学校におけるソーシャルスキル・トレーニングに関する活動プログラムを提案します!

2 研究の実際

(3) ソーシャルスキル・トレーニングに関する活動プログラム

サイトマップ

イ 活動プログラムのモデル

     授 業 前
  ポ イ ン ト 1 児童生徒の実態把握
 
 まず、どのスキルをどの程度行っているのか児童生徒のソーシャルスキルの実態を把握します。実態把握には、教師の観察や、児童生徒への質問紙の集計などが考えられます。本研究では「行動を振り返るアンケート」と「集計ツール」を作成し、実態把握に役立てました。
ポ イ ン ト 2 児童生徒の実態に合った基本スキルの選択
   次に、学級の実態に合ったスキルを選択することが必要です。
本研究では、小林(2010)の選択基準を基に次の方法を提案します。
 【アンケートの結果を基にした基本スキルの選択方法】
児童生徒のアンケート結果で「している」「だいたいしている」と回答している割合が8割以上の基本スキル
教師のアンケート結果で「5割以上の児童生徒がしている」と回答した基本スキル
   このようなスキルを選択すると、教室内に優れたモデルができ、練習するときに失敗することが少なくなります。スキルの選択では、多くの児童生徒ができていないスキルを選びがちですが、学級内に優れたモデルとなる児童生徒がいることと、成功体験を繰り返させることが、学級で行うソーシャルスキル・トレーニングでは大切なことです。
ポ イ ン ト 3 グルーピングの配慮
   グループでの活動を取り入れる場合、グルーピングに配慮すると活動をスムーズに行うことができます。生活班を利用する場合は、席替えをした直後よりもしばらく時間が経って、グループ内の関係が落ち着いた頃がよいようです。特別に配慮の必要な児童生徒がいる場合は、気遣いができるような子どもや、モデルとなる子ども、仲のよい子どもを一緒にするなど活動をスムーズに行うための配慮が必要です。
ポ イ ン ト 4 個別の配慮
   特別に配慮が必要な児童生徒は、活動プログラムに初めて取り組む場合、不安になるかもしれません。そのため、活動への見通しをもたせることが大切です。事前に授業の内容を説明したり、ロールプレイングを体験させたりしておくと、安心して活動することができます。その際には、その児童生徒に関係する先生方と連携して取り組むと効果的です。
   
     授 業 
   
学習過程
授業の流れと指導のポイント
1.本時のめあて(目標)を確認する
○学習の意義を知らせる(動機付け)
「D仲間の誘い方」の図
この学習がどのように役に立つのかを具体的に説明し、学習するスキルの意義を理解させ、本時のめあて(目標)を知らせます。
写真や図で場面をイメージさせたり、学級の実態をグラフ等で示したりすることなど考えられます。
○約束(ルール)の確認 「約束(ルール)の例」 (小学校)
・はずかしがらない
・ひやかさない
・よいところを見つける
学習を進める上での約束(ルール)を示し、どうしてこの約束(ルール)が必要なのかを説明します。
  説明の例:
 練習のとき、きちんとできてこそ、本当の場面でも行動することができます。恥ずかしがらないで練習しましょう。
 練習している様子を冷やかされると、恥ずかしくてきちんと練習ができません。冷やかさないでください。
 できないところを言われるよりも、できているところを教えてもらった方がやる気が出ます。友達のよいところを見つけましょう。
2.モデリングを見てスキルのポイントを確認する
モデリング
適切なモデルと適切ではないモデルを演じて見せて、スキルのポイントに気付かせます。演じるときは、児童生徒がポイントに気付きやすいように、大げさに演じた方が効果的です。 どの役に注目するのかを、一言添えましょう。
可能であれば、小・中学校はTTで行った方がよいでしょう。児童生徒に演じさせるときは、事前に練習をしておいた方がよいでしょう。
○ポイントの確認 「話し合いの様子」
モデリングを見て、どちらのどのようなところがよかったのか、児童生徒から意見を出させ、その意見を基に、スキルのポイントをまとめます。学習する予定のポイント以外の内容が出された場合には、その意見も参考にし、2回目以降の練習のポイントに追加して取り組んでよいことにします。
※スキルのポイントについて
活動プログラムには、ねらいの達成に向けた行動を具体化したポイントがあります。ポイントには、
・非言語のポイント(相手との距離、表情、声、動作等)
・手順を示すポイント  などがあります。
非言語のポイントは、ほとんどの活動プログラムで必要となるものです。

3.ポイントに気を付けて練習をする
○スキルの練習
「『@あいさつ』のロールプレイの様子」
ロールプレイングやゲームなどを通してスキルのポイントを使って練習させます。ロールプレイングでは、仮想場面を設定して言い方や態度を練習します。
ゲームは、そのスキルのポイントを必ず使うようなルールにします。構成的グループエンカウンターのエクササイズなどが参考になります。
「またやってみよう」という気持ちにさせる楽しい活動にすることが大切です。 教師は、 スキルのポイントに目を向けた言葉掛けをします。
ロールプレイング 「役割を提示した板書例」
グループでの活動が中心となるので、ルールが守れず取り組む雰囲気が崩れてしまう可能性があるのがロールプレイングです。 どのような役割をどのように進めていくのか、また、時間や回数も明確に示して児童生徒に理解させます。 実際に1つのグループにデモンストレーションさせ、進め方を共通理解させるとよいでしょう。
○場の工夫 「ポイントを書いたカード」
グループでの練習に集中できるように、活動する場を工夫することも大切です。教室の座席の配置やロールプレイングをする場所、また、児童生徒の見えるところにスキルのポイントを書いたカードを置いて、スキルのポイントを常に意識させることなどが考えられます。
○相互評価

「評価カード」を使った練習の様子

練習の様子を互いに観察し合って、よかったところを伝え合わせます。
評価カードなどがあると、練習に取り組む意欲が高まります。
4.練習を振り返り、話し合う
○自己評価と練習のフィードバック
「振り返りシート」に記入する様子
「振り返りシート」に自己評価を記入させます。練習の途中で、一旦、全体でスキルのポイントができていたかどうかについて意見交流をさせます。
○次の練習への意欲を図る
「ふりかえりシート」の例(小学校)
自己評価などから次の練習で頑張りたいこと改善したいことを決めさせます。うまくできている児童生徒へは、できていることをさらにうまくなるようにしたり、新しいポイントを追加して取り組んでみたりするように促します。
5.ポイントに気を付けながら次の練習をする
1回目の練習とは場面や対象者を変えるなどのアレンジを加えて、練習させます。
6.練習を振り返る
練習を振り返らせます。
7.学習のまとめをする
○授業の振り返り
17
1時間の学習を振り返らせます。学習を通して児童生徒が感じたことや考えたことを紹介します。
スキルのポイントを使う意義を再度確認します。
○活用場面を考えさせる
学習したスキルが実際にどのような場面で生かすことができるかを考えさせ、日常生活に活用することを意識させます。
○チャレンジ週間へ向けての意欲付けを図る
チャレンジ週間の内容を説明します。
展開案は小学校45分、中・高等学校50分の1単位時間で展開することを想定しています。
授業を1単位時間とれないときは、展開を分割して行うこともできます。
     授 業 後 
  ポ イ ン ト 1
チャレンジ週間の設定
16

学習したスキルが日常生活にも活用できるように、チャレンジ週間を設け、学習後3〜5日間集中的に働き掛けます。
 チャレンジ週間では、次のような取り組みが考えられます。

  @学習したスキルを使った場面や使えそうな場面を書かせておき、毎日数名ずつ紹介する
A授業の感想を、数日に分けて紹介する
Bチャレンジシートを用いて、1日を振り返らせる
C学級通信などを活用し、家庭でも取り組むように働き掛ける など
ポ イ ン ト 2 日々の言葉掛け
     スキルの定着化を図るためには、教師の言葉掛けによるフィードバックが大変重要です。継続して行い、機会をとらえ、時期を考慮して行うことが有効です。活用場面集にソーシャルスキルが活用できる場面を紹介しています。
   
 

○ 板書モデル

     
   
 【活動プログラム名】 ○○○○○      
 【めあて(目標)】  ○○○を練習しよう。      
 
【図や写真、グラフ等】
【スキルのポイント】
【役割の進め方】
【やくそく(ルール)】
  @ ○○○○  
○ ○ 役
 
・はずかしがらない
・ひやかさない
・よいところを見つける
  A ○○○○  
 
  B ○○○○   
○ ○ 役
 
  C ○○○○  

【相互評価の説明等】

  ※場面のイメージがもてるよう
   な 図や写真、実態を示すグ
   ラフ等があれば掲示しておき
   ます 。
  ※ポイントは「・」や「実行する
   順番(@AB…)」などで示
   します。ヒントになる言葉な
   ども板書しておくと「リハー
   サル」で役立ちます。
 
見守る(観察)役@
     
     
見守る(観察)役A
      ※「リハーサル」がスムーズにできるように、役割の進め方を掲示したり、
  相互評価のやり方の説明を板書したりしておきます。
     
    ・板書例
   
 
「@あいさつ」中学校
 
「B上手な聴き方」小学校
 
   ※ 「@あいさつ」〜「J自分を大切にする」は、この活動プログラムのモデルで実施できます。
   ※ 「Kトラブルの解決策を考える」の活動プログラムについては、「展開案」の中で提案しています。
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