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児童生徒が安心できる人間関係づくり   〜がばいシートを使って〜

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○中学校用シートを活用した事例(1)
 生徒の実態 −1回目(7月)の結果分析から−
 
       〔グラフ1〕                              〔グラフ2〕
  *〔グラフ1〕の縦軸の数値は、各観点の回答状況を点数化し、合計したもの。好ましい状態であるほど数値が高く、満点は20ポイント。
*〔グラフ2〕の縦軸の数値は、各設問の回答状況を点数化したもの。好ましい状態であるほど数値が高く、最も好ましい回答は4ポイント。
   
(1)  結果から考えられること
  @  学級集団の状態は、すべての観点で教師のポイントを上回った。中でも「友達との関係」、は17.7ポイントで、最もポイントが高く、学級の雰囲気もおおむね良好であった。次に「学級の雰囲気」は生徒の意識では高いポイントであった。これは日常的な場面において、学級活動や係活動を通して、生徒同士の活動の場や活躍を認めることを意識的に行っていることがうかがうことができる。〔グラフ1〕
  A  「教師との関係」においては、生徒、教師双方でポイントが低く、実態を裏付けることができる〔グラフ1〕。
  B  教師との関係を細かく見ていくと、「気軽に話すことができる」は3.2ポイントで他の項目と比べてポイントが高く、生徒・教師双方で意識が一致し、学級においては和やかな雰囲気が感じられる。〔グラフ2〕  
  C  また、生徒の「気軽に話すことができる」以外は、4つの観点で教師のポイントを上回っている。中でも「よさやがんばりを認めてもらっている」と「言ったりしたりすることで傷つくことはない」で、生徒と教師の意識に大きな差が見られる。〔グラフ2〕
(2)  支援に当たって
  @  「教師との関係」において、教師と生徒の関係性を深めるような構成的グループ・エンカウンターなどの活動を意図的に設定していく。
  A  教師と生徒との意識の開きが大きく、その差を縮めるような教師側の取り組みを、客観的に把握できるよう手立てを考えていく。
  B  「授業への意欲」については、教科担任と連携を図りながら、生徒が意欲的に活動できる場の設定や課題について随時検討していく。また、基本的内容を定着させるような手立てを考えていく。
 ねらい

 

(1)

生徒一人一人が学級の役に立っている、他の生徒や先生から信頼され、頼りにされていると思える学級の雰囲気を図るため、係活動の充実を図る。                          →《参考》支援のポイント「集団の雰囲気」

(2)  学級担任から「よさやがんばりを認めてもらっている」、「困っているときに、担任に相談できる」、「信頼されている」と生徒が思えるような学級にしていくため、日常活動のあらゆる場面において、教師が意識的に声掛けや励ましを行う。                               →《参考》支援のポイント「教師との関係」 
   
 支援の実際

 

 

(1) 総合的な学習での取り組み(4時間程度)
   @ 9月に行われる職場体験学習に向け、あいさつや言葉づかい、コミュニケーション力を付けることを目的とした取り組みを行った。
   A 構成的グループ・エンカウンターを取り入れてグループを編成し、そのグループで電話のかけ方、あいさつなどの場面設定をして体験学習に向け、練習を行った。
(2) 授業参観での取り組み(7月)
     保護者に事前に学年での取り組みへの協力をお願いし、授業参観の時に知らない方へインタビューをするなど、初対面でもコミュニケーションスキルを身に付けさせる活動を行った。生徒は最初はもじもじしながらであったが、回数を重ねるごとにスムーズに取り組めるようになった。
(3) 授業実践の例
   @  「自己紹介チェーン」(学級活動:担任) 
    (ア) A〜8までのトランプを引く。
    (イ) 同じ数字を引いた者同士で4人グループを作り、自己紹介をする。
    (ウ) 前の人の自己紹介を引き継ぐ形で自己紹介を行っていく。
      スペードの3の○○です。
    スペードの3の○○さんの隣のダイヤの3の○○です。
    最後に一番初めに自己紹介した人が「このグループにいるのは・・・・」と最初から最後まで復唱し、お互いに「よろしくお願いします」と言い合う。
    (エ) 再度A〜8までのトランプを引き、今度はA〜8までの8人グループを作る。
    (オ) (ウ)と同じやり方で自己紹介を行う 。
    ・  名前の前に何を言わせるかは担任が考える。できるだけ覚えやすいものがよい。
   A  文化発表会に向けてのテーマを示したコラージュ作り(学級活動:担任)
    (ア) 雑誌・広告、のり、はさみ、マジックを準備する。
    (イ) 6つのグループに分かれて、文化発表会に向けてのテーマを示した作品を作成する。
   B  文化発表会の合唱コンクールに向けての合唱練習(帰りの会等:担任・学年職員) 
   C  係活動の見直しと1人1役活動の徹底(学級活動の時間と日常の係活動:担任・学年職員)。
     − 生徒の様子 −
   

「自己紹介チェーン」はかなり盛り上がり、楽しそうに活動していた。生徒たちは8人分も覚えるのは無理と思っていたようだが、お互いに応援し合ったり、励まし合ったりして、どのグループも無事に1周することができた。
 生徒の感想には「覚えられないと思ったが集中することができ、思ったより簡単に覚えることができた。」などと書いてあった。

     文化発表会に向けてのそれぞれの決意を示した「コラージュ」では、楽しく協力して取り組むことができた。予想以上に楽しいコラージュが完成し、生徒の次の活動への意欲付けにつながった。 
     合唱コンクールの練習では、中学校生活最後ということで、金賞の獲得を目指し、クラス一丸となって取り組むことができた。難しい曲に果敢にチャレンジし、惜しくも金賞は取れなかったが、やり遂げることができたという満足感を得ることができたようであった。

 

 生徒の変容および考察 −2回目(11月)の結果分析から−
          〔グラフ3〕                             〔グラフ4〕
 
      *〔グラフ1〕の縦軸の数値は、各観点の回答状況を点数化し、合計したもの。好ましい状態であるほど数値が高く、満点は20ポイント。
    *〔グラフ2〕の縦軸の数値は、各設問の回答状況を点数化したもの。好ましい状態であるほど数値が高く、最も好ましい回答は4ポイント。
  (1) 学級集団の変容
    @  「学級の雰囲気」では、ポイントが下降しているが、友達との関係ではポイントが上昇している。〔グラフ3〕
    A  「授業への意欲」では、ポイントも上昇している。〔グラフ3〕
  (2) 考察
    @

「学級の雰囲気」が下降しているのは、友人間のトラブルから思いやりに欠ける言動があり、指導した時期とアンケート実施日が近く、若干ポイントが下降していると考える。また、友達との関係では、「何でも話せて、分かってくれる友達がいる」という項目のポイントが上がっている。これは文化発表会に向けての合唱練習などを通して、生徒同士や生徒と教師の間で認め合う雰囲気づくり、支持的な雰囲気づくりができてきていると考えられる。これを機に、更に友達とのきずなが強まり、学級の一体感を強めていきたいと考える。

    A   「授業への意欲」では、「できた、わかったと感じる」という項目のポイントが上昇している。教師間の連携で、分かりやすい授業や学習会などに取り組んだ成果と思われる。また最近では、「入試」を意識し始めたこともあり、真剣に学習に取り組む生徒が増えてきている。
    B   「教師との関係」では、「先生からよさや頑張りを認めてもらっている」と「困っているときに先生に相談できる」、「先生に信頼されていると思う」という項目のポイントが上昇している。文化発表会に向けての取り組みや一人一役の徹底などを通して、生徒に活躍の場を与え、担任が生徒のよさを認めて褒めるように意識した結果、ポイントが上昇したと思われる。また、できるだけ進路に関する相談などに乗るように心掛けている。〔グラフ4〕
    C

 

 観点別平均点ではほとんど変化が見られず、安定した状態だと捉えている。数値が低かった授業や担任との関係に関するポイントも上昇している。しかし、まだ自己存在感の数値が低いのが気になる。自己存在感を高める手立てを行う必要がある。
       
 今後の取り組み
 

2回目の結果を受けて、自己存在感の中の「ほめられたり、励まされたりすることがありますか」という項目のポイントが低かったことを受けて、現在、帰りの会のときに「スピーチ」を行っている。毎日、男女1人ずつ行っているが、「部活でがんばったこと」、「職場体験で学んだこと」、「これからの進路のこと」などについて、真剣に話している。他の生徒たちはその話を聴いて、感心したり、がんばってほしいと思ったり、勇気付けられたりしている。スピーチを行った生徒も他の生徒たちの温かい反応に「やってよかった」と思っている。担任の予想を超えて、生徒たちのスピーチは真剣味にあふれ、心を揺さぶるものが多い。3年生らしさが感じられ、生徒たちの成長を実感することができた。引き続きこの取り組みを続けていきたい。    →《参考》支援のポイント「集団の雰囲気」「自己存在感」

   
 実践後の感想
  (1)  学級の実態が把握でき、実態に応じた実践をタイムリーに行うことができた。
  (2)  個人のシートは教育相談にも使用できると思う。今までは相談室登校の生徒の状態を把握するものがなく対応に苦慮していたが、細かく生徒の実態をとらえることができるので役に立った。生徒個別の話もしやすく、支援シートをそのまま個人のカルテとして活用できると思う。ただ、記名をして回答するというシートの性質上、生徒が安心して回答できるよう、結果の扱い方に配慮が必要だと思う。
   

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最終更新日: 2009-03-27