本調査によって、「社会的事象、歴史的事象にに関わる知識の定着」と「グラフなどの資料から必要な情報を読み取ること」、さらに「自分の考えを論述したり、事象の関連や意味を説明したりすること」に課題があることが分かった。学習指導要領では、社会的な事象に関する知識を基に、社会的な見方や考え方を養っていくことを求めている。そのため、社会的な事象についての知識を確実に定着させ、社会的な思考力・判断力・表現力を高める指導の工夫が必要となってくる。
(ア) 知識を定着させる指導の工夫
学年が上がるにしたがって習得すべき知識は増えていく。そのため、歴史学習においては人物と政策、時代背景などを断片的に学習させるのではなく、それらを関連させながら学習させていくことが大切になっていく。更に、社会的事象の仕組みや構造など生活と関連付けて理解させていくことも大切となる。そのため、知識を定着させる指導法の改善を行う必要がある。具体的には、次のような方法が考えられる。
○1つの知識だけを習得させるのではなく、複数の知識を関連付けて習得できるようにする。
○社会的な問題を取り上げ、解決策を考えさせたり、問題に対する意見文を書かせたりする活動を取り入れるなど、習得した知識を活用する場面を学習過程に位置付ける。
(イ) 当事者意識を高める指導の工夫
生活場面との結び付きが感じられない内容・領域ほど正答率が低くなる傾向があった。特に、小学5年生の「県の様子」、中学1年生の「我が国の歴史」、「我が国の政治の働き」などは、生活場面との結び付きが感じられず、児童生徒の当事者意識が低いと考えられる。そこで、当事者意識を高めるため、教材の工夫が考えられる。
○佐賀の七賢人など地域の偉人を取り上げて学習させていく。
○佐賀県内で起きている社会的問題を取り上げ、学習させていく。
(ウ) 資料活用の技能を高める指導の工夫
社会科学習には資料を読み取ったり、活用したりする活動が多々ある。学習指導要領の小学6年生においては、「地図や地球儀、年表などの各種の基礎的資料を効果的に活用」すると表記してある。そのため、地図帳や地球儀、年表などの資料から必要な情報を読み取ったり、活用したりできるようにするための指導の工夫が求められる。更に、児童が地図帳や地球儀を見たり触れたりすることができる環境の整備も必要である。具体的には次のような方法が考えられる。
○教室に地球儀を置いたり、地図を常時掲示しておく。
○学習に地図を活用して調べたり、考えたりする活動を組み込む。
(エ) 言語活動の充実を図る指導の工夫
学習指導要領には、社会科学習においても言語活動の充実を図ることが記されている。
社会科学習における言語活動には、資料から分かったことを話し合う活動、社会的な問題をどのように解決していくべきかについて話し合う活動などが考えられる。そのため、それらの活動が充実するように話合いの必然性をもたせたり、話し合う内容を明確にしたりする指導が必要である。
(オ) 「思考力・判断力・表現力」を高めるための評価の工夫
国立教育政策研究所が示した『評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料』では、「社会的な思考・判断」の評価の観点を「社会的な思考・判断・表現」と改めた。そのため、それに応じてどのように「社会的な思考・判断・表現」を評価していくかは大切な課題である。例えば、児童が作成したレポートなどを対象に評価規準を作り、さらに判定基準を作り評価していくことが必要となってくる。特に判定基準ではどのような状況を「おおむね満足できる」状況(B)とするのかについて明確にすることが大切である。さらにそれを基準として「十分満足できる」状況(A)を作成していくこととなる。そのため、児童に期待する児童の発言やワークシートの記述内容を考えておくことが必要となる。 |