「児童生徒一人一人が居心地のよさを感じる学級集団づくり」について提案します!

             
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オ 高等学校における実践
男女間のリレーションづくりを目指した学級での取組
 
生徒理解
 
 
(ア) 生徒理解
 
1 本事例の学級の様子(1年生、5月上旬)
  本学級は、今年度は学級に占める男子生徒の割合が多いことが特徴として挙げられます。「高校生としてのルールを守らせる」という学年団の方針の下、ルール遵守に重きを置いて指導がなされています。本学級においても、学習態度、生活態度共に良好な状態で高校生活のスタートを切りました。しかし、真面目で落ち着いた印象を受ける女子生徒に対して、集団生活における規律を乱してしまいがちな一部の男子生徒との間に、学校生活や授業に対する意識の差が出てきています。
  本校では、入学から卒業までは学級編成がないため、有意義な高校生活を送るためには、1年生の時にどれだけ良好な人間関係が構築できるかが重要になってきます。しかし、本学級においては、入学後2ヶ月で既に男子生徒と女子生徒の間に隔たりが生じ始めたため、早期にその隔たりを解消し、男女間のリレーションを確立することが今後の課題であると考えます。   
               
2 実践前のアンケート (「Q−U」) 結果(5月上旬)
A: アンケート結果と教師の日常
   観察が一致しない生徒

B: 態度や行動が気になる生徒

C: アンケート結果と教師の日常
    観察が一致しない生徒


( D ・ E ・ F : 小グループ )
D: アンケート結果と教師の日常
    観察が一致しない生徒

E: 影響力の大きい生徒

F: アンケート結果と教師の日常
     観察が一致しない生徒
図5−オ−1 実践前のアンケート(「Q−U」)結果(5月上旬)
       
               
3 本事例の「学級把握シート」
  本事例の「学級把握シート」は、個人情報が含まれているためプライバシー保護の観点から省略します。
   →「学級把握シート」についてはこちら
 

4 チームによる実態把握(研究委員)

【集団について】

アンケート(「Q-U」)結果より

学級担任の日常観察より
・学級生活満足群と非承認群に位置している生徒を合わせると85.0%であることから、多くの生徒は決められたルールや教師の指示に従っており、ルールはある程度確立している。

・学級生活満足群に位置していない13名のうち、11名は承認得点が低く、全国平均を下回っている。

・学級生活不満足群に位置している4名のうち、3名は男子生徒である。
・落ち着きがない男子生徒が数名いる。学級担任が注意をすれば、素直に従うが落ち着いた状態が持続しない。

・落ち着きがない男子生徒を注意するたびに授業の流れが中断する。静かに授業を受けたい女子生徒が迷惑そうな様子が気になる。男子生徒と女子生徒との間に学校生活や授業に対する意識の差を感じている。

・一部の生徒に頭髪や服装の乱れが出始めた。 
学級がこのような状態になった要因として考えられること
・承認得点にばらつきが見られるため、学級の中で「認められていない」と感じている生徒が多いのではないかと考えられる。

・ルールと比較してリレーションの確立が若干弱いことは、自分らしさを発揮できるほど学級全体が打ち解けていないためではないかと考えられる。

・Bを始めとする男子生徒に落ち着きがない様子については、学級担任の関心を引きたいためではないかと考えられる。

・一部の男子生徒が規律を乱した際に、注意できるような生徒が育っていないのではないかと考えられる。

 
【個人について】
アンケート(「Q−U」)結果より
学級担任の日常観察より
・Aは、要支援群に位置しているが、学級担任が「気になる生徒」として全く認識していなかった生徒である。学校生活意欲プロフィールにおいて、「教師との関係」が5点と極端に低い。「悩みに関するアンケート」でも、学校生活について「とても悩んでいる」と回答している。

・Bは、学級生活不満足群に位置している。学校生活意欲プロフィールにおいても、全ての領域が全国平均を下回っており、特に「学級との関係」が8点と低い。


・Cは、承認得点が45点、被侵害得点が10点であり、学級生活満足群の極端に高い位置にある。




・Dを含む女子生徒の3人グループに関して、DとEが学級生活満足群、Fが学級生活不満足群に位置しており、グループ内でのメンバーの序列化が懸念される。
・Aは、学級の中では大人しく、目立つタイプではない。部活動を頑張っている。



 
・Bは、入学当初から服装の乱れや提出物忘れが目立ち、常に落ち着かない。授業中、教科担当者から注意を受けることも多い。Bに影響されて、数名の男子生徒が一緒に騒ぎ、授業に集中できていない。

・Cは、精神的に幼いところがある。学級担任との関係は良好で、自分からよく話し掛けてくる。Cの話の内容は、同学年の友人とは話題が合わないだろうと感じるものが多い。学級内で、いじめやからかいの対象になることが心配される。

・D・E・Fは仲がよく、常に一緒に行動している。学級に与える影響力の大きいグループである。服装面で注意を受けることがある。

・Dは、中学校時代に不登校を経験しているが、頑張って登校している。リーダーシップがあり、率先して女子生徒をまとめることができる。学級担任は、学級のリーダーとして期待している。一方、注意を素直に聞くことができないようなところもある。

・Eに関しては、学校生活面で特に大きな問題は感じられない。

・Fに関しても、学校生活面で特に大きな問題は感じられない。 
抽出した生徒がこのような状態になった要因として考えられること
・Aは、真面目な人柄であり、学校生活上で問題となるような行動や気になる様子が見られないため、教師からは学校生活で悩みを抱えているように見えなかったのではないかと考えられる。また、学校生活意欲プロフィールで「教師との関係」の得点が低いことから、自分から教師に相談することは困難であったのではないかと考えられる。

・Bは、授業中などの様子から、集中力を持続させることや自分の言動を抑えることに苦手さを抱えているのではないかと考えられる。

・Cは、「Q−U」の結果と教師の日常観察が一致しないため、本音を語っていない可能性や過剰に適応しようとしている可能性が考えられる。

・Dは、学級の中で一緒に過ごす友人ができて、順調に高校生活をスタートできたのではないかと考えられる。

・Dを含む女子生徒の3人グループに関しては、メンバーが2つの群に渡って位置していることから、3人のうち、最も下に位置しているFは、グループ内で嫌な思いをしている可能性が高い。最も高い位置にあるEは、3人の中でも、発言力や影響力が大きいのではないかと考えられる。

 

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