現状から考えること |
今日、子どもを取り巻く人間関係が大きく変化し、不登校やいじめなど様々な問題が表面化している。平成20年度の文部科学省の調査では、1年間に30日以上欠席した不登校の小・中学生は12万6千人を超えている。佐賀県内でも平成20年度、不登校の小・中学生は、中学生の減少が見られたとはいえ、872人であった。
不登校になったきっかけとして、学校生活に起因するものが4割を超え、その内訳は友人関係や教師との関係をめぐる問題が半数を占めている。このことから、学校生活の中で人間関係に悩んでいる子どもたちの姿がうかがえる。 |
文部科学省等の考え方 |
不登校問題に関する調査研究協力者会議による「今後の不登校への対応の在り方について(報告)」の中で、「すべての児童生徒にとって、学校を安心感・充実感の得られるいきいきとした活動の場とし、不登校の傾向が見え始めた児童生徒に対しても、不登校状態になることを抑止できる学校であることを目指すことが重要である。」と示されている。また、文部科学省は平成21年3月に改訂した学習指導要領の総則の中で、教師と生徒の信頼関係及び生徒相互の好ましい人間関係を育てるとともに生徒の理解を深めることの重要性を強調している。 |
研究の考え方
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石隈(1999)は、心理教育的援助サービスを3段階に分け、すべての子どもに対して発達課題や教育課題に取り組む上で必要とする基礎的な能力の開発を援助するものを1次的援助サービス、それらの課題の取り組みに困難をもち始めたり、これから問題をもつ危険性の高い子どもに対するものを2次的援助サービス、特別な援助が個別に必要な子どもに対するものを3次的援助サービスとしている。
このことから、1次的援助サービスを、すべての子どもが集団での適応能力を高め発達課題を達成するための支援という視点から「開発的教育支援」、また2次的援助サービスを、問題を未然に防ぐための支援という視点から「予防的教育支援」ととらえた。そして、集団の中で発達段階に応じて、自己理解・他者理解を深めながら、互いの個性を認め合い、自己実現に向けた活動をすることができる好ましい人間関係を育てることが重要であると考えた。 |
「がばいシート」について |
「がばいシート」は、佐賀県内の小・中・高校生を対象にした「安心できる人間関係づくりに関する意識調査」の結果(平成19年度実施)を基に、「集団の状態を把握するシート」として平成20年度に佐賀県教育センターが作成した。
「集団の雰囲気」「友達との関係」「自己存在感」「授業への意欲」「教師との関係」の5つの観点別に、教師と児童生徒の意識の違いを比較しながら、集団や個人の状態を、客観的な視点で分析できるシートである。 |