▲上へ

国語科授業の「あったらいいな!」を形にします。

学習状況調査から見えた課題克服のために

■平成21年4月に実施された「全国学力・学習状況調査」と「佐賀県小・中学校学習状況調査」の分析結果から、
  佐賀県の中学生の実態が見えてきました。そこで、プロジェクト研究における研究成果の中から、佐賀県の
  中学生が抱えている課題別にその手立てとして有効と思われるものを紹介します。
  なお、ここで提示している「対応する調査問題」については、平成21年4月に第3学年を対象に実施した全国学
  力・学習状況調査の調査問題と、同じく平成21年4月に第2学年を対象に実施した佐賀県小・中学校学習状況
  調査の調査問題の問題番号に対応しています。
領域
佐賀県の生徒の課題
課題を克服するための具体的な手立ての例
   ◆関連する授業展開案
  ◇関連する学習プリント
  □関連する生徒用手引き
対応する調査問題



必要な情報を選び、伝えたい事柄が明確に伝わるように書くこと

必要な情報を選び、伝えたい事柄が相手に明確に伝わるように文章を書く力を付けるためには、まず意見文を書くなどの言語活動を位置付けた単元を構想することが必要です。その中で、条件に照らし合わせて、必要な情報を収集し、整理する活動や様々な条件に即して実際に書く活動を行うことが大切となります。また、言語活動を位置付けるに当たっては、単元の学習に見通しをもたせ、「文章を書いてみよう」という意欲を喚起するような単元導入時の工夫を行うことなども大切となってきます。
 生徒が条件に即して必要な情報を選ぶことができるようになるためには、単元の学習活動の中に、図書資料やインターネット情報等を活用した情報検索の場面を位置付けて、そこで適切な指導を加えながら、生徒に必要な情報を選択したり、整理したりする経験を積ませることなどが大切です。
  また、実際に書く活動を設定する場合には、相手意識や目的意識をはっきりさせて書かせることが大切です。「新聞投稿を書く」、「応募作文を書く」などのように異なる場面を設定し、条件の異なる意見文を書く活動に取り組ませてみてはいかがでしょうか。その際に、実際にその作品を投稿したり、応募したりするなど、生徒作品の生かし方を工夫することで、生徒の意欲の喚起につながるものと考えます。
◆授業展開案1 「意見文を書こう」
◆授業展開案3 「説得力のある意見文を書こう」

◇学習プリント〔書くこと〕4 「目的や意図に応じて書く(意見文)」
□生徒用手引き4 「課題を見付けよう」
□生徒用手引き5 「情報を収集しよう」
□生徒用手引き6 「集めた情報を吟味しよう」

県調査
2一(2)

全国調査A問題2一
主語と述語を適切に対応させて書くこと 《これからの指導に向けて》
  生徒に主語と述語を適切に対応させて文章を書く力を身に付けさせるためには、文章を書く際、常に主語に対して述語の対応が適切かどうかを意識して記述させることが大切です。
  文の成分の働きをしっかりと指導し、日ごろのノートへの記述から主語・述語の対応に気を付けて書かせるようにしましょう。また、書いた文章を適宜、評価し合わせたり、優秀作品に触れさせたりして、正しい文章のモデルを示すことが生徒にとって有効であると考えます。生徒にはできるだけ簡潔な短い文章を書くことを徹底させ、書いた文章は必ず見直す習慣を付けさせるとよいでしょう。文章は推敲することでより適切な表現になっていくことを、体験的に気付かせることによって、生徒の態度化にもつながります。
◇学習プリント〔書くこと〕3 「文章を推敲しよう」
全国調査A問題1
自分の意見を伝える ために適切な材料を選ぶこと
《これからの指導に向けて》
  意見文等を書く際に、自分の意見を伝えるために適切な材料を選ぶ力を身に付けさせるためには、その文章を書く目的を明確に自覚させることが必要です。
  説得力のある文章を書くためには、その内容を示すために明らかな根拠となる、データや事実などの具体的・客観的な情報を盛り込むことも大切です。条件に即した情報を選ぶ機会をできるだけ多く設定し、情報の選択方法を適切に指導しながら、経験を積ませるようにしてはいかがでしょうか。「読むこと」の学習において、適切な材料が用いてある文章をモデルとして提示し、どのような情報を選んで、どのような構成や展開で書いているのかなどを読み取らせることも有効な手立てです。「読むこと」の学習と「書くこと」の学習を効果的に関連付けて指導を進めていくことが大切です。
◆授業展開案1 「意見文を書こう」
◆授業展開案3 「説得力のある意見文を書こう」

□生徒用手引き6 「集めた情報を吟味しよう」
全国調査A問題5一
自分とは違う立場の意見を取り入れて、説得力のある文章を書くこと

《これからの指導に向けて》
提案する文章を書く際には、様々な立場からの意見を想定して提案を検討することが大切です。その際、自分たちの意見を補強する根拠だけでなく、異なる立場の意見やその根拠にも十分配慮して、意見を構築させる必要があります。
  説得力のある文章を書くための具体的な手立てとしては、話合い活動や意見交換などにおいて、自分の立場を明らかにし、自分とは異なる意見など様々な立場からの意見と接する場面やグループや学級で自分やグループの意見をすすんで提案する場面を多く取り入れることが考えられます。その中で、根拠の適切さや取り上げるべき反論についてしっかりと考えさせることが大切です。その中で、提案する文章の書き方の様式とともに、根拠の取り上げ方も指導するとよいでしょう。  
◆授業展開案1 「意見文を書こう」
◆授業展開案3 「説得力のある意見文を書こう」

全国調査A問題5二



目的に応じて論理の展開をおさえ、正確に理解すること

《これからの指導に向けて》
 目的に応じて論理の展開をおさえ、正確に理解する力を身に付けさせるためには、「読むこと」の学習において、具体的な事例が何を説明するためのものであるのかを意識させることが大切です。論理の展開を読み取らせるために、キーワードとなる語句がどのような意図で用いられているのか、段落と段落の関係や文章全体の構造がどのようになっているのかということを意識して読む習慣を身に付けさせる指導が大切です。
  説明的文章の指導においては、段落ごとに内容をとらえたり、段落相互の関係を正しくおさえたりしながら、さらに大きな意味のまとまりごとに、文章全体における役割をとらえさせる活動を通して論理の展開をおさえるよう指導することが必要です。
  正確な理解のためには、単元に位置付けた言語活動の中でこれらの活動を確実に行うことが大切です。具体的な手立てとしては、スモールステップによる学習活動を設定することや、生徒用手引きなどを効果的に活用することによって、生徒が主体的に活動できるような工夫をすることが考えられます。あらかじめ、学習プリントなどを用いて、要約の仕方についての確認をしてから活動に入ることも、生徒に自信をもって言語活動に臨ませるための手立てとして有効です。
◆授業展開案2 「構成と論理の展開に注目して読もう」
◇学習プリント〔読むこと〕3 「文や段落の要点をとらえる」

県調査
3三・四
短歌の形式に従って意味のまとまりをつ かむこと

《これからの指導に向けて》
 短歌を読み味わうためには、言葉のつながりや意味のまとまりをとらえたり、語句の効果的な使い方や表現上の工夫に着目したりして、作者の気付きや感動をとらえることが求められます。言葉のまとまりなどの点から句の切れ目をとらえることで作品の基本的な構造を把握でき、作者の感動のありようなどについても考えを深めていきやすくなるので、そこを手掛かりとして短歌全体の内容を考えさせる指導を行うとよいでしょう。
  指導の具体的な手立てとしては、授業の中で、優れた作品の鑑賞や実際に自分で短歌を創作する活動などを行い、短歌の形式や表現技法を含む表現の工夫についての知識・技能を確実に身に付けさせることが考えられます。
 また、近・現代短歌や俳句の中にも、文語表現が使われることがあります。そのことを理解させることが重要です。その上で、身の回りにある文語表現に関心をもたせたり、古典の学習と関連付けたりすることによって、文語調の文章に親しむよう指導する必要があります。 
◇学習プリント〔読むこと〕6 「短歌を味わう」

全国調査A問題7一
短歌における語句の意味を理解すること 《これからの指導に向けて》
 短歌や俳句などをよむ際、作者が対面している事実、状況をまず正確にとらえることが、作者の気付きや感動などについて考えていく上で有効です。また、語句の意味や用法を文脈の中で正確にとらえ、理解することを指導する必要があります。
  短歌や俳句をよむ上では、「秋」、「今年」、「午后」といった時間を表す語句を関係付けて考えたり、「けり」等の詠嘆の表現に着目したりするなど、用いられている語句の一つ一つに十分注意を払うことも大切です。具体的な授業の場面でそれぞれの語句に着目する場面を作っていくことなどが手立てとして考えられるでしょう。 
◇学習プリント〔読むこと〕6 「短歌を味わう」
全国調査A問題7二
表現の仕方や文章の特徴をとらえること

《これからの指導に向けて》
表現の仕方や文章の特徴をとらえることは、文章が書かれた意図や対象の理解につながり、結果的には文章の内容に対する理解を深めることに役立ちます。様々な種類の図表等を含む資料から、自分に必要な情報を読み取ることと、表現の工夫や特徴に気付いて自分の表現に役立てる活動を言語活動の中に取り入れていく必要があります。
  生徒の身近にあるパンフレットや広告、説明書などは、相手意識や目的意識が明確であるため表現上の工夫が読み取りやすくなっています。また、イラストや図表などを文と組み合わせて作成されているものも多くあります。これらの資料を読む際に、作り手の意図や目的と表現の工夫との関係について考えさせることが重要でしょう。そこで学んだことをレポートや発表用の資料づくりなど自分の表現活動に生かしていくようにさせることが大切です。
◆授業展開案4「人物紹介パンフレットを作ろう」
◆授業展開案5「描写に注意して読もう」 

◇学習プリント〔活用問題〕3 「案内図」
◇学習プリント〔読むこと〕4 「表現の工夫をとらえる」

全国調査B問題1二
文章の展開をとらえ、段落の役割を理解すること

《これからの指導に向けて》
 文章の展開をとらえ、段落の役割を理解する力を身に付けさせるためには、説明的な文章を読む際に、文章の構成について考え、一つ一つの段落の役割を正しくとらえさせることが重要です。
  段落の役割には、例えば「問題や課題などについて述べる」、「集めた材料について調べたことや分析したことを述べる」、「集めた材料を基に考えた自分の意見を述べる」などがあります。これらの段落の役割について、モデル文などを用いて把握させたり、いくつかのテキストを比べ読みさせることによって気付かせたりする活動を行うことが考えられます。なお、段落の役割をとらえるには接続関係を明示する言葉などに着目させる指導も大切です。
  生徒が自信をもって言語活動に取り組むことができるよう、補充学習用の学習プリントや段落の役割等を解説した生徒用手引きなどを効果的に活用してみてはいかかでしょうか。
◆授業展開案3「説得力のある意見文を書こう」 
◇学習プリント〔読むこと〕5 「文章の構成をとらえる」

全国調査B問題2一
表現の特徴を手掛か りに内容をとらえる ことができること

《これからの指導に向けて》
 表現の特徴を手掛かりに文章に表現された内容をとらえる力を身に付けさせるためには、表現の特徴についての理解を深め、内容の読み取りに生かすようにさせることが必要です。
  例えば、詩を取り扱う学習においては、特徴的な語句、比喩や反復などの表現技法、副詞や文末表現の働きなどに着目させ、詩に書かれた内容や表現について、感じたり考えたりさせることが重要です。その際、生徒同士で、詩から読み取ったものの見方、感じ方、考え方などについて、詩の中の表現を根拠として話し合えるような学習を取り入れてみてはどうでしょうか。その際、学習に必要な表現技法等の身に付けるべき知識・技能については、本研究で作成している生徒用手引きなどを活用することも有効であると思います。
◇学習プリント〔読むこと〕4 「表現の工夫をとらえる」
◇学習プリント〔読むこと〕5 「文章の構成をとらえる」

全国調査B問題3二
言語事項 文脈に即して漢字を正しく読む・書くこと

《こからの指導に向けて》
  文脈に即して漢字を正しく読んだり書いたりするためには、前後の文章の意味をよく考え、適切な語句を選ぶ必要があります。
  有効な手立てとしては、漢字の成り立ちや意味について、辞書を用いて調べるなどして考える学習を授業に取り入れたり、「書くこと」や「読むこと」の学習においても、随時、漢字や漢語の意味と表記を意識して書いたり読んだりする学習活動を組み入れたりすることなどが考えられます。当然、小テストなどによる習得状況の確認と必要に応じた補充指導もこれまで同様に適宜、取り入れていく必要がありますが、何より大切なことは、学習した漢字を積極的に使っていく態度や分からない漢字や知らない漢字に出会ったときに、自分で調べる習慣を身に付けさせることも欠かせないと思います。年間を通しての継続的な指導が必要です。
◇学習プリント〔書くこと〕5 「同音異義語」

県調査
4三

全国調査A問題8三エ
語句の意味を理解し文脈の中で適切に使うこと 《これからの指導に向けて》
  語句の指導においては、語句そのものの意味を指導するだけでなく、多様な言語活動の中で適宜注意を促して、知識の定着を図ることが大切です。その際、文脈の中で適切に用いられているかどうか常に意識するよう指導することが大切です。
  具体的な手立てとしては、聞き慣れない言葉に出会ったら、積極的に使い方を確かめるように指導することが必要でしょう。「いつかは使ってみたい言葉」を書きためておく習慣を付けるなどの指導も有効です。
◇学習プリント〔書くこと〕6  「慣用句」
◇学習プリント〔書くこと〕7 「敬語」
全国調査A問題
8三イ、ウ
 

Copyright(C) 2009 SAGA Prefectural Education Center. All Rights Reserved.
最終更新日: 2010-03-17