「児童生徒一人一人が居心地のよさを感じる学級集団づくり」について提案します!

               
現在の位置: 2 研究の実際  (5) 対応策の実施 オ 高等学校における実践 (イ) 対応策
                   
オ 高等学校における実践
男女間のリレーションづくりを目指した学級での取組
 
対応策
 
(イ) 対応策
 
1 研究委員による対応策の検討
 本研究では対応策の検討に当たり、「検討会シート」を用いています。    →「検討会シート」についてはこちら
 本学級においては、「Q−U」の結果を見ると、学級生活満足群に67.5%の生徒が位置していることから、ルールとリレーション共に、ある程度は確立していると考えられます。しかし、ルールに比べるとリレーションが弱いと考えられるため、リレーションの確立を優先的に取り組みます。リレーションの確立に向けて検討会で出された対応策は、以下のとおりです。(一部を抜粋)
 
・担任の学級経営方針・学級目標を明確に示す。
・LHRで「お楽しみ会」のような学級行事を設定し、企画・運営を生徒に任せる。
・グループ学習やペア学習を取り入れた授業を行う。
・構成的グループエンカウンターを取り入れた授業を実施する。
・学級担任が生徒の「よいところ」を見付けてほめる。
・数名の落ち着かない男子生徒の対応は、副担任との連携を図る。
・気になる生徒への対応は、必要に応じて、養護教諭や教育相談担当、スクールカウンセラーとの連携を図る。
・学級担任は、「できていない」ところではなく、「できている」ところを見付けて、生徒にフィードバックする。
 
2 対応策の選択及び計画
【集団について】
 「Q−U」の結果から、承認得点にばらつきが見られ、認められていないと感じている生徒が多くいると考えられます。そこで、生徒による相互の認め合いや教師が生徒を認める機会を多く設けたいと考えます。まずは、教師と生徒との1対1の信頼関係を築くために、学級担任には、SHRや面談の際など、日頃から生徒の「よいところ」や「頑張っているところ」に目を向けて、声掛けをしてもらうようにします。
  学級担任は、学校生活や授業に対する意識の違いから、男子生徒と女子生徒との間に隔たりが生じていることを本学級の問題として捉えています。そこで、1学期は男女間のリレーションづくりのきっかけとして、構成的グループエンカウンター(SGE)を行うことにしました。
  2学期は、夏季休業の影響を受けて開放的な気分になりやすく、問題行動が起こりやすい時期です。また、体育祭や文化祭などの大きな学校行事が控えており、落ち着かない時期でもあります。そこで、対人関係における基本的なルールを確認するために、LHRの時間でソーシャルスキルトレーニング(SST)の授業を実施することにしました。
 
【個人について】
〈Aについて〉
Aについては、学級担任も学年担当者も「気になる生徒」として全く認識していなかった生徒です。要支援群に位置しているため、学級担任・副担任を中心に、日常観察を丁寧に行うようにします。また、副担任がAの所属する部活動の顧問でもあったため、部活動の時間にAの話を聴いたり、随時声掛けを行ったりして、気になる様子が見られるときはすぐに学級担任に報告してもらうようにします。
〈Bについて〉
Bについては、学級担任を始め、本学級にかかわる複数の教師から、生活面や授業態度が「気になる生徒」として挙がっています。Bに影響されて数名の男子生徒が落ち着かないため、Bを中心とする男子のグループへの対応は、副担任との連携を図ることにしました。併せて、Bは忘れ物、無断遅刻・欠席等も多いため、Bへの対応についてはスクールカウンセラーと連携を図ることにします。
〈Cについて〉
Cについては、からかいやいじめの対象になっていないか、授業中だけでなく、休み時間や掃除時間等も観察を怠らないようにします。また、学力的にも心配されるため、教科担当者との連絡を密にし、学力面でのサポートを行うことにします。
〈D・E・Fについて〉
Dを中心とする女子の3人グループは、学級に与える影響の大きいグループです。このグループについては、グループを構成する3人の様子をよく観察するようにします。 
Dに関しては、学級担任からリーダーとして期待されながらも、中学校では不登校経験があり、「気になる生徒」の一人でもあります。日常観察を怠らず、気になる様子や態度が見られるときは、学級担任が話を聴くようにします。
Fに関しては、 「いごこちのよいクラスにするためのアンケート」の回答でも、「からかわれたり、ばかにされたりするようなことがある」という質問項目に高い点数を付けていることから、嫌な思いをしている可能性が高いと考えられます。Dと同様に、日常観察を怠らず、気になる様子や態度が見られるときは、学級担任が話を聴くようにします。
 
3 実施した対応策
時期
実 践 内 容
ね  ら  い
展開
ワーク
シート等
学年職員と連携した取組
5月
「Q−U」(1回目)実施
学級集団や個人の様子について学級担任との情報交換(「学級把握シート」作成)
研究委員による検討会
検討会を受けて学級担任との事前打ち合わせ及び実施計画の作成
5月
実践@

「Q−U」研修会

選択理由

・本学級の指導に携わる教師向けの研修会を行い、教師間の情報共有や共通理解を図る。
 @ 「Q−U」の見方
    及び活用
 A 本学級の事例検討
・Aについては、所属する部活動の顧問が活動時間を利用して、観察や声掛けを重点的に行うようにする。
・Bを始めとする、落ち着かない男子生徒数名に対しては、副担任が対応する。
・Cは、学力面が懸念されるため、教科担当者との連絡を密に取るようにする。
・D・E・Fについては、日常観察を怠らず、随時声掛けを行うようにする。
実践@を受けて学級担任との実践計画作成
6月
実践A
「間接ほめ大作戦」
選択理由
・学級生活満足群に属していない生徒が、「認められている」と感じられるようにする。 ・学級生活満足群に属していない生徒を対象に、学級担任が教科担当者からの情報を得て、間接的にほめるようにする。
7月
実践B
SGE
「われら○○族」
選択理由
・自分の思いや考えを伝え合う活動を通して、他者との共通点や相違点に気付かせ、親近感をもたせたり他者への関心を深めさせたりする。
・学級担任が、生徒の「よいところ」や「頑張っているところ」を見付け、毎日のSHRで学級に紹介する。                       

7月
実践C
SGE
「学校を10倍
楽しくする方法」
選択理由
・様々な意見に触れることによって、自己理解・他者理解を促進させる。
9月
実践D
SST
「聴き上手になろう」
選択理由
・上手な聴き方を学ばせ、学校生活において話を聴くスキルを高めさせる。
10月 「Q−U」(2回目)実施
「Q−U」(2回目)を受けての学級集団や個人の実態把握及び考察
※ 各実践の前後に、学級担任との情報交換や授業の振り返りを行いました。
 
 
〈実践内容の選択理由〉
実践@ 「Q−U」研修会                        →元の位置に戻る     →この実践の展開へ
  小・中学校と比較して、県内の高等学校では「Q−U」を実施しているものの、その結果に関しては、主として「気になる生徒」の発見に利用されるだけに留まっており、十分に活用されているとは言い難い状況です。そこで、本学級にかかわる教師を対象に、「Q−U」の基本的な見方や利用についての研修会を行うことにしました。本学級の実態把握を行い、「気になる生徒」に関して共通理解をもってもらうこと、また、実態把握で見えてきた本学級の課題に対する今後の対応を一緒に検討してもらうことがねらいです。
 
実践A 「間接ほめ大作戦」                      →元の位置に戻る     →この実践の展開へ
  「Q−U」の結果から、学級生活満足群に位置していない生徒は、「認められていない」と感じていることが明らかです。この結果から、学級生活満足群に位置していない生徒を対象に、「認められている」と感じられるような取組を学級担任と連携して実施します。高校生という発達段階においては、他の生徒の前でほめられることに抵抗を感じる生徒もいると考えられます。そこで、教科担当者が、該当生徒の「よいところ」や「頑張っているところ」を授業内で直接ほめるのではなく、学級担任が教科担当者からの情報を得て、廊下ですれ違った時などに、学級担任が1対1のかかわりの中で間接的にほめるようにしました。なお、このアイデアは5月実施の「Q−U」研修会で、学年主任が提案したものです。
 
実践B SGE「われら○○族」                    →元の位置に戻る     →この実践の展開へ
  エクササイズの選定に当たっては、高校生という発達段階及び「普段話さない友人と話す機会をつくる」というねらいを考慮して、グループでの話合い活動が含まれている内容にしました。今回、選択した「われら○○族」はグループメンバーの共通点を見付けて、グループ名を付けるというエクササイズです。グループメンバーの共通点を探すという作業は、気持ちをほぐすという目的で、よく行われており、SGEが初めての生徒でも、抵抗感が少なく取り組みやすいと思われます。意図的に男女混合のグループをつくり、普段話さないような友人ともかかわる場面を仕組むことによって、生徒同士のリレーションづくりのきっかけにしたいと考えました。
 
実践C SGE「学校を10倍楽しくする方法」            →元の位置に戻る     →この実践の展開へ
  1回の授業実践だけでは、リレーションづくりのきっかけとしては不十分であると考えられるため、2回目の授業実践もSGEを行うことにしました。今回も、前回と同様の理由から、グループでの話合い活動が含まれるエクササイズを実施することにしました。「学校を10倍楽しくする方法」は、ブレーンストーミングとKJ法を用いたエクササイズです。学校を楽しくするアイデアを出し合うという作業を通して、他の人の考えに触れることによって、自己理解や他者理解を深めるというねらいが達成できると考えられます。
 
実践D SST「聴き上手になろう」                  →元の位置に戻る     →この実践の展開へ
  生徒にとってSSTの授業は初めてであるため、基本スキルから取り組むことにしました。コミュニケーションの基本は「話す・聞く」です。そこで、基本スキルの中から、「聴き上手になろう」を選択しました。SSTは、本来ルールを定着させるための取組です。しかし、成功体験を積んだり、級友に「よいところ」を見付けてもらったりすることによって、一人一人の自己肯定感を高めるきっかけにもしたいと考えました。
 
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