「児童生徒一人一人が居心地のよさを感じる学級集団づくり」について提案します!

現在の位置: 2 研究の実際  (5) 対応策の実施 オ 高等学校における実践 (ウ) 変容と考察
                   
オ 高等学校における実践
男女間のリレーションづくりを目指した学級での取組
 
変容と考察
 
 
(ウ) 変容と考察

                                     

1 実践後のアンケート (「Q−U」) 結果(10月下旬)
   
 
        図5−オ−2 実践後のアンケート(「Q−U」)結果(10月下旬)
2 考察 
【集団について】
・生徒が学級生活満足群に位置する割合は、67.5%から50.0%に低下しています。
・本校では、第1回目の「Q−U」は5月上旬に実施されていますが、個人や学級集団の状態が結果に正確に反映されておらず、全体的に学級生活満足群に位置する割合が高く出過ぎたのではないかと考えられます。その理由として、入学後1ヶ月で、まだ人間関係や学級の中での位置付けが固まっておらず、本来の自分を表現できるほど打ち解けていないため、他者を傷付けるような言動も見られないような状況であることが挙げられます。第1学年での第1回目の「Q−U」実施時期については、人間関係が出来上がってくる6〜7月に移動するなど、検討を加える必要があると考えられます。
・また、 「Q−U」の結果からだけではなく、学級担任から見ても、学級の雰囲気が入学当初と比較して、学級全体がまとまってきたように感じています。ある女子生徒から、「今まで話したことのなかった男子生徒と話すことができた」という話を学級担任が聞いており、実際に学級内でも男女のグループ同士の交流が見られるようになりました。本校においては、体育祭ではリレー、文化祭ではステージ出し物が全員参加で行われますが、これらの行事を通して学級に一体感が生まれ、リレーションが高まったようです。1学期に構成的グループエンカウンター(SGE)の授業で意図的に男女混合のグループをつくり、普段話さないような級友ともかかわる場面を仕組んだことによって、級友に話し掛けることへの抵抗感が少なくなったのではないかと考えられます。
 
・学級生活満足群から他の群に移行した生徒は7名います。
・この7名については、女子生徒のグループによる、友人関係のトラブルが影響していると考えられます。2学期に入り、女子生徒のグループによるトラブルがしばしば起きています。トラブルがきっかけとなり、大きくグループメンバーの入れ替わりがありました。友人関係の変動によって、第2回目の「Q−U」の結果では、学級生活満足度が上昇した生徒と下降した生徒が見られます。男女間のリレーションづくりのきっかけとなり、取組の成果があったと思われますが、女子生徒のグループによる小さなトラブルが続いていることから、今後は対人関係のルールを確立するための取組が必要だと考えます。
 
【個人について】
〈Aについて〉
Aは被侵害得点が下がり、学級生活不満足群(要支援群)から非承認群に移行しました。その理由としては、友人関係が良好になったことが考えられます。入学当初は表情も硬く、緊張している様子が見られましたが、グループの中で徐々に打ち解けることができ、次第に表情も明るくなってきました。また、「間接ほめ大作戦」で、部活動顧問から試合中のプレーをほめられたことをきっかけに、学校生活の様々な場面において、徐々に自信が付いてきたようです。「学校生活意欲プロフィール」においても、5つ全ての領域において得点が上がっていますが、特に「学習意欲」及び「学級との関係」の2つの領域では4点上がっています。Aのよいところや頑張ったことなどを認める声掛けを継続して、信頼関係を築いていくことが必要です。
〈Bについて〉
Bは承認得点が上がり、学級生活不満足群から侵害行為認知群に移行しました。Bは、SGE実施後の振り返りシートや第2回目「Q−U」において、全ての質問項目に同じ点数を付けており、回答お信頼度が気になります。 「Q−U」の研修会を通して、学年団がBに関する共通の問題意識をもってチームで対応することができたことは、大きな成果であったと考えられます。現在、Bに対しては、副担任やスクールカウンセラーと連携して対応していますが、今後も学級担任一人で抱え込まずにチームで対応していくことが必要です。
〈Cについて〉
Cは第1回目と同様、学級生活満足群の極端に高い位置にプロットされています。過剰適応の可能性もあるということを踏まえて、Cに関しては学級担任だけではなく、複数の教師が意識して日常観察を行いました。また、学力面についても、教科担当者から、授業や考査等で気になる様子が見られるときは、学級担任に伝えるようにしました。学校生活と学習の両面から、チームで対応したという点において、研修会の意義があったと考えられます。 現在、Cは学級内での友人関係が良好であり、学級担任の日常観察からも過剰適応の可能性は低いと考えられます。しかし、2回の「Q−U」の結果が極端に高く出過ぎていることから、質問の意味を理解できず、自分を客観的に評価するということが難しいという可能性が考えられます。学力面のサポートも含め、今後も複数の教師による対応を継続することが必要です。
〈D・E・Fについて〉 
Dは学級生活満足群から、要支援群へと移行しました。要支援群に移行した要因としては、学校生活でのつまずきが考えられます。Dは向上心があり、進路目標も明確にもっていましたが、2学期以降、体力がついていかず、遅刻や保健室利用が増えました。また、EとFがトラブルになり、それぞれ別のグループに移ってしまったことで、Dは学級でも孤立してしまいました。その影響が第2回目の「Q−U」に出たのではないかと考えられます。 「クラスの中で孤立感を覚える」「浮いていると感じる」「不安や緊張を覚える」という質問項目に高い得点を付けていること、学校生活意欲プロフィールにおいても、「学習意欲」以外の全ての領域で、得点が下がっていることから、不適応を起こす可能性が高いと考えられます。スクールカウンセラーや養護教諭と連携を図り、早急な対応が必要です。
Eは、学級生活満足群に位置していますが、「クラスの中で存在感があると思う」という質問項目において2点を付けるなど、承認得点が42点から35点に下がっています。Eは、同じ部活動に所属する友人のグループに移り、友人関係は良好のようですが、承認得点が下がっているため、よいところを見付けて声掛けを行うことが必要であると考えられます。
Fは、学級生活不満足群から、学級生活満足群へと移行しました。学級生活満足群に移行した要因としては、Eと離れ、別のグループで気の合う友人を見付けたことが考えられます。第1回目の「Q−U」では、承認得点30点、被侵害得点28点でしたが、第2回目の「Q−U」では、承認得点36点、被侵害得点10点という結果になりました。友人関係が良好になったことで、学級生活の満足度も上がったと考えられます。
 
 
 

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