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活用力に培う国語科学習の在り方

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1 研究概要

(1) 研究テーマ

   
 

活用力に培う国語科学習の在り方

−言語活動の充実を通して−

   

(2) 研究の趣旨

 

 
 
新学習指導要領から 平成20年3月に示された新学習指導要領では、「基礎的・基本的な知識・技能の習得」と「思考力・判断力・表現力等の重視」がポイントとされ、基礎的・基本的な知識・技能を身に付け、それらを活用する学習を通して思考力・判断力・表現力等をはぐくむことがねらいとされています。更に、「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」それぞれの領域の内容に、言語活動例が具体的に位置付けられ、知識・技能を活用する言語活動の充実が重視されています。
全国学力・学習状況調査および佐賀県小・中学校学習状況調査の結果から 文部科学省が、平成19年度から実施している全国学力・学習状況調査は、「知識」に関するA問題と「活用」に関するB問題とに分かれており、B問題は実生活で児童生徒が出会う場面を想定して作られています。同年10月の調査結果の公表以来、B問題についての正答率の低さが全国的に話題となりました。佐賀県の小・中学校においても同様で、特に、「資料から取り出した情報を整理し、条件に即して書くこと」に課題が見られました。また、A問題においても正答率が全国平均を下回る問題が、半数近くあり、知識・技能の定着にも課題があると考えられます。平成19年度佐賀県小・中学校学習状況調査においては、小学校では「書かれてある内容を正確に読み取ること」や「読み取ったことを基に自分の考えを書くこと」において、通過率が低いという結果でした。中学校では「人物の描写に注意して文章を読み味わうこと」や「相手や目的に応じて書くこと」において特に通過率が低く、無解答率も高い傾向にありました。これらの結果は、児童生徒の読解が不十分なことと、読み取ったことを活用して自分の考えを目的や相手に応じて表現することができていないことに起因していると考えられます。
「活用力に培う国語科学習」とは 本研究では、「習得した知識・技能を条件に応じて使う力」を「活用力」ととらえ、その育成を目指すことで、知識・技能のより確実な定着を図るとともに、知識・技能を条件に応じて使うための思考力・判断力・表現力をはぐくむことができるのではないかと考えました。このことを「活用力に培う」と定義し、小・中学校の国語科授業における学習の在り方についての研究を進めることとしました。 活用するためには、まず「基礎的・基本的な知識・技能」の「習得」は欠かせません。その上で、習得した知識・技能を意識して活用する経験を繰り返していくことで、児童生徒は自分が習得した力を実感し、定着させていくと考えます。さらに、習得した知識・技能を目的に応じて使う活動を通して、「思考力・判断力・表現力の育成」が図られ、結果として「活用力」が身に付いていくと考えています。
研究構想図
言語活動の充実とは 研究を進めていく上で、習得した知識・技能を活用する言語活動を授業の中に位置付けることが大切になってきます。言語活動は、「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の各領域が相互補完的に活動を支えるため、習得した知識・技能を活用させる場面を意図的に設定することができます。また、児童生徒の意欲的、かつ主体的な授業への参加を促すことができると考えます。近年、国語科においては言語活動を取り入れた授業の研究がなされるようになりました。しかし、言語活動そのものが目的となってしまい、活動のねらいや指導の意図があいまいになっているという実態が見受けられます。また、児童生徒にどのような力を身に付けさせたいのかがあいまいになっている状況があるということも耳にします。そこで、本研究では、身に付けさせたい力を明確にすることはもちろん、実生活の中で言語を活用する能力を身に付けさせるために、児童生徒の言語生活を想定した言語活動を設定することを重要視したいと考えました。そのために、小学校では日常生活の場面、中学校では社会生活の場面を想定して、学習内容の系統性に配慮しながら研究を進めるとともに、目的や相手、自分の立場といった条件等を明らかにした言語活動を工夫することを通して、児童生徒が知識・技能の定着と活用について意識しながら学ぶ国語科学習の在り方を探りたいと考えます。

(3) 研究の内容

 
活用力に培う小・中学校国語科学習にかかわる理論研究 全国学力・学習状況調査、佐賀県小・中学校学習状況調査の問題分析、結果報告書や専門書などの文献を通して、国語科における活用力についての理論研究を行いました。
活用力に培う国語科学習の授業づくりの視点についての研究とその検証
 
活用力に培う国語科学習の在り方を研究するに当たり、新たに教材を開発するのではなく、すでにある教科書教材を活かすことを前提に取り組みました。そこで、授業づくりの視点として、学習指導要領の指導事項をもとに学習内容の系統性を明らかにすることと、授業の中に次のような場を設ける工夫をすることを指導のポイントとしました。                    
「学び」の方法を意識させる場を設ける
知識・技能を意図的に活用させる場を設ける
学習活動を振り返らせ、整理させる場を設ける

(4) 研究のまとめ

 

 

今年度は、本研究が考える「活用力」を身に付けさせることを意識した授業づくりの視点について研究し、それに基づいた授業を行い検証しました。

≪今回の実践での成果≫
〔学習内容の系統性を明らかにする〕ことでは・・・



単元における言語活動のねらいが明確になりました。具体的には、その言語活動を通して習得を図らなければいけない知識・技能と、それ以前に学習しており、言語活動を通して活用させることを意図した知識・技能が明らかになり、単元間のつながりも意識できるようになりました。
学習内容の系統性を考えることによって、その単元で身に付けるべき知識・技能が明らかになり、習熟の度合に配慮した授業を行うことができました。
〔「学び」の方法を意識させる場を設ける〕ことでは・・・





児童生徒が学習計画を立てることにより、単元の見通しをもち、最終的なゴールを意識することができました。主体的に学習に取り組むことにもつながりました。
前単元までに身に付けた学習方法を取り入れた一人学びを位置付けることにより、児童生徒が自分の力で主体的に学習に取り組むことができました。
モデルの文章を提示することで、児童生徒が授業の中で身に付けるべき力をイメージすることができ、言語活動にも前向きに取り組むことができました。
〔知識・技能を意図的に活用させる場を設ける〕ことでは・・・




紹介や発表などの言語活動を位置付けたことにより、表現するために必要な読む技能を身に付けることに必然性が生まれました。
前単元までに習得した知識・技能を本単元以降の言語活動の中で活用させるようにすることで、身に付けている知識・技能を繰り返し使わせる機会を設定することができ、 知識・技能の定着を図ることができました。
活用させる場を意図的に設けるということで、単元のねらいや他の領域とのかかわりを考えた言語活動を仕組みました。表現の様式の違い、相手意識や目的意識の違いによって、同じ知識・技能でもその条件に合わせた使い方をする必要があり、思考力・判断力・表現力といった力をはぐくむことにもつながったと考えます。
〔学習活動を振り返らせ、整理させる場を設ける〕ことでは・・・


毎時間の授業の中で「振り返りの場」を位置付けたことで、児童生徒は常にめあてを意識した学習ができるようになってきました。
自己評価シート等を使って活動を振り返らせることで、児童生徒自身が自ら身に付けた力を自覚でき、次の時間に学習する内容をより明確に意識することができました。
≪課題について≫

今年度の研究から、学習の系統性を意識することの大切さを感じました。しかし、今回の検証授業においては、授業を行った単元を中心に前後の単元における学習を関係付けることで終わってしまいました。年間指導計画を立てる段階で、1年間の学習を見通すとともに学年間の系統性を明らかにすることが必要であると考えます。さらに、今後は、新学習指導要領が示すように、小・中のつながりについても意識しながら学習を進めることが大切になると考えます。

言語活動を活動のみで終わらせないために、また、言語活動をスムーズに行わせるために、条件を明確にしたり、適切なモデルを示したりすることの大切さを感じました。今後は、そのためのより深い教材研究が必要になってくると思います。また、振り返りにおいては、単に自己評価をさせるだけでなく、授業で身に付いた力を整理させるようなワークシートの工夫などが課題であると考えます。

知識・技能を活用することは、本来無意識のうちに行っていることです。やがて無意識化していくためにも、学習においては、まずは知識・技能を活用することについて意識化させることがスタートになると思います。そのために学習計画をどう立てるかは大切なことになってきます。全員で計画を立てることから始めて、徐々に個人の計画へと進めていくことが考えられます。また、途中までは全員同じ計画のもとに、ゴールは個人で決定するなど、段階に応じて進めることも可能であると考えます。いずれにしても、教師がその学習を通して身に付けさせたい力を明確にしておくことが必要です。

研究2年次については、「活用力に培う国語科学習の在り方」についての研究をすすめるに当たっての中・長期的な目標とともに短期的な目標も設定し、児童生徒の知識・技能の習得にかかわって即効性が期待できる手立てについても検討を進めていく必要があると考えています。

 
 

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最終更新日: 2009-03-30