まりが挙げられる。言葉の意味を知りたいという気持ちから、辞書を活用する生徒も増えてきた。定期テストにおいても、「何とかして書こう」という意欲がみられるようになってきた。生徒全員が意欲的に取り組むことができるように、情報や単語などを与えたり、部分的に日本語で記述することを認めたりすることで、ノート等の提出もよくなった。
  このような変容は、授業実践を行った研究委員によって見取られたものである。そこで、研究2年次においては、意識調査やテストなどを通して、「書くこと」に対する生徒の意識の変化や「書く力」の伸びについて、客観的な形で提示していきたいと考えている。  


 
(2) 教師の変容と成果

 

 

本研究にかかわる授業実践を通して、教師にも意識の変容が見られた。教師自身の「書くこと」の指導に対する意識が変わったということである。今までの音声重視の指導では、「書くこと」は特別な活動であり、生徒を英語嫌いにさせる不安などを抱えながら指導を行ってきた。また、「書かせるならば、正しく書かせなくてはいけない」という意識が強すぎる傾向もあったと思われる。このような反省を踏まえ、教師の意識は、日常的に書く活動を位置付けた授業を構想するように変化してきた。また、書く活動を中心とすることによって、4技能を関連付けた授業の流れがスムーズになってきた。
   研究1年次の取り組みでは、表現の基礎を養うために教科書の単語、基本文型、英語特有の基本的な表現の定着を図ることに重点を置いた。そのための方法として、授業の中に「書く活動」の時間を位置付け、「書くこと」を中心として、「読むこと」、「話すこと」、「聞くこと」と関連付けるような指導法の工夫を行った。その成果として、「書くこと」から「読むこと」、「話すこと」、「聞くこと」の活動へのつながりができるようになり、「文法を習得したら、習得した文法を活用する場面を作る、活用する場面を通して学習事項の定着を図る」という授業の流れができてきた。このように、授業の中に、意図的・計画的に「書くこと」の活動を位置付けることによって、「読むこと」、「話すこと」、「書くこと」の技能の伸長にも効果が見られるようになってきた。また、「書くこと」の指導に当たり、内容のある文章を書かせようという意識が高くなってきた。そのために、4技能の関連を意識した授業を構想し、「書く活動」を効果的に位置付け、「書くこと」に対する様々な工夫をするようになった。このような変容が確かなものであるかということについては、2年次の研究で検証をすすめていきたいと考えている。

  

今後の課題
 

課題として挙げられることは、基礎的・基本的な内容のさらなる定着とそれを用いた表現力の育成である。そのために、今後も、今年度取り入れた「ライティングノート」を活用した「書く活動」を継続させていく必要がある。また、表現力の育成を考える上で、「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」、「書くこと」の4つの技能をバランスよく育成することが不可欠である。「書くこと」を基本とし、書いた英文を基に「読む」「話す」といった活動にも生徒の意識を広げさせ、音声や文字で互いに表現し合うことを意識させたい。
   今年度の授業実践では、複数の領域を関連付けた言語活動例の中のDを位置付けた授業を中心に取り組んできた。「書くこと」に対する生徒の抵抗感は少なくなってきたが、自分の考えや気持ちを相手に正しく伝えるためには、文法や文型に関する正しい知識のほかに、伝える情報を整理することが大切である。表現の方法としては「話すこと」「書くこと」があり、2年次の授業実践としては上記の言語活動例のBやEも考えられる。あるテーマについて、内容を正しく相手に伝えるために、内容構成や文章構成の仕方を指導する必要がある。それらについての研究と実践が2年次の研究の柱となると考えている。


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最終更新日: 2009-03-24