生きて働く言語能力を育てる「国語科学習指導の具体策」を提案します!

3 研究のまとめ                                                gazou

本研究では、学習指導要領(平成20年3月告示)の趣旨を踏まえ、「生きて働く言語能力の育成を目指した国語科学習指導の在り方−言語活動の充実を通して−」をテーマに研究を進めてきました。「実生活の様々な場面において、生徒自身が直面した課題を主体的に解決することに資する国語の能力」を「生きて働く言語能力」と捉え、その育成を目指して、知識・技能の確実な定着を図るとともに、それらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等を育み、主体的に学習に取り組む態度を養う授業の在り方を探ることを中心に2年間の研究に取り組んできました。

研究の成果として、次のような提案をすることができました。

@ 生徒の主体的な学習を促すような言語活動を位置付けた授業展開案

A 授業を支える教材(学習プリント生徒用手引き)及び関連資料(教師用手引き等)

本研究の成果や課題と今後の展望について、以下に述べたいと思います。

(1)研究の成果

  ア 言語活動の充実を図り、生きて働く言語能力の育成を目指した授業づくりの提案

   (ア) 学習指導要領のねらいに対応した授業モデルの提案

  学習指導要領のねらいに対応し、中学校国語科の授業づくりに必要な考え方を、@生徒の実態把握、A指導事項の明確化、B言語活動の充実させる学習指導の工夫、C見通しのもたせ方と振り返りのさせ方の工夫の4点にまとめ、授業づくりの視点として示しました。
 授業づくりの視点に基づいて、授業を「見通しをもつ場面」「身に付ける(習得・活用を行う)場面」「振り返る場面」という3つの場面として捉えました。その3つの場面における指導上の留意点や、有効だと考えられる指導の手立てを示して授業モデルとして提案しました。

   (イ) 生徒の主体的な学習を促すような言語活動を位置付けた授業展開案の提案

 佐賀県の生徒の課題として明らかになった「書くこと」と「読むこと」の力を伸ばすことを中心に、授業モデルに沿った授業展開案を提案しました。その際、言語活動を位置付けた授業が、自ら課題を設定し、知識・技能を活用したり、他者と相互に思考を深めたりまとめたりしながら解決していく課題解決的な学習となるように配慮し、主体的な学習を促すようにしました。

授業づくりの視点に基づいた指導の工夫を取り入れた学習指導案と、学習活動の手順や方法を示し、主体的な学習の支えとなるワークシートや学習計画表等とを併せて提案しました。

 イ 授業を支える教材及び関連資料等の作成と整備

  生徒用手引きとして
@学習の進め方を理解するのに必要な「学習の方法」の手引き
A授業に自信をもって臨むために「必要な力(知識・技能)」の手引き
を提案しました。必要に応じて授業で補助資料として活用できるように配慮しました。
  授業モデルの提案に合わせて、単元のねらいや言語活動の指導のポイント等を示した「教師用手引き」を提案しました。授業展開案について指導のねらいや授業の流れ、指導のポイント等が一目で分かるように作成しました。
 
  学習プリントとして《基礎・基本編》の「書くこと」、「読むこと」では
@基礎的・基本的な知識・技能を身に付けさせるための「知識・技能プリント」
A学習したことが身に付いたかどうかを確かめるための「確認プリント」
B解答・解説
C知識・技能を学ぶための「学習の手引き」
を提案しました。

また、新学習指導要領の〔伝統的な言語文化や国語の特質に関する事項〕の内容と系統性に配慮した学習プリントの「言語」を作成し、提案しました。

 
  社会生活の中で生徒が直面する課題を解決するために必要な、習得した知識・技能を活用する力を問うための学習プリント「活用問題編」を提案しました。
  生徒が授業の中で習得した知識・技能を場面や条件に応じて使うことができるように作成しました。
  「全国学力・学習状況調査」や「佐賀県小・中学校学習状況調査」から見える課題に対する手立てにもなります。

(2)課題と今後の展望

今回の研究では、(1)で述べましたように、学習指導要領(平成20年3月告示)の趣旨を踏まえ、これまでの全国学力・学習状況調査や佐賀県小・中学校学習状況調査で明らかになった生徒の課題の解決につながるように授業展開案や学習プリント等を作成し提案することができましたが、研究を進めていく上で以下のような課題が残りました。

・提案した授業展開案で用いる教材の新しい教科書教材への対応が十分でない。

・提案した学習プリントや手引き等を活用した授業展開案が少ない。

・新学習指導要領における評価の進め方の授業展開案への反映が十分でない。

このような課題を踏まえ、今後の展望については以下のように考えます。

  新しい教科書教材を用いた授業展開案の整備・拡充
  学習プリントや手引き等を活用した授業展開案の整備・拡充
  「新学習指導要領における学習評価の進め方」(佐賀県教育センター、平成24年2月1日)に基づく「指導と評価の計画」作成とその実際の検証


  具体的には、指導事項の明確化と重点化に応じた評価規準の設定、評価場面の絞り込みと評価方法の工夫、評価の目安の具体化等を通して、指導と評価の一体化を目指す授業づくりの在り方を探る必要があると考えます。

4 参考文献                                                gazou

佐賀県教育委員会
文部科学省
中央教育審議会

国立教育政策研究所
西村左二編著
堀江祐爾

国語教育実践理論研究会

井上一郎


河野庸介編著
高木まさき編著
冨山 哲也編著
『佐賀県教育の基本方針』 平成22年4月及び平成23年4月
『中学校学習指導要領解説 国語編』 平成20年9月
『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)』 平成20年1月
『評価規準の作成のための参考資料(案)』 平成23年7月
『国語科の活用力を育てる授業』 平成19年 光文書院
『国語科授業再生のための5つのポイント-よりよい授業づくりを目指して-』 
2007年 明治図書
『読解力再考 すべての子どもたちに読む喜びを -PISAの前にあること-』
2007年 東洋館出版社
『読む力の基礎・基本-17の視点による授業づくり-』 2003年 明治図書
『ことばが生まれる-伝え合う力を高める表現単元の授業の作り方-』  2002年 明治図書
『中学校新学習指導要領の展開 国語科編』 2008年 明治図書
『中学校教育課程講座 国語』 2009年 ぎょうせい
『(単元構想表)でつくる!』 2011年 東洋館出版 
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