平成22年度の調査結果を受け、学習内容の理解、定着の面から、「自然事象についての知識・理解」について、技能習得の面から「観察・実験の技能・表現」の内容について、総合的に分析する。また、新学習指導要領を受け、新しく加わった内容や学年の移行学習内容についても分析する。
経験的に実感しやすい事象内容の理解は良好だが、経験が少なく、実感しにくい事象内容の理解に課題がある。
[小学5年生 大問5の(2)]
○ 問題の概要
○ 解答状況
温められた水が、どのように移動しているのかを問う選択式の問題である。「十分達成」の期待正答率85.0を上回る正答率88.5と良好の結果となった。
○ 指導法改善の手立て
温められた水の動きについては、視覚的に分かりづらいものである。温められた水が上に移動するであろうことは、児童は感覚的にはイメージをもっているが、どのように動いているのかを確かめるには、実際に味噌や茶殻などを使って、温められた水の動きを視覚化していく必要がある。本調査の結果からは、児童が実際の実験を基に、具体的な水の動きを理解していることがうかがえる。
[小学5年生 大問10の(3)]
○ 問題の概要
○ 解答状況
昼間に見える月の動きを問う選択式の問題である。「おおむね達成」の期待正答率55.0を下回る正答率51.2であった。
○ 指導法改善の手立て
月については、児童は日常生活でよく目にするものである。しかし、太陽が、影の動きなどから、動いていることが実感できることに比べて、「月の動き」を実感するような体験をしている児童は少なく、意識することも少ない。小学4年生では、実際に昼間に見える月を観察し月の動きについて学習する。月も太陽と同じように、動いていることは理解できている。しかし小学3年生の太陽の動きのように時間を追って終日を通して動きを調べることに比べて、月の動きに関しては、昼間に見える月の特性上、観察できる時間が短かったり、太陽のときのように時間を追って連続的に観察したりする回数も少ないことなどから、月の動きに、実感を伴っていない様子がうかがえる。また観察者の位置から「東西南北」の位置関係を明らかにして月の動きと方角とを関係付けて観察させる指導が必要である。
[小学6年生 大問4の(1)]
○ 問題の概要
○ 解答状況
水に食塩を溶かしたときの全体の重さについて問う選択式の問題である。「十分達成」の期待正答率80.0を上回る正答率92.6と、良好な結果であった。
○ 指導法改善の手立て
ものを水に溶かす行為は、児童が日常生活でよく経験している事象である。ものを水に溶かすと、溶かしたものは見えなくなるが、ものは、重さとして水の中に存在していることが確かめられる。児童は、溶かしたものは消えてなくなるわけではないことは、食塩水など塩味が残ることなどから、感覚的には理解していると考えられる。溶かしたものの重さが全体の質量として現れることは、児童にとって驚くべき事象であり、実験を通して理解していく。本問題では、水に食塩を溶かしたときの全体の重さについて具体的な数値について問うており、非常に正答率が高い。このことは、児童が実際に実験を行った結果、実感を伴って理解しているものと考えられる。
[小学6年生 大問3の(1)]
○ 問題の概要
○ 解答状況
電磁石の極について、電磁石の釘の端に方位磁針を近付けたときの様子について問う選択式の問題である。「おおむね達成」の期待正答率60.0を下回る正答率52.5であった。
○ 指導法改善の手立て
新学習指導要領において、第6学年から第5学年に移行された内容である。電磁石については、モーターやスピーカーなどに利用されているが、日常生活の中で、そのものを目にする機会は少ない。電磁石という言葉については、比較的児童は知っている。ただし、電磁石がどのような性質をもっているのかについては、児童にとっては未知の部分が多いと考えられる。小学3年生で学習する永久磁石の性質と電磁石の性質の比較を通して、その性質の違いを明らかにさせ、丁寧に整理する指導が必要であると考える。また、技能の活用として、磁石の極を調べるために方位磁針を利用することについて、3年生での学習経験を生かして、児童自ら電磁石の学習でも使えるように指導する必要がある。
[中学1年生 大問2の(4)]
○ 問題の概要
○ 解答状況
二酸化マンガンに薄い過酸化水素水を加えると酸素が発生することについて問う選択式の問題である。「十分達成」の期待正答率80.0をこえる正答率81.4であった。
○ 指導法改善の手立て
普段の生活の中で、ものを燃やすには空気が必要であることは、児童は経験的に感じている。「酸素」という物質の名称についても、日常よく耳にするものである。したがって、児童は「ものの燃え方」の単元において、ものが燃えるということと酸素との関係については、知識として獲得しやすいと考える。二酸化マンガンや過酸化水素水などは、児童にとって日常生活でなじみ深いものではなく、初めて聞く物質と現象とを結びつけて考える難しさがあると考えられる。しかし、これらの物質を混合すると酸素が発生することについては、よく理解できている。やはり学習では、単に2つの物質を混合すると酸素が発生するという知識を与えるだけでなく、実際に実験を通して酸素を発生させ、その中でものを燃やす活動を行い、実感を伴って理解させていくことが大切である。
[中学1年生 大問7の(2)③]
○ 問題の概要
○ 解答状況
根から取り入れた水が植物の体から放出される現象について問う短答式の問題である。「おおむね達成」の期待正答率60.0に対して、正答率27.2と非常に低い結果となった。
○ 指導法改善の手立て
新学習指導要領に伴い、第6学年に追加された内容である。植物が根から水を取り入れて成長することは、経験的に理解していると考えられる。しかし、その水が、植物の葉から空気中に放出されるという事実については、日常生活で意識することがほとんどない。植物の葉の気孔の観察や、植物から水分が放出されることについては、実験を通して理解できると考えられるが、「蒸散」という日ごろの生活で、聞き慣れない用語の定着が不十分である。新学習指導要領においても、積極的に科学的な用語を使いながら、言語活動をはぐくむことが求められている。このとき、単に用語を覚えるということではなく、科学的な概念と結び付いた用語の定着の指導が必要である。
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