好ましい人間関係を育てる開発的・予防的教育支援の在り方の研究

3 研究のまとめ

1 研究の成果

   
 
 佐賀県内の小学校6学級、中学校6学級、高等学校8学級でがばいシートを実施した。実践を通し、研究を進めていく中で、全体として、次のような成果を得られた。
  ○分析のヒントになる具体的な例を挙げ、「がばいシート」の結果のグラフだけを見て評価をする危険性を
   示唆し、教師の日常の観察と併せて、総合的に判断することの重要性を認識することができた。
  ○教師の参考となるような、学年一斉や複数学級での授業、部活動顧問と連携した対応、養護教諭がか
   かわった支援など、多様な開発的・予防的支援を実践し、それらを事例として示すことができた。

  小学校での成果としては、     
@ 「がばいシート」を実施したことにより、担任が日常観察で把握できなかった部分に目を向けることができた。特に、担任の意識よりも児童の意識が低い部分について支援の必要性を感じ、支援計画を立てることができた。
A 「がばいシート」の個人の様子のグラフで実態を把握し、点数の高いところを踏まえ、よいところを認め、ほめるように心掛けて個人面談を実施したことが、児童理解を深めるきっかけとなった。
B 「がばいシート」の教師の点数よりも児童の点数が低い観点に焦点を当てた構成的グループ・エンカウンターを実施したことで、教師に話し掛けてくる児童が増えた。構成的グループ・エンカウンターは教師とかかわることの楽しさを実感する手立てとして有効であった。

   中学校での成果としては、
@ 「がばいシート」を実施して、生徒の実態、学級、学年の実態を把握することにより、実態に即した継続的な支援案を考え、実践することができた。
A 学校行事等は、学級の雰囲気や生徒同士、生徒と教師の関係性を深めるよい機会である。その活動の前に「がばいシート」を実施したことで、身に付けるべきソーシャルスキルを検討することができた。生徒の実態に応じた内容(学校生活や行事等の中で活用できる言葉) を学ばせ、定着を図る機会としてチャレンジ週間を設定し、身に付けるよう指導したことは有効であった。
B 学校生活における個別対応や部活動における活躍できる場の設定など、生徒と教師の関係性が深まり、学校生活への意欲付けにつながった。また、学級担任と部活動顧問との連携による、生徒に対しての多面的な支援ができた。
C 学級担任が一人で支援を行うのではなく、教育相談担当、養護教諭、生徒指導主事、部活動顧問等との連携を深めたことで、情報の共有化を図りながら支援を行うことができた。

   高等学校での成果としては、
@ 「がばいシート」について、関係職員に実施の意義や実施方法を説明したこと、学年主任の協力を得て学年一斉に実施したことで、「教師の評価」「事務の煩雑さ」「分析の難しさ」等の抵抗感を減少させることができた。
A 「がばいシート」を実施したことで、学級担任の学級や個人へのアセスメントの意識が高まった。また、学級や友人関係に対する学級担任と生徒の意識の差に気付くことで、学級担任自身の自己理解や生徒理解が深まった。さらに、生徒同士や教師と生徒の人間関係の状態がグラフ化されることや、観点別に生徒の状態を分析することにより、教師自身の客観的な生徒理解が促進された。
B 「がばいシート」を実施したことで、一見問題のない学級や生徒であっても、それぞれ問題を抱えていたり、これから表面化していったりする恐れがあることに、教師が気付き、問題の未然防止について考えることができた。
C 「がばいシート」の分析結果を、学級担任、副担任、学年主任、養護教諭等が共有することで、ティーム支援的なかかわりがスムーズに行われ、長期の支援計画を話し合う機会をもつことができた。
  
  「がばいシート」の使用方法や目的を正しく理解し、学級担任だけでなく、関係職員が児童生徒の共通理解をするためのツールとして用い、その後の支援につなげることにより、「がばいシート」を有効に活用することができた。また、「がばいシート」を実施することによって、教師の学級や個人へのアセスメントの意識が高まり、児童生徒への客観的な理解を深めると共に、教師自身の自己理解にもつながった。
  これらのことから、「がばいシート」を実施し、児童生徒の状態を客観的に把握することで、今後起こる可能性のある問題に対して、教師が開発的・予防的教育支援を計画し、実践することができると考える。   
 

2 今後の課題

 

 
 
○新年度や年度途中で、学級担任をはじめとする支援にかかわる者が代わった場合でも、「がばいシート」で得られたデータを踏まえ、取り組んだ支援が継続されるような「がばいシート」の校内での活用の在り方、支援体制の再構築が必要である。
○「がばいシート」によって得られた学級や個人の情報については、必要に応じて教師間で適切に活用されることができるシステムの構築と情報管理が必要である。
 

 

 

 

 


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最終更新日: 2010-03-18