平成22年度佐賀県小・中学校学習状況調査Web報告書

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Ⅲ 各教科の調査結果の分析   

※中学1年生の調査については、小学6年生の学習内容としているため、小学校の項で分析している。

小学校理科

児童の体験の充実の保証と考えを交流しあえる授業づくり 

小学5年生、小学6年生、中学1年生のすべての評価の観点において、「おおむね達成」の基準を上回った。特に、中学1年生では、「観察・実験の技能・表現」については、「おおむね達成」の到達基準60.0に対して、79.5と大きく上回っている。「自然事象についての知識・理解」については、小学5年生、小学6年生、中学1年生ともに、「十分達成」の基準に近くなっており、良好な定着状況が見られた。実験などを通して、児童が体験的に実感しやすい内容については、理解はおおむね良好である。しかし、実験器具の正しい使い方や具体的な数値の読み取りなどの技能に関して、課題が見られた。また、「科学的な思考」については、小学5年生、小学6年生、中学1年生ともに、「観察・実験の技能・表現」「自然事象についての知識・理解」に比べ、低い結果となり、今後の指導への課題が残る。特に「科学的な思考」を要するものについては、指導者が常に「発展・応用及び活用とは何か」ということを意識しながら、学んだ知識や技能を積極的に使うような学習場面を設けることが必要である。

この後、評価の観点については、以下のように記す。

 ○自然事象への関心・意欲・態度 → 本調査では設定なし

 ○科学的な思考 → 「思考」ただし本文中では「科学的な思考」

 ○観察・実験の技能・表現 → 「技能・表現」

 ○自然事象についての知識・理解 → 「知識・理解」

結果の概要
 
(ア)
教科全体及び設問毎正答率
教科全体正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別達成状況 

内容・領域別達成状況 

基礎と発展の比較

「活用」に関する問題

設問ごと正答率

 

教科全体正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別達成状況 

内容・領域別達成状況 

基礎と発展の比較

「活用」に関する問題

設問ごと正答率

 

教科全体正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別達成状況 

内容・領域別達成状況 

基礎と発展の比較

「活用」に関する問題

設問ごと正答率

 

 

(イ)

評価の観点別正答率

①小学5年生

図1 H22年度 (小学5年生理科) 評価の観点別正答率

すべての観点で、「おおむね達成」の基準を上回った。ただし、「科学的な思考」については、他の観点と比べて、やや正答率が低くなっている。この観点にかかわる問題として、小学4年生の学習内容である「電池のはたらき」の回路などが挙げられる。これは児童が日常生活で経験する機会が少ない事象であるが、科学的な思考を要するものである。目に見えない電気に対して、導線につなぐ乾電池の極の向きを変えると電流の流れる向きが変わるという事象から、電流についての考えをもたせることが求められる。実験の結果を整理させ、そこからどのようなことが言えるのかを丁寧に指導していく必要がある。

②小学6年生

図2 H22年度 (小学6年生理科) 評価の観点別正答率

すべての観点で、「おおむね達成」の基準を上回っている。ただし、「技能・表現」については、他の観点と比べて、やや正答率が低くなっている。この観点については、例えば小学5年生で取り扱う水中の小さな生き物の観察で顕微鏡を使う場面のような、高度な実験器具の操作に関する指導と学習がどのようになされているか、ということにかかわってくる。顕微鏡を用いて観察する際にはできるだけ児童が自らの手で対象となる生き物を最もよく見える位置に動かしたり、ピントを合わせたりするなど、体験を通して、実験器具の扱い方を理解をさせていく必要がある。

③中学1年生

図3 H22年度 (中学1年生理科) 評価の観点別正答率

すべての観点で、「おおむね達成」の基準を上回った。特に、「技能・表現」の観点では、「十分達成」の基準に迫っていた。小学6年生の学習内容では、塩酸などの薬品やガスバーナーなど理科の学習特有の素材や器具を扱っていくことが多い。この結果からは、それら適切に使用しながら学習が進められた様子がうがえる。「科学的な思考」に関しては、今後も言語活動の充実を図り、高めていく必要があると考える。

 

(ウ)

内容・領域別正答率

①小学5年生

図4 H22年度 (小学5年生理科) 内容・領域別正答

②小学6年生

図5 H22年度 (小学6年生理科) 内容・領域別正答率

③中学1年生

図6 H22年度 (中学1年生理科) 内容・領域別正答率

新学習指導要領の内容は、「A物質・エネルギー」、「B生命・地球」の2つの領域に整理されている。小学5年生では、領域別の結果に大きな差は見受けられないが、小学6年生と中学1年生では、やや「B生命・地球」に比べて「A物質・エネルギー」の方が低い傾向が見られる。「B生命・地球」の主に自然事象について、明確な視点や観点をもった観察を中心に学習していくのに対して、「A物質・エネルギー」は、様々な素材、器具を使用しながら実験を中心に学習を進めていくこと、更に問題解決の目的と実験を関係付けて活動を行っていくことに児童が難しさを感じていることも一因として考えられる。

 

経年比較 

 

 

 


「基礎的・基本的問題」と、評価の観点から「科学的な思考」を取り上げ、平成21年度の小学5年生と平成22年度の小学6年生による同一児童についての経年比較を行う。また平成21年度に課題として挙げられていた観察・実験の技能の確実な習得の点について、平成21年度の中学1年生と平成22年度の中学1年生の同一学年の経年比較を行う。


(ア)

「基礎的・基本的問題」の経年比較

H22小学6年生とH21小学5年生(同一児童)

図7 H22年度(小学6年生理科)、H21年度(小学5年生理科) 「基礎的・基本的問題」正答率の経年比較

平成21年度の小学5年生では、「おおむね達成」の到達基準60.8に対して、それを18.1ポイント上回る正答率78.9であった。平成22年度の小学6年生では、「おおむね達成」の到達基準61.6に対して、それを12.4ポイント上回る正答率74.0であった。正答率度数分布を比較すると、平成21年度に比べ、平成22年度は、やや下回る結果となった。平成22年度の小学6年生の「基礎的・基本的問題」を各設問ごとに見ていくと、児童が生活の中で実体験として豊富な「自然の事象についてのきまり」などは、よく理解できている。しかし、「電磁石」や「メダカの成長の様子」など、目に触れる機会が少ない事象や意識して長期にわたって観察していかなければならないようなものについて課題が見られた。

(イ)

「科学的な思考」の経年比較

H22小学6年生とH21小学5年生(同一児童)

図8 H22年度(小学6年生理科)、H21年度(小学5年生理科) 「科学的な思考」正答率の経年比較

平成21年度の小学5年生では、「おおむね達成」の到達基準57.1に対して、それを11.3ポイント上回る正答率68.4であった。平成22年度の小学6年生では、「おおむね達成」の到達基準55.0に対して、それを10.3ポイント上回る65.3であった。正答率度数分布を比較すると、平成21年度に比べ、平成22年度はやや下回る結果となった。しかし、これを科学的な思考の正答率の度数分布を見ると次のようになる。

図9 H22年度(小学6年生理科)、H21年度(小学5年生理科) 「科学的な思考」正答率の度数分布比較

平成21年度は、「十分達成」が37.6%だったのに対し、平成22年度は「十分達成」が45.7%と、「十分達成」の基準に到達している児童が増えていることが分かる。ただし、「要努力」の割合を見ると、平成21年度では、20.3%であったのが、平成22年度では25.8%と、「要努力」の児童の割合が増えている。このことから、「科学的な思考」に関して、二極化に向かう傾向が懸念される。平成22年度の調査問題では、月と太陽の関係を推論しながらとらえていくことに課題が見られた。児童に月や太陽の関係を推論して考させる際、その考えをことばとして表現させて、児童自身が何を根拠に推論しているのか、考えを明確にさせていくような指導が求められる。

 

(ウ)

「観察・実験の技能・表現」の経年比較

H21・22年度中学1年生理科(同一学年)

図10 H21・22年度 (中学1年生理科)「観察・実験の技能・表現」正答率の経年比較

図11 H21・22年度 (中学1年生理科)「観察・実験の技能・表現」正答率の度数分布比較

平成21年度の中学1年生の調査で、正答率が低く、課題とされたところである。平成21年度の中学1年生では、正答率62.3だったのに対し、平成22年度の中学1年生では、正答率79.5と大きく向上している。また、その正答率の度数分布を見ると、平成21年度「十分達成」が、24.1%だったのに対し、平成22年度では「十分達成」が63.7%と大きく向上している。「要努力」に関しても、平成21年度は、48.3%だったのに対し、平成21年度は、20.4%と「要努力」の児童が減少している。実感を伴う理解として、観察や実験の指導の改善が図られたと考えられる。また平成20年度からの理科支援員の配置も観察や実験の指導の改善に向けて、成果が見られると考えられる。

 

設問ごとに見た傾向と指導法改善の手立て






傾向 1

 

 

平成22年度の調査結果を受け、学習内容の理解、定着の面から、「自然事象についての知識・理解」について、技能習得の面から「観察・実験の技能・表現」の内容について、総合的に分析する。また、新学習指導要領を受け、新しく加わった内容や学年の移行学習内容についても分析する。

経験的に実感しやすい事象内容の理解は良好だが、経験が少なく、実感しにくい事象内容の理解に課題がある。

[小学5年生 大問5の(2)]  
○ 問題の概要 

○ 解答状況

温められた水が、どのように移動しているのかを問う選択式の問題である。「十分達成」の期待正答率85.0を上回る正答率88.5と良好の結果となった。


○ 指導法改善の手立て

温められた水の動きについては、視覚的に分かりづらいものである。温められた水が上に移動するであろうことは、児童は感覚的にはイメージをもっているが、どのように動いているのかを確かめるには、実際に味噌や茶殻などを使って、温められた水の動きを視覚化していく必要がある。本調査の結果からは、児童が実際の実験を基に、具体的な水の動きを理解していることがうかがえる。

[小学5年生 大問10の(3)]

○ 問題の概要 

○ 解答状況

昼間に見える月の動きを問う選択式の問題である。「おおむね達成」の期待正答率55.0を下回る正答率51.2であった。

○ 指導法改善の手立て

月については、児童は日常生活でよく目にするものである。しかし、太陽が、影の動きなどから、動いていることが実感できることに比べて、「月の動き」を実感するような体験をしている児童は少なく、意識することも少ない。小学4年生では、実際に昼間に見える月を観察し月の動きについて学習する。月も太陽と同じように、動いていることは理解できている。しかし小学3年生の太陽の動きのように時間を追って終日を通して動きを調べることに比べて、月の動きに関しては、昼間に見える月の特性上、観察できる時間が短かったり、太陽のときのように時間を追って連続的に観察したりする回数も少ないことなどから、月の動きに、実感を伴っていない様子がうかがえる。また観察者の位置から「東西南北」の位置関係を明らかにして月の動きと方角とを関係付けて観察させる指導が必要である。

 

[小学6年生 大問4の(1)]  
○ 問題の概要 

○ 解答状況

水に食塩を溶かしたときの全体の重さについて問う選択式の問題である。「十分達成」の期待正答率80.0を上回る正答率92.6と、良好な結果であった。


○ 指導法改善の手立て

ものを水に溶かす行為は、児童が日常生活でよく経験している事象である。ものを水に溶かすと、溶かしたものは見えなくなるが、ものは、重さとして水の中に存在していることが確かめられる。児童は、溶かしたものは消えてなくなるわけではないことは、食塩水など塩味が残ることなどから、感覚的には理解していると考えられる。溶かしたものの重さが全体の質量として現れることは、児童にとって驚くべき事象であり、実験を通して理解していく。本問題では、水に食塩を溶かしたときの全体の重さについて具体的な数値について問うており、非常に正答率が高い。このことは、児童が実際に実験を行った結果、実感を伴って理解しているものと考えられる。

[小学6年生 大問3の(1)]  

○ 問題の概要

○ 解答状況

電磁石の極について、電磁石の釘の端に方位磁針を近付けたときの様子について問う選択式の問題である。「おおむね達成」の期待正答率60.0を下回る正答率52.5であった。

○ 指導法改善の手立て

新学習指導要領において、第6学年から第5学年に移行された内容である。電磁石については、モーターやスピーカーなどに利用されているが、日常生活の中で、そのものを目にする機会は少ない。電磁石という言葉については、比較的児童は知っている。ただし、電磁石がどのような性質をもっているのかについては、児童にとっては未知の部分が多いと考えられる。小学3年生で学習する永久磁石の性質と電磁石の性質の比較を通して、その性質の違いを明らかにさせ、丁寧に整理する指導が必要であると考える。また、技能の活用として、磁石の極を調べるために方位磁針を利用することについて、3年生での学習経験を生かして、児童自ら電磁石の学習でも使えるように指導する必要がある。

 

[中学1年生 大問2の(4)]

○ 問題の概要

○ 解答状況

二酸化マンガンに薄い過酸化水素水を加えると酸素が発生することについて問う選択式の問題である。「十分達成」の期待正答率80.0をこえる正答率81.4であった。

○ 指導法改善の手立て

普段の生活の中で、ものを燃やすには空気が必要であることは、児童は経験的に感じている。「酸素」という物質の名称についても、日常よく耳にするものである。したがって、児童は「ものの燃え方」の単元において、ものが燃えるということと酸素との関係については、知識として獲得しやすいと考える。二酸化マンガンや過酸化水素水などは、児童にとって日常生活でなじみ深いものではなく、初めて聞く物質と現象とを結びつけて考える難しさがあると考えられる。しかし、これらの物質を混合すると酸素が発生することについては、よく理解できている。やはり学習では、単に2つの物質を混合すると酸素が発生するという知識を与えるだけでなく、実際に実験を通して酸素を発生させ、その中でものを燃やす活動を行い、実感を伴って理解させていくことが大切である。

[中学1年生 大問7の(2)③]

○ 問題の概要

○ 解答状況

根から取り入れた水が植物の体から放出される現象について問う短答式の問題である。「おおむね達成」の期待正答率60.0に対して、正答率27.2と非常に低い結果となった。

○ 指導法改善の手立て

新学習指導要領に伴い、第6学年に追加された内容である。植物が根から水を取り入れて成長することは、経験的に理解していると考えられる。しかし、その水が、植物の葉から空気中に放出されるという事実については、日常生活で意識することがほとんどない。植物の葉の気孔の観察や、植物から水分が放出されることについては、実験を通して理解できると考えられるが、「蒸散」という日ごろの生活で、聞き慣れない用語の定着が不十分である。新学習指導要領においても、積極的に科学的な用語を使いながら、言語活動をはぐくむことが求められている。このとき、単に用語を覚えるということではなく、科学的な概念と結び付いた用語の定着の指導が必要である。

 

傾向2     

実験器具の正しい使い方や測定器具の数値の読み取りに関する実験技能に課題がある。

[小学5年生 大問1の(1)]  
○ 問題の概要 

○ 解答状況

検流計の使い方で間違ったものを選択する問題である。「おおむね達成」の期待正答率65.0を下回る正答率53.4であった。


○ 指導法改善の手立て

検流計は、電流の大きさや電流の流れる向きについて、その針の振れ方で、児童に電流を視覚的にとらえさせる器具として用いられる。検流計を使った実験については、実際に児童が自らの手で回路に挿入して、数値を読み取ることが大切である。そして、個々の実験の結果を記録していくことが求められる。しかし、実際の学習場面では、グループに1台、もしくは、2人で1台という使われ方が少なくないようである。実感を伴った理解のためには、児童一人一人が確実に機器に触れるようにしていく工夫が必要である。

[小学6年生 大問9の(2)]  
○ 問題の概要 


○ 解答状況

新学習指導要領において、小学5年生に追加された内容である。水中の微生物観察の器具を選択する問題である。「おおむね達成」の期待正答率60.0に対して正答率43.3と低い結果となった。


○ 指導法改善の手立て

自然に生息するメダカなどが、何を食べて生きているのかを調べる学習である。水中の微生物の観察には、顕微鏡を用いることが求められる。この学習の同単元においては、メダカの卵の観察で、解剖顕微鏡を使用する。メダカの卵のような、比較的大きな物体の観察には、解剖顕微鏡を使用し、さらに小さな微生物などでは、顕微鏡を使用する。児童は微生物観察の実体験としては、顕微鏡を使用していると考えられるが、実際に使用した機器と、機器の名称とが一致していないことが考えられる。実験機器の使用に関しては、児童にその機器の利用の目的や名称及びその具体的な使い方の指導を併せて行っていくことが大切である。


[中学1年生 大問1の(3)]

○ 問題の概要

○ 解答状況

電流計の針が指し示す数値を読み取る短答式の問題である。「おおむね達成」の期待正答率55.0を下回る正答率51.5であった。

○ 指導法改善の手立て

電磁石の性質の学習において、電流の大きさと電磁石の磁力を関係付けて考えさせる内容である。電流計の使い方では、児童一人一人が、実際に電磁石の回路に電流計を挿入し、自ら数値を読み取る活動が大切である。しかし、実際の学習場面では、検流計の備品台数などの関係で、グループで1台という使われ方が少なくないようである。この場合も、児童の実感を伴った理解をさせるためにも、時間を確保し、一人一人が確実に機器に触れ、自らの手で、結果を導き出す活動が大切である。



これからの指導に向けて
 


今回の調査によって明らかになった課題は、新学習指導要領で求められている実感を伴った理解のための学習指導や観察・実験の技能・表現を確実に身に付けさせることである。また、児童が、事物・現象に対して、疑問や問題意識をもち、目的意識をもって観察・実験に向かうようにすることが大切である。

実感を伴った理解を図るためには、より一層体験を充実させていく必要がある。児童一人一人が、自らの手によって、問題解決が図れるような時間や場、実験素材や器具を提供していくことが求められる。また、理科における言語活動の充実として、児童自らが、何のために、何を、どのようにして解決し、その結果どういうことがいえるのかということを、丁寧に書き出させるような指導が必要である。

ア 生活事象との関連を図った指導
「電磁石」など、一見、日常生活で直接目に触れる機会が少ないように思われるものも、生活の中であらゆるところにその原理・原則が利用されている。単に、電磁石の性質を学習しても、それが自分たちの生活にどのように関係しているのか、児童が実感できなければ、学習の定着はもちろん、実生活で使える知識とはならない。学習においては、単元の終末はもちろんであるが、導入時においても、自分たちの生活とつながりが深い事物・現象であることに気付かせ、興味・関心をもって学習に向かわせることが大切である。

イ 実感を伴った理解のための一人一人の活動の保証

電流計の使い方や電流の測り方、また顕微鏡の使い方や微生物の観察など、児童が機器を自分の力で実際に扱っていくことが、実感を伴った理解につながる。機器の台数の制約などから、グループ実験を行う場合も、観察や実験の時間を保証し、一人一人が確実に、その技能を習得してくようにする必要がある。そのためには、実験の結果だけを重視するのではなく、使用する機器などについて、個々の児童の気付きや感想なども大切にしていくようにする。また、学んだ事を生かして表現していくことが大切である。そこで、単元の終末にものづくりなどを位置付けることで、一人一人の学びを、より充実させていくことが大切である。

ウ 目的意識をもった観察・実験のための言語活動の充実

多くの児童は、理科の実験活動が好きであると思っている。しかし、目の前の実験は何を解決するために行っているのか曖昧なまま、活動を行っている児童が少なくない。何を明らかにするために観察や実験を行うのか、児童一人一人が目的意識をもって活動を行うことが大切である。そのためには、事象をどのように読み取っているのか、事象に対してどのような考えをもっているのか、児童に自分の考えを丁寧に書き出させることである。頭の中でわかっているつもりでも、それを声に出したり、書き出したりするなど表現していくことによって、自分自身の考えの曖昧な部分が見えてくると考えられる。児童が自分の考えを書き記す活動や考えを話し合う活動の場を設けて、児童に活発な言語活動を促すことが求められる。

 

授業実践に参考となるリンク
   
 
   
 

最終更新日: 2011-1-31