これからの算数科学習指導について提案します!

 

 

 平成22年度「全国学力・学習状況調査」の結果とこれからの指導に向けて

平成22年4月20日に実施された「全国学力・学習状況調査」の結果が8月末に文部科学省から提供されました。それらを基に、本県の結果についての分析を行い、これからの指導について、提案したいと思います。
調査は、教科に関する調査(国語・算数)と質問紙調査(生徒質問紙と学校質問紙)で構成されています。また、教科に関する調査は、主として知識に関するA問題と、活用に関するB問題から構成されています。ここでは、主に教科に関する調査の結果について、分析を行いました。
  なお、平成22年度の結果については、県独自の採点によるものに基づいています。
  平成20・21年度の結果については、佐賀県教育委員会からの資料に基づいています。 

平成22年度「全国学力・学習状況調査」の佐賀県小学校算数(6年生)の調査結果について
○ 評価の観点別の結果について
年度
平成22年度
平成21年度
平成20年度
種別
数学的な見方や考え方 38.7 43.2 39.6
算数的な表現・処理
81.1 80.2 77.5 75.1 83.1 71.3
数量、図形などについての知識・理解
65.4 52.5 81.3 66.8

○ 学習指導要領の領域別の結果について

年度
平成22年度
平成21年度
平成20年度
種別
数と計算
72.6
51.0
82.9
53.3
78.0
64.3
量と測定
72.6 35.5 79.9 57.4 56.7 50.0
図形
83.1 40.3 82.3 55.1 72.2 58.1
数量関係
63.9 53.7 61.9 54.0 72.3 42.9

観点別の結果を見ると、B問題や数学的な見方や考え方に課題があります。これは、平成20〜21年度の傾向とほぼ変わりません。
また、領域別の結果についても、A問題よりもB問題に課題があるといえます。

A問題については、正答率が60%以上の設問が19問中15問であり、基礎的・基本的な知識及び技能の定着は着実に進んでいると考えられます。今後は、この身に付けた基礎的・基本的な知識及び技能を活用しながら問題の解決をしていき、基礎的・基本的な知識及び技能を確実なものとする指導が今後より一層望まれます。そのためには、日々の授業の積み重ねと家庭学習などでドリルや問題に取り組ませ、より基礎的・基本的な知識及び技能を確実なものとする取り組みが必要となってくると考えます。
特に「数と計算」領域では除法や分数の意味理解、「量と測定」領域では、円の面積の求め方を考えること、「数量関係」領域では、加法と乗法の混合した整数の計算をすることなどに課題がありました。

B問題については、特に「数と計算」領域では示された式を解釈すること、「量と測定」領域では提示された説明を解釈し、他の場面で適用させること、「図形」領域では平面上にかかれた立体図形や平面図形を考察すること、「数量関係」領域では基準量と比較量の関係の理解に課題があったようです。
B問題での課題として、「考えを説明する力」が十分でないことが挙げられます。普段の授業の中に考えを説明する機会を位置付け、“児童の説明は根拠に基づいたものとなっているのか”、“適切に図や式、言葉で表現されているか”を常に考えさせていくことも必要だと考えます。また、授業の学習過程の中で小集団の中で自分の考えを伝える活動を適宜取り入れたり、友達の説明を聞いたりする活動を取り入れていく必要があると考えます。

今後の指導においては、基礎的・基本的な学習内容の確実な定着を図ることが必要だと思います。また、図形については、図形の性質に関する学習内容の定着を図るとともに、それを活用するような学習を仕組みながら、算数的な思考力・判断力・表現力を育んでいくことが大切だと思います。
また、 児童が苦手にしている問題の傾向として、特に、「提示されている図を参考にして考える」ことが十分ではないようです。今後は自分の考えを図や式を使ってかき表す活動や、それを基にして言葉で説明させることが大切です。また、逆に、友達がかいた図や式などを解釈させて、その意味を考えさせるような活動を適宜取り入れることも大切です。さらに、友達の考え方を活用して問題を解決させるような場面を意図的に設定することも必要になってくると考えます。

特に課題が見られた設問について詳細に分析を行い、考えられる今後の指導について提案しています。
また、佐賀県教育センターでは、知識・技能の定着をサポートする学習プリントや活用にかかわる学習プリントを定期的に作成し、提供しています。ぜひご覧になり、ダウンロードして使っていただけたらと考えています。
↓調査票(問題)はこちらから↓
■ 国立教育政策研究所ホームページ
設問ごとの分析結果とこれからの指導に向けて 
【主として知識に関するA問題】 
A問題を見ると、基本的な計算問題については、よく習熟が図られているものと課題が残るものがあるようです。また、折れ線グラフの読み取りや台形の面積の公式、平行四辺形の定義や性質、数量を等分したときの分数の表し方などの「数量や図形についての知識・理解」についてはよく理解しています。各学校でポイントを押さえた指導の成果がうかがえます。
以下に調査結果を受け、正答率が60%に満たない設問について取り上げ、これからの指導についても触れてみたいと思います。

設問番号
2(1)
(数と計算)
正答率
50.4

 
〔設問の概要〕…8mの重さが4kgの棒の1mの重さを求める式と答えを書く。
〔出題の趣旨〕…除法の意味について理解しているかどうかをみる。  
〈分析結果と課題〉
この問題は、商が1より小さくなる等分除(整数)÷(整数) の場面で、除法が用いられますことを理解しているかどうかをみるものです。ここでは、被除数に当たる数と除数に当たる数を判断して立式することが求められます。
誤答傾向としては、立式を8÷4とし、答えを2sとしたことが考えられます

《これからの指導に向けて》

指導に当たっては、
・示された数量を図に表す活動を取り入れ、用いる演算を判断できるようにすること。
・除法を用いる場面を基に、商が1より小さくなる等分除の場面があることを確認すること。
などが考えられます。
問題はこちら
設問番号
2(2)
(数と計算)
正答率
42.3
〔設問の概要〕…2L(リットル)のジュースを3等分したときの1つ分の量を分数で表わす。
〔出題の趣旨〕…除法の意味について理解しているかどうかをみる。

〈分析結果と課題〉
この問題は、数量を等分したときの1つ分を求めるために除法が用いられますこと、商を分数で表せることを理解しているかどうかをみるものです。ここでは、被除数に当たる数と除数に当たる数を判断することが求められます。
《これからの指導に向けて》
指導に当たっては、
・商を小数まで割り進めても割り切れない場合があることを、実際に計算して確認する活動を取り入れ、分数を用いることで商を1つの数として表せるというよさに気付けるようにすること。
・例えば「2÷3」の商を「2/3 」と表した後に、その理由を問いa÷b の商をa/bという分数で表せるという既習事項を確認する活動を取り入れること。
などが考えられます。

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設問番号
4(2)
(量と測定)
正答率
51.5
〔設問の概要〕…円を分割して並べたときにできる長方形について、縦の長さが円のどの部分に当たる
           かを選ぶ。
〔出題の趣旨〕…円の面積の求め方について理解しているかどうかをみる。
〈分析結果と課題〉
この問題は、円を分割し、並べ替えて作った長方形の横の長さについて理解しているかどうかをみるものです。
誤答傾向としては示された長方形の横の長さを基の円の円周の長さと考え、選択肢の3を選択したことが考えられます。

《これからの指導に向けて》
指導に当たっては
・ 紙にかいた円を実際に切って、並べ替えるなどの作業的・体験的な 活動を取り入れ、等積変形についての理解を深められますようにすること。
・ コンピュータソフトを活用して、児童が視覚的に等積変形の様子を観察したりすること。
などが考えられます。

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設問番号
9(1)
(数量関係)
正答率
56.6
〔設問の概要〕…じゃがいも畑の面積40uが、学校の畑の面積50uのどれだけの割合に当たるか
           を書く。
〔出題の趣旨〕…割合の意味を理解しているかどうかをみる。
〈分析結果と課題〉
この問題は、割合の意味を理解しているかどうかをみるものです。ここでは、割合を(比較量)÷(基準量) で求められますことを理解し、小数や分数、百分率、歩合のいずれかを用いて割合を表現することが求められます。

《これからの指導に向けて》
・問題の場面から基準量と比較量を明確にして、数量をテープ図や線分図に表す活動を取り入れ、数量の関係をとらえられますようにすること。
・例えば、割合を求めた後に、2つの数量の関係を「学校の畑の面積を基にすると、じゃがいも畑の面積の割合は、0.8(倍)です。」のように表現する活動を取り入れ、何を基にしているのかを意識できるようにしたり、用いる用語や表現の仕方に児童が慣れるようにしたりすること。
などが考えられます。

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【主として活用に関するB問題】
B問題について、正答率が60%に満たない設問について取り上げ、これからの指導についても触れてみたいと思います。
設問番号
1(1)
(数と計算)
正答率
51.0
 
〔設問の概要〕…えんぴつ1本の定価を整数にするために、おつりの金額を何円にかえればよいかを
           選ぶ。
〔出題の趣旨〕…示された場面を解釈して、条件に合うように問題の中の数を考え、変更すること。
〈分析結果と課題〉
この問題は、示された式を解釈し、えんぴつ1本の定価が整数になるおつり の金額を判断できるかどうかをみるものです。
誤答傾向としては、150が3で割り切れるので、おつりと代金を間違えて、選択肢の4を選択した児童が多かったと考えられます。

《これからの指導に向けて》
指導に当たっては 、
・問題をつくる活動において、問題をつくるだけで終わるのではな く、その問題を解いてみる活動を取り入れ、問題が成り立っているかどうかを検討させる。
・つくった問題の中の数量の大きさが適切かどうかなどを確認できるようにすること。
などが考えられます。
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設問番号
1(2)
(数量関係)
正答率
39.2
〔設問の概要〕…おつりを正しく求められますように式に( )を書き加える。
〔出題の趣旨〕…示された場面を解釈して、計算の順序についてのきまりを基に、式を修正すること。
〈分析結果と課題〉
この問題は、計算の順序についてのきまりを理解し、最初に考えた式に(   )を書き加えて正しい式に修正できるかどうかをみるものです。

《これからの指導に向けて》
・複数の式(分解式)を総合式に表現し直す場を設定し、(  )の用い方が正しいかどうかを確認したり、実際に計算をしてみて計算の順序についてのきまりを確認したりする活動を取り入れること。
・総合式からそれに対応する具体的な場面を読み取り、総合式で表すことのよさに気付けるようにすること。
などが考えられます。

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設問番号
2(1)
(図形)
正答率
26.9
〔設問の概要〕…本立ての部品の図を見て、どのような長方形かを書く。
〔出題の趣旨〕…示された図形を観察して、長方形の大きさを筋道を立てて考え、数学的に表現する
           こと。
〈分析結果と課題〉
この問題は、平面上にかかれた立体図形や平面図形、与えられた条件を基に長方形の大きさを考え、それを辺の長さと言葉を用いて記述できるかどうかをみるものです。
誤答傾向としては、長方形ですことを記述せずに15pと20pだけ記述していたり長方形を四角形と記述したりしていたことが考えられます。(2)の正答率は62.7%でした。誤答傾向としては台形の上底と下底だけに着目して選択肢の1を選択していることが考えられます。

《これからの指導に向けて》
指導に当たっては、
・ 基本的な平面図形をかいたり作ったりする場面で、辺を表す言葉や長さ、角の大きさ、図形の名称を用いて、図形を言葉で表現し伝え合う活動を取り入れ、曖昧な表現でなく図形を的確に表現すること。
・合同な図形を調べるときには、 等しい辺に印を付ける活動を取り入れ、対応する辺を確認したり、その位置関係を確認したりすること。
などが考えられます。
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設問番号
3(3)
(数量関係)
正答率
40.6
〔設問の概要〕…二次元表の一部分の数を使ってかくことのできる円グラフを選ぶ。
〔出題の趣旨〕…示されたグラフと表を基に、二次元表と円グラフを関連付けて考えること。
〈分析結果と課題〉
この問題は、二次元表に示された数の意味を考え、円グラフと関連付けることができるかどうかをみるものです。
《これからの指導に向けて》
・二次元表を用いて、数の意味を考え、部分と全体に当たる数に印を付けるなどして数と数の関係を明確にし、実際に割合を求めてみる活動を取り入れること。
・求めた割合を基に円グラフをかいて、二次元表の数との関連を確認する活動を取り入れること。
などが考えられます。
問題はこちら
設問番号

(量と測定)
(図形)
正答率

35.5
〔設問の概要〕…平行四辺形から台形に図形を変えて、示された2つの三角形の面積が等しいことの
           説明を書く。
〔出題の趣旨〕…示された説明を解釈し、用いられている考えを別の図形に適用して説明を考え、その
           説明を数学的に表現することができるかどうかをみる。
〈分析結果と課題〉
この問題は、平行四辺形に対してなされた説明を解釈し、それを台形に適用して、示された面積が等しいことの説明を言葉を用いて記述できるかどうかをみるものです。
この問題を解決するためには、平行四辺形に対してなされた説明が台形に適用できることを理解し、示された説明のどの部分をどう変えればよいかを考えることが必要です。
誤答傾向としては、共通の三角形がEですのにBと記述したことなどが考えられます。

《これからの指導に向けて》
指導に当たっては 、
・図形の性質などを根拠にして考えを進め、考えを言葉で説明できるようにすること。その際、根拠を含んで説明が記述されているかを確認したり、考えが友達に伝わるように記述されているかを確認したりさせること。
・ 友達の言葉の説明を解釈できるようにするとともに、その考え方を用いて他の問題を解決させること。
などが考えられます。
問題はこちら
設問番号
5(2)
(数量関係)
正答率
16.1
〔設問の概要〕…割引券を使うと値引きされる金額が最も大きくなる商品を選び、そのわけを書く。
〔出題の趣旨〕…割合が使われている場面を理解し、割合の考えを基に、数の大小を判断し、その
           判断の理由を数学的に表現すること。
〈分析結果と課題〉
この問題は、基準量と比較量の関係を表している図を判断できるかどうかをみる問題です。

《これからの指導に向けて》
・基準量、比較量、割合を数で比べるだけでなく、テープ図や線分図の長さで比べる活動を取り入れること。
・不十分な説明を基にしてそれを改善する活動を取り入れ、説明として不足している部分を考えたり、何を補って説明すればよいかを話し合ったりすること。
・(比較量)=(基準量)×(割合) など、比較量、基準量、割合の関係を根拠として述べることが必要ですことを理解できるようにすること。
などが考えられます。


問題はこちら
設問番号
6(2)
(図形)
正答率
11.0
〔設問の概要〕…バスのドアが動く様子を表した図を見て、円周の一部と直線の長さの大小について
           の正しい記述を選び、判断のわけを書く。
〔出題の趣旨〕…日常の事象を数理的にとらえ、示された考えを基に、長さの求め方と長さの大小を
           判断した理由を数学的に表現すること。
〈分析結果と課題〉
この問題は、与えられた条件や図形の定義、性質を基に、事象から見いだした図形を判断し、その理由を選択できるかどうかをみるものです。

《これからの指導に向けて》
・式の一部を省略して書いている式「314÷4」を提示し、求め方が表現できていないことを確認したり、どのように表現すれば求め方を表現できるかを話し合ったりする活動を取り入れ、具体的な場面に対応させて思考過程を式で表現することの大切さを実感できるようにすること。
・式だけが書かれた説明を基にして、より分かりやすい説明へ改善する活動を取り入れること。
などが考えられます。

問題はこちら
〈参考〉国立教育政策研究所Webページ      http://www.nier.go.jp                                       
以上のように分析及び考察を行いました。
詳しい結果や指導のアイディアなどを知りたい方は下記のリンクを参照してください。
○調査結果の詳細は 〜佐賀県教育委員会Webページ   
                              https://www.saga-ed.jp/kenkyu/scholastic_attainments_analysis/index.html
○平成22年度全国学力・学習状況調査結果を踏まえた実践アイディア集 
  〜国立教育政策研究所Webページ         http://www.nier.go.jp/10chousakekkahoukoku/10jugyourei.htm

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最終更新日:2011-03-30