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問題解決の力をはぐくむ生活科・総合的な学習の時間

            −言語の活用を重視した学習活動を通して−

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 小学校第2学年生活科


1 単元名 「つくって、あそんで、たのしいな」      (平成20年11月実施、21名)   

      学習指導案

2 単元とその指導について

        本単元は、内容(6)「自然や物を使った遊び」の学習で、自然や身近にある物を使って工夫して遊ぶ物を作ったり、遊び

 方を工夫したりして、みんなで遊びを楽しむことができるようにすることをねらいとしている。また、友達と一緒に楽しく遊ぶた

 めに遊び方を工夫したり、約束やルールを作ったりして、友達とよりよくかかわることができるようになることを目指している。

   指導に当たっては、児童が、家庭で簡単に手に入れることができる物を材料として、おもちゃづくりの活動を展開していく。

 単元の導入では、児童の身近にある材料で作ったシンプルな手作りおもちゃで遊ぶ場を設定する。遊びの中で、身近にあ

 る材料と十分に触れ合わせることによって、身近にある物の「おもちゃの材料・遊びの素材・道具」としての特性や魅力を実

 感させるとともに、友達と一緒に遊ぶ楽しさを十分に味わわせたい。そして、友達と味わったその楽しさを、単元のめあて、

 「身近にある物を使って手作りおもちゃを作り、みんなで楽しく遊ぶ」に結び付けるとともに、活動を意欲的に継続していく原

 動力にしたい。

    本時の展開では、児童がおもちゃづくりを振り返り、次時に向けてめあてをもつことができるよう、次のような指導・支援を

 行う。第1に、児童が、試行錯誤をしながら工夫をしたことに着目しておもちゃづくりを振り返ることができるよう、学習内容の

 ねらいに迫る上で大切にしたい活動を意識させる。第2に、振り返ったことを音声や文字で言語化する際の言語材料として、

 材料や道具の名称、作業に関する言葉を提示する。

   このような指導・支援を行うことによって、児童の気付きの質は高まり、振り返ったことを基に次時のおもちゃづくりに向けて、

 自分なりのめあてをもつことができると考える。

3 単元の目標

   身近にある物を使って、工夫して遊ぶ物を作ったり遊び方を工夫したりして、みんなで遊びを楽しむことができる。

4 単元の評価規準

   ○  身近にある物に関心をもって、楽しく遊ぼうとしている。 【生活への関心・意欲・態度】

  ○  身近にある物を使って遊びを工夫し、みんなで楽しむとともに、表現できる。 【活動や体験についての思考・表現】

  ○  身近にある物を使って遊ぶことができることや、みんなで遊ぶと楽しいことに気付いている。

                                                                                                     【身近な環境や自分についての気付き】

5 単元計画     

1次

身近にある材料や手作りおもちゃで遊ぶ。・・・・・・・・・・・・・・・・・2時間

 
  2次

自分が持ってきた材料で遊んだり、遊ぶ物を作ったりする。・・・・3時間

 
  3次

おもちゃや遊びがもっと楽しくなるように工夫する。・・・・・・・・・・・5時間(本時6〜8/13)

 
  4次

みんなで一緒に手作りおもちゃで遊ぶ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3時間

 
 
  6 本時の学習(6〜8/13
  (1) 本時の目標
   ○  身近にある物の特徴を生かして、おもちゃづくりや遊び方を工夫することができる。 【活動や体験についての思考・表現】
   ○  工夫しておもちゃを作ったり遊んだりする楽しさや、工夫によっておもちゃが楽しいものになっていることに気付いている。

                                                           【身近な環境や自分への気付き】

  (2) 展開
学習活動及び児童の反応

指導・支援(○)及び評価(□)

1 前時の学習カードで、この時間にしたいことと本時の

 学習のめあてを確認する。

【黒板に提示した本時の学習のめあて】

                     

   

    【空容器ロケットを作っている児童のめあて】

 

        【迷路を作っている児童のめあて】

 

  

2 おもちゃづくりをする。

 

   【袋の口の空気漏れに気付いた様子】

   

   【迷路づくりで、箱をつなぐ工夫をしている様子】 

      

○  友達とおもちゃで遊びながら、作り方や遊び方で楽

 しい工夫だと思うところや、もっと楽しくできそうなアイ

 ディアを、応援メッセージとして伝え合う。

 

3 おもちゃづくりを振り返る。

 (1) 振り返ったことを学習カードに記入する。

                   ※ 児童の学習カード

 

   材料の名称・道具の名称と作業に関する言葉の掲示例           

 

 

  

(2) 振り返ったことを発表し合う。

  

         【空気が漏れなくなった空容器ロケット】

  

    【ラップのしんで、箱をつないでできた迷路】

4   振り返ったことや発表し合ったことを基に、次の活動

 のめあてを考える。

        

        【児童が考えた次の活動のめあて】

○ 前時に児童が決めた活動のめあて「このじかんにしたいこ

 と」と本時の学習のめあてをつなぐために、前時に児童が書い

 た学習カードの内容を紹介する。

 

○  おもちゃづくりの工夫について2つの視点を意識させるめに、

 黒板にはった学習のめあてのの中から、次のような工

 夫の視点を取り出し、黒板にはる。

  ・作り方・・・・・おもちゃ自体の作り方の工夫

  ・あそび方 ・・遊び方やルールの工夫

 

 

 

○ 黒板に提示しためあてのの中から、「おもちゃづくりで

 大切にしたい活動」に関する言葉を取り出し、黒板に提示する。

○  「おもちゃづくりで大切にしたい活動」に関する言葉は、おも

  ちゃづくりの工夫の過程に価値があることを意識させるために、

 前時の学習で、「材料や道具を使ってどうしたら楽しいおもちゃ

 や遊びになるのかな。」と児童に問いかけ、やり取りをしながら

   確かめ合った言葉である。その言葉をまとめ、下のように広用

   紙に書いておいた。

   

  おもちゃづくりで大切にしたい活動に関する言葉

 

 

 

 

 

○ 友達の工夫のよさについて具体的に伝えることができるよ

  うに、次のような2つの視点を提示する。

   ・楽しい工夫だと思うところ

   ・もっと楽しいおもちゃにできそうなアイディア

○ おもちゃづくりの過程に着目して振り返りができるよう、「お

   もちゃづくりで大切にしたい活動に関する言葉」を児童と一緒

  に確かめる。また、デジタルカメラで撮影した活動中の児童の

  様子やおもちゃの画像をテレビで見せる。

○ 学習カードに記述する際の言語材料として、「材料の名称」

    「道具の名称と作業」に関する言葉を提示する。

○ 「材料の名称」は、児童が使っている主な材料の写真にそ

  の名称を添えたものである。

  

    材料の名称 (教室に掲示した物の一部分)  

○   「道具の名称と作業」に関する言葉は、おもちゃづくりで児

     童が使っている道具(児童が持っている道具・教師が準備

     した道具)や、作業に関する言葉をまとめたものである。そ

   の言葉を広用紙に書いておき、児童が見やすい場所に掲示

     しておいた。

    

    道具の名称と作業に関する言葉 

        

 

 

 

○  次の活動に必要な物や手に入れる方法についても見通し

   をもたせる。

○  児童が自分で手に入れることが難しい材料や道具につい

   ては、教師に相談させたり、帰りの会などでクラスの友達に

   呼び掛ける場を設けたりする。

 
   

7 考察

(1) 試行錯誤しながら工夫をした過程に着目しておもちゃづくりを振り返ることができるよう、学習内容のねらいに関連

   して、おもちゃづくりで大切にしたい活動を児童に意識させる。 

     本時では、導入・おもちゃづくりの活動中・振り返りのそれぞれの段階で、学習内容のねらいに関連して、おもちゃづくりで

 大切にしたい活動を児童に意識させる授業展開を行った。

  導入では、児童とやり取りをしながら、おもちゃづくりで大切にしたい活動を確かめ合った。

   「いろんな工夫をしながら、楽しいおもちゃづくりができていましたね。材料や道具を使ってどんなことをしていたのかな。」

  という教師の問いに対して、児童は、

   「作ったり遊んだりしました。」「考えました。」「試してみました。」「友達に聞いて教えてもらいました。」など、前時の活動を

 思い起こしながら発言をしていた。

   おもちゃづくりが進み、「こんな風になったよ。」と満足気におもちゃを見せにくる児童が増えてきた。そのような児童に対し、

  工夫のアイディアを称賛し、対話をしながらその工夫の過程にあるおもちゃづくりで大切にしたい活動の価値付けを行った。

   児童が書いた学習カードの内容を評価した結果、21人中17人の児童が、工夫の過程に着目した振り返りができていた。

 児童の学習カードの記述やおもちゃづくりの活動中の発言には、おもちゃづくりについて、「楽しかった。」「面白かった。」など

 の情意的な側面やおもちゃの出来栄えなどだけではなく、おもちゃづくりで大切にしたい活動に関連した次のような内容があ

  った。  

     ・ 「何回も試してみたら、いい方法が見つかったよ。」(おもちゃづくりの活動中の発言)      
         ・  「やり方が分からなかったから、友達に聞きました。」(おもちゃづくりの活動中の発言)
         ・  「友だちに押さえてもらったら、きちんとはれました。」(学
習カード)
 

     びっくり箱を作っていたA児は、びっくり箱の表面

  に折り紙をはり詰めてきれいに飾ろうと、納得がい

  くまで何度もはり直していた。

  A児の学習カード(図1)には、「がんばって、作り

  直したらできました。」という記述の後に、「変になっ

 たら、作り直したらできるなあと思いました。」という

  文が付け加えられている。

   

     図1 A児の学習カード

 

    A児が、おもちゃの出来栄えとともに、作り直したことに価値を感じていることが分かる内容である。がんばって作り直した

  という事実から、うまくいかないときには、別の方法を試したり作り直したりすればいいという気付きへ、学習内容のねらいに

  迫る質の高まりを読み取ることができた。   

 (2) 振り返ったことを言語化する際の言語材料として、材料や道具の名称、作業に関する言葉を提示する。
        振り返りの際には、「みんなが、この材料や道具を使っていろいろな工夫ができたので、すごく楽しいおもちゃづくりができ

  ましたね。」と児童の活動を称賛するとともに、材料の名称・道具の名称と作業に関する言葉に目を向けさせた。児童の学

 習カードには、どんな工夫をしたのか、おもちゃがどのように変わったのか、道具・材料の使い方で分かったことなどが、材

 料や道具、作業に関する言葉を使いながら、具体的に記述されていた。 

   

   ・ 「この缶を使ったらいい音がして面白くなったよ。」(学習カード)
         ・ 「セロテープじゃだめだったので、ガムテープを使ったらしっかりくっつきました。」(学習カード)

   ・ 「しんは固かったけど、はさみの奥の方だとよく切れました。」(学習カード)   

    ・ 「袋の口をしっかりとめたら空気が漏れなくなって、ロケットがよく飛びました。」(学習カード)     

      B児は、前時の終わりに決めていた「かめを動か

  したい」というめあてに向けて、本時の学習に臨ん

 だ。おもちゃづくりの最中は、足を動くようにするため

 にいろいろな材料を試し、ストローの折れ曲がる部

 分を足の可動部分に使い、満足気に教師に見せて

 いた。

   振り返りの際「どんな工夫がてきているかな。」と、

 B児に尋ねると「足が動くようになりました。」と答え

   た。掲示している「おもちゃづくりで大切にしたい活

  動」に関する言葉などを指しながら「いろいろな材料

 を試していたね。」と、活動や材料選択のアイディア

 を称賛した。

 

 図2 B児の学習カードとおもちゃ

 
     B児の学習カード(図2)には、前時にはできなかったことが、ストローを使うことで達成されたことが記述されていた。

 B児にとって、おもちゃづくりの2回目で、めあてを実現できたことや材料をうまく利用したことが工夫として自覚されており、

 気付きの質の高まりを読み取ることができる。     

 
 (3) 振り返ったことを基に、次時のおもちゃづくりに向けて、自分なりのめあてをもつことができると考える。
         C児は、かめの胴体に車輪を付けることから活動を始めた。最初の車輪は胴体に接触して、うまく回転しなかった。車輪

  がスムーズに回転するようになるまで試行錯誤を繰り返し、紙パックで車体を作り、その車体に車輪の軸を付けるというア

 イディアにたどり着いた。

 

    振り返って学習カードに気付きを書いた後、 友

   達の車輪と見比べたりカード(図3)に書いたこと

   を読み返しながら「おそいから、もうちょっとはやく

   なったら・・・」という記述を付け加え、次の時間の

   めあてと して、「かめがはやくうごくようにしたい。」

  と書いている。

      C児が、おもちゃづくりを振り返り、学習カードに書

  いたことを基に、

       「今日、してみたいこと」

                 ↓

   「振り返って気付いたこと」

        ↓

   「次の時間のめあて」

  のように、次の時間のめあてを順序立てて考えた

  ことを読み取ることができる。

 

  図3  C児の学習カードとおもちゃ

 

  

   

  活動の終わり

 

 

     学習の終末で、次の活動のめあてを決め、学習カードに記入することができた児童は、19人/21人であった。次の活動

   のめあてを記入していなかった児童は、「どんなくふうができましたか」という欄の記述も、工夫やおもちゃづくりを通して分

  かったことについて具体的な記述は見られなかった。その理由として、おもちゃづくりの活動に意欲的に取り組んでいたが、

  授業時間内で、自分が思い描いた状態に近付くことができなかったことが原因の一つとして考えられる。充実した活動や

  体験が、児童の表現を支えていることを実感した。

 

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最終更新日: 2009-03-30