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「食べる力」(「食育」で身に付けたい力)の位置付け |
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食に関する指導を行う際には、指導者が「食育」の充実を図る役割を担っているという観点から、「食べる力」を意識しておく必要があります。そのため、指導計画の中に「食べる力」を明記し、平成18年度に本教育センターの「食育」プロジェクト研究で研究した、子どもたちの豊かでたくましい心身の発達を支える上での基礎となる「食べる力」を学習内容に反映させていくことが必要だと考えました。 |
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中・高の系統性を踏まえた指導 |
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(1) 指導内容について |
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本研究では、「食べる力」の中の、特に「
自分の健康を考えて、安全な食べ物を栄養バランスよく食べることができる」に重点を置き、指導内容の工夫を図りました。その中で、小・中・高家庭科の指導内容を学習指導要領解説を基に系統性を踏まえて整理しました。系統性を踏まえた学習内容を、発達段階に合わせて繰り返し学習することにより、栄養や調理などの多くの知識や技術を身に付けさせることができると考えます。
小・中・高 家庭科 「食に関する指導内容」 系統表 |
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(2) 題材の設定について |
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新学習指導要領では、小・中・高の系統性を踏まえた指導が一層求められています。これまでの学習指導要領においても、系統性を踏まえた指導内容が示されていました。しかし、指導者の意識として中学校においては、小学校との系統性の意識は高いものの、高等学校への系統性の意識は低かったように思います。
高等学校においても、生徒の実態に応じた指導という意識は高いものの、中学校との系統性を意識した指導が十分だったとは言えないように思います。そこで、本研究では、中・高の系統性を踏まえた題材を設定しました。
@中学校における高等学校での学習を見据えた学習内容の検討(発展的な題材の設定)
中学校での学習事項の更なる定着を図るために、食生活の学習のまとめとしての題材を設定しました。具体的には、学習における題材の中で、既習の内容である食品の組み合わせや食品の品質の見分け方、献立作成、基礎的な日常食の調理等を繰り返し扱い、高等学校での学習内容につなげるように工夫しました。
A高等学校における中学校の学習を踏まえた学習内容の検討(実践を取り入れた題材の設定)
小・中・高の家庭科の最終的な目標である、「家庭生活の充実向上を図る能力」と「実践的な態度」を育てるために、家庭での弁当づくりの実践を取り入れた題材を設定しました。また、高等学校では、生涯を見通して、社会とのかかわりの中で自分の生活を創造していく視点を重視した学習内容にしました。
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実践的・体験的な学習活動の一層の充実 |
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実生活での体験不足が指摘されている中で、家庭科の学習活動が貴重な体験の場になると考えられます。これまでの実践的・体験的な学習活動は、1つの学習事項を押さえるための単一の活動が多くありました。新学習指導要領では実践的・体験的な学習活動の一層の充実が求められています。
そこで、本研究では、これまでの単一の学習活動を組み合わせたり、発展させたりした応用的なものを考え、複数の学習事項が押さえられるようにしました。特に、高等学校家庭科では、ホームプロジェクト的な内容を取り入れた学習活動を工夫しました。これらの活動を通して、具体的に学習することにより学習事項の定着が図られると考えます。
また、生徒の家庭での実践を見据え、実践しやすい活動内容とすることが重要です。特に、調理実習においては、生徒が家庭で食事づくりをする際のモデルとしての実習題材となるように心掛けました。 |
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学んだことを生かす場の工夫(家庭や地域との連携) |
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家庭科は、家庭生活に密接に関連した教科です。そこで、 家庭生活上の課題を家庭科の学習を通して解決し、家庭で実践する態度を身に付けることが求められています。そのため、学習した知識・技術を家庭や地域で活用する機会を設けることにより、より実践的な態度を身に付けることができると考えます。
また、実践する際には生徒一人一人が学習したことを理解していることが大切です。そこで、指導計画の中に、個人、グループ、全体など、様々な形態の発表の場を工夫して取り入れました。発表することにより、学習事項を一層定着させ、家庭での実践につなげることができると考えます。 |
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中・高の家庭科では、問題解決的な学習をより一層充実させることが求められています。注1)
そこで、上記1〜4の指導方法の工夫を踏まえて以下のような題材の指導計画を考えました。 |
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中学校 家庭分野 |
高等学校 家庭基礎 |
題材名「わたしの自慢の朝食を作ろう」 |
題材名「健康で安全な食生活のために」 |
時 |
学 習 内 容 |
時 |
学 習 内 容 |
1 |
【課題発見】
○自分の朝食調べから問題点を見付
け、既習事項を基に課題を設定する。 |
1
・
2 |
【課題発見】
○自分の昼食(お弁当)を基に、食材と栄養
的なバランスにおいて問題点を見付ける。
【計画】
○課題を設定し、「弁当の日」の実践がで
きるように、献立を立てる。 |
2
・
3 |
【計画】
○グループごとにテーマに沿った朝食の
献立を考える。
○実習計画表に記入する。 |
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【実践】
※家庭での実践を行う。(弁当づくり) |
4
・
5 |
【実践】
○調理実習をする。
○まとめる(発表用資料作成 ) |
3
・ 4 |
【評価・改善】
○実践について、まとめる。(自己評価)
○グループ発表と全体発表を行う。
(相互評価)
○今後の課題について考える。 |
6 |
【評価・改善】
○グループ発表会を行う。
○グループの朝食を改善し、わたしの自
慢の朝食について考える。
※家庭での朝食づくりの実践を行う。 |
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注) 中学校は「中学校学習指導要領解説 技術・家庭科編」(平成20年8月)、
高等学校は「高等学校学習指導要領案」(平成20年12月)より |
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≪参考資料≫ |
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・ 岡 陽子 「家庭科における食育の推進」『初等教育資料』 文部科学省 平成18年9月
・ 重見 京子 「小学校家庭科における食育推進の在り方」
愛媛県総合教育センター教育研究紀要 第71集 2005年3月
・ 島根県立浜田教育センター
「小・中・高 家庭科指導ハンドブック
〜基礎基本の力をつける題材構成と指導の工夫〜」 平成18年3月 |
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≪参考URL≫ |
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・ 竹川 春美 「小学校家庭科における食に関する指導」 奈良県立教育研究所研究紀要
2005年3月
http://www.nara-c.ed.jp/gakushi/kiyou/h17/data/a/a11.pdf
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