話合い活動のよさを生かした学級活動内容(2)の授業を提案します。

2 研究の実際

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(5) 授業実践

  本研究が提案する授業モデルを基に小学校で行った実践例を示します。

【小学校第6学年】学級活動内容(2)における授業実践

題材

本気で行う掃除

 
エ 清掃などの当番活動等の役割と働くことの意義  
 
段階
活 動 過 程
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○ 題材設定
【題材設定】
 第1回計画委員会
【原案】
 教師と計画委員会で、題材名、話合いのめあて、柱などを考えて原案に書く。
役割分担をする。(司会、進行、黒板記録、ノート記録など) 
自分たちの生活の中から「直したいこと」「気をつけたらもっと良くなること」を振り返らせる。問題点を付箋紙に書かせ、グループで仲間分けをした後、学級全体でどんな問題が多いかを考えて、課題を決めさせる。
○ 実態調査
 
掃除時間の様子をビデオに撮る。  
 原案の配布
教師が撮った掃除の時間のビデオを見せてから原案に自分の考えを書き込ませる。

○ ペア活動
【ペア活動】
ペアで聞き合うことで、学級会ノートに書いた自分の意見を確認したり書き加えたりさせる。
 第2回計画委員会
話合い活動の準備と打合せをさせる。
 

本時の

題材
みんなが本気になってそうじに取り組むためには、どうすればよいか、考えよう。 
提案理由
6年○組のみんなは、そうじはさぼらずにしています。でも、時間に遅れてきたり、すみずみまでしなかったり、時間ぎりぎりまでしなかったりしています。小学校生活も残り5ヶ月になりました。お世話になった○○小をきれいにするためにも、6年○組全員が、時間いっぱい一生けん命そうじをするようになるために、みんなでよい方法を考えたいと思って提案しました。
話合いのめあて
・ 6年○組全員が、本気になって一生けん命そうじに取り組めるように考えて意見を出そう。
・ 友達の意見を最後まで聞き、よい考えを自分の意見に取り入れよう。
話合いの流れ
1 はじめの言葉
2 運動会での応援歌
3 役割の紹介

4 題材の確認

5 提案理由

6 話合いのめあての確認
  7 話合いの柱の確認 

8 話合い
柱1を話し合う前の先生の話

   

【キーワード「本気」についての話】
【話合い活動の様子】
柱1 6年○組のみんなは、本気で掃除に取り組んでいるか。
<学級のこと>  
自分の掃除場所だけみんなしていて、自分のところが終わると遊んでいると思います。
他の人がやっているときに、遊んでいる人がいます。
先生が来たときはやって、先生がいなくなったらやらないと思います。
教室の中心はきれいになっているけど、端の方はわたぼこりなどが落ちています。
   
<自分のこと>  
時々本気でやっていないときがあります。  
きれいにしたつもりでも、はわき残しがあることがあります。  
一応しているけど、終わったら遊んでいるときがあります。  
隅々まで一生懸命やっています。  
     
柱2に向けての先生の話
【アンケート結果からの話】
柱2 本気でそうじに取り組むことはなぜ大切か。
掃除をしないと、学校がどんどん汚くなっていくからです。
掃除をしたら、自分や周りのみんなが気持ちよくなるからです。
教室に来た人がきれいだと気持ちがいいからです。
上級生は、下級生のお手本にならなければいけないからです。下級生はしているのに、上級生がしていないと、下級生が「僕たちもしなくていいんだ」と思うからです。
  ・将来大人になって、自分たちで住むとき、掃除がちゃんとできない人になるからです。
柱3に向けての先生の話




【アンケート結果からの話】
柱3 本気で掃除をするために自分がすることを考えよう。
見えるところだけじゃなくて、見えないところもすみずみまでそうじをする。
自分の掃除場所が終わったら、違う場所も手伝う。
自分の掃除が終わったら、点検をする。
掃除時間の5分前には、掃除場所に着く。
他の人の気持ちを考えてする。 
   
めあてを決める前の先生の話
 9 めあてを書く
10 話合いの気付き
11  ○○賞の発表 
12
  先生の話
 

13 終わりの言葉





○ めあての掲示

具体的なめあてを振り返りカードに記入させ、教室に掲示する。

 
○ 実践活動
普段見えないところまで掃除しています。 隅々まで丁寧に掃除しています。
   
○ 振り返り活動
一週間実践したらペアで振り返りをし、二週目の実践に生かします。
 

1週目のめあて
1週目の
日々の実践の振り返り
1週目の反省を踏まえて変更する児童は記述する
2週目のめあて
2週目の
日々の実践の振り返り
1週目の振り返りと
ペアによるコメント
2週目の振り返りと
ペアによるコメント
<ふり返りカード>
  児童は話合い活動を経て自分のめあてを設定し、日々の振り返りを行いながら実践に取り組みました。ここでは、ペア活動後のアンケート、話合い後のアンケート、実践後のアンケート、「ふり返りカード」、学級会ノートの記述及び教師の観察により児童の変容を見ました。
○ 意欲の高まりの感じられる児童の感想
 
先生に言われなくても、すみずみまでそうじするようになりました。そしたら、時間いっぱいしようと思わなくても、時間いっぱいかかりました。そうじは自分でするところを見つけてするものだと思いました。
 
自分のそうじ場所が終わってから、他のする場所がないかを探すようになりました。他の場所を手伝うと「ありがとう」とか言われてとてもうれしかったです。そうじが楽しくなってきました。 
 
今まで、やらなかったところや見逃していたところを、今ではやることがあたりまえになっています。きれいになって気持ちがいいので、カードが終わっても続けていくと思います。 
○ 教師の感想から見る、話し合い活動を取り入れた指導のよさ
 
話合いの前に、2人組を作って、互いに学級会ノートを読み合う活動を取り入れました。学級全体で意見を言う前に、一度友達に意見を聞いてもらうことで「自分は分かっているつもりでも、うまく相手に伝わるか」という不安が解消され、自信をもって学級会に臨めるようになりました。
 
ペア活動の相手に、不十分な点をアドバイスしてもらい、学級会ノートに書かれた意見が、より具体的で分かりやすいものに修正されました。
 
ペア活動を取り入れてからは、学級会での発表の回数が2倍以上増え、活発なやりとりが見られるようになりました。
  「時間ぎりぎりまで」「ものをどかして」「すみずみまで」「早く終わったら他の場所を手伝う」と、 めあてとなる言葉が具体的だったため、行動に移しやすく、 また、達成できたかどうかの自己評価もわかりやすかったと考えます
  話し合いの中で、掃除の必要性を見直したことで、言われてするものではなく、自分たちのためにしなければならないものだという自覚をもつようになりました。 
  「ふり返りカード」を、2週間継続したことで、掃除を進んでしようとする姿勢が身についてきました。 子どもたち自身も、「前よりよくなった」という達成感と、 「自分たちで問題点を見つけ、話し合いをしてよかった」という満足感を感じていました。
  1学期は教師から、児童にとって必要だと思われる問題点を挙げたが、この実践では、まず子どもたち自身に生活の中で「見直したいところ」を振り返らせました。それを付箋紙に書かせ、グループや学級全体で整理することで、自分たちにとって今一番取り組まなければならない課題は何かに気付かせました。そのことで、子どもたちからは「見直さなければいけないことが多い」「自分で決めたら最後までできる」「みんなで決めたことはみんなでできる」などの感想が多く出ました。話し合って課題を決めた方がよいという意見がほとんどでした。このことから、教師の願いを基に一方的に決めるのではなく、子どもの思いも取り入れながら、みんなで課題を決める方法は、実践への意欲にもつながるということが分かりました。 ペア活動で振り返りをする取り組みは、同じめあてに向かって共感できるよい時間だったと思います。

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